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座談会

中高生の化粧

神代の昔から化粧は存在するが2010 年、東京の中高生はそれぞれの判断基準で化粧を楽しむ。校則は?親の目は?気になる世代が、気になるテーマを討論した。保護者も教師も必読の本音トーク

参加記者 富沢咲天(国立中学3年)、谷 彩霞(私立中学3年) 、南雲満友(私立高校1年)、宮澤 結(私立高校2年)
氏会  堀 友紀(私立高校2年)
2010/10/31

友紀:私の学校では半分以上のクラスメイトが化粧をしていて、放課後の駅のトイレでは多くの高校生が化粧をするのが目につきます。皆さんの学校では、どれくらいの生徒が化粧をして登校していますか。

咲天:私の学校に化粧を禁止する規則はありませんが、学校は学ぶ場だから、化粧をしている人はほとんどいません。

結 :校則で禁止されているので化粧をしてくる人は全くいません。でもアイプチなどで目を二重にする人が多くなって、学校でもそれを許すかどうか問題になっています。

満友:私の学校はとても校則が厳しく化粧をしてはいけません。月に一回、先生がチェックします。

彩霞:私の学校もすごく厳しいんですけど、たまに放課後のバスの中でつけまつ毛付をする人はいます。

●リップ、マスカラ、アイプチ・・・

結 :私は中 3 からつけまつ毛やマスカラなどに興味を持ちました。きっかけは雑誌の影響がありました。

満友:私も中 3 の頃から。雑誌やテレビの影響が強いです。

咲天:私は中 2 の頃です。周りの人がやっているので、やってみたいと思いました。

彩霞:中3の夏休みから。友だちがしているんで、してみようと思いました。

友紀: まわりの友だちは中2や中 3 の頃から興味を持ちだして、お母さんとかに化粧品のお店に連れて行ってもらったりして、今も続けているっていう子が多いです。どの程度の化粧をしますか?そして友だちはどの程度?

結 :放課後や友だちと遊ぶ時。 私はBBクリームと化粧下地から始めて、つけまつ毛やアイプチなどをしています。目が腫れてしまった時に二重にするためにしています。友だちも、する子もしない子もいるのですが、する子はつけまつ毛などはしないで、マスカラやアイシャドウなど薄い化粧をしています。

咲天:学校で色付きのリップはしますが、マスカラはしません。顔色が悪いのでちょっと健康に見せるためにやっているだけです。休日に友だちと遊ぶときにはマスカラなどをしています。たまにクマの下にファンデーションを塗ったりしています。友だちはマスカラとかリップはするんですが、つけまつ毛など、もとの顔がわからないほど、すごいケバくなるお化粧はしていません。

彩霞:登下校中はしませんが、やっぱり友だちと遊ぶ時の休日は化粧をします。マスカラとリップだけ。友だちも休日に化粧をするんですけど、そのときはマスカラやアイライン、アイシャドウも付けています。リップも必ず付けています。

満友:休日に友だちと遊ぶ時はグロスやマスカラなど。ファンデーションや BB クリームは肌が荒れるのでしません。友だちは休日にいっしょに遊ぶ時は、ファンデーションからマスカラからつけまつ毛まで全部やっています。それはたぶん学校が厳しいので、そういう時にやりたいんじゃないかなと思います。

友紀:私の学校は私立ですが自由な校風です。自分がやったことは自分で責任をとる学校なので、化粧する子は多いです。何にもしていない子は運動部をバリバリやっているか、本当に興味がない子だけです。昼休みのお手洗いでは、化粧直しをしている人が多くておどろきました。私は運動をすると汗で気になって逆に恥ずかしいので、化粧をしていません。

● Before & After

友紀:「今日時間がなかったの」と友達がすっぴんで学校に来ると本当に顔が違っていて、そのギャップにとてもびっくりして、化粧ってすごいなと思いました。担任の先生はいつも「高校生のうちが一番肌がきれいだし、化粧なんかしなくても一番きれいな時期なんだからしない方がいい」と言います。

ところで化粧を始めたきっかけは?

結 :雑誌に毎月メイクページという特集があって立ち読みする「ポップティーン」などの雑誌では化粧のページでビフォー・アフター(化粧前と化粧後)を両方載せているんです。その差が激しくて、別人のようになれるんだというのを最初に見た時、衝撃でした。「私もこういうふうに変われるのかな」とか思って始めました。最近では若い子向けの化粧品が多くて雑誌のモデルは中高生の憧れです。

彩霞:クラスに帰国子女が多いんですが、外国では小学生ぐらいからお化粧を始めるので、それが身についてしまったみたいです。

咲天:「このマスカラはすごくボリュームが出て、誰が誰だかわからなくなるくらいケバイからやめた方がいいよ」とか、「これはお勧めだよ」とか・・友達同士の話しで広がっていきます。

満友:友だちと憧れのモデルの写真を見て「かわいいね」って・・どんどんそのモデルの載っている雑誌を見て、メイクページを見て「こういうふうにするんだ」とみんなでやっています。

友紀:やっぱり雑誌に自分の好きなモデルがやっているメイクの方法を真似する子が多いみたいで、その雑誌のメイクページにはどこの会社の何を使っているっていうのがしっかり明記されているので、それを買いにいったりする子がよくいます。私の学校では“薄く少しやってかわいく見せる”というのが彼女たちのポリシーのようです。私のようにしていない子に「したら絶対かわいくなる」って言うんです。仲よしグループの子と遊びに行くとよく化粧コーナーに連れていかれます。仲間意識というのがあって、友だちの影響が大きいのかなって思います。

●なぜ化粧を?

結 :私はよくプリクラを撮るんですね。写真と同じようにプリクラでも目を加工してくれるんですけど、すっぴんよりも化粧した方がかわいく写るので、プリクラを撮るために化粧をするようになったことが大きいです。

満友:私もプリクラを撮るためなのですが、学校がすごく厳しいので、その反動で休日に始めました。

咲天:私はプリクラを撮ることもあるんですけど、普段学校ではしないので、気分転換に学校以外の場所でやっています。

彩霞:プリクラでかわいく写るために化粧をする子が多いんですけど、クラスの友だちで、学校では化粧をしていないので休日にしようかなっという子が多いですね。

友紀:男の子にもてて嬉しくない子はいないでしょう?ちょっとでもかわいく見せたい気持ちでしょうか。

●化粧をして変わった?

満友:気分転換ができたっていうのと、目が大きくなって、雑誌で見たビフォー・アフターみたいに自分がなったのがびっくりしました。

咲天:マスカラで目が強調されるのかな。ちょっと健康そうにみえる。一回始めると、化粧なしで外出できないなというのがちょっと大変です。

彩霞:私は気分転換が大きいです。目の下のクマがすごくて、よくファンデーションで隠したりするんですけど、それがいいかなと思います。

結 :夏休みはほとんど化粧をしていたんですが学校が始まる新学期の朝にすっぴんの自分を見て、“私こんな顔してたんだ”って驚いて・・・アイプチで一重から二重にしたり、自分のコンプレックスを変えることができるって嬉しいです。

友紀:友だちの顔を見ていると、やっぱりしている時としてない時ではほんとに違うって思うし、化粧してる時の方がかわいいし、きれいになっているなってすごく感じます。

●だれに見てもらいたい?

友紀:化粧をした顔を誰に見てもらいたいですか。例えばボーイフレンドに。

満友:中高生になって周囲のみんなを意識するようになって、女子校なのでクラスメイトにこういうふうに変わったんだよって見せたいなと思います。

彩霞:女子校なので、お化粧した姿を見せる男の子はいないんですが、でもまわりから「あ、かわいくなったね」と言われるとすごくうれしくなるんです。

結 :特に男の子に見てもらいたい意識はないんですけど、遊びのときに化粧をした方が自信が持てる。

友紀:クラスの子のことなんですけど、私が「いつもと違うね」と言っても、恥ずかしそうに「いや…」っていうような子もいれば、逆に気づいて欲しいって思う子もいるみたいです。やっぱり周囲の目を気にしていることをすごく感じます。

咲天:男女関係なく、そこまでお化粧なしとありで「えっこんなに違うの?」って私的には思われたくないので、まわりの人がそこまで気づかないように最低限にやっています。

●保護者は知っていますか?

