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ランタンパレード


                           富沢 咲天(14)

 16日の午後7時から8時の間、コペンハーゲンの町の光が消えた。みんなで一斉に電気を消してCO2削減をする「60Earth Hour Copenhagen」というイベントだ。 私たちはWWFインターナショナルとWWFデンマークが協力して行う、子供を対象としたランタンパレードに参加してみた。
イベント会場のプラネタリウムに入ると、天井や壁にぶらさげられたたくさんの紙のランタンが目に飛び込んできた。世界中から約1万個送られたみんなの手作りランタンを飾っているのだそうだ。いろんな色や模様があってとてもにぎやかだ。
最初に話を聞いたのはWWFのパンダのロゴが入っているTシャツを着た若い女性。とても忙しそうだったが、「1、2分なら」とインタビューに応じてくれた。彼女はWWFの職員Anneve Nielsinさんで25歳。「このイベントは楽しく子供たちに環境のことを分かってもらえるいい機会よ。参加できて嬉しいわ」とにこやかに話した。子供たちに期待していることはと聞くと「地球温暖化は今の子供たちの将来のことなので、きちんとこの問題を受け止めて欲しい。」と真剣なまなざしで言った。

 テレビの取材を受けている男の子を見つけた。彼はこのイベントに参加するためにエストニアから来たそうだ。名前はLomas Kama君、12歳。「ドキュメンタリー映画などで動物が死んじゃったり、氷が溶けるのをみて地球温暖化は怖いと思った。だからぼくは家で温暖化防止のために、リユースなどささいなことからCO2を削減しているんだ。このイベントはとても興味深くていいから、もっと子供たちが参加するべきだよ」と彼はランタン用の青の画用紙をはさみで切りながら話してくれた。まだ12歳なのにとてもしっかりしていたので感心した。Lomas君のランタンには海に住んでいる生き物たちがたくさん描かれていた。
会場にはランタン作りのほかWWFのシンボルのパンダの着ぐるみがいたり、パンダのフェイスペインティングをしてくれたり、お菓子が用意されたりと、大勢の子供たちが楽しめるよう工夫されていた。
そんな中で会ったのは小さな孫たちを連れたおばあちゃん。孫たちは英語がまだしゃべれないということでおばあちゃんに色々と話を聞いた。「孫に地球温暖化を分かってもらうために来たのよ。こういうイベントは子供たちにとっても楽しいしね。この子たちはまだなんとなくしか理解していないと思うけど、きっとそのうち分かるはずよ」と優しい口調で語ってくれた。
ちょっと変わった意見の人にも出会った。彼の名はDan Schooさん。中国から来てコペンハーゲンで勉強をしている留学生だ。今回はイベントに有名な歌手が来ると聞き、彼女と二人で来たらしい。私が地球温暖化についてどう思うかを聞いたところ、「地球温暖化は怖くないよ。だって今政府が地球温暖化防止のためにCOP15とかをやっているじゃないか。僕はそれに期待して前向きに生きていきたいよ。あと、このイベントは6ヶ月前にもあったけど、冬にやるべきじゃないね。冬のコペンハーゲンはすぐに暗くなって、電気を消すと気分も暗くなって人々がゆううつになっちゃうかもしれないからね」と自信たっぷりの笑顔で言った。真剣に地球の将来を心配する子供もいれば、楽観的に考える大人もいる。温暖化に対する意識はさまざまだ。

  午後7時をまわった頃、ランタンパレードがスタートした。私たちも取材の合間に作った自分のランタンを持ち、コペンハーゲン市内を行進した。紙のランタンの中は子供たちが持っても危なくないように、折ると光る蛍光棒みたいなものが入っている。明かりがついたランタンを手にみんなとてもうれしそうだ。パレードの列はチボリ公園を抜けて市庁舎広場へ。どんどん人数が増えていく。ぐんと冷え込むデンマークの夜を、年齢を問わず生後数ヶ月の赤ちゃんからおじいちゃんおばあちゃんまで大勢の人たちが歩いた。こんなにたくさんのごく普通の人たちが、温暖化防止を静かにアピールしている。

 市内ではこのイベントに参加したお店や建物などがライトダウンしていた。レストランでは、電気の代わりにキャンドルでお客さんたちが食事をしている。パレードの後で私たちも電気を消したお店で夕食を食べたのだが、キャンドルの灯りのもとで食べた料理は温かみがありおいしく感じられた。
世界中から送られてきたランタンのように、地球上のみんなが温暖化防止という同じ目標に向かって歩いているように感じられた夜だった。

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60 Earth Hour Copenhagen


                                飯沼茉莉子(13)

 私たちは今回、COP15の会場であるべラセンターの入場制限により入る事が出来なかった。しかし、ベラセンターだけではなく他の場所でも数多くの環境問題に関するサイドイベントが開催されていた。その中で私たちが注目したのは、WWF(世界自然保護基金)が主催している「60 Earth Hour Copenhagen」だ。このイベントはエネルギーの消費を抑えることを目的として、子ども達が手作りのランタンを作り、それを持ってパレードし、同時に街中の電気をいっせいに60分間消すというものだ。そこで私たちはイベントに参加している大人や子どもとその保護者、ボランティア・スタッフにも取材をした。
女性スタッフのAnnevette Nielsen(25)さんは、子ども達に気候変動について怖がらせずに楽しい方法で伝えることができてとてもうれしいという。また子ども達には、自分たちの未来だからこの問題についてもっと真剣に考えてほしいと語った。
デンマークからだけではなく、バルト三国の一つであるエストニアからはるばるやって来た子どもがいた。良いイベントがあると聞き、ぜひ参加したいと思ったLomas Kama(12)君である。彼は、気候変動について深く理解をしていた。ドキュメンタリー番組で動物が絶滅したり、氷が溶けていくのを見た時に気候変動はとても怖いと感じたそうだ。彼は、このイベントはとても興味深いので、もっとたくさんの子ども達に参加してほしいと訴えてくれた。

 コペンハーゲン市内から孫を連れてやってきたFiallandさんは、地球温暖化は私たちの孫にはとても重要な問題なので、子ども達が喜びそうなこのイベントに連れてきたという。Fiallandさんは日頃から孫達に地球温暖化によって氷が溶けて海面上昇が起きたり、動物がどうなってしまうかを教えているそうだ。孫たちはまだ小さいから全てを理解する事は難しいけれど、学校でも教わっているから少しは分かっていると思うと語った。

