富沢 咲天(14)

 16日の午後7時から8時の間、コペンハーゲンの町の光が消えた。みんなで一斉に電気を消してCO2削減をする「60Earth Hour Copenhagen」というイベントだ。 私たちはWWFインターナショナルとWWFデンマークが協力して行う、子供を対象としたランタンパレードに参加してみた。
イベント会場のプラネタリウムに入ると、天井や壁にぶらさげられたたくさんの紙のランタンが目に飛び込んできた。世界中から約1万個送られたみんなの手作りランタンを飾っているのだそうだ。いろんな色や模様があってとてもにぎやかだ。
最初に話を聞いたのはWWFのパンダのロゴが入っているTシャツを着た若い女性。とても忙しそうだったが、「1、2分なら」とインタビューに応じてくれた。彼女はWWFの職員Anneve Nielsinさんで25歳。「このイベントは楽しく子供たちに環境のことを分かってもらえるいい機会よ。参加できて嬉しいわ」とにこやかに話した。子供たちに期待していることはと聞くと「地球温暖化は今の子供たちの将来のことなので、きちんとこの問題を受け止めて欲しい。」と真剣なまなざしで言った。

 テレビの取材を受けている男の子を見つけた。彼はこのイベントに参加するためにエストニアから来たそうだ。名前はLomas Kama君、12歳。「ドキュメンタリー映画などで動物が死んじゃったり、氷が溶けるのをみて地球温暖化は怖いと思った。だからぼくは家で温暖化防止のために、リユースなどささいなことからCO2を削減しているんだ。このイベントはとても興味深くていいから、もっと子供たちが参加するべきだよ」と彼はランタン用の青の画用紙をはさみで切りながら話してくれた。まだ12歳なのにとてもしっかりしていたので感心した。Lomas君のランタンには海に住んでいる生き物たちがたくさん描かれていた。
会場にはランタン作りのほかWWFのシンボルのパンダの着ぐるみがいたり、パンダのフェイスペインティングをしてくれたり、お菓子が用意されたりと、大勢の子供たちが楽しめるよう工夫されていた。
そんな中で会ったのは小さな孫たちを連れたおばあちゃん。孫たちは英語がまだしゃべれないということでおばあちゃんに色々と話を聞いた。「孫に地球温暖化を分かってもらうために来たのよ。こういうイベントは子供たちにとっても楽しいしね。この子たちはまだなんとなくしか理解していないと思うけど、きっとそのうち分かるはずよ」と優しい口調で語ってくれた。
ちょっと変わった意見の人にも出会った。彼の名はDan Schooさん。中国から来てコペンハーゲンで勉強をしている留学生だ。今回はイベントに有名な歌手が来ると聞き、彼女と二人で来たらしい。私が地球温暖化についてどう思うかを聞いたところ、「地球温暖化は怖くないよ。だって今政府が地球温暖化防止のためにCOP15とかをやっているじゃないか。僕はそれに期待して前向きに生きていきたいよ。あと、このイベントは6ヶ月前にもあったけど、冬にやるべきじゃないね。冬のコペンハーゲンはすぐに暗くなって、電気を消すと気分も暗くなって人々がゆううつになっちゃうかもしれないからね」と自信たっぷりの笑顔で言った。真剣に地球の将来を心配する子供もいれば、楽観的に考える大人もいる。温暖化に対する意識はさまざまだ。

  午後7時をまわった頃、ランタンパレードがスタートした。私たちも取材の合間に作った自分のランタンを持ち、コペンハーゲン市内を行進した。紙のランタンの中は子供たちが持っても危なくないように、折ると光る蛍光棒みたいなものが入っている。明かりがついたランタンを手にみんなとてもうれしそうだ。パレードの列はチボリ公園を抜けて市庁舎広場へ。どんどん人数が増えていく。ぐんと冷え込むデンマークの夜を、年齢を問わず生後数ヶ月の赤ちゃんからおじいちゃんおばあちゃんまで大勢の人たちが歩いた。こんなにたくさんのごく普通の人たちが、温暖化防止を静かにアピールしている。

 市内ではこのイベントに参加したお店や建物などがライトダウンしていた。レストランでは、電気の代わりにキャンドルでお客さんたちが食事をしている。パレードの後で私たちも電気を消したお店で夕食を食べたのだが、キャンドルの灯りのもとで食べた料理は温かみがありおいしく感じられた。
世界中から送られてきたランタンのように、地球上のみんなが温暖化防止という同じ目標に向かって歩いているように感じられた夜だった。

By CEJ

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