彩霞:知っています。母に買ってもらったり、いっしょに使ったりします。

咲天:私の親は「マスカラはしない方がいいんじゃない? ビューラーだけでいいんじゃない?」って言うんです。化粧品は自分のお小遣いの中で買っています。

満友:いっしょに選んで母が買ってくれて使っています。「するしないは自由だけど、場所をちゃんと考えてしなさいよ」と言います。

結 :化粧品は自分で買うことが多いのですが、たまに母の化粧品を借りて使うこともあります。濃いメイクをしたりすると、「ちょっと濃いのでは」と注意されますが「時と場所をわきまえて化粧しなさい」とよく言われます。

友紀:私の家では化粧に賛成ではないので、そのままの顔でいてほしいっていうのがたぶん家では大きいので、冗談ですけれど、「もし高校 3 年間化粧をしなかったら何でも買ってあげる」っていうくらいです。文化祭で化粧をしなきゃいけない時があって朝したんですけど、時間もかかるし、それだったら他のことをしていたいので毎朝化粧をしている人を逆に尊敬します。

結 :この座談会のまえにインターネットで化粧の低年齢化について調べたんですが、掲示板には親世代から「派手なメイクをする時間があるなら勉強や部活に費やせ」という意見が多かったのが印象的でした。やはり中高生のうちに今できることをやる、優先順位をつけることが大切だと思うし、化粧したとしても時と場所をわきまえることが大切なんだなと思いました。

友紀:私の家がそうなんです。化粧の話をちょっとするだけで「あなたはそんなことより勉強しなさい」ってきっぱり言われるので私は「はい」って従っています。化粧品ってほんとに高いので、それだけの出費で他に費やすお金が無くなってしまう。

彩霞:私は外国に従姉妹がいるんです。彼女は学校が始まる 2 時間前に起きて 1 時間かけてお化粧をしているんですよ。叔母は「学校に行くのになぜそんなに化粧をしなくてはいけないのか疑問だ」って言っていました。

満友:夏に英国のサマースクールに行って、いろんな国からの中高生と寮生活をしました。男女共学だったので外国人の女子たちは朝早く起きて、寮のバスルームに集まってメイクして、髪の毛にワックス付けたり色々やって・・・ 日本では私の学校はダメなので、そういう文化がまわりにないから、「うわぁっすごいな!」ってびっくりしました。

● ” 化粧をしてもよい“学校だったら

満友:学校は学ぶ場所だからナチュラルなグロスとか、自分で考えて、ファンデーションもマスカラもせずにケバクないのにします。

結 :私もそうです。やはり学校は勉強する場所なので、遊ぶ時だけで化粧はいいと思っています。

彩霞:学校は学ぶ場所なのでグロスとかリップだけでいいと思います。

咲天:私の学校は化粧してはいけないルールはないんですけど、学校では体育の授業もあるし、昼休みに化粧をしている余裕もないし時間がもったいないし、親に別に言われてはいないけど、みんなで「学校はしていかない方がいいよね」っていっています。

友紀:私の学校は清楚な子が多くて、化粧はしてもケバクしないのが暗黙の了解です。でもその中にもやっぱり「ポップティーン」を読んでいる子は学校にはして来ないで、放課後にお手洗いなどに行くと、つけまつ毛をして、これからどっか出かけるのかなっていうような子はいます。

●TPO次第

咲天:化粧の低年齢化は別に悪いことではないんですけど、 TPO をわきまえているのかどうかが心配です。例えば学校とか大事な人の話を聞く重要な時にはお化粧をしないとかをちゃんと考えられるかどうかが重要だと思います。

結 :たまに電車の中で化粧をしている中高生などがいて、そういうのを見ると、見た人は不快に思うかもしれないし、そういうのは良くないと思います。私も TPO をわきまえることがすごく大切だと思います。

満友:私も通学に電車に乗るんですけど、中高校生がよくマスカラをしていて、周りの人にかかったりしたらすごく迷惑だし、マナー違反なのでTPO をわきまえてほしいと思います。

結 :高校生が毎日化粧をしていると、将来肌がボロボロになるということをインターネットで見ました。化粧をするのにも知識が必要だと思います。

友紀:中学生、高校生は一番肌がきれいな時期だし、そういう時にお化粧をするともったいないなというのが私の本音です。自己責任なので、やるやらないは自分の自由ですけど、化粧する場所と時間をきちんと考えてほしいと思います。

以上  

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AO入試に見る大学の本質

勝部亜世満(18)

 大学全入時代に 2007 年度より突入したと言われるが、人気大学を巡る受験戦争はいまだに過熱中だ。その中では受験生だけでなく、各大学も自大学のカラーやアドミッション・ポリシー(求められる学生像)に見合った学生を確保するための制度改革に乗り出すなど奮闘している。

 その 1 つに「 AO 入試」がある。アメリカの大学における入試専門部署を模したアドミッション・オフィスを設置し、従来の筆記による学力試験だけでは判断できない能力を持つ受験生を、書類・面接等によって選抜するものだ。知識のみに偏らない「大学入試の多様化」を目指したものだが、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス (SFC) による 1990 年度導入を皮切りに、全国各地の国公立・私立大学で定着しつつある。

 今回、こうした入試制度改革によって大学の何が変化したのかを 知るために、 SFC と、国立大学法人の東北大学の担当教員に話を伺った。

 まず、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス (SFC) の AO 入試は出願方式により異なる部分もあるが、それまでの主だった活動実績、高校 3 年間における評定平均などといった書類審査によって一次選抜を行い、それをパスした受験生に対して面接が課され、最終合格者を決定する。

 「本当は 3 日間かけてじっくり面接を行いたい」という前 SFC 総合政策学部長・慶應義塾常任理事の阿川尚之先生は、「本当は能力のある受験生を一次選抜で不合格にさせてしまうことが絶対ないとは言えない」と AO 入試の限界点を指摘する。他方で、「たった数十分の面接で受験生の全てを知ることはできないが、話し方や目を見ると相手の正直さや知的興味、熱意がこちらに伝わる」とも言う。

 阿川先生によると、実際に AO 入試で入学した学生たちの意欲は極めて強く、オリジナルな計画を実現するなどの行動力で、一般入試によって入学した学生にも多大な刺激を与えているという。しかもこの学生たちの SFC に対する愛着は凄まじく、彼らの意欲が大学全体の活性化に直接貢献しているため、 SFC における AO 入試の導入は結果的に成功を収めているのである。

 次に、東北大学の AO 入試であるが、これは後期日程( 2 月下旬実施の国公立大学前期日程終了後、 3 月中旬ごろ前期日程合格者以外から選抜する方式)廃止に伴いその定員を新たにシフトしたものだという。研究者の養成を目的に、どうしても東北大学で研究に取り組みたいという意志の強い受験生を対象にしており、大学入試センター試験、独自の学力検査、評定平均と面接などによる入試で、一般入試に先立って行われる。一定の学力基準に基づいて第一次選抜を行うことにより志願者を絞ることで、大学側のコスト負担を軽減していることも特徴だ。 2000 年度より 2 学部で導入されたが、現在では全学部に AO 入試枠が存在する。

 大学自身が東北地方を代表する立場であるために、夏のオープンキャンパスには東北 6 県を中心に多くの受験生が集まり、東北大学の研究に直に触れて「試食」することができる。また大学側からも東北地方の各高校に教官を派遣し、東北大学の研究活動等を広報していくことで高校との緊密な関係を築き、その高大連携の橋渡しとして AO 入試を位置づけている。

 東北大学高等教育開発推進センターの倉元直樹准教授によると、この AO 入試によって入学した学生の成績は概ね一般枠の学生より高い水準で、学問に対する意欲も高いという。特に工学部においては“先取り学習”として数学・物理学の演習講座を設置しており、一般科目に先立ち単位を修得する学生が大半となる。また AO 入試で不合格となっても一般入試で合格した学生は毎年 100 人以上にのぼり、彼らの受験生活で培われた粘り強さも、その後の研究に生きてくると考えられている。こうして東北大学における AO 入試は、 SFC とはまた異なった形で成功を収めている。

 この 2 大学のように、 AO 入試を大学の活性化に活用している大学が存在する一方、 AO 入試を学生の早期囲い込み、いわゆる「青田買い」に利用して問題化している大学もある。「青田買い」で批判されているのは、経営資金確保のために入学者を一定数確保することが最優先されてしまうことだ。それにより受験期の試行錯誤を経験しない学生が入学し、大学全体の学力低下を進めてしまう。大学は、そうした学生の底上げへ労力を費やすことになり、大学本来の使命を果たすことから更に遠ざかっていくことになる。

 これに関して倉元先生は、「 AO 入試は SFC が素晴らしい才能を発掘するために導入した画期的な制度であったが、多くの大学が専門組織を整えずに追随したことによって、本来の目的とは異なる方向に進んでしまった」と残念がる。

 「大学とは、自分の頭で考える力をつけ、新しい問題に対処する力をつける場所」と阿川先生は述べていたが、そういった本質的な意味での「学問」に取り組もうとする姿勢をもった学生と教授が集まってこそ、大学の意味があるのではないだろうか。 AO 入試は今や「多様化」というスローガンのもと、大学ごとに独り歩きしてしまい、ひとくくりに成否を論じることは不可能に近い。ただ AO 入試の導入によって過熱した受験戦争をある程度冷却できていることは確かである。そして、「大学入試がゴールではない」ことを示そうとする AO 入試に関して考えることは、大学を目指すことに対する本質的な意味について考えることに直結していると言えるだろう。

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AO入試は何のためにあるの?