中国出身のDAN SCHOOさんとYE GAOさん 最後に、現在コペンハーゲンに住んでいるが、中国出身のDAN SCHOOさんとYE GAOさんに話しを聞いた。二人はランタン作りと同じ会場のプラネタリウムで行われるコンサートを見るために来たという。彼らは気候変動は怖くないそうだ。なぜなら、世界ではCOP15などの大きな会議が開かれていて彼らはそれを信用しているからと言う。またこういう会議が行われる事によって地球が変わっていくとポジティブに考えているから、気候変動は全く怖くないのだと言う。街中の電気を60分間消すことについて聞いてみると、デンマークは冬にあまり太陽が出なく陽に当たる事が少ないため、憂鬱になる人も多いので真冬ではなく夏にこのようなイベントを行った方がいいと言う。そして自分たちは、環境に一番悪い車を持っていないかわりに、4台の自転車を持っているそうだ。

 私たちもランタンを作った。そして午後6時から各自がそれをもって市庁舎前の広場に向かってパレードをした。街中を歩いてみて、そこに暮らしている子どもや大人の意見を直接聞く事ができてとても良い機会となった。直接的に環境問題に取り組んでいる人と間接的に取り組んでいる人の差はあるけれども、みな環境問題への意識を持って生活している事がよくわかった。 

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Let us in !!!

                                富沢 咲天(14)

 16日の午前9時、私たちはコペンハーゲンのホテルから地下鉄に乗り、ベラセンター 駅で降りた。電車を降りた瞬間から、私の額にちくちく冷たい風邪が当たるのを感じた。
 そこにはもう会場に入るパスをもらうための長蛇の列ができていた。
3時間過ぎたお昼の時点で、足のつま先がじんじんと痛くなってきた。それでも周りの人たちは懸命に待ち続けた。ある女性は疲れたためか、凍りついた大理石のような地面に座り込んでいた。
 私たちの後ろに並んでいた経団連(経済団体連合会)の女性は、「私は毎年COPに来ているけど、こんなに待たされるのは初めてだわ!バリでもこんなに待たなかったし、ケニアでさえ1時間で入れたのに!!」と文句を言っていた。周りの人たちも、寒いなか長時間待たされてだんだん不機嫌になってきた。

 5時間経過した午後2時の時点で、警官がメガホンを片手に持ちながら叫んだ。「機械の故障のため、1時間に15人しか入れない。フェンスの中にいる人は3時間、フェンスの外側にいる人はあと6時間かかる。」と言われた。私たちはフェンスの外側にいて、もう絶望的だった。しかし、今日パスをもらわないと、明日も入れない。はるばる日本からCOP15のために来たのだからなんとしても中に入りたい。その強い意志で、もうしばらく並ぶことにした。  そんな中、ある団体が無料でコーヒーを配っていた。風力発電で沸かしたお湯で作られたコーヒーだという。寒くて疲れていたせいもあるが、温かく香ばしいそのコーヒーは普通の喫茶店などで販売しているコーヒーよりはるかに美味しく感じた。 また、長時間待っている人たちのために、サンドイッチを配っていたNGO団体もいた。この団体は、「C02の排出量の40%は畜産業が占めており、1ヘクタールあたり牛を育てて食べるより、作物の方がより多くの人が食べることができる」というデータをもとに、「ベジタリアンになろう!」と鶏の着ぐるみを着てアピールしていた。 さすがCOP会場の周辺だけあって、いろいろな団体がそれぞれの手法で温暖化防止を訴えている。ベラセンター入口 7時間が経ったころ、会場からチラシが回ってきた。そこには「長い間お待たせして申し訳ありません。会場は収容人数を超えて大変混雑しております。中の人たちが出てくるまで、お待ち下さい。」と書いてあった。これを読んだ人たちは皆激怒した。なぜなら、会場内にいた人たちは続々と出て行っているのに長蛇の列が全然進まないからだ。人々は「Let Us In!」などと叫び始めた。 私たちが並んでいる間に、6人の韓国人メディアグループに会った。彼らも私たちのように何時間も待たされていた。「メディアでさえ入れないなんておかしい!」とかなり怒っていた。大きなテレビカメラをかついでいる人がちらほらいたのは、NGOだけでなく、メディアも入れなかったのだ。

 8時間経ったころ、NGOとメディアに分けられた。そしてメディアは少しずつ中へ入っていった。しかし、NGO側は何も動かない。前に進んだ!と思ったら、みんなが横に広がっただけだったり、前の人との間隔が段々狭くなっていた。最終的には、東京の朝の電車の通勤ラッシュ並みにぎゅうぎゅうになった。そして、人々は「Shame On UN !」などと叫び始めた。
結局、入場は午後6時で締め切ると言われ、私たちは5時半に泣く泣く引き上げた。

 これはある意味象徴的な出来事だったと思う。COPの主催者側はこれほど今回の会議に多くのNGOが来るとは予想していなかった。しかしCOP15は京都議定書の次の枠組みを決める大事な会議だ。地球の未来を決める会議になるかもしれない。だから世界中の人々は真剣に温暖化のことを考え、そして自分たちの声を各国の政府の代表に伝えようとこの会場に集結した。結局会場に入るパスは手に入らなかったけれど、何千人もの人たちの温暖化防止に対する熱意を目の当たりにしたことで、私はなんだか頼もしい気持ちになった。

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「Let us in!」私たちも決議の場に!


                                     三崎 友衣奈(18)   

 国連気候変動枠組条約第15回会議(COP15)では、目的とされていた法的拘束力のある温室効果ガス削減目標の同意は難しい。このような懸念は、会議が開幕した12月7日以前からもたれていた。しかし、これほどの事態を誰が予想しただろうか。
会議では先進国と途上国との交渉は決裂に近い状態で、17~18日にかけて各国の首脳がコペンハーゲンにそろうまで、最悪な結果を誰もが想定してしまうような状況だった。そして、会場であるベラセンターの外もやはり混乱していた。

 COP最終週の始まりである12月14日、ベラセンター前には入場許可証の登録を待つ人が長蛇の列をつくった。その列は隣の駅まで続いていた。NGOやメディアの人々である。私たちもそのグループの中の一つで、朝9時から並んでいた。だが、列はなかなか進まない。雪のちらつく中で、国連からのアナウンスは昼ごろの「登録手続きの機械の故障のため一時間に15人しか入場できない」と、夕方前の「入場者が大変多く、会場内の人が出ないとこれ以上人を入れられない」という報告だけだった。この時点で収容人数1万5千人のセンターに1万7人が入っていた。
「Let us in!」、「Shame on UN!」、「Explanation!」とNGOやメディアの人々が声をそろえて叫びだしたのは、その報告のしばらく後だった。会場内からぞくぞくと人が出てきたにも関わらず、外で待っている人々は一向に中に入れなかったためだ。複数の警官がガードしているフェンスに向かって、人々は強く訴えかけた。
「What do you want? ――― Entrance!」「When do you want it? ――― Now!」。 そして、本来はNGOの人々とは別枠であるはずのメディアは、ようやくNGOの列と別に列が設けられ、しばらくたってから入場することができたようだった。  

