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Changing university admission system in Japan

Changing university admission system in Japan

by Rui Murakami(14)

   The Japanese government is planning to reform the National Center Test for University Admissions ( “Center Test”) and introduce a new achievement test to assess academic achievement of applicants to universities more accurately.

As one of the high school students affected by the introduction of this new standardized test, I am eager to know when it will start and what it will be like and furthermore, why is the new test system being launched now?

According to the protocol, the Center Test aims to assess test takers’ basic learning and performance in high school to help public and private universities evaluate how well applicants are academically prepared for college. How the test score will be used is up to each university.

One of the major criticisms of the Center Test is that it is only offered once a year. Even if the test takers miss the exam due to illness or any other reason, it can not be rescheduled and they have to wait until the next year. Their efforts over the years are in vain in such cases. The second problem is its multiple choice format. It is often said that you might get a right answer in the Center Test by rolling a pencil as a dice and get a high score by chance.

The new test will use the frameworks of the GCSE level and the GCE-A level in Britain, the SAT in the US and the baccalaureat in France as references. However, every test has pros and cons. Therefore, I interviewed young British journalists of Headliners, Children Express (CE)’s sister organization, who had taken GCSE during my visit to three Headliners offices as part of CE’s summer program in 2013.

131025_test970   One of the major differences from the Japanese Center Test is that the British test is divided into two levels: the GCSE level and the GCE-A level. The first one is designed for ninth grade students in junior high school and the score can be also used to prove qualifications for those who do not continue on to college and seek a job. Some of them may choose vocational schools, but they are not so popular because of the expensive tuition. For young people who start working right after school, the GCSE score is the only certified qualification. Regarding the disadvantage of the system, those who had already taken the test as well as those who are preparing to do so said unanimously, “It is too early to decide your future at that age.”

After taking the GCSE, the next stage is the GCE-A level, a prerequisite for university admission and similar to the Japanese Center Test. Test takers can choose the subjects depending on their chosen college enrollment requirement. On the one hand, it enables them to discover their competencies and inspires their curiosity given a broad range of subject choices; but on the other hand, if they change their mind on what to do in the future after starting preparing for the test, they may also need to change the subjects. Although it is possible to do so, in reality it is difficult to catch up with the studies afterwards.

After interviewing those who had taken the GCSE and the GCE A level, I found that in Britain, high school students have to decide what they want to do in the future early as they have to choose the subjects they will study for the exams. Many of young journalists of Headliners whom I interviewed felt that the Japanese center test is better than the British test system; if you make continuous efforts on study, you will get good scores in Japan and even when you have no idea what the correct answer is, at least you can pick up one answer randomly from multiple choices. However, the majority thought that the British style encourages students to think about their future career early.

I discovered that the British government is planning to reform their test system by implementing “international baccalaureat” for middle school and high school students which can be granted after completing the education program certified by International Baccalaureat Institution. To learn about the reform, I contacted the Ministry of Education.

The main purpose of this reform is to meet the demand from the universities and employers with stricter verification of the precise level of the applicants’ achievements. The historical survey of the British tests shows that applicants’ academic levels have not always matched their selected majors in the universities. The new test will be designed to focus more on the applicants’ intellectual activities than their test skills in order to assess their deep knowledge and intelligence.

While Japan is trying to overhaul the university admission test system, the British test system, one of the model systems for Japan, is also going through transformation. How the Japanese new test is reformed and when such a new test is introduced should be announced well in advance to students, schools and prep schools to reduce their anxiety and unnecessary confusion.