2010/07/08               宮澤 結( 16 )

 みなさんは大学入試の方法のひとつである AO 入試というものを知っているだろうか。

 AO 入試とは、学力試験の結果だけで合否を決めるのではなく志望理由書を書かせ面接を行うことで受験者の能力と個性を評価する、新しい選抜形式である。 1990 年に日本で初めて慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス( SFC )が導入し、その後多くの大学が取り入れるようになった。

 AO 入試には募集人数の総定員に対する割合や募集時期などに関し法的な規制はなく、選抜方法も学校ごとに自由に設定することができる。したがってその大学に合った学生をとることができるのだが、募集時期を早くすることで大学が学生数を確保する青田買いの手段としているという問題も指摘されている。一言で「 AO 入試」といっても、その方法は大学によって様々なのだ。

 今回は AO 入試を行う多くの大学の中で、独自の方法で AO 入試を確立した国立大学法人東北大学の高等教育開発推進センター准教授である倉元直樹先生と、私立慶應義塾大学の阿川尚之慶應義塾常任理事(前慶應義塾大学総合政策学部長)にお話を伺った。

 「東北大学では、『学力重視の AO 入試』を行っている」と倉元先生は言う。東北大学では、面接を行う前に書類の出願とともに学力テストを行ったり、学部によっては一般受験の人とともにセンター試験を受けて、その結果を添えて出願するそうだ。「事前にテストを行うことで沢山の学生を面接する教員の手間を省くことができるし、学力が高いうえに目的意識の高い学生が入ってくるのです」と倉元先生は語った。

 一方、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス( SFC )では、「テストの点だけでなくその人自身を見ること」に重点を置いている。阿川先生は、「本当は3日間ほどかけて受験者を見たいですね」と語る。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス( SFC )が導入した AO 入試で重視していることをたずねると、個人的な意見としたうえで二つ挙げてくれた。

 一つ目は出願書類だ。「高校生のうちに、将来何になりたいか、なぜこの大学に入りたいのかという問いは一度は考えてもいいこと。応募書類を書くことはそのきっかけにもなるし、同時にその大学についても考えるきっかけになる」と言われた。

 二つ目は面接。実際に会うことでその人の知的好奇心や熱意が分かるそうだ。

 お話を伺った2校は国立大学法人と私立大学であるし AO 入試の方法も異なるのだが、共通していたことは AO 入試を行うことによってやる気のある生徒が入ってくることである。 AO 入試は一般入試に先駆けて行われるために、その大学を第一志望とする人たちが受験する。

 阿川先生は言う。「自分の通っている大学が好きだというのはとてもいいこと。 AO 入試で入学してくる学生には大学に対する関心があるから、意欲が高い。また、そのような学生が他の学生のやる気をうながしている」。

倉元准教授に取材するCE記者

 倉元先生は AO 入試の問題点について「最近の AO 入試は受験生の力を底上げするような入試設計がされていない。したがって学生はテクニックばかりを磨いていて、本当の力をつけずに大学入試が最終ゴールになっている。 AO 入試とは何かという考えを、皆で変えていかなくてはならない」と語った。

 東北大学も慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス( SFC )も、 AO 入試で合格して入る学生が一般入試で入る学生を刺激して影響を与えているのは、 AO 入試を実施する目的が明確であるからともいえるだろう。

 「 AO 入試の本来の目的は何なのだろうか」。学力試験だけで合否を決めない選抜形式であるからこそ、多くの大学で導入されるようになった今、大学も受験生もこの問題をもう一度考えるべきなのではないだろうか。

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AO入試で求める学生像をつくる

富沢 咲天(14)

 学力テストだけでなく面接や志望理由をふくめ合否を判断する AO 入試が 1990 年に日本に導入され、今では多くの大学の受験生たちにはその制度がかなり知られてきている。だが、受験生以外には、「大学によっていろいろな入試方式があるらしい」という程度の知識しかないのではなかろうか。そこで今回、 AO 入試についてもっと深く知るために、詳しい方たちにインタビューを申し込んだ。 

東北大学の倉元准教授に取材

 まず最初にお話を伺ったのは東北大学の倉元准教授。東北大学の AO 入試は、センター試験や独自の学力テストなどを最初に行い、それを通過した人に面接を行うという。学力試験を行うのは、膨大な受験者の人数を試験で減らして時間と手間を省くためだそうだ。学力試験を行う理由はそれだけでない。学力試験を経た学生は、一般入試で入った学生との学力差があまり出ず、大学が学力の劣る学生の勉強をフォローする必要がない ことだ という。

 このように、東北大学はまず学力があった上でこの大学に入りたいと強く思っている人、さまざまな能力を持っている人を求めている。「AO入試だと簡単に大学に入れるから受けよう、とは決して思ってほしくない」と倉元先生は語った。

 次にお話を伺ったのは阿川尚之慶應義塾 常任 理事(前慶應義塾大学総合政策学 部 部長)。 SFC (湘南藤沢キャンパス) の AO 入試 では 主に 書類審査と面接で合否を判定している。 阿川先生によると、 面接では強い意志、意欲のある人、なにか光るものを持っている人、などを積極的にとっている という 。このように向上心あふれる生徒たちは大学に入ってからも活躍し、周囲の学生たちにも好影響をもたらすそうだ。 阿川先生は「 いろいろな制約もあり、 慶應義塾大学 SFC の AO 入試は世界一だとは思わないが、 熱意のある 良い学生を取っていきたい」と熱く語った。

 倉元先生も阿川先生もともに、 AO 入試は大学にとって良い効果があり、導入してよかったと語る。だが、満足はしていない。課題はたくさんある。

 たとえば、 AO 入試は時間も人手もかかる。一般入試とは別に AO 入試用の独自のテストを作らなければならない。また大勢の受験生たちを面接するため、先生たちは多くの時間を費やさなければならない。大学側にとって、これはとても負担だ。

 面接も十分納得できる時間をとっているとはいえない。短時間の面接で、受験生の素質が本当に全部分かるのか、という疑問も残る。「本当は 20 時間 3 日間 くらい面接したいくらい。でも時間は限られている」と阿川先生は言った。

 倉元先生は「最近の高校では大学に入るため、試験に合格するためだけの勉強しか行っていない傾向がある。本来学校というものはそのようなことを教える場所ではない。大学に入ることだけが人生の目的のようになっているが、それは違う。本当のゴールというものは大学を出てからあるものなのだ」と語る。そして「 AO 入試を理想の入試に近づけたい」という。

 阿川先生のお話で、大学の卒業生に望む「 Decent 」という言葉が印象に残った。人として正しく生きるというような意味だという。勉強ができる、仕事ができる、経済的に豊かになるなどの成功だけではなく、人としてどう生きるべきかは、自分の頭でよく考えなければいけない。

 そもそも AO 入試というものが日本で導入されたのは、時代の流れで社会が求める人材像が変わり、それに対応するためといわれている。以前は 経済的に 安定した 経済の 社会で あったため 、みんなほどほどの同じような能力が求められた。しかし先行きの見えない不安定なこれからの社会では 、 与えられた課題ができるだけでは十分ではなく、「課題を自分で見つける力」、「自分の頭で考え解決する力」が必要だ。どんなに勉強ができても、なにか深刻な問題が起こった時に、問題に対処するために自分の頭で考える力がないと困る。これからの学校 で は単に知識を詰め込むだけでなく、自分で考える力を身に付けなくてはいけないだろう。そのためにも、学生に自分で考える力をつけさせ、行動力や意欲を引き出すのに AO 入試が活用されるべきだと言えよう。

 今回の取材ではたくさんある AO 入試の中で、二つの大学の AO 入試の現状を知ることができた。これらの大学の AO 入試の意義、問題点は他の大学の AO 入試とも共通しているのではないだろうか。

 取材前、「大学は、将来なりたい職業につくために行っておくべきところ」、「 AO 入試は早く合格が出ていいな」くらいにしか思っていなかった自分の甘さを反省した。大学は、学力も必要だが自ら考える力を持つ学生を求めていて、そういう力を持った学生は社会に出ても通用するということがわかったからだ。

 日々なんとなく過ごしている私には、意欲も意志も考える力も全然足りない。今回お伺いした先生方の言葉を心にとめて、もっと自分の頭でとことん考え、弱い意志を鍛えていこうと思う。

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受験者の熱い思いが評価されるAO入試

寺浦 優(15)

 大学に入学するための一つの手段、それが AO 入試である。

 AO 入試では、学力テストを行う学校は少なく、高校 3 年間の取り組みなどが評価される。では、 AO 入試とはいったいどんな入試なのだろうか。

 今回、慶應義塾理事(前総合政策学部長)の阿川尚之先生 (59) にお話をうかがった。

 AO 入試(アドミッション・オフィス入試)は、 1990 年に慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス( SFC )の総合政策学部と環境情報学部が設立されたときに、日本で初めて導入された。筆記による学力試験の結果による一面的な能力評価ではなく、書類選考と面接試験によって多面的、総合的に評価する入試形式だ。

 SFC では近年志望者がおおむね増える傾向を示しているという。また、 SFC が実施した 2005 年の調査によると、入学後の成績、活動、学術・芸術・社会活動・文化活動において優れた成績を挙げた学生を大学内で顕彰する「塾長賞」や「塾長奨励賞」などの受賞実績において、 AO 入試で入学した学生は一般入試で入った学生より良い結果を出しているそうだ。

 阿川尚之先生は、「個人差はあるが、 SFC を志望するにあたり、 SFC について調べ、訪れ、大学で何をしたいか考え、文章にする。その過程で SFC が好きになる人が毎年相当数存在する」と言う。さらに、 AO 入試で入学した学生の多くは、入学後も積極的で、その意欲がキャンパスを満たし、一般入試の学生に刺激を与えるという。

 阿川先生は個人的に「 AO 入試では、面接を大事にしている」と言っていた。その理由はいったい何なのか。

 それは、近年 AO 入試対策の塾などで、大学に受けがいい志望理由の書き方などを教わる人が出てきたからだ。その文章を本当に受験生本人が自分で書き、思いを素直に伝えているかどうかどうかが必ずしもはっきりしない。大学としては本人に直接質問することで、本人が自分の力で考える力を有しているかを見抜き、欲しい人材を選抜する。だから面接が重要なのだ。