バリゲート

 国連が待ちくたびれたNGOの人々にようやくはっきりとした説明をしたのは、17時30分になってからだった。「本日はもう人は入れられない。明日の朝8時にここで並べば登録手続きを開始する」。大ブーイングが起こるも、少なくとも午前7時頃から並んだ人々は入れることはできなかった。
 翌15日、私たちが午前7時にベラセンター駅を降りた時にはすでに多くの人が集まってきていた。ところが、ここにきても国連のアナウンスは矛盾していた。「Secondary Card」と呼ばれ、COP第二週目の入場制限のためのパスを持っていない人は入れないというのである。このパスは第一週目の「バッチ(登録証)」を持っている人しかもらえず、前日に登録できなかった私たちはバッチを持っていないという理由で会場内に入るのをあきらめざるを得なくなった。
結局、NGOの中でSecondary Cardを入手して会場に入ることができたのは世界的に名が知れていて実績のある大きな組織だけだった。その組織ですら入場する人の数を制限され、水曜日からはNGO関係者は一切入ることができなかった。これは異例の事態である。COPの常連という経団連の女性は「バリ会議のときもケニアでもこんな不都合はなかった」と不満気だった。
困っていたのはNGOだけではない。30年間環境問題を追い続けてきた韓国の新聞記者Cho Hong Sup氏やベルギーからのテレビ局のカメラクルーなど各国のメディアも8時間以上並ばされるという事態に驚いていた。
国連の不手際もさることながら、これほど予想をはるかに上回る人が駆けつけたCOPも今までなかっただろう。注目度の高さは重要性を示す。あれほど多くの人々が世界の国・地域からコペンハーゲンへ来て、強くCOP15の現場にいることを願望する様子は、まさしく世界の人々の環境問題への危機感を表しているように見えた。
今回、多くのNGOの人々が会場にすら入ることができなかったのは大変残念だった。これらの人々の熱い意思も決議に取り入れられるべきである。

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エコな技術を世界に広めよう

エコな技術を世界に広めよう

2009/11/14           三崎友衣奈 (18)

 4月から始まった、いわゆるエコカー減税によって日本の自動車業界が活力を取り戻してきている。自動車メーカーが売り出している減税対象のハイブリッド車やクリーンディーゼル車などが注目を浴びているのだ。エネルギーをすべて電池でまかなう電気自動車もそのひとつだ。
 
 慶應義塾大学環境情報学部教授の清水浩氏は、ベネッセコーポレーションなどの企業の出資を得て産学連携で今年8月、電気自動車による環境への負荷軽減を目指すシムドライブ社を設立した。代表取締役に就任した清水教授は「インホイールモーター」という技術を使った、環境にやさしい自動車づくりを目指し開発を行っている。

清水浩教授に取材

 清水教授たちが開発して2005年に発表した電気自動車「エリーカ」は、8個のタイヤに直接付いたモーターによって走行し、そのエネルギー源はすべて自動車に内蔵されたリチウムイオン電池等からくる電力である。最高速度時速370kmという数字は、スピードが弱みだとされた電気自動車の常識を一気に覆した。
 シムドライブ社は、単にものづくりのために設立された会社ではない。その特徴としては大きく2つある。
 
 一つは、「モノを売る」会社ではなく「技術を提供する」会社を目指したことだ。清水教授は「できるだけ多くの人に技術を使ってもらうことこそが、電気自動車を普及させるための一番の近道」というベネッセ・コーポレーションの代表取締役会長福武總一郎氏の意見を反映し、あくまでも環境にやさしい技術を普及させる点を目的にしていることを強調した。商品の販売よりも、いかに環境にやさしい技術を世界に広められるか、より多くの人に電気自動車を利用してもらうかを優先した姿勢がうかがえる。
 
 もう一つは、慶応義塾大学の学生を含めたチームで開発を進めていることである。その最大の理由として、清水教授は学生からの豊富なアイディアを利点に挙げた。「良いアイディアが出てくることは何よりも大事」と話し、実際に今まで多くの新鮮なアイディアを開発に活かしてきた。また、学生の要望にも積極的に答える。例えば、元々企業に任せようとしていたモーターの開発を、他の部門と同じく大学で進めていくことになったのも一人の学生の希望によるものだという。
 
 企業ではなく一人の大学教授が始めたプロジェクトだからこそ、このように利益だけにこだわることもなく、また学生にも学びの機会を与えられる。業績を極端に問われないことで、環境にやさしい車の開発と世界中の人々への車の供給という本来の目的にまっすぐに向かうことができる。

清水浩教授

 一般の自動車メーカーでも環境NGOでもできない、このような形の環境問題解決へのアプローチが若い学生たちとともに今、始まっている。


電気自動車の時代がやってきた     
2009/11/14            飯沼茉莉子(13)

 現在自動車から排出される二酸化炭素を削減するため、自動車メーカーは電気自動車、燃料電池車など環境に優しい車を次々と開発している。日本政府はそういった車の購入者に対して補助金制度を実施した。その結果予想以上の効果があり、現在では購入希望者が殺到して生産が間に合わない事態にもなっているほどだ。道を走っていると、今までより電気自動車をみる回数がぐんと増え、自動車の転換期がもうすでにスタートしているのをはっきりと感じとることができる。

 今回私たちは、電気自動車「エリーカ」を開発したジムドライブ社社長で慶応義塾大学SFC環境情報学部の清水教授に取材した。

高速電気自動車エリーカ

 清水教授に、政府の温室効果ガス25%削減発言は達成できるか聞いてみると「ちょうどいい目標だと思います。少しハードルは高いですが、頑張れば達成出来ると思います。リチウムイオン電池や太陽電池、トランジスタは全部日本が開発したものです。日本は良い技術をもっているので、こういうものがもっと普及し、今は高いけれど政府の補助などで国民が少し我慢すれば25%削減は可能だと思います。太陽光発電の設置も現在は高価ですが、たくさん作れば安くなります」と語った。
 