 

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将来の職業につながる教育

瀧澤 真結(15)

 文部科学省がセンター試験を5年以内に廃止し、新たに複数回受験できる到達度テストを導入する方針であるとの新聞報道があった。それによれば文科省はイギリスのGCE‐Aレベル、アメリカのSAT、フランスの国際バカロレアなどの統一試験を参考にするという。では、欧米の試験がどのようなものなのか、現在のセンター試験との相違点はあるのかを調べるため8月上旬にCEの姉妹団体であるHeadlinersのロンドン局、ベルファスト局、フォイル局を訪ねて、実際にGCEやGCSEを受けている学生たちに取材をした。

 イギリスの学生たちにはまず日本のセンター試験は一回で結果が決まってしまうが、複数回受験し、一番良い結果を選択することができるイギリスのGCSEやGCEとどちらが良いかと聞いた。結果は、どの局でも学生たちの意見が分かれた。イギリスのシステムの方が良いと言った人は、「一回ではプレッシャーが大きすぎる」、「どんどん点数を良くしようと頑張るから継続的に成績があがる」、「何度もチャンスが欲しい」という意見だった。それに対して、ロンドン局のプレシャスさん(18)は「複数回受けられると最初に頑張った人と後から頑張った人の評価は同じものになってしまって、最初から頑張っていた人が報われない」と語った。一度だけのチャンスに向けて勉強をする方が、全員平等の結果が出るため、日々勉強している人にとっては一度の勝負が公平だという。

 驚いたのは日本のセンター試験に比べ、GCEやGCSEでは100科目という幅広い科目数から受験科目を選択することだ。そこで、このメリット、デメリットについて聞いた。メリットは、「自分の将来を真剣に考えられるようになる」、「得意な科目、興味のあることを選択することができる」などが挙がった。フォイル局のマイケル君(20)は、「自分のことは自分が一番良くわかっているから、自分にとって良い選択ができる一方で、自分で自分の可能性を閉じてしまうことになるかもしれない」と不安も語った。他のデメリットとしては、「14歳で自分の生涯に関わる科目を選択しなければいけないので、若すぎるのではないか」という意見が多くあった。また、イギリスでは選択した科目を途中で変更する場合は早い段階で決めなければいけないため、他の授業とかぶっていないか、受験枠の人数に空きがあるかなどの条件を満たさなければいけないそうだ。そのため、選択する前に考えることが大事なのだと数人が述べていた。

 最後に将来自分のやりたい職業に就くために大学は必要かと尋ねると、ほぼ全員が「必ずとは言えない」と答えた。理由は、企業はどのような学科や大学を卒業しているかよりも、経験を重視するからだという。ロンドン局のガブリエル君(17)は、記者になりたいと思って、文系の学科などに入って勉強をしても、HeadlinersやChildren Expressなどの子ども記者団体に入って実際に記事を書いたほうが良い記者になれると語った。ただし、医者や先生などの特定の職業に関しては大学は必要だと答えていた。

 各局への取材を終えて、イギリスの制度にも日本の制度と同じようにメリットとデメリットが存在することが分かった。また、日本がマークシート式なのに対して、イギリスでは記述式を重視した試験にしているという違いも知った。イギリスで取材した際、多くの学生がマークシート式の方が当たる確率が高いから受けやすいと答えていた。それに対してフォイル局のケイティーさん(17)は、マークシート式は答えの選択肢が似たりよったりしているので、正確に答えを知らなければいけないから難しいと語った。取材の最後にイギリスの制度と日本の制度のどちらが良いか、最初に聞いたが意見が変わったかと聞いた。結果は完全に変わったという人は少なかったが、どちらの制度にもメリットとデメリットがあり、学生たちのことをよく考えて作られてあると語っていた。 日本の教育制度がこれから変わろうとしているが、どの制度にもメリット・デメリットは存在する。それよりも、私たちの学生にとっては、将来の職業や専門につながる勉強や経験を重視した教育をすることが大事なのではないだろうか。少なくともイギリスはそういう方向であることが感じられた。日本の文科省の判断を待ちたい。

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若者の大学受験のゆくえ

村上 類(14)

 日本の政府は大学受験生の学力をより正確にみるため、センター試験を見直して新しい到達度テストを導入する検討に入っている。若者としては新しい統一テストがいつ始まり、どのようなものになるのかすぐ知りたいところだが、なぜ今新しいテストが導入されようとしているのだろうか。

 そもそもセンター試験とは、「受験生が高校で勉強した基礎的な学習の達成の程度を判定することを目的としていて、国公私立の大学がそれぞれの判断と工夫に基づいて適切に利用することにより、大学教育を受けるにふさわしい能力・適性等をさまざまな面から判定するために実施するもの」と大学入試センターの概要に記してある。