 しかし、面接の時間は限られている。それに、まず大学入試で緊張しない人などいないだろう。そんな、緊張と限られた時間の中で、面接官の質問に完璧に答えられる人などは数少ない。その点について聞くと、阿川先生は「大学は、ただ勉強をする場所ではない。考える力を身につけるところ。すぐに答えられなくても、考える姿勢と意欲が大切」と言う。

 AO 入試は、この大学にどうしても入りたいという熱い思いがある人にとっては、嬉しい入試方法だ。大学に行くのなら、好きな大学に行って好きな勉強や研究をしたほうがいい。そのほうがやる気も出るし、考える姿勢も強化できる。結果的に大学生活がエンジョイできるとも言えよう。

 ただ残念なことに、今世間では AO 入試を廃止したほうがいいなどと AO 入試を批判する人もいる。確かにテレビや新聞で、大学の新入生の学力低下が指摘されている。しかし、考える姿勢や意欲は、ペーパーの学力テストだけでは計れない。 AO 入試だからこそ見てもらえるのだと思う。受験者の熱い思いや、意欲も評価してもらえる AO 入試のメリットは、大きいのではないだろうか。

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自分を表現する力が大切~阿川尚之慶應義塾常任理事に聞く~

飯沼茉莉子(13)

 AO 入試に興味のある人なら、慶應義塾大学の湘南藤沢キャンパス( SFC )を知っていると思う。慶應義塾大学の湘南藤沢キャンパスの2学部(総合政策学部、環境情報学部)は 1990 年の開設と同時に、日本で最初に AO 入試制度を導入したことで知られている。今回私たちは自分たちにも読者にも役に立つ情報を得たいと思い、 AO 入試の面接を担当されたこともあり、また総合政策学部の前学部長でもあった慶應義塾常任理事の阿川尚之先生( 59 )に取材をした。

慶應義塾常任理事の阿川尚之先生
慶應義塾常任理事の阿川尚之先生

 SFC の 2 学部の AO 入試について、個人的に気をつけていることは「第一次試験の書類審査で、活動報告書など提出書類を正直に自分の力で書いているか」であり、「第二次試験の面接では、短時間に、自分がどれだけこの大学に興味を持ち、入りたいという意欲があるかをアピールできるか」だと阿川先生は言う。

 つまり、親や塾の先生の手を借りずに文章が書けないといけない。先生は、高校生に完璧な文章を期待してはいないと言う。親や塾の先生が手を入れた文章が第一次審査を通ったとしても、面接では落ちるだろう。面接者は面接の時に、書類に書いてあることを本人が自分で考えて書いたものかを見抜くために相当ひねった質問をしてくる。受験生はそういう意地悪とも思えるような質問にも答えられなければならない。自分で考えて書いていない受験生は質問に答えられず黙ってしまうという。

 面接の時は誰でも緊張するだろう。質問をされても、緊張のあまりすぐに答えがでないかもしれない。しかし、そこで、すぐに答えは出ないけれど一生懸命考えているところを先生たちはしっかりみている。静かな受験生の場合は特に丁寧にみるという。また、この大学に入りたい気持ち、大学に入って何をしたいのか、情熱をアピールすることが大切だという。それには、自分がどういう人間かを面接者にわかってもらうために、自分の言葉で表現できないといけない。

 阿川先生のお話から、合格している子に共通していることは、どれだけ真剣に物事を考えているかであるということがわかる。書類にどれだけ立派なことを書いても、面接で見抜かれてしまうのだ。

 阿川先生は、 AO 入試は多くの受験生の書類を読み、面接を一日中行うのでとても大変だが、自分が会ったことのない個性の強い受験生に会えるのがとても楽しいと言っていた。逆に、もっともらしいことを言うだけの学生には、阿川先生はあまり魅力を感じないと言う。

 今、世間では AO 入試での入学者の学力低下が問題視されているが、阿川先生は、「 SFC は AO 入試をやって良かった」と言う。『日本の論点 2009 』(文芸春秋・編)にも書いているが、「 AO を通じて素晴らしい学生をとることができる」、「生身の若者に接し、その力と意欲を全身で感じ取って合格者を決められる」ので、 SFC では AO 入試を中止したり縮小をするつもりは全くないと言う。これからも SFC の AO 入試は続くだろう。

 AO 入試は、学力試験の点数だけではわからない、受験生の人間性と能力をみることができるところが優れているところだという先生の考えに、私も共感する。成績はずば抜けて良くなくても、自分の人間性や活動内容を評価してくれるところがとても魅力的だと思う。

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自分との戦いを乗り越え手にした金メダル~クロスカントリー新田佳浩選手に聞く~

南雲満友(15)

  バンクーバー五輪のクロスカントリースキーで金メダル2個を獲得した、新田佳浩選手(30)。その裏には、挫折、そして人一倍の努力があると知り、自分との戦いをどのように乗り越えていくのか、また試合前、試合中、試合後どんなことを考えているのかについて伺った。


クロスカントリー新田佳浩選手に聞く

笑うとえくぼができる、ニコニコとした笑顔が、とても印象的だった。

新田選手は、岡山県の雪の多い場所で生まれた。3歳の時、祖父の運転するコンバインに巻き込まれ、左腕の肘から先を失った。「障害にまけないように育てる」という両親の思いから、小学校4年生からスポーツ少年団に入った。アルペンスキーをやっていた父親や小学校の先生が新田選手にもアルペンスキーを勧める。バランス感覚を養うために、スキー板の幅がアルペンスキーの半分の4センチしかない、クロスカントリーも始めることになった。中学3年生の時周りの選手に追い付けなくなってしまい、一時はスキーをやめてしまった。しかし、当時活躍していたドイツのトーマス・エルスナー選手の姿を見て、もう一度頑張ってみようと思い、再起した。

新田佳浩選手

  そして2006年トリノ大会、スタート約1キロ地点で転倒した。 「あのときは自分自身メダルをとらなきゃいけないと思っていました。今まで自分がやってきたトレーニングをだすだけでいいと思えばいいのに、それに必ずメダルが付いていないといけないというプレッシャーがあったんです」。

新田選手は、この失敗から立ち直れず、一時期は、スキーの板を見ることも、トレーニングをすることも辛かったという。どこにこの気持ちをぶつけていいかわからなくなり、自暴自棄になっていた時に、仲間の一人が、「また4年後を目指せということだよ」と声を掛けてくれた。その時、自分を支えてくれているチームメイトやスタッフの存在の大きさを改めて実感したという。

新田選手の二つの金メダル

クロスカントリー人生の中で一番印象に残っていることを尋ねると、「トリノでの転倒かなぁ。もしあの時転んでいなかったら、今はもう競技を続けていないと思う」と答えた。

この転倒は転機となった。失敗は失敗じゃない、失敗をして得られるものが、きっとある。不可能だと思っている自分自身の心のカラを破ることが、自分の可能性へとつながる。「不可能とは可能性だ」という座右の銘には説得力があった。

トリノでの悔しさをばねに迎えたバンクーバー五輪本番前夜、新田選手は奥さんから渡された「手紙」を読んでいた。「後悔のない滑りをしてくれれば、私は満足」。この時、涙とともに「もう僕は滑るしかない」と決意した。

新田選手はトリノからバンクーバーまでの4年間を振り返り、「相手への感謝の気持ちを忘れていた」「自分のためだけでなく、自分を支えてくれている人たちのためにも、がんばろうと思うようになった」と語った。

スタート地点、いつもはトレーニングしたことなどを振り返るが、バンクーバー五輪では、何も考えなかったという。「あきらめられることをやってきた」。つまり、もしメダルが取れなくても満足できるだけの練習をし、自分と向き合ってきたのだ。そう思えるほど重ねた努力が金メダルへとつながった。

  「止まってしまった時を刻む大会」としていたバンクーバー五輪を終えた今、ソチ五輪をどんな大会と位置付けるかと尋ねると、「次につなげる大会」との答えが返ってきた。この言葉には新田選手の次世代への思いが込められている。

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社会 座談会

ファストファッションでおしゃれを楽しむ

2000 年代半ばから使われるようになり、 2009 年新語・流行語大賞トップ 10 にも選ばれた「ファストファッション」。低価格の衣料品を、流行を取り入れながら短いサイクルで大量生産、販売するファッションブランドやその業態を指す。ファッションに敏感な高校生、大学生がファストファッションをどう捉えているのかを語った。

参加記者:大久保里香(18)、寺浦優(15)、持丸朋子(15)、南雲満友(15)、 司会・編集:寺尾佳恵(ユースワーカー)
2010/05/10

利用が広がるファストファッション

佳恵:ファストファッションと聞くと、どんなお店を思い浮かべますか。

里香:ユニクロを思い浮かべます。後は H&M や ZARA 。海外のお店が多い気がします。

優 :私は FOREVER21 によく行きます。しまむらも今流行っていると思います。

朋子:日本のブランドだとユニクロが一番に思い浮かびます。ファストファッションのお店は原宿とか渋谷とかに多いような気がします。

佳恵:みんなは実際それらのお店で洋服を買っていますか?

