参加記者:米山菜子(16)、富沢咲天(17)、小川真央(18)
修了生:榊文美(25)、三崎令日奈(26)
2013/3/10
| 2012年12月、大阪市立桜宮高等学校で、部活動の顧問教諭から体罰を受け、生徒が自殺する事件が起こった。その後も全国で体罰の問題が明るみにでている。 チルドレンズ・エクスプレスでは、駒大苫小牧高校野球部での体罰問題が報じられた2005年にも「教育と暴力」について座談会をした。今回は、当時の記者と、現在高校生である記者とで、運動部での指導について話し合った。今、高校生記者たちは、教育の場での暴力についてどのように考え、どのような指導を求めているのか。 |
■体罰問題、身近にはない
真央:まず初めに皆さんに意見をお聞きしたいのですが、大阪の桜宮高校の体罰問題のニュースを聞いてどう感じましたか?
菜子:私は小学校低学年の頃から、新体操や水泳とかロックソーランなど様々なスポーツをやっていて、今はバスケット部に所属しています。しかし、私の周りでは体罰を受けている人、している人をまったく見たことがないので驚きました。
咲天:私も今まで体罰というものを受けたことがないので、びっくりしました。私の学校で厳しいとされているバスケ部でも体罰は無いので、そのニュースを見て、こんなに手をあげる先生がいるんだなと。特に、小学校の頃に住んでいてた、アメリカでは暴力に対してとても厳しいので、こういうニュースもあまりなかったので驚きました。
真央:私は中学時代テニス部に入っていたのですが、顧問の先生から暴力を受けるといったことは一切無かったので、このニュースを聞いた時非常に驚きました。体罰は目にしたことがなかったので、このニュースを聞いてどこまでが体罰なのかということを疑問に思いました。
菜子:私の顧問の先生はかなり厳しい先生ですが、暴言を吐くことも暴力を振るうこともありません。しかし私の友だちの学校では、一人体育科の先生が普通に暴力を振るっていて、学校側はそれも知っているし、生徒もその先生は暴力を振るう先生だっていうことを知っていて接しているそうです。なので、意外と身近に体罰はあるのかなと思いました。
咲天:これは学校の話じゃないのですが、先日、私の友だちが、確か空手などのスポーツクラブに入りたいと電話で問い合わせたところ、「うちではよっぽどのことがない限り暴力はないけれど、ごくたまに手をあげることがあります。そういうことがあることを了承してください」と入る前に言われたことがあって、大阪での体罰問題があった後にも、まだこういうことがあるんだと驚きました。
■学校の変化
菜子:、体罰は無いと言ってましたが、それでも大阪の事件があってから、学校側で体罰に対しての対応に変化はありましたか?
真央:ずいぶん前からこういった問題がメディアで取り上げられてきたと思うのですが、それを聞いて教師側も敏感になっていて、今は教師より生徒の方が立場が強いんじゃないかな、と私は感じました。例えば先生が「やる気がないなら帰れ」と言ったら、今の子どもたちは、本当にそれで帰ります。
文美:先生に帰れって言われたら本当に帰ってしまう人が多いなんて、びっくりしました。それで帰ったら練習時間が減るから、強くなれないと思いますが、どうなんでしょう。
真央:全員が帰れって言われて帰ってるわけではないです。私はテニス部だったのですが、帰れって言われて帰る子たちはテニススクールで個人的に練習していて、別に部活でテニスを練習する必要性もないので、帰っても問題がなかったんだと思います。
菜子:今は生徒の方が強いというよりも、生徒の保護者の方が強いのかなと思います。私の学校に限らないと思うのですが、親が子どもを保護しすぎる面があると思います。ちょっと暴力を振るわれて、子どもは親に先生を責めてほしくて言っているのではなく、「こういうことがあったんだよ」というのをさりげなく話した場合でも、保護者が怒って学校に抗議という話も聞きます。やっぱり親が保護しすぎて過保護になっているのかなと思います。
咲天:体罰問題において、昔はこういう体罰っていうのは常態化していて、できなかったら先生にぶたれるというのが当たり前だと思っていた。けれど、今は嫌なことだったら嫌って言えるし、自分の身を守ることができるんだという認識があるから、変わってきたんだと思います。
菜子:昔は先生の立場が偉大すぎて、あまりものを言えない師弟関係があったと思います。しかし今は、先生との関係がかなりフランクになっているので、嫌なことは嫌と言えるような先生と生徒の関係を築ければ、体罰はなくなると思います。
■部活動での教師と生徒の関係
令日奈:先生と生徒たちの立場がくっついてきて、結果的に良かったと思いますか?「帰れ」と言われて帰ったら、テニススクールに行って個人的に技術が向上しても、その場にいるみんなではスポーツをある程度うまくなるという課題を達成できないので、、チームとしては別に強くはならないと思います。それとも、みんなが楽しくできるようになったから良かったのでしょうか?