 清水教授はジムドライブ社を作る時に「物を売る」のではなく「技術・情報を提供する」という事を信念にしたそうだ。その理由は、「ベネッセコーポレーションの福武總一郎会長が『エリーカ』に試乗された時、エリーカは90%普及すると言ってくれました。だから自分たちで電気自動車を作って売っていくようになるのかなと思っていました。しかし、世界中の人々に技術を見てもらうことによって電気自動車はもっと普及する、と福武会長に指摘されて考えが変わりました」と語った。
 
 電気自動車の普及は始まったばかりだが、ハイブリッド車と対抗する商品として進めていくのか聞いてみると、「エンジンを使うハイブリッド車とモーターを使った電気自動車の二種類の中で生き残ることができるのは1つだけだと僕は思います。なぜかと言うと、どちらかが普及すると大量に生産するようになるため単価が下がり、どんどん安くなるため人気がでますが、一方は全く売れなくなって最後は1つだけが残るからです」と語った。
 
 「モノを売る」のではなく「技術・情報を提供する」ことを信念としているジムドライブ社は、環境を売り物にせず、地球を少しでも良くしたいという思いから技術を開発していることがよくわかった。若い学生たちのアイデアをたくさん詰め込み開発された電気自動車の普及が、地球温暖化の進行を食い止める大きな力になってくれることは間違いないだろうし、その日が一日でも早く来ることを願う。

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座談会

電子辞書か紙の辞書か

学習や生活で辞書を引く必要性は今の昔も変わらないが、デジタル技術が一番得意とする分野が「検索」。私たちが親しんできた辞書にも革命がおきつつある。

出席者:飯沼茉莉子(13)、富沢咲天(14)、宮沢結(16)、勝部亜世満(17)、三崎令雄(18)三崎友衣奈(18)(司会)2009/11/01

友衣奈:みんなは学校や家でどちらの辞書を使っていますか、それはなぜかを聞かせてください。

咲天 :家では電子辞書を使っています。時間の節約のためです。

茉莉子:私は、家では電子辞書、学校では紙の辞書を使わされています。
    紙の辞書は調べることで「頭を使う」ので、というのがその理由だと思います。

亜世満:家でも学校でも電子辞書を使っています。
    学校で「紙の辞書を引いた方がいい」と言われますが、
    英和辞典とかは三冊持ってくればこれくらい(の量)になってしまうし、
    教科書もあるので辞書は学期始めに持ってきて大掃除の日に持って帰る感じです。

令雄 :電子辞書をいつも使います。他のことが知りたい時も思わぬ辞書が
    収録してあって便利です。

●昔からやっていることを大事に
友衣奈:「頭を使うから紙の辞書がいい」という発言がありましたが本当にそうだと思う? 

咲天 :思います。全てパソコンや電気に頼っていると頭を使わなくなって、
    いざという時にわからなくなる。例えば辞書が壊れたら紙の辞書を使うし、
    自分の子どもにも最初から「はい」って電子辞書を渡すわけじゃないので、
    そういう時に自分もできていないと困る。

友衣奈:引けなくなるのがこわい?

咲天 :はい。昔の人は電子辞書がなかったし、そういう面でも
    昔からやっていることを大切にしたい。

結  :私は学校では電子辞書、家で勉強する時は紙の辞書を使っています。
    学校で電子辞書を使うのは、授業中に先生が言った言葉をすぐに調べられるからです。家では、言葉を引いた時に
    (単語が)辞書のどこにあるかを「場所で」覚え、周りの言葉も見えるから紙の辞書も優れていると思います。

亜世満:紙の辞書にしかできない機能ってあると思います。
    例えば「広辞苑」には天皇家の系図とか、いろいろな図が載っていて、
    そういう面でも調べるのに役立っている。

●イカルガ(斑鳩)の声を出す辞書
友衣奈:では「紙」ではできず、電子辞書でできるものは例えば何ですか?

亜世満:最近の電子辞書ではセミの鳴き声や、身近な鳥ではない鳥の声も収録されていて
    音声でも学習することができるようになっています。

友衣奈:それはいいことだと思う?

亜世満:ウグイスなどは有名ですけど、イカルとかウソとかメジロの鳴き声は
    あまり聞けないでしょう。(辞書で)聞いておけば、例えば自分も最近まで
    ヒグラシやツクツクボウシの鳴き声も知らなくて・・・、
    それで実際に聞いてみた時に「あ、このセミだ」って。
    同じ鳴き声が実際に生で聞こえてきた時は感動を覚えますね。

●電子辞書にも書き込める
友衣奈:では電子辞書にできなくて、紙ができることは何かありますか?

茉莉子:紙の辞書は言葉を調べたあとにメモしておきたい時は
    メモに書いて辞書に貼ることができて自分のオリジナルにできるので、
    紙の辞書もいいと思います。

亜世満:でも最近の電子辞書にも漢字とかタッチペンで書く機能があって、
    それでメモをとったりすることもできるみたい。

友衣奈:そのページにメモするの?

亜世満:その項目に登録できる個数は6つとかに制限されてようですが
    とりあえず付箋みたいなものを貼ることができるそうです。

友衣奈:自分のオリジナルを電子辞書でもできるということですね。他に何か?

●進化しすぎ?電子機能
咲天 :電子辞書は読めない漢字があったら、キーボードの側に書くところがあって、
    そこに漢字を書くと読み仮名も出てくる機能がある。

結  :紙の辞書にはいっぱい載っているけど重いのです。
    学校に行く時は教科書とかいろいろ持ってかなくちゃいけなくて、
    電子辞書はコンパクトなので持ち運びに便利だと思います。

友衣奈:重いという理由で、家では紙の辞書を使っているんですね。
    電子辞書よりも紙のほうが言葉を覚えられるものですか?

結  :紙の方が調べた時に「あ、ここにあるんだ」って思ったり、
    けっこう隣の言葉も見るんです。そういう点では紙がいいと思う。
    私の学校では先生が紙の辞書を勧めます。でも電子辞書を使う人が
    クラスでは圧倒的に多くて、高校生になると紙の辞書は2~3人です。

友衣奈:では皆さんは持ち運びを考えなければ紙の方がいいと思う?