里香:コートとかレギンスとか、どこにでも売っていそうなデザインの物はファストファッションのお店で買います。 T シャツとか「あ、あれユニクロだ」って見てわかるようなのはあまり買いたくないです。

満友:その時流行の物を買います。 H&M とかだと安いし、デザインもいいので、ワンシーズンで捨てても大丈夫かなと思い、よく買っています。

朋子:ファストファッションって安い代わりに物が良くない場合もあるので、使える期間が短いと思って、流行の物を買います。

優 :私は海外のデザインが好きで、サイズもいろいろあるので、 FOREVER21 とか H&M はよく利用します。流行りの服は安いところで買っていて、毎年使えるような物は高いところで買います。

佳恵:新しいお店なわけではなくて、しまむらは 1953 年から、ユニクロ(前身のサンロード)は 1974 年からありますよね。 2008 年以降、 H&M や FOREVER21 が日本に出店して注目を集め、ファストファッションと言われるようになったけれど、 2009 年の流行語大賞トップ10に入る前後でファストファッションの捉え方は変わりましたか。

里香:以前は、ユニクロ=フリースみたいなイメージがありました。海外のブランドが入ってきたこと、マスコミが報道したことで注目を浴びて、デザインも良くしていくことになったのかなと思います。

優 :ファストファッションといわれるようになって、まわりの友人も利用していたので、私も買うようになりました。例えばユニクロで無地の服を買って、自分でリボンやラインストーンを付けてオリジナル T シャツを作り、費用を安く抑えるようにしています。

朋子:ファストファッションはただ安い洋服というイメージがありましたが、海外のブランドが入ることによってファストファッションもブランド品のひとつのような捉え方をするようになりました。ひとつのジャンルとして捉えて、ユニクロ=安い=洋服にあんまりお金費やしてないという悪いイメージが無くなった気がします。ユニクロの物を着ていたら、「あ、あの人ユニクロの服を着ているってことはあまりファッションに興味ないのかな」と思っていたけど、最近はあまりそう思わなくなりました。

安さも流行もしっかり意識

佳恵:安さという話が出たけれど、買い物には誰と行く?お金は親に出してもらいますか。それとも安く買える服が増えたこともあり、自分のお小遣いで買いますか。

朋子:買い物には友だちとも親とも行きます。友だちと行く時はあらかじめ親にお金をもらい、そのなかで買うので、安いものを多く買います。親と行く時は親が買ってくれるので、友だちと行く時よりは高い物も買ってもらえます。

優 :私も親とも友だちとも行きます。親と行くとお金を全部出してもらえるのでちょっと高い物をねだってみますね。友だちと行く時も、お金だけは出してもらいます。

里香:私はもう大学生なので自分で出さなくてはいけないんですね。一人で行く時も親と行く時もだいたい自分で出します。親が「あれいいじゃない」と言っても自分が気に入らなかったら買いません。自分のお金は有効に使いたいので、ちゃんと着そうな物を選んで買うようにしています。

佳恵:流行も意識しているのかな。

里香:流行は波が激しいじゃないですか。いつ流行が終わるかわからないので、あまり高いものは買わないで、ファストファッションとか安いお店で買いたいと思っています。

朋子:流行っているもののなかで、欲しい物があったらそれを取り入れる感じです。高い物は流行のない、年が変わっても着られるコートとか、パーカーを買うようにしています。

満友:洋服はファストファッションや109に友だちと行って買っているんですけど、小物は流行が洋服より浮き沈みが激しくないので、高いブランドで買います。あと、セブンティーンなどの雑誌に今年流行のかわいい服、自分の気に入った服があれば買います。みんなが着ているから自分も欲しいなという面もあって、みんなが着ていて自分が持ってないと、ちょっと取り残されていると思うので私は流行の服を買っています。

佳恵:里香ちゃんは、みんなが買っていたら自分も取り残されたくないと思ったりする?

里香:ファストファッションのお店に行けば、一通りトレンドの物って揃っているじゃないですか。それでもし値段がそんなに高くないのであればワンシーズン物だなとは思いつつ買うことはあります。

朋子:私は満友ちゃんと逆で、みんなが買っていると同じになっちゃうから嫌だなと思い、避ける時もあります。

優 :ファストファッションのお店って、流行を取り入れながら低価格に抑えた洋服を短いサイクルでどんどん品を代えて販売しているので、まわりの人と服が重なったことはありません。逆に思い切り流行に乗っちゃえっていう勢いがあります。自分の気持ちが楽で着たいと思えるような洋服を安く買えるのが一番だと思います。

佳恵:例えばユニクロだったら一枚しか買えないトップスが、同じお金を持って g.u. に行けば二枚買えるというように「同じお金でファッションの選択肢を増やす」っていう考え方はどう思う?

満友:私はファッションの幅を広げたいので、同じお金があったら一枚多く買うようにしています。ちょっと安く、でも二、三種類買えた方がいい。

里香:ジーンズは三日に一回同じ物を着ていたとしてもわからないと思うけど、トップスを三日に一回だと、「またかよ」と思われるので、トップスはできる限り安く抑え数をそろえたいです。ジーンズはいい物を高くて買ってもいいかなと思います。

優 :私も安くて何種類も買えた方がいいです。その日の気分に合わせて、コーディネートは変えたいので、いろんな種類があった方が毎日楽しいと思います。

自分に合ったコーディネートを。でも本音ではブランド品も欲しい?

佳恵:コーディネートはどう考えているのかな?

優 :私は全身を一つのブランドで揃えたいっていう気持ちはあまりなくて、自分が着たい物を探します。例えばユニクロのパンツがはきたい、でもトップスは H&M がいいとか FOREVER21 がいい、そうなるとトップスは FOREVER21 でパンツはユニクロっていうふうに分けたりするので、全身を一つのブランドで揃えたいとか、このブランドじゃなきゃ嫌っていうのはないです。

佳恵:なるほど。 H&M だからいいんじゃなくて、たまたま H&M においてあったこの洋服がいい!という感じ?

優 :そうです。デザインとか着心地とか自分が着たいと思えるものがたまたま H&M にあったんだと。

朋子:私も同じで自分の着たい服で値段もそれなりだったら、べつに全然知らないブランドでも買います。

満友:雑誌にいいコーディネートが載っていたら、まず自分の持っている物を考えて、もしなかったらユニクロとか H&M とかデザインが優れてえて安いところで買います。朋子ちゃんや優ちゃんと同じで買うお店はバラバラですね。

里香:私も特にブランドとかは気にしないんですけど、やっぱり大学生になると毎日が私服で、同じ物着ていくわけにいきません。なるべく一枚を安く抑え、自分に合うもので、なおかつ自分が今持っている物と合うものを買って、着回せるようにしています。

佳恵:新語・流行語大賞トップ10に入って話題になっている「ファストファッション」だけど「ファストファッションなんて古い」と言われるようになったら、自分の洋服の買い方は今と変わると思いますか?

優 :時代に流されるというよりは、欲しい物が安かったら安いところで買うっていう考え方は変わらないと思う。今もファストファッションのお店はやっぱり一番には見に行くけれど、そこに欲しい物がなかったら無理には買わないし、ファストファッションが古いと言われたとしても、あまり気にしないと思います。

満友:私もデザインを重視していて、加えてお金も安ければ一石二鳥だなと思うので、安いところでいい物があったら買うし、高い物でもずっと使う物、バックとかお財布とかそういうのだったら高い物で買う。たぶん今の自分のスタンスは変わらないかなと。

里香:私も特に好きなブランドとか、絶対これ着たいとかいうブランドはないので、自分の気に入った物を安ければいいなっていう感じでファストファッションのお店をのぞいて、良ければ買うし、なければちょっと高くなっても別のお店で買ったりすると思います。

朋子:安くても買うと思うんですけど、逆にもし高級ブランドが流行り始めたらそっちの方に目がいっちゃうような気もします。ちょっと流されるような気がします。

里香:確かに、普段はちょっと高いお店なんだけど、セールで安くなっている時に私はそのお店のブランドの物を買うんですね。やっぱりちょっと名の通っているブランドも少し欲しいと思うので。セールになった時にファストファッションと同じくらいの値段だったとしたら、みんなはどちらを買いますか?

朋子:私は絶対ブランドの方を買うと思うんです。お正月とか安くなっていて、このブランドでこの値段ならファストファッションのブランドより高いけど、出す価値があると思って買っちゃいます。

優 :セールは見に行くけど、最後はデザインや自分が着たいかというところに行き着きます。かわいいって思ったらやっぱりブランドの方を買い、同じような物がファストファッションのお店にも置いてあったら見比べてどっちがいいか悩んで決めます。

満友:前から探していた服が、セールをしているブランドよりファストファッションの方が自分に似合うと思ったり、好きだったらファストファッションの店を選ぶかもしれません。

お金がなくてもファッションを楽しめるのが「ファストファッション」

佳恵:今日の座談会の前後でファストファッションの捉え方は変わりましたか。みんなの意見を聞いて気付いたことなどがあれば教えてください。

満友:私は同じお金を持っていたら高いブランドを見つつ安い方で枚数を多く買うと言ったけれど、みんながブランド物を選ぶと聞いて、私もこれからは悩むと思いました。

朋子:ファッションってそれぞれの考え方があるんだなと改めて思いました。同じお金で、ファッションの幅を広げたいっていう考えもあるんだなって思ったけど、私は好きな物だったら高いお金を出すっていう考えだし、いろんなファッションの選び方があるんだなって思いました。

優 :ファストファッションも一つの流行りだと思いました。ファストファッションじゃなきゃ嫌だという人もいればそうでない人もいる。自分はやはり流行りがすごく気になるということに気づいたので、視野を広くして考えてみたいなって思いました。