咲天:先生と生徒の立場が上下関係があまり無くなってきて、一緒になってきたことはいいと思います。先生も生徒もお互いに学ぶことがあるし、一緒に成長できると思います。でもそれを利用して、例えば生徒が自分勝手に、「もう練習嫌だから勝手に帰る」というのは違うと思います。
真央:私は教師と生徒の関係が近くなってきて、あまり力関係に差が出ないことで、体罰に陥りにくい環境ができてきていると思うので、その面では賛成です。しかし、運動部ならではの厳しい指導や経験というのは、社会に出てすごく強みになるとも思います。
菜子:私の部活は先生がかなり厳しくて、みんなは「先生が言うことは絶対」という雰囲気が流れています。しかし、その先生は体罰を振るうこともなく、みんなから嫌われることもなく、尊敬される存在となっています。それは、部活中はとても厳しく指導してくれるけれども、部活の場を離れたら、上下関係は無くなりませんが、かなり近い関係で話してくれるからで、先生が慕われるにはオンとオフの切り替えが大事だと思います。
令日奈:先生にとっては体罰を振るって生徒を従わせるよりも、振るわないで従わせる方が今難しいと思うから、そこにすごい工夫が必要なんじゃないかなと思っています。
菜子:今は暴力を振るう先生は、みんな怖いと思って従うのではなく投げ出すと思います。その怖い先生に暴力を振るわれてまでもスポーツや部活動をしない、という子どもがいると思います。逆に暴力を振るわない、怒らない先生の方が、今流行りの「ゆるい」という言葉で、みんなが好きになったりすると思います。実際に私の友だちは、一人の先生をすごく好きだったけれども、一度、部活中にちょっと怒られただけで、「もう嫌いになった」と言い出したので、今の子どもは怒られることに慣れていなさすぎると思います。
真央:怒られることに慣れてないな、というのは私も実感しています。でも、たぶん「怒る」がだんだんエスカレートしていくと体罰になると思うのです。大阪の桜宮高校では自殺してしまった子の前の代でも体罰は実際に起きていて、先生が子どもとちゃんと向き合って、人によって指導の仕方、叱り方、指導方法を変えていけたらいいなと思います。
咲天:私は先生がいかに暴力を振るわずに、生徒との信頼関係を築いて指導していくかというのが試されていると思います。それができるのがいい先生、教える力があるというんじゃないかなと思いました。
■先輩からの指導が効果的
令日奈:どういう指導の方法が今の子どもに効果があると思いますか?
真央:今の子はたぶん教師から怒られてもあまり心に響かないと思うので、やはり世代が近い先輩方から厳しい言葉を言ってもらったりすることで、心に残るのではないかと私は考えています。
菜子:実際に私が中学生の頃は先生が言うことよりも、先輩が言うことの方が強いという雰囲気が流れている時もありました。それで実際に先生が「先輩の言うことは絶対じゃないぞ」と怒ることもあるほどでした。
文美:先輩からだったら、例えば言葉の暴力を受けても大丈夫なのですか?
真央:私の部活では、月に一回ミーティングが開かれて、全員で立っていて順に反省文を言っていく風習がありました先輩から厳しい意見をいただき、次の部活でどう動くかということを同じ学年で話し合いました。ミーティングを乗り越えることで同じ学年の絆も強まりますし、部活もどんどん改善されたので、先輩からの意見は大事だと思います。
咲天:私は現在テニス部に所属していますが、先輩から暴言は一回も無くて、とても優しい先輩たちで叱られることもありませんでした。先輩でも先生でも、暴言や一方的に叱るのは良くないと思います。上から目線で叱られると下の学年の方も嫌な気持ちになる。「こうした方がいいんじゃない」というふうに、アドバイスをお互いに与えあって改善していくのが一番いい方法だと思います。
真央:私は高校の時はチアリーディング部に所属していたのですが、その時は先輩から厳しい指導がありましたが、全部怒るのではなく、たまに程よく褒めることをして飴と鞭みたいな関係でやっていたので、つらい部分もあったのですが、褒められることによって、次がんばろうという気持ちになりました。一方的に怒るという感情だけではなく、褒めるという姿勢を加えれば先輩からの厳しい意見も心にしみると思います。
文美:先輩に「上から目線で言われるのは嫌」と言うけれど、先輩は目上だから、上から物を言われるのは当然ではないの?