令雄 :そういうことを考えなければ、紙の方がいいと思います。
    電子辞書に実は今はいろんな機能が付いたために弊害が多くて、
    例えばワンセグ機能で授業中テレビを見たりする人もいます。
    普通の辞書は、純粋に紙の辞書で学習の教材として使えるんですけど、
    電子辞書はもう辞書なのかどうかわからない多機能な「携帯する何か」に
    なっちゃった。

友衣奈:機能が付きすぎているのも欠点になりうるということですね。

●苦労して使った達成感
茉莉子:電子辞書は画面が小さいので眼に入ってくる情報が少ないと思います。
    紙の辞書はもっと大きくて眼に入ってくる情報が多いので覚えやすいかな。

友衣奈:電子辞書の特長だけれど、検索したらぱっと出てくるじゃない?
    それって引いている過程が無くなるということで「トンネルデザイン」と
    言われていて、目的に達するまで潜って一直線に行くから他のものがまったく
    見えない。若いうちから「過程」で苦労しなくていいものでしょうか。 

亜世満:さまよって目的地に到達するのは、途中でもいろいろな発見があるし
    時間がある時はクネクネしながらたどり着くのが大切だと思います。

令雄 :確かにラクを覚えるとロクなことがないと思う。
    さっきは教材として電子辞書は不向きって言ったんですけど、
    今は電子辞書ってほんとにいろんなもの、例えば「世界遺産」とか何でも
    入っているので電子辞書をいじっていて自分の知らなかったことの発見もある。
    英語の辞書では他の単語を知るぐらいですけども、電子辞書は分野を問わず何でもあると思います。

友衣奈:さっきの話に戻って携帯しやすいかどうかはやはり電子辞書が一番という
    意見があったけど、わざわざ紙の辞書を持ち歩く理由はあると思う? 
    みんな電子辞書を知ってしまった世代だけど。

咲天 :電子辞書は調べて終わり!なんですけど、紙の辞書だったら何回も使っていたら
    黒くなったり付箋とか付けたりしてそういう達成感とかもあると思います。

友衣奈:目に見えて分かるよね、自分がどれだけやってきたかっていう。

●辞書がテレビ、ゲームに
結  :いっぱい機能があって便利だという意見が出ていたんですけど、
    最近の辞書はテレビも見られるので学校でも昼休みにテレビを見る人がいて、
    機能が付きすぎると勉強の弊害になることもあると思います。

友衣奈:なぜわざわざメーカーはテレビとかゲームを付けているんだと思う?

令雄 :シンプルなものより、電子辞書にはとりあえず何でも入れないと
    売れなくなるという感じじゃないですか。

友衣奈:逆にそれは消費者が求めている表れではないの?

咲天 :最近の学校は電子辞書を持っている生徒が多くて、辞書を作る会社は
    「じゃあ子どもが喜ぶ機能はなんだろう」と考えて、
    そういうゲームも付けているのではないでしょうか。

●ケガをして電子辞書をひく?
友衣奈:消費者として電子辞書を選ぶ基準は、たくさんの辞書が入っていたり、
    機能が付いていることになりますか?

亜世満:ないよりはあった方がいいですよね。例えば日常的に使わない「医学」や
    「スピーチの文例集」や「冠婚葬祭」に関することとか、そういうものが辞書に
    おまけで付いていると、その状況になった時に調べることができますから。

令雄 :意識としてはおまけです。
    僕は部活でケガすることが多かったんです。整形外科へ行って、
    「君は何々だよ」ってケガの名前を言われて、
    「どういうケガだろうな」と知りたくなって電子辞書の「家庭の医学」で
    調べられたりするんで、「ああ、こうしたケガなんだ」とわかる。
    多機能はみんなが電子辞書を選ぶ基準だと思います。

友衣奈:多機能は魅力的だと思う?

結  :「クロスワード」や「脳トレ」まで付いているんですよ。そうすると、
    けっこう授業中にやってしまう人も多いんじゃないかなと思います。

友衣奈:(まとめ)やはり本質を得ているというか、一番自分の目的にストイックに探求で
    きるのは「紙」だとみんなは言っていたけど、電子辞書も使う人の用途によると
    いうことですね。その一方で要らない部分もあるから、へんな娯楽の方に行って
    しまうという現代を反映している部分も電子辞書にはあるのでしょう。
    でも、それって勉強している側には迷惑というか、紙の辞書とは目的が違って
    きてしまったという感じでしょうか。 ではこれでRTを終わります。

                         

                                                    以上

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子どもにもっと教えてほしい環境危機

子どもにもっと教えてほしい環境危機
2009/10/25                 飯沼 茉莉子(13)

 地球温暖化による気候変動の影響が、異常気象というかたちで私たちの日常生活でも体感できるようになりつつある。今とるべき行動によって地球の未来は大きく変わるということを、私たちは十分に理解しているのだろうか。

 地球温暖化防止のために、市民の立場から提言し、活動しているNPO法人気候ネットワーク国際担当の川阪京子さんに話を聞いた。

 まず、日本政府の環境に対する取り組みについて川阪さんは、「日本政府はもっと真剣に温暖化対策に取り組むべきだと思います。京都議定書の後、日本政府は新たな法律を作ったりして二酸化炭素排出量を6%削減するための目標達成計画を作っていますが、どれも6%を削減できるような内容ではないと思っています。京都議定書ができる前に日本政府がやっていたことと内容的には全く変わっていないので、これから6%以上も削減するためには、新しい制度、例えば排出量取引制度とか炭素税など、きちっと排出を規制するような法律をつくって削減を具体的にできる社会にしていく仕組みを新たに作っていくべきだと思います」と語った。

NPO法人気候ネットワーク国際担当の川阪京子さん に取材

 鳩山首相が提案する25%削減目標を達成できると思うかと聞いたところ、実際に25%削減しても温暖化が全部ストップするわけではないことを考えると、達成できるかどうかというよりも、達成できるように何か新しい取り組みを始める努力が必要だという答えがかえってきた。

 それでは、25%削減に対して日本人一人一人は何ができるのか。これについて川阪さんは、「実際日本の排出量のうち約80%は産業に関係するところから出ていて、家庭からの排出量は言われているほど多くはないけれど、省エネの行動に取り組むことは大事です。例えば、省エネの家電製品を買う、車が必要ならばエコカーにする、食べ物は輸入品ではなく近くの農家で生産して運ばれるエネルギーの少ないものを買うなど、「地産地消」の物を選ぶことで削減できます。そうするとこで環境にやさしい商品が市場に出回るようになって、社会的仕組みが変わるので、一人一人ができる大きなことだと思います」と語った。

 一番聞きたかったのは若者の行動だ。これについて川阪さんは、「今何もしなければ若者が大人になったときには自然災害が増える世界になっている可能性が高いです。今はそれを変えられる最後のチャンスだと思うので、大人たちに対して、自分たちの未来のために何かしてほしいと働きかけてほしい」と熱く語ってくれた。大人が相手にしてくれないのであれば、若者が環境を良くするためのアイデアや技術を考え出して、未来を変えるよう諦めずに努力をして欲しい、ということだった。