里香:ファストファッションは安くてかわいいからみんな買うけれども、セールで他のもっといいブランド品が安くなっていたらそっちを買うという意見を聞いて、やっぱりファストファッションのブランドよりもちょっと高いブランドの方をみんな本当は買いたいと思っているんだなとわかりました。ファストファッションは、若くてお金がないけれど、ファッション楽しみたいっていう人のためのブランドなのかなと思いました。

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教育 国際

タイの若者たちから見た日本


2010/04/04         建部 祥世 ( 18 )

 タマサート大学はタイでも屈指の難関大学。日本語学科はタイに数多くある日本語学科の中で最も歴史が古く、特に人気の学科だという。

 2010 年 1 月 15 日、タマサート大学教養学部日本語学科で日本語を勉強している学生たちにインタビューをするため、バンコクのとなり、バトュムタニ県にあるランシットキャンパスを訪れた。

 ランシットキャンパスはバンコクの中心地であるサイアムから電車と車を乗り継いで約 1 時間半のところにある。キャンパス内はバスや自転車で移動しなければならないほど広く、飲食店やスポーツ施設、美容院などもあってひとつの街のようだ。

 今回インタビューに答えてくれたのは日本語学科 2 年生( 19 歳~ 23 歳)の 5 人。短期や長期で日本に留学したことのある人もいて、 5 人とも日本語がとても流暢だった。

 日本語を学ぶ外国人の友人に日本語を勉強し始めたきっかけを聞くと、ほとんどの場合「マンガとアニメ」という答えが返ってくる。今回のタイの学生たちにも同じ質問をするとマンガ、アニメ、ドラマなど日本のサブカルチャーがきっかけになっていると答えた。今やアニメやマンガは日本を代表するサブカルチャーで、世界のみならず日本の若者までもが‘日本 = アニメ・マンガ’というイメージを持っているのではないか。それほど日本のサブカルチャーが世界に浸透し、人気を博しているということは誇らしいことであるが、日本には他にも素晴らしい文化がたくさんあるということも世界の人たちにもっと知ってもらいたい。しかしきっかけは何であれ、日本に興味を持ち、日本語を勉強し始めるようになったということが、日本人にとってはとても嬉しいことである。

 日本に対する最初のイメージはやはり‘日本 = アニメ・マンガ’だったと言う 5 人だが、日本語を勉強するようになってからは少し変わったイメージを持つようになったという。それは「いじめ、自殺、痴漢」などといった日本の裏の面である。タイにも電車があり、通勤通学の時間帯は日本のように混雑する区間もあるが、「タイに痴漢はいない」とタイに長年住んでいた日本人( 18 歳)から聞いたことがある。

 また自殺について大学生の一人のワニッチャヤー・エヤムクナコンさん( 21 歳)は「タイ人はあまり自殺しない。日本人は真面目な人が多いし、人に自分のことをあまり話そうとしないから、ストレスがたまって自殺してしまうのではないか。」と言っていた。ワニッチャヤーさんは高校生の時、 1 年間日本に留学したことがあり、その経験を通して日本人の性格や考え方について知ったという。

 日本人とは反対に「タイ人は思ったことはきちんと相手に言う。それにあまり気にしない性格だから―」と言っていたが、確かにタイ人は明るく陽気で、「マイペンライ」という「大丈夫」「気にしない」といった意味の言葉をよく使っている。しかし日本人としては「本当に大丈夫?」と心配になってしまう経験も多々ある。

 「いじめ、自殺、痴漢」といった情報も含め、日本に関する情報は主にインターネットから得るという。その他にもゲームやアニメ、芸能人などを通して日本の今を知り、伝統文化や社会については授業で勉強する。授業は日本人の先生が日本語で行っているという。内容は読解、文法、作文、漢字など日本人が英語を勉強するのと同じ方法で日本語を勉強している。一番大変なのは漢字と敬語の勉強だそうだ。

 日本語を勉強して将来は「日本語で本を書きたい」、「翻訳家になりたい」、「タイの文化を日本に伝え、日本の文化をタイに伝える NGO を作りたい」など、 5 人ともそれぞれ自分の具体的な夢を持っていた。

 2 年前に初めてタイを訪れた時、日本や韓国の音楽やファッションが若者の間で絶大な人気を誇っている中でも、若者たちが皆きちんと目上の人や仏壇に向かって「ワイ」で挨拶しているのを見て、タイの人たちは異文化を楽しみながらも、自国の文化を大切にしていて素晴らしいと感動したことについて話してみると、「ワイは小さい頃から身に染み付いている挨拶で、特に大切にしているわけではない。最近では「ワイ」をしない若者も増えてきている―」と言う。「ワイ」は日本で言う「お辞儀」のようなものだろう。「日本の茶道のように、みんなその言葉を聞けばそれが何か分かるけど詳しくは分からない。それと同じようにタイの若者も自国の文化を詳しくは知らない。タイの若者も日本の若者も一緒―」だと言った。  どこの国でもその国の文化が次の世代に受け継がれにくくなっているのは避けられない現実なのだろう。時代が変わるとともに、その時代に合う文化に変わっていってしまうのかもしれない。時代の文化を受け継ぐのも変えるのも若者たちなのだ。

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報告会、レクチャー

2010年の記者トレーニング及びCOP15報告会

 去る2010年2月7日(日)13時から青山こどもの城研修室にて、2010年度の記者トレーニングを行った。今回は、編集・校正スタッフの寺尾真樹氏による「記事を書くときに大切なこと~論理的に組み立てよう」のテーマで、パワーポイント・スライドを使った講義が行われた。
 続いて15時からはCOP15取材班による「報告会」があった。デンマーク現地で撮影したビデオ映像の上映や、記者各自が作成したパワーポイントを使ってのプレゼンテーションを実施した。16時からは元朝日新聞論説委員で科学記者の柴田鉄治氏による「国境なき南極」の講演を聞いた。

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座談会

私服か制服か


出席者:富沢咲天(14)、中元崇史(18)、勝部亜世満(17)、宮沢結(16)、三崎友衣奈(18)(司会)
2010/01/0

セーラー服か学ランか、それとも自由な私服か、着る本人たちには大問題。
制服がある学校に通う記者と自由な服装の学校に通う記者たちが、
それぞれの視点から見た「制服」について話し合う。

友衣奈(女):まず順番に自分の学校が制服か私服かを言ってください。
亜世満(男):私服になっています。
咲天 (女):私服です。
結  (女):制服です。
崇史 (男):制服です。

友衣奈:私も制服の学校に通っていますが、まず制服の二人に聞きます。
    制服でよかったですか?

結  :私は幼稚園からずっと制服です。私服の人は毎日選ぶのが面倒だ言う
    けれど、いま“なんちゃって制服”というのがあるので、そういうのを着て
    学校に行けたりするのがうらやましいです。

崇史 :僕は制服でよかったです。朝急ぐ時もすぐにそれを着ればいいから。

友衣奈:私服の人たちは毎日面倒ですか?

咲天 :私は中学生で私服になり開放感がありました。
    何を着るかは前の晩に用意しておけばいいことだし、まわりの人も
    おしゃれをして、自由ですごくいいです。

亜世満:私の高校は一応制服があるだけで、自由に着ていいのですが、
    “なんちゃって制服”が多いです。カーディガンなど自分の好みに
    あった感じで。衣替えもないので、暑さ寒さに柔軟に対応できます。

●なんちゃって制服
友衣奈:制服が決まっていると“なんちゃって”もできないですよね。
    自分でコーディネイトやカスタマイズができないけれどそれでよかったと思う? 

崇史 :朝急ぐことが一番の問題です。前の晩に用意しておけることができるタイプじゃないので。
    制服でも何かしらのアレンジはできるじゃないですか。カーディガンの
    色を変えてみたりとか。

咲天 :始業式と終業式などの行事では制服ですが、その時はブレザーしか指定されなくて、それ以外はみんな私服で、男女    問わずおしゃれをしています。違和感もなくすごしています。面倒って言っている人はいません。

●制服は学校の顔
友衣奈:制服って学校の顔みたいな部分あるでしょう?
    「制服がかわいいからあの学校の人気が出た」とかをよく聞くけれど。

咲天 :最初はすごく憧れて六年生の時に「あの中学の制服がかわいいな」と
    思ったんです。でもスカートが短いし、見ていて「寒そうだな、ズボンを
    はけないのもかわいそうだな」とか思って・・・
    だったら私服で自由な方が動きやすいし、自分で決められますから。

亜世満:中学の制服で服装検査に面倒な時間を食われることがありました。
    高校ではそういう検査もなく解放されたので今の学校を選んでよかったな
    と思います。男子だから制服に憧れるというのはありません。

友衣奈:学ランとブレザーどっちがいい?

亜世満:中学の頃ブレザーだったので学ランを着てみたい気持ちはありましたね。

友衣奈:制服が決まっていると、髪型なども指定される厳しさがあるけどどう? 