 この概要をベースにして今指摘されている改革理由の第一は、受験の機会が一年に一回しかないことだ。これだと体調をたまたまテストの日に崩しただけで何年もの苦労が水の泡になってしまう。二つ目は回答形式がマークシート式であることだ。「困ったら鉛筆を転がして解答できる」ことで有名なこの方式は、たまたま高得点を取ることができて大学に入学できる可能性もある。

 新しいテスト方式はイギリスのGCSE・GCE-Aレベル、アメリカのSATそしてフランスのバカロレアを参考にするようだが、どのようなテストにもメリットとデメリットは存在する。私たちはこの夏に参加した訪英プログラムの際にイギリス各地にあるCEの3姉妹局を訪ね、GCSEを実際に受験した若い記者たちにインタビューした。

 まず日本のセンター試験と大きく異なる部分は、テストがGCSEとGCE-Aレベルの二段階あることだ。GCSEは日本でいう中学3年生が対象で、このテスト結果は大学に行かない人もその後の就職活動に使われる。大学へ行かない人は職業訓練学校に行く道があるものの、学費が高いなどの理由からなかなか行く人は少ないと彼らは言う。つまりすぐ就職する人にとってはGCSEが唯一の“認定資格”になるのだ。このシステムについて、すでにテストを受けた人もこれから受ける人も「将来についてこの年齢で決断するのは早すぎる」と口をそろえて答えた。

 そしてGCSEを受けた後に待っているのがGCE-Aレベルのテストだ。これは大学へ行くためのテストで、日本のセンター試験に近い。大学入学に向けてということでテストの科目選択をするシステムになっている。このシステムは自分のやりたいことが見つかるし、科目選択の幅が広いので興味が探れるからいいと答える人がいる反面、将来やりたいことが途中で変わった場合、クラス変更は可能だが簡単にはできないし、その後勉強に追いつくのは大変という意見があった。

 GCSEとGCE-Aレベルの二つのテスト受験者の声を聞くと、イギリスではもう高校生の時点で自分の将来については自己責任となっていることがわかる。しかしCEの姉妹団体Headlinersの記者たちのほとんどはイギリスのテストが日本のテストよりもいいと話す。日本のテストは勉強をコツコツとする人にとってはいいし、答えが分からなくても適当に答えられるからいいという意見もあったが、イギリス方式のほうが将来についてより考える機会になると考えている記者がとても多かった。
 
 取材の結果、実はイギリスでも統一テストを改革する動きがあることがわかった。これは国際バカロレア機構が定める教育課程を修了すると得られる資格「国際バカロレア」を中高生に向けて新しく作るというのだ。では、なぜ今改革をするのか。イギリスの文部省に取材した。
  
 GCEのレベルの改革の主な理由は、レベルが的確にできていて且つ厳格であることを確認し、大学’や雇用者の要求に歩調を合わせることと、大学の学者が過去の結果を分析した結果、受験者の水準が常に適切に学部コースに適していないことが要因だと担当者は語った。今後は熟達した準備の熟達度や、それぞれの科目の深い知識と知的能力を図るためにテスト用の学習よりも、学習そのものに焦点を当てたテストにしていくそうだ。
  

 日本で新しいテスト方式を作ろうとしているなか、参考モデルの英国のテストの一つが変わろうとしている。これから受験を控える若者、学校、学習塾などが無用な混乱に直面しないように日本の大学受験改革については実施開始時期を含め、早く決めて知らせてほしいものだ。

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大学入試改革のメリット・デメリット

毛利 真由(16)

 2013年日本政府は大学入試のセンター試験を廃止して新たな試験を実施する検討に入っている。次に用いられる統一試験方法はフランスのバカロレアやイギリスのGCSEを参考にするともいわれる。日本では、なぜ長年続けたセンター試験を見直すのか、そのメリット・デメリットは何なのか。GCSEやA―LEVEL を受験しているイギリスの学生を現地で取材した。