 川阪さんは、将来日本がエネルギーや食糧の自給自足、地産地消が出来る仕組みになったらすばらしいと考えている。カンボジアのように24時間365日電力に頼らなくても生活ができる国があるのだから、ライフスタイルを変えたり、新技術を取り入れつつ化石燃料によるエネルギーをこれまでのように湯水のように使わない社会が実現できたらいいし、エネルギーを多く使っている人ほどもうかる社会ではなく、エネルギーを使わない人が一番得するような社会が実現出来ればいいと、今後の日本の環境について語った。

 今年の12月にCOP15が開かれるが、川阪さんは、「コペンハーゲンでは、2020年の世界のCO2削減目標を具体的に決めもらうために、毎日世界のNGOと情報交換をしながら政府に強く働きかけていきます」と語った。

 私たちにとって怖いのは、近い将来、地球環境が危機にさられることをその当事者となる子どもたちが気づいていないことだ。新聞やテレビでCO2を削減といくら耳にしてもほとんどの子ども達は理解できていない。地球温暖化を防ぐためには、もっと親や大人の協力が必要だ。親は普段の生活の中で子どもに環境のことを少し話すだけでもいい。学校では地球温暖化が子どもたちにとってどれだけ重大なことかを教師たちから具体的に伝えてもらいたい。新聞にも何%削減などというところにだけ着目するのではなく、子どもがどのような危機にさらされているかを具体的に示してもらいたい。

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CE記者がCOP15を取材 ジャパン・タイムズ社長を表敬訪問

CE記者がCOP15を取材 ジャパン・タイムズ社長を表敬訪問
2009/10/01

小笠原有輝子氏を表敬訪問 10 月 1 日(木)午後、 3 名の CE 記者が株式会社ジャパン・タイムズ社(東京都港区)代表取締役社長小笠原有輝子氏を表敬訪問した。これは本年 12 月 7 日からデンマークのコペンハーゲンで開催される COP15 (国連気候変動枠組条約第 15 回締約国会議)をジャパン・タイムズと共同でジュニア記者を取材のために派遣することが決まったため。

 日本政府は国連総会で、温室効果ガスを 2020 年までに 1990 年比の 25 %まで削減すると発表。 2020 年には日本を支える「大人」である CE 記者たちは、自分たちにとって重要な問題であることから「未来の大人として自分たちの声をもっと大人に届けたい」と、現地で取材をして発信することを強く希望した。

なおこのプロジェクトは、駐日デンマーク大使館の後援、(財)日本英語検定協会及びカパー JSAT( 株 ) の協賛、そして国際連合広報センター及び(社) FEE Japan (国際環境教育基金)の協力のもとに実施されることになった。

ジャパンタイムズ社のプレスリリース(PDF)

The Japan Times 2009年10月22日付 記事(PDF)

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中国新聞からインタビュー

  9月12日三崎友衣奈記者が、中国新聞(本社広島市)のジュニアライター大友葵さん(中3)と大林将也くん(中1)に、テレビ会議システムを使ってインタビューを受けた。
 取材された記事「日本のグル?プ~好きなテーマ、チームで追求」は9月28日の中国新聞朝刊
「ひろしま国」(10代がつくる平和新聞)のページに掲載された。

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CE記者が英国Headliners (旧Children’s Express)記者と交流

CE記者が英国Headliners (旧Children’s Express)記者と交流
2008/07/28~08/04 7月28日~8月4日の1週間、CE記者5名とユースワーカー1名が北アイルランドのベルファストとロンドンデリーのHeadlinersの支局とロンドン局を訪問し、現地の記者たちと交流を行った。
 CE記者たちは「環境教育」「少年司法」「ネットいじめ」について現地の記者や専門家に取材し、日英比較を行った。この日英交流事業の経費の一部は、グレイトブリテン・ササカワ財団及び大和日英基金からの助成金で賄われた。08年度英国CE訪問 
                 
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座談会

小学生の環境教育

人類は地球上の生き物の仲間のひとつにすぎない。それを自覚すべき時代となって久しいが、環境保護の大切さを小学校の段階でどのように教えるべきか、また家庭や企業にはどんな役割があるか、4人のCE記者が意見を交換した。

出席者:宮澤結(15)、大久保里香(17)、寺浦優(14)、司会:三崎友衣奈(17)
2009/06/2

友衣奈:小学校で環境問題はどのように教わりましたか?

里香 :社会科などで、環境について触れることはありましたが授業に「環境」というタイトルはついていませんでした。

優  :社会科でリサイクルセンターなどに行きました。一応は環境教育をやっていたことが後から分かりました。

結  :総合学習の時間にリサイクルセンターに行ったり、田植えもしました。でも小学校の頃は環境教育を受けていたとい
    う実感はなかったです。

■環境という授業の設置を

友衣奈:皆に共通するのは「習った」実感よりも、「そういえば環境についてだった」という実感ですね。先生のほうも後か
    らでいいから分かってほしいという気持ちがあったと思うんだけども、今のままで充分だと思う?それとも自然と触
    れ合う授業などを増やした方がいいですか。    

里香 :一ヶ月に一回でいいから環境授業の枠を作る方が効果的だと思います。小学生は他の科目のなかに含めると環境教育
    を受けている実感は絶対わかない。

友衣奈:授業として環境の認識をしっかり持った方がいいということですね。他の皆さんの意見は?

結  :賛成です。私の場合は総合学習の時間に、環境だけでなく地域のことや校外学習もあったので、環境の授業を別に設
    けることで小学生の意識が変わると思います。

優  :小学生なので誰かに言ってもらって気づくことが多いと思うんです。実際私もそうでした。自分たちの生活に関わる
    環境問題だということをきちんとその部分で言わないと気がつかない・・・

■きっかけを与える教育

友衣奈:三人とも同じ意見でしたね。でも環境問題は、温暖化も含めて今までの地球自体の流れ(自然現象)だという人もい
    るでしょう?それを勝手に「温度が上がるのはいけないんだ」と小学校の頃に植え付けてしまうとそれは頭から離れ
    にくくなるし、反対意見を言われても「だって学校で習ったもん」となってしまわないですか?