崇史 :うちの学校は厳しくありません。他校の男子に聞くと、耳は出してなければ
    いけないとか。そういう人は私服に憧れるみたいです。

結  :私の学校では、女子は髪型が自由ですが、男子はすごく短くないとダメで、
    定期的に先生の検査も入りします。制服は第一ボタンもはずしてはいけないし、その点でいうと私服の方がラクなの    かな。

●校風の表れ
友衣奈:制服には校風も表れているよね。厳しいところは靴下を替えただけで
    叱られるって。

亜世満:中学の頃に「ほらそこ!」とか言われて指導されるのを見ていて、
    なんか窮屈だなっていう感じがしますね。

友衣奈:逆に制服の利点は何かある? 朝がラクのほかに。

結  :制服があると校章もつくのでその学校に通っているあかしになる。
    私服だとどこの学校かわからない。

友衣奈:学校のあかしは一番あるよね、例えば○○校のバッグとか
    みんなの憧れじゃない? そういうのを持っていて「オレ○○校」みたいな。

崇史 :高一の時はそういう気持ちはやっぱりありましたね。学生カバンにマークの
    入っているのを。でも高二以降全然気にしなくなった。

友衣奈:名前以外に利点は?

崇史 :高校生までじゃないですか、制服を楽しめるのは。

咲天 :塾などで「制服があった方がいいよね」という人たちもいっぱいいて
    「あ~着てみたい」って思ったことはあるけれど、制服って学校によって
    可愛かったり、可愛くないのがあるから。

亜世満:制服を着るのって学生の特権ですからちょっとでも着ておかないと損と
    いう感じもします。

結  :私の友だちは休日は普通に“なんちゃって制服”で出かけているんです。

友衣奈:それがうらやましい?

結  :はい。

●監視の目
友衣奈:でも学校帰りに、例えば試験の最終日に私服だとそのまま
    遊びに行けるけど、制服だと一応先生らに監視されていない?

崇史 :男子校なので大丈夫。女子校はけっこう厳しいですよね。

友衣奈:あるよね? そのまま遊びに行きづらいっていうのは。

結  :それはすごく思いました。
    でも毎日着ているからこそ愛着があり、今だけしか着られないし
    卒業したらコスプレになっちゃうので、現役のうちに着ておきたい
    気持ちはあります。

●制服で受験者数アップ
友衣奈:セーラー服には憧れない?

咲天 :私はセーラー服じゃない方がよかった。

結  :私は憧れます。高校に行くときにまわりの学校では
    かわいい制服があって、そういうところに行きたいなって憧れたりしました。

友衣奈:私の学校もずっと前にセーラー服からチェックに変えて
    自称“チェック発祥の地”として人気が高まって、
    急に受験者数が上がったのが誇りだったらしいんだけど、
    そういう制服でのエピソードはありませんか? 男の子はない? 

崇史 :制服で学校を選んだりしないです。

亜世満:開成も制服は学ランですよ。ですからそこには憧れますね。
    竹早も学ランなので同じような格好になるんですよ。
    友人が開成の前を通って通学しているので、開成の学生の顔をして通るみたいな、少なからず憧れはあるみたいです    。

●学校を背負う制服
咲天 :制服には校章が付いていて、先生に「あなたたちは学校を背負っているから、
    外で買い食いすると受験者数が減る」とか、そういうこと言われるのは
    嫌じゃないですか?

友衣奈:制服着て「外で学校の悪い印象与えないで!」みたいな。

結:  ありますね。学校の近所でゴミをポイ捨てすると制服だから
    どこの学校ってすぐわかっちゃうし寄り道もできないし。

崇史 :僕の学校も学ランのボタンが金色のちょっと特殊で、
    電車で騒ぐと学校に苦情が入ったりするみたいですね。

●グループで明日の服を決める?
咲天 :女子はグループのみんなで「じゃ明日みんなで“なんちゃって制服”着て来よう」っていうこともあるのに、男子の    制服はダサイっていうイメージがあって絶対に着てこないんです。

友衣奈:自分の学校の制服が嫌い?

亜世満:微妙です。学ランでボタンが金色でなくて黒。全身黒ずくめで、
    ボタンが扇型でなんか天狗が使うような感じで、だからそれが微妙なんです。

亜世満:暑い日もあるじゃないですか。
    その時にも学ラン着なきゃいけないっていうのは苦しくないですか?

崇史 :自分は暑がりで、学ランは暑くなっちゃって全然着れないんです。
    憧れてはいましたけど。でも真冬は学ランを着て、中にセーター着てもまだ寒い。

●マナーチェック
咲天 :私の学校は私服で、先生が通りがかりに「ちょっとその服やばいんじゃない?」
    とかいってマナーが悪いとすごく厳しいです。
    女子だったら例えば「ハイヒールはいて廊下でコンコンうるさい」とか、
    「ブーツはちょっとどうなの?」とかって。「サンダルは足の爪があぶないから」とかって言われて、女子がすごく    いやがっています。「いいじゃん、自由なんだから」って。

●服装の常識
友衣奈:私服でも私服なりにそういう規制はちょっとある。

亜世満:うちの学校の人はそういうところに関してはけっこう常識的で、
    私服を着てくる人も普通に原宿で見かけるような、ちょっとおとなしめな感じですね。ハイヒールなども全然はかな    いし。第一学校が上履き制なので。

咲天 ;例え自分には制服が似合わなくても、周りの人みんなが同じものを
    着ているから違和感がないということはありますか。

結  :制服が似合うか似合わないかはよくわからないんですけど、
    やっぱり私服だと急いでいると、変になったりすることはありそうですね。

咲天 :たまにあるんですけど、でも何とかやってます。

亜世満:あんまりないですね。制服を着て同じカーディガンを着て、
    時々グレーも着ますけど、その二通りしかないんで今のところ。

崇史 :私服で悩んでいる人は絶対いると思うんです。私服でセンスがないと、
    「いまだにまだお母さんに言われたのを着てる」みたいな陰口が
    生まれそうです、共学だと。

友衣奈:いますか? 学校にそういう人。

咲天 :女子でもオシャレを気にしていない人もいるし、「これお母さんに買ってもらったんだ」っていう人はいるけど、
    男子ではジャケットを四重に着てきて「ちょっとおかしいんじゃない?」って
    言われたり、「毎日チェックだよね」とか言われていることもありました。

●自由すぎても
友衣奈:私服は自由すぎて、逆に道をそれてしまう人は確かにいるよね。
    その点、制服は決まっているし道をはずれないというのは利点ですね。

咲天 :でも服が違っても、それはその人の個性なんだとみんなは思っている。

友衣奈:制服の人って個性って出せると思う? 別に出さなくてもいいと思う?

崇史 :でもやっぱり限りはあるとは思いますけどね。

友衣奈:別にそんなに中高でそんな服で個性出すってどうでもいいやみたいな。
    自分の、今学生だからこそ着れる制服を楽しもうみたいな。

亜世満:ベルトを替えるとか、ネクタイも風味みたいなのを替えるとかはしないんですか?

崇史 :ベルトをやるか、中に着るカーディガンとかセーターをベストにしてみたり
    だとか、そういうこと程度なので、個性出せるほどではない。
    学ランに黒カバンを持っても映えないですし、
    そのあたりは制限されてくるところはあります。

友衣奈:私服もそういう自由な面はあって、でも道はずれちゃう面もあるけど、
    制服は決められすぎちゃうけど、逆にラクだし学生ならでの制服を楽しめるっていうことでよいでしょうか。これで    終わります。

※ “なんちゃって制服”とは、制服もどきの服装で、学校の正式な制服ではなくて、
制服らしい服装のことです。例えば紺のブレザーに白いシャツと紺のスカートの組み合わせなど。

                         

                                                    以上 

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教育

新しい教育~和田中学校「よのなか科」に参加して~

新しい教育~和田中学校「よのなか科」に参加して~
2010/1/24

原 衣織(18)

 「学校での勉強は、社会に出てからの役には立たない。」誰でも一度は耳にするこの「定説」が、いま崩れつつあるようだ。

 近年日本では、現代社会で生きていく上で必要な能力を育てる様々な「新しい教育」が導入されている。職業について学び、自分の将来を考える「キャリア教育」、ネットの基礎知識を学ぶ「情報リテラシー教育」などがそうである。

 私たちチルドレンズ・エクスプレスは、社会に通用する力を身につけることをテーマとした授業「よのなか科NEXT」が行われている杉並区立和田中学校を訪れ、「よのなか科 NEXT 」の授業に実際に参加するとともに、 代田昭久 校長ら にインタビューを行った。

 今回は、高校受験間近の三年生を対象として、「感じのいい自分をつくる」をテーマに入試の面接対策の授業が行われた。授業は、これまで1万人以上の面接をしてきたというウィルパワーサポート代表取締役の鈴木聡氏が担当した。

 三年生 160 名が集まった体育館の中で、入試でよく聞かれる質問を予想するクイズや、自分のアピールポイントを文章化して発表するワークシート、見えないボールをアイコンタクトでパスする訓練など、 90 分という時間を目一杯使った多彩なプログラムがテンポよく進められる。

 また、生徒たちは受け身でプログラムをこなすだけでなく、随所で校長先生からマイクが向けられ、学年全員の前で意見を言うことが求められる。「最初は中学生を対象として授業を行うことに不安があったが、和田中学校の生徒たちは、よのなか科の授業を普段から受けているせいか慣れていると感じた。」と鈴木氏が話すように、生徒たちは全体の前で話す時にも堂々としている。