咲天:目上ですが、部活をやっているうえでは同じチームで、もちろん敬語は使いますが、絶対服従みたいな感じではないと思います。
文美:なるほど、新しいなと思いました。
菜子:私がバスケ部に入るちょっと前まで部活内のルールがありました。その部活内のルールを守らせることで先輩との上下関係ができていて、そのルールはそれをおかしいと思った先輩が無くしてくれたのですが、実際にそのルールが無くなってから上下関係があまり無くなって、先輩と後輩が友だちのようになってしまったと、卒業して来た先輩が言っている時もあります。
令日奈:その部活でしか通用しない独特のルールがあることについてはどう思いますか? 例えば桜宮高校のバスケ部も特殊な環境だったから先生が暴力を振るえていたし、それで強くなった。特殊な環境だったからこそ、ここまで人に知られることがなかった。どういうルールもちょっと閉鎖的な、そこでしか通用しないルールなんだけれども、日本の学校では、部活は一回入ったら卒業するまで普通は続けるから、どんどん脈々と受け継がれていく。アメリカのシーズナルスポーツみたいに、シーズンごとにやるスポーツが変わってたらもっとフランクになると思うんですけど、どうなんでしょうか?
菜子:私の部活は中学校の時は独特のルールがあって、例えばエレベーターに乗ってはいけないとか、バスの中で荷物を置いてはいけないとか、座ってはいけないとか。中学生の時はそれを守らなければいけないけれども、高校に上がったら暗黙の了解で無くなるというルールでした。今は中学でもそのルールは無くなったのですが、私は実際に中学生の時はそのルールを守っていて、先輩が目上の人だということを学んでから、高校で同じチームとして、上下関係があったうえで、チームワークを作るというのは一つの方法だと思います。
令日奈:それは続けないとわからない良さというか、チームの絆なんでしょうね。
菜子:中学でそのルールが嫌で退部してしまう場合は、私の勝手な意見ですが、高校の厳しい練習にはついてこられないと思います。
咲天:ルールはあってもいいけれど、ボール拾いや掃除は全部一年生がやるというルールは「なんであるのかな?」と思います。
菜子:実際に私が中学生の時に初めてルールを聞いた時は、「え、なんでエレベーターに乗っちゃいけないの」「なんで荷物を置いちゃいけないの」と不思議でした。私が入る前は先輩に「靴はいていいよ」って言われるまで体育館の中でバスケットシューズをはいてはいけないという意味のわからないルールもありました。でもこのルールが不思議なことに、部活の中にいるとだんだん不思議じゃなくなってきて、それが当たり前になってくるので、一種の洗脳みたいな感じで、客観的にふと見た時に怖いなとも感じます。
真央:例えば下級生がボールを拾う、というようなことは、ルールがあることによって、どの学年も必ず一回は経験する。厳しいルールの存在は、私は大事だと思います。でも桜宮高校ではルールというか環境が、第三者から見ることが難しかったので、体罰や行き過ぎた指導に至ったと思います。ルールをもっと開放的なものにすればいいのではないかと私は思います。
咲天:私のテニス部では、ボールを絶対に拾わなければいけないというルールはなくて、逆に「先輩後輩で境目をつけてはいけない」と先生に教わってきたので、お互い上下関係なくいっしょに部活をやっていく、というのがいいと思いました。
文美:だいたい下級生に対して負荷が大きいルールが多いと思うんですけれども、それって負荷が無くなった、つまり優遇されてる方の人たちに本当にいいのかなと疑問に思います。一年生が全部掃除をしてくれて、二年生が全部一年生の指導してくれて、三年生は何も雑用をしない、というようなのは、三年生にとって本当にいい指導なのか、と。
真央:上級生になると受験の問題も深刻になってきて、下級生よりは部活にかける時間があまり無いです。なので下級生に仕事が多いというのは、私はいいシステムだなと思っていて、役割分担をすることによって効率もいいと思います。テニス部の場合で言うと、ボールは後輩が拾うんだ、となっていれば、先輩がボール拾うのを待つことはない。部活の効率化も図れると思うので、下級生に負担があるというのは私はいいことだと思います。
菜子:私が下級生の時に、ルールにのっとって、いろいろな先輩のお世話ではないけれども、ボール運びなどをしてた時は、中学に入ったばっかりで部活が初めてだったので、「ああ、部活やっているな」と感じる瞬間でもありました。実際に三年生になると、チームのメインの学年になるので、「そんなことまでやっている暇があったら練習をしたい」という思いが大きかったので、三年生ほど練習に本腰を入れなくても良い一,二年生がその他の雑用と言われることをやって、三年生は引退などに向けて必死に練習するっていうシステムはいいと思います。
咲天:私は、最初の一,二年間をずっと雑用をしていて、本当に部活が楽しいのか疑問です。自分もボールを打ちたいし、先輩と一緒に活動もしたいし、ただ片付けをしてるのは楽しくないと思います。
真央:片付けも運動になると思います。ボール拾いでも、そこで体力をつけて、上級生になってからメインの仕事、テニスを打つということできる。それが耐えられないなら、自分でスクールに通うなど工夫をすればいいと思います。
菜子:私の部活のルールは部活中には全く適用されず、部活中は先生の言った通りに動きます。先生も、学年ごとに差別はせず、みんな同じようにプレイをしていたので、プレイ自体には問題はありませんでした。そのルールは部活が始まる前と最後などがすごい忙しいだけで、部活にはなんら問題がなかったので、部活をやっている分には楽しかったです。