里香 :人の行動が原因で悪くなったのではない環境問題もありますが、絶対に人間の行動が関連している問題があると思い
    ます。例えばゴミ問題や、クーラーの利用で有毒なガスが出るとか、それは人間の行動が原因であって、改善してい
    かなければならない。学校ではそういった絶対的なものを教えて、その後はきっかけを与えて学習を進めていけば子
    供たちが自分たちで環境についてもっと考えるようになるのではないかと思います。

優  :気づいてもらう、ということが一番大事だと思う。特に小学生の場合は先生が言うことは正しいと思い込んでしまう
    から、先生がきっかけを与えてあげることで、そこから興味を持つ子はどんどん調べていくと思う。環境に関しては
    分からないことがいっぱいあるから、きっかけを与えてあげるのが一番なんだと思います。

結  :例えばリサイクルセンターやゴミ処理場に行っても、私が小学校の時は行って感想を書かせて終わりだったんです。     

友衣奈:私が取材した名古屋大学の先生は「日本でリサイクルしても意味がない」という意見を言われるのね。「そんな微量
    を回収しても、回収費や人件費が無駄だ」って。そういう反対意見を小学生に言っても判断できないでしょう?自分
    が小学生だった頃を思いだせば分かるけれど、賛成と反対意見を比べて「じゃ自分で考えてね」って言える状況では
    ないですよね。自然と触れあう感覚を大事にするというだけではだめなのかな?例えばフィンランドは自然が多いか
    らそれを利用してふれあいを中心にして教育しているらしいんだけど、どうしたら小学生には一番いいのかな。

里香 :例えばリサイクルサンターに行ったら、みんな頭では「リサイクルはいいこと」って思うだろうけれど、行く前にリ
    サイクルをいろいろな側面から見せる授業をしなければいけないと思うんです。車で運ぶ時に出る二酸化炭素の量も
    考えるべきだし、環境問題自体が何が原因なのかよく分かっていない面もあるから、いろんな面を教えることで子供
    たちが将来大きくなって興味を持つきっかけになったり、教わったことに対して疑問を持った子は調べていけるよう
    になると思います。絶対一つの側面には相反するものがあるから、そこもちゃんと見せていかなければならないと思
    います。

友衣奈:小学生にも、例えば二酸化炭素が車から出て良くないからバスを使おうとか言っているけれども、一方では暖かいこ
    とは別に悪いことだけではないということを教えるってこと?

里香 :そのためにも環境というしっかりした授業がないと、そういう細かいことまで教えられないので、私は環境教育を作
    った方がいいと思います。

■小さい子は好奇心旺盛

友衣奈:でもそれって中学校で習わないですか?小学校から取り入れて早い段階で知っておくのはいいかもしれないけど。

里香 :小さい子の方が好奇心が旺盛だから、中学生になると高校受験の準備で「環境の授業なんてどうでもいいや」となる
    と思うんです。基本的な理解を小学生のうちになるべく早い時点で持つ方がいいと思います。

優  :小学生の方が「あれはどうなの、これはどうなの」って不思議に思うことが多いような気がするんです。私自身、中
    学生になると不思議でなくなることでも、小学生の時はすごく気になって調べたことが多くて、疑問に思うことが多
    いから小学生のうちに触れることは大事だと思います。     

結  :小学一年の時はいろんなところに行ったり、自然に触れることがメインでいいと思うんです。でも小学校高学年は考
    える力がついているから、校外学習も、行くだけではなくて、そこから自分は何ができるかを考えることは大切だと
    思います。

■授業時間が足りない中の環境教育

友衣奈:現実問題として、授業時間数が足りないのにわざわざ環境の授業をやるのは難しくないですか?社会科などに計画的
    に取り込まれていたのを(環境だけを)一個切り離すと・・。      

里香 :私は中学生の時に、地域でゴミ拾いなど環境を考えるセミナーがあって、積極的に子供たちの環境意識を育てていこ
    うとする活動があったんです。ゆとり教育のなかで、環境の授業を作るのはムリかもしれないけども、地域と一丸と
    なって環境の活動を促進していけたらいいと思います。

結  :学校の土日の休みを利用して、学校で環境セミナーみたいな感じでいろいろ開いたりとか、参加者を募ってやったり
    とか。

優  :平日は多くの教科があって、いろんなことを考えなければならないから、土曜日の午前中だけは環境について考えよ
    うと決めることで小学生が集中して考えることができるのではないかと思います。

友衣奈:最近は、英語が「五・六年生は必修」といわれるなかで、英語を「そんなにやって国語は大丈夫なのか」という反論
    もありますね?そういうなかでさらに環境を週一回でも一ヶ月に一回でも増やして小学生にとっては負担になりませ
    んか?

優  :いま環境が世界的に大きなテーマで子供たちが大人になった時にどうなるかは分からないから、今から少しずつでも
    考えたり話し合ったりすることで、自分たちが将来どうしていくべきなのかが見えてくると思う。英語もこの先必要
    になることだから、必要になることをやっていくのはいけないことではないと思うし、むしろ必要なんじゃないのか
    なって思います。

友衣奈:でも重要なことはたくさん増えてくると思うのね、これから。減ることは絶対ない。教科はいま国語、算数、理科、
    社会があって、家庭科とか体育もあって、英語もプラスされて、さらに環境もプラスされて・・・、それでもいいと
    思う? 

里香 :私の場合は小学校が勉強に特化した学校ではなかったんです。中学は勉強をすごく一生懸命やる学校に入ったことも
    あって、教科も増えたし、やることも増えたからすごく大変になって・・・・小学一年生に言っても分からないでし
    ょうが、自分がやることっていうのはこれだけあって、今知らなきゃいけないことがこんなに沢山あるんだというこ
    とを分からなければいけないと思うんです。     

友衣奈:では中高の勉強の予習というか、一気に詰め込む型ではなくてだんだんやっていく方式として小学校でもいれていく
    ということ?

