阿川尚之先生に取材するCE記者

寺浦 優(15)

 大学に入学するための一つの手段、それが AO 入試である。

 AO 入試では、学力テストを行う学校は少なく、高校 3 年間の取り組みなどが評価される。では、 AO 入試とはいったいどんな入試なのだろうか。

 今回、慶應義塾理事(前総合政策学部長)の阿川尚之先生 (59) にお話をうかがった。

 AO 入試(アドミッション・オフィス入試)は、 1990 年に慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス( SFC )の総合政策学部と環境情報学部が設立されたときに、日本で初めて導入された。筆記による学力試験の結果による一面的な能力評価ではなく、書類選考と面接試験によって多面的、総合的に評価する入試形式だ。

 SFC では近年志望者がおおむね増える傾向を示しているという。また、 SFC が実施した 2005 年の調査によると、入学後の成績、活動、学術・芸術・社会活動・文化活動において優れた成績を挙げた学生を大学内で顕彰する「塾長賞」や「塾長奨励賞」などの受賞実績において、 AO 入試で入学した学生は一般入試で入った学生より良い結果を出しているそうだ。

 阿川尚之先生は、「個人差はあるが、 SFC を志望するにあたり、 SFC について調べ、訪れ、大学で何をしたいか考え、文章にする。その過程で SFC が好きになる人が毎年相当数存在する」と言う。さらに、 AO 入試で入学した学生の多くは、入学後も積極的で、その意欲がキャンパスを満たし、一般入試の学生に刺激を与えるという。

 阿川先生は個人的に「 AO 入試では、面接を大事にしている」と言っていた。その理由はいったい何なのか。

 それは、近年 AO 入試対策の塾などで、大学に受けがいい志望理由の書き方などを教わる人が出てきたからだ。その文章を本当に受験生本人が自分で書き、思いを素直に伝えているかどうかどうかが必ずしもはっきりしない。大学としては本人に直接質問することで、本人が自分の力で考える力を有しているかを見抜き、欲しい人材を選抜する。だから面接が重要なのだ。

 しかし、面接の時間は限られている。それに、まず大学入試で緊張しない人などいないだろう。そんな、緊張と限られた時間の中で、面接官の質問に完璧に答えられる人などは数少ない。その点について聞くと、阿川先生は「大学は、ただ勉強をする場所ではない。考える力を身につけるところ。すぐに答えられなくても、考える姿勢と意欲が大切」と言う。

 AO 入試は、この大学にどうしても入りたいという熱い思いがある人にとっては、嬉しい入試方法だ。大学に行くのなら、好きな大学に行って好きな勉強や研究をしたほうがいい。そのほうがやる気も出るし、考える姿勢も強化できる。結果的に大学生活がエンジョイできるとも言えよう。

 ただ残念なことに、今世間では AO 入試を廃止したほうがいいなどと AO 入試を批判する人もいる。確かにテレビや新聞で、大学の新入生の学力低下が指摘されている。しかし、考える姿勢や意欲は、ペーパーの学力テストだけでは計れない。 AO 入試だからこそ見てもらえるのだと思う。受験者の熱い思いや、意欲も評価してもらえる AO 入試のメリットは、大きいのではないだろうか。

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