 生徒に尋ねてみると、「未だにみんなの前で話すのは緊張するが、自分の意見が皆に聞いてもらえるし、いろんな人の意見も聞ける」と言う。「この授業を受けてきたことで、自分の意見を伝えることができるようになった。ニュースを聞くときの考え方も変わった」と話す生徒もいた。とはいえ、三年生にとってこの時期気になるのはやはり高校受験。受験勉強を優先したい気持ちはないのか尋ねると、「勉強したい気持ちはあるが、この授業は受験を乗り越えたあと、社会に出てからも役に立つものだと思う」という答えだった。

 「よのなか科」の授業が和田中学校で始まったのは7年前だ。都内の公立中学校で初の民間人校長である藤原和博元校長が始めたものを、代田昭久校長が昨年の4月から「よのなか科NEXT」として新たに始めたのだという。「書道と表現」「オリンピック」などユニークなものから「人工妊娠中絶の是非」「赤ちゃんポスト」などのシビアな問題まで幅広く扱うこの授業では、ワークシートなどの教材は全て校長の手作り、ゲストティーチャーの手配も校長が一人で行うという。負担も大きいが、それでも「社会に自立し、貢献する力をつけてほしいし、そのために社会とのつながりを教えていきたい」という思いから行っているそうだ。

 そして、「よのなか科 NEXT 」に代表される和田中学校の特別授業に欠かせないのが、多くの学生ボランティアや地域の方々の存在だ。今回の授業にも、大学院生などの 10 名近い学生ボランティアや保護者が参加していた。

 よのなか科 NEXT の授業について「普通の授業では取り扱いにくい微妙なテーマに取り組んでいるのがとても良い。答えのない授業でおもしろい。」と語る学生ボランティアの新堀亮輔さん( 23 )はキャリア教育に関心があり、昨年の 11 月から、よのなか科 NEXT の授業や「ドテラ(学生ボランティアが生徒に勉強を教える活動。土曜日寺子屋)」のサポートを行っているという。

 「たくさんの大人が参加することで、授業のクオリティーを高めることができる。」そう校長が話すように、和田中学校は授業の見学や参加、サポートなどを通して積極的に外部の人々を受け入れている。生徒たちに大人と関わる機会を作る一方、教育に興味のある大人たちに対しても、実際の現場を見て体験できる場を提供しているのだ。

 学校では教科学習のみを行い、社会的スキルは学校外の生活で学ぶという構図が成り立たなくなったと言われる今、学校には新たな役割が求められている。しかし教師だけでそれを教えるのは現実的に困難である。そこで、毎回外部から様々な分野の大人を講師として招くという和田中学校の取り組みは、他の公立学校にとっても参考になるのではないだろうか。多くの人脈を持つ民間人校長ではないと難しいようにも思えるゲストティーチャーの手配も、地域の大人やその知り合いがゲストティーチャーの役割を担えば解決できる。

 多くの社会経験を持つ大人と、柔軟な感受性を持つ子ども。それぞれが互いに学びあえるような「社会に開かれた学校」の実現を、子どもの一人として期待したい。

取材記者:原衣織( 18 )、建部祥世( 18 )、中元崇史( 18 )、宮沢結( 16 )

取材に参加した記者の感想

 宮沢 結( 16 )

「よのなか科 NEXT 」の授業に参加をし、授業を通して感じたことは、多くの人がこの授業に関わっているということです。生徒と先生はもちろんのこと、ゲスト講師や地域本部のボランティアの方々、見学者や私たちのような取材者。

参加する人が多いから、より踏み込んだ内容の話ができるし、多くの大人の目を配ることで授業の精度も高まるのではないかと思います。

今回授業の中で印象的だったことは、問題を投げかけて、生徒さんに自分の考えを発表させる機会が多かったことです。私自身、中学時代の授業を思い返してみても、自分の意見を発表する機会はほとんどありませんでした。

今回取材した生徒さんは意見を発表することに対して「緊張するけどだんだん言えるようになった」と答えていました。やはり長い期間「よのなか科 NEXT 」を受けてきているだけあり、きちんと発表している姿が印象的でした。これは社会に出た後も大きな糧になると思います。

多くの大人と生徒さんでつくられる「よのなか科 NEXT 」の授業。学校の枠を超えて学校外の結びつきによって行われていることが「よのなか科 NEXT 」魅力だと感じました。

原 衣織( 18 

  この取材で最も印象的だったのは、「この取り組みは、民間校長だからできるというわけではない。やる気がないとできない」という代田校長のお話でした。

それまで私は、この「よのなか科 NEXT 」の授業は校長が元民間人であるからこそできることであり、普通の公立学校では取り入れにくいと考えていたからです。

しかし今回の取材を通して、二年も前からあらゆる知人に連絡を取ってゲストティーチャーを引き受けてくれる人を探したり、授業の前は二日間ほぼ徹夜でワークシートを作ったりといった様々な苦労があるということを知りました。

確かにコネクションや企画力も重要ですが、それよりも大事なものは、「生徒に社会に通用する力を身につけさせたい」という強い思いなのだと感じました

中元崇史( 18 

初の民間人校長が誕生した公立中学校としてメディアでも注目を集めた杉並区立和田中学校。そんな和田中学校で行われている「よのなか科NEXT」の授業に実際に参加させていただいた。

メディアがよく取材に訪れるということもあり、授業は緊迫した雰囲気で行われ、生徒たちも委縮して授業を受けるのではないかと考えていた。しかし、そんな不安は一気に吹っ飛んだ。この和田中学校の生徒、実に良い意味でのびのびと授業を受けている。マイクを急に向けられても、臆さず堂々と喋ることができる。授業の最後にはアトランダムに生徒が二人選ばれ、模擬面接をステージ上でさせられたのだが、これにも上手に対応。また周りの生徒も意見を発した生徒を冷やかすこともない。ここまで生徒全体が自らを表現できる力や他人の意見を受けとめる力を身につけている中学校は珍しいだろう。

また、私が印象に残っているのは生徒と代田校長の距離感である。私の学校生活においての校長先生とは関わる機会があまりなく、どこか遠い存在であった。ところが代田校長は、すれ違う生徒全員に声をかけ、生徒たちも気軽に校長室に訪れていた。民間人校長ということもあり、独特な授業形式を取り入れていることから、どこかワンマンなイメージで生徒にとって近づきがたい存在になっているのではないかと想像していたのだが、実際は全く違った。この距離感だからこそ、和田中学校のアットホームな雰囲気が生まれているのではないかと感じた。また、授業後の校長室で行われた反省会に同席させてもらったのだが、ここでも校長を含めた教師陣と学生ボランティアが熱心に意見を出し合う。代田校長だけでなく周りの教育者としての強い想いを持った人たちのサポート姿勢があるからこそ、和田中学校は成立しているのだ。

テレビや本で得た印象を大きく覆される取材となった。私立に人気が集中する時代だが、一度は通ってみたいと思わせる魅力的な公立中学校であった。

建部祥世( 18 

私が小学生の時に本格的に開始されたゆとり教育。算数や国語といった通常の授業時間数が減り、変わって総合学習や土曜日の寺子屋などが新たに時間割に組み込まれた。中学校の総合学習の時間に読書や職業体験などをしたが、あまり熱心に取り組んでいなかった記憶がある。読書といってもマンガを読んでいる人もいればゲームで遊んでいる人もいたし、道徳ではほとんど先生が話し続け、生徒たちが一言も話さずに終わる授業もあり、総合学習の時間はほとんど崩壊しているようなものだったからである。

また小学生のときの寺子屋は全員参加となっていたが、実際には塾や習い事、用事のある人は参加していなかったし、「だるい」と言って休む人も大勢いた。

このような状況しか知らない私は、ゆとり教育を取り入れた理由や目的が全く分からずただ単純に、学校が休みになり授業が簡単になったことを喜んでいただけだった。しかし今回の取材を通して、ゆとり教育のあるべき姿を「よのなか科 NEXT 」 の授業に見た。

私たちは今回、高校入試に向けての面接講座に参加した。まず驚いたのが授業の進め方である。ゲストティーチャーと校長先生が舞台に立って授業を進めていくのだが、一方的に話すのではなく頻繁に生徒に質問したりクイズを出題したり、時にはゲームなどの実践を取り込んでいた。またオリジナルのワークシートを駆使して生徒たちの関心を途切れさせないようにするなど様々な工夫を凝らしていて、今まで私が受けてきた受け身の授業とは大きく異なっていた。

そして、生徒たちのけじめの良さや集中力の高さにも感心した。チャイムが鳴り終わったと同時にすぐ号令がかかり、体育館が一気に静まり返る。ゲストティーチャーが話している間も皆前を向き、真剣に話を聞いていた。極当たり前のことではあるのだが、私の学校では集会のときに誰も先生の話を聞いていないことがしばしば問題になり、そのような環境に慣れてしまっていたせいか、和田中学校の生徒たちの姿勢には驚いたのである。

また和田中学校の生徒たちは人前で意見を言うのにも慣れていて、グループでの話し合いのみならず、全体の前で話すことにも堂々としていた。生徒全員が真剣に授業に取り組み、積極的な雰囲気を皆で作り出しているからこそ、一人一人も一歩踏み出せるのだと同じ空間にいることで感じた。

私が中学生のころもこのようなユニークな授業が取り入れられていたら、もっと社会の問題に興味を持って生活をするようになっていたかもしれない。形式にとらわれるのではなく、このような新しい教育がどんどん普及し思考力や意見を発表する力、様々な情報をキャッチする力など通常の授業では学べない、社会に出たときに役立つ力を身につけられる生徒たちが増えていけば良いと思った。

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