結  :環境教育はけっして今やっておいて損ではないし、むしろ得だし、自分たちの将来に関わってくることだから、そう
    いう時間を設けた方がいいと思う。

■親にも環境教育を

友衣奈:学校でやらなくても、例えば家で「ペットボトルの処分」とか「アルミと牛乳パックを分別しなきゃいけない」とか
    、そういうところから子供に「何で?」という疑問が湧いて、「それは焼却炉からダイオキシンが出るから」とかそ
    ういうふうに家庭で教えることってできませんか。     

結  :私は家であんまりゴミ問題を考えてなくて、学校の方が環境について学ぶことが多いかなと思います。

優  :家庭でやるとバラツキが出てしまう。親から教わることはすごく子供にとっては大きいと思いますが、やらない親も
    いるし、学校でみんな均等に知識がある方がいい。

里香 :私は環境の授業は作った方がいいという意見に変りはないのですけど、確かに家庭生活で親がすごく環境に興味があ
    れば、その子供も環境に興味を持つと思うんです。だから親に対する環境の授業も開いて、学校にまかせるだけでな
    くて、家でも環境教育ができるような状態にしたらどうかなと思います。

■企業の授業参加

友衣奈:今の小学校では、例えば三洋のエネループという「繰り返し使える電池」について企業が小学校に‘出前授業’にき
    て紹介するケース出てきています。そういうものだけだと足りないと思う?これは多分小五小六が対象なんだけど。

里香 :小五小六になると自分で考えることができるので、出前授業を受けて環境に興味を持てれば、自ら調べ出すと思う。
    学校で教えられなくてもテレビをつければ環境番組やCMが流れているし、いま環境問題を軽視している人はそんな
    にいないと思う。自分で何ができるかということだけをとりあえず教えて、学校だけでなくても地域や家庭でも教え
    ていければいいと思います。

優  :先生自身も、三洋の人がそうやって来て授業をしてくれると、深い話をより細かく知ることができると思う。そうい
    うものを見ることで疑問も生まれてくると思う。     

友衣奈:これは企業の宣伝ではないかとか、そういう疑問はある?

結  :宣伝とかの問題ではなくて、専門家が言うことに疑問を持ったらその人にその場で質問することができるし、そうい
    う場を持つことはすごく大切だと思う。現状だと社会科では環境問題でも地理的なことをやり、理科では二酸化炭素
    がどうなっているかを学び、それらを総合学習でつなげることもできる。

■多様な環境学習

友衣奈:では今の総合学習の時間の使い方には特に異議はないということですね。

優  :道徳などは「総合」の時間でやるしかないと思う。環境教育は、やる学校はやり、やらない学校はやらないのはおか
    しいから、そこは徹底して必ず含めなければいけないと思います。文部科学省が総合の時間に「必ず年に何回」とい
    う規定を作れば総合の時間の中なら取れると思う。そうでないと、やらない学校がどうしても出てくると思います。

友衣奈:出前授業は、やる小学校が限られているから、行き渡らない?

優  :行き渡らないし、環境の教育を「総合」のなかでやらない学校が出てくると思うから。

友衣奈:総合の時間はいろんなことをやり、その中で少しでも環境に触れあうとか、企業の人にきてもらうとか、そういう時
    間はとった方がいいということですね。今までの討論をまとめると、理想は、学校でしっかり環境の授業を作っても
    らうことだけれども、現実には時間が足りず教科が多すぎて出来ない。いま私たちがやってほしいことは、平等に文
    科省から「ここまで」っていう規定をもらって、それを絶対各学校でクリアすることと、家庭でも絶対的にこれは事
    実だとか認められていることを教え、賛否両論があるところも教えて、固定観念を持たないようにする。出前授業も
    いいけれども総合的な時間のなかで社会とか理科でやってきたことをつなげる授業をしてほしいということですね。   

                                                    以上 

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英語力?コミュニケーション力?

英語力?コミュニケーション力?
2009/5/15                三崎 友衣奈(17)

 幼い頃から英語に慣れ親しんだ人は、ラッキーだと思っていた。自分自身の海外での経験と、当時周囲にいた日本人をみても英語を早いうちから習得して悪い思いをした人をみたことがなかったからだ。しかし市川力著の「子どもに英語を教えるな」では、市川氏はアメリカの帰国子女のための学習塾で、何人も日本語と英語が中途半端となってしまった生徒たちを目撃してきたと書いている。英語教育は「早くやったが勝ち」というわけではないのだろうか。

 大手進学塾のスタッフとして 90 年に米国イリノイ州に赴任した市川力氏は、その後 96 年にコネチカット州に学習塾を設立した。現在は日本に戻り、探究型の学びを研究・開発・実践するために東京コミュニティースクール校長を務めている。

 市川氏は現在の教育制度をそのままに、小学生の英語を付け足すことに異論を唱える。「我々が目指す国際人とは、英語を話せる人ではなく英語を使ってコミュニケーションを取れる人のこと」と説明し、ツールとしての英語を誤って捉えていることを指摘した。「コミュニケーション能力を養うには最初に日本語でやるのが近道で、そこに英語を足していけばいい」。

 「国家の品格」では、著者の藤原正彦氏が国際人についてこう書いている。「世界に出て、人間として敬意を表されるような人」。したがって「英語と国際人に直接の関係はない」というのである。

 この両者が共通して主張しているのは、教育において日本人としての人格・教養を優先させるということだ。お互いを理解しあう心、さらに相手に認められるための母国の知識を、一番に身につけなくては英語を苦労して習っている意味がない。

 では実際に英語に力を入れた公立小学校ではどのような教育が行なわれているのだろうか。

 目黒区立東山小学校では、目黒区モデルカリキュラムに従って3 ~ 6年生が週1回、年間 30 時間の外国語活動を行なっている。毎授業前に、 ALT ( Assistant language teacher )の先生を含めて授業内容についてのミーティングをする。授業は総合の時間に組み込まれているため、ゆとりをもって活動できる。また土曜日には、帰国児童を対象に特別教室を開いており、ここにもネイティブの先生がつく。

 生徒、保護者からの評判は高く、卒業生からは「中学に入ってから英語の授業にスムーズに取り組めた」という声も聞くという。外国語をやることによって日本語の学習意欲が上がり、現場では日本語との両立はできないことはないように感じるそうだ。「この授業で目指すのは人としっかりコミュニケーションをとり、自己表現できる人」。

 他の区ではみられない独自の英語カリキュラムのもと、東山小学校は非常に恵まれた環境での学習を実現している。その中でもやはり重視されているのは“人との係わり合い”のようだ。

 英語という教科は中学・高校で勉強する。市川氏が「環境が整っていれば英語に触れるのは 0 歳からだって構わない。しかし英語をただの教科として小学校からやればいいわけではない」と唱えるように、無理に押し込まれた環境で英語を習うことは効果を半減させてしまうのではないだろうか。先入観を持たず自由な発想ができる小学生のうちに、土台となるコミュニケーション能力を養う機会を多く与えるべきだ。

 小学 5 ・ 6 年生の英語は必修化へと動いている。ベネッセ教育研究開発センターが行なった公立小学校におけるアンケートでは、英語教育を行なうことについて賛成する人は 67.1 %に上る。ここで、もう一度問い直す必要がある。なぜ今、英語なのか。英語をペラペラに話すため?文法を寸分狂いなくマスターするため?上辺だけの国際人にならないために、「どんな人を目指すのか」を明確にし、それに沿った教育内容を実施してほしい。

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