令日奈:咲天ちゃんの話を聞いていると、すごい進んでいる今の部活っぽいなと思います。すべてのルールに目的があって、上級生と下級生がちょっと争ってるくらいが理想的なのかな、と思います。例えば、テニス部でボールが転がっているのを取る時に、少しでもボールに触れた方がうまくなると考えるなら、上級生も走って取りに行くし、それに負けないように下級生も走る。そういう緊張感があった方がお互いにとって、立場はフラットでもうまくなると思います。
菜子:私の部活は練習時間外のルールによって、上下関係がとてもはっきりしていますが、部活中はみんなで競い合っているので、理想かもしれないです。
真央:上下関係は必要だと思うのですが、部活中はなるべく無くすようにして、スポーツをしている時間は上下関係はなるべく考えないで、スポーツ外は上下関係を生かして、社会に通用できるような人物に成長できると一番いいのではないかと思います。
■理想的な指導
菜子:私の理想的な指導は、先生は今みんなの学校のようにある程度フラットな関係でいて、その中でその下にいる先輩が後輩をある程度の厳しさで指導をします。その先輩の指導があまり厳しすぎると客観的に見ている先生が止めに入る、というのがちょうどいいと思います。
咲天:私が思う理想の関係は、先生は技術面で指導をして、先輩後輩はお互い、後輩は先輩を敬いはするけれど、同じチームとして対等に、一緒にスポーツをしていくのが一番楽しくて成長できるのではないかと思います。
真央:先生は体罰のような指導をせず、あくまで技術だけのことを話し合う関係でいて、先輩からは厳しい言葉を、指導をしていただき、それを乗り越えることによって、新しい団結力とか忍耐力が付くと思うので、上下関係は残していけばいいと思います。褒めるという姿勢も同時進行で行えばいいと思います。
令日奈:先生の立場では、学校の勉強もやって、部活も一生懸命やる、というのが一番いいと思うので、そういうのをやってもらって、もうちょっと部活や体育の場が、自分で頭で考える場になればいいかなと思います。今、私より世代が上の人の話を聞いていると、「自分は一滴も練習中水飲めなかった」とか、「先生に脳しんとう起こす直前までたたかれた」とか、「すごい厳しかった」という自慢話をする人がいるんですけど、どうやったら強くなるのか、もっと上級生も下級生も考えた方が良いと思います。頭を使って考えた結果、みんなで納得した練習方法ができるのが、一番スポーツにとってはいいのかなと、思いました。部活の上下関係は、社会に入ってから分かったことですが、社会に入って使えなくもないです。昔、体育会で部活動をやっていた人は、先輩とのつきあい方がうまいなと思うから、それは程よく残ればいいのかなと思います。
文美:体罰や暴力は、社会に出たらあまり通用しない、告発してしかるべき処置をしてもらうというのが正しいと思うので、それを耐えることが、社会に出て何かの役に立つってことはないと思います。ただ、先輩との上下関係、自分が目下だから雑用を進んでやるというような動きをすることは評価されることなので、役に立つからできてもいいのかなと思います。このラウンドテーブルの理想の教育で思ったのは、指導者から教わるのは技術だけでいいっていう話があって、人格形成は先輩や仲間同士のうちで磨かれるという認識が学生の間であるということに驚きました。それは私も理想的だと思います。
以上
参考リンク:2005年に行った「教育と暴力」座談会
2004年夏の全国高校野球大会で優勝した駒大苫小牧高校野球部で、部長による部員への暴力がニュースになった。
スポーツでは暴力が訓練の一つとして使われる風潮をCEの記者たちはどのように見ているのだろうか。
運動部を経験した高校生記者たちが教育の場での暴力について語った。





Tsuneo Matsumura, Acting Chairman of the National Association of Crime Victims and Surviving Families (Asu no Kai) insists that capital punishment is necessary. He said “the possibility of wrongful convictions cannot be a reason to abolish the death penalty; it is the duty of the police to carry out proper investigations. The crime victims and surviving families demand the death penalty and such demand has nothing to do with wrongful convictions.” “If you support respecting the human rights of criminals, then the same holds true for the victims and family members perhaps even more so.”
Shizuka Kamei, the chairman of the diet members group for abolishing the death penalty, advocates its elimination. As a former public official belonging to the Police Agency, he stated that it is impossible to prevent 100% false accusation. He said “even criminals should have their human rights protected. The government must protect their rights because it is its duty.”