 日本での一番の改革理由は、大学教育で必要な能力があるかどうかを高校の間で身につけた学力で丁寧に測る仕組みが必要であるからと言われている。また、いまのような“一発勝負”ではなくその前段階の学校における評価や達成度を反映することが重要視され始めたこともあるようだ。

 GCSEはイギリスで公認されている統一試験のことだ。これは高校生が受けるもので、一年の間に何度も受験することができる。その評価は大学進学だけでなく就職の際にも必要な資格とされている。複数の科目から自分の将来に役立つ科目を選択することができる。

 これらを14歳で科目選択をするため、幼い時から自分の将来について真剣に考えることになる。取材したCEの姉妹団体のロンドン、ベルファスト、フオイルの3支局で若者の話を聞いた。「自分のことは自分が一番に知っているから自分で選べるのがいい」と17歳の少女は語る。「ある程度将来の方向性を定められるのがいい」「たくさんの選択科目から定められるのがいい」などという意見があった。GSCEのメリットは、自分が得意なものを率先して学ぶことができ、就職のときにもそれが生かされることのようだ。

 だが14歳で必修科目を選ばなくていけない厳しさもある。自分の人生の方向性を決めるのは早すぎる年齢だ。「選ばなかったのも自分の責任なので、自分の可能性を自分で閉じてしまうかもしれない」と20歳のマイケルは語る。将来の夢や職業のことを考えたとき科目を変更したいと思ってももう追いつけないほど授業が進んでいることや、その授業のクラスに空きがない場合も少なくないという。

 自分の意思で科目を選択する人も多くいるが、逆に何をとっていいかわからない生徒や将来やりたいことがまだ決まらない場合は友達と同じ科目をとったり、親の方針の影響を受ける人もいる。

 一方、日本で行われているセンター試験は一度しか実施されないため、直前で何等かの理由で受験できなくなった場合に今までの努力と時間が無駄になってしまう。AO入試では早期合格者の学習意欲の減退が他の生徒に悪影響を与えることや、大学に入った時の一般入試者との実力の差が生じることが指摘されている。自分の可能性を広げ、より多くの可能性を時間をかけて見つめ、学ぶためにはセンター試験のほうが効果的に見える。しかし、イギリスと比べてみると受験機会が一度だけであることや、マークシート式なため文章を“書く”こということを試すことができないなどの問題を抱えた日本の大学入試は改善の余地があるし、新しい試験方法を模索しながら変えていかなくてはいけない段階にきているのだろう。

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大学選び それでいいの?

飯田 奈々(17)

 2012年の冬、田中眞紀子文部科学大臣が、大学設置・学校法人審議会の答申を覆し、3大学の設置申請を認可しなかったことが、大きな話題となった。 結果として認可されたが、この背景には大学教育をめぐる本質的な問題点があるのではないか取材した。

文部科学省岡本仁弘氏と田辺和秀氏への取材
文部科学省岡本仁弘氏と田辺和秀氏への取材

 日本の大学は平成13年から平成23年の10年間で私立大学は103校も増加した。(文部科学省「学校基本調査」より)そして、平成23年度私立大学は45.8%もの大学が定員割れとなった。このような現実に加えて少子化も進んでいる。なぜ大学は増え続けるのか、今後どのようにして定員割れを克服すればよいのか。文部科学省高等教育局高等教育企画課の岡本任弘氏と同局私学部参事官付専門官の田辺和秀氏、そして桜美林大学院の教授であり「消える大学残る大学全入時代の生き残り戦略」の著者でもある諸星裕氏にインタビューした。

 岡本氏と田辺氏によると、大学が増え続けているという考えは間違っているのだという。私立大学の増加というのは私立短大から四年制私立大学への移行が多いためであり、全体の大学数は平成13年から減少しているそうだ。

桜美林大学院 諸星裕教授への取材

 また、諸星氏によると「日本の少子化が直接大学の定員割れに繋がっている訳ではない。少子化も進んでいるが、大学進学率も年々上がり、今では50%の日本人が大学へ進学する。これは大学の定員とほぼイコールなのだ」と言う。さらに、「それにも関わらず定員割れが起こる理由は、多くの日本人が少しでも上の有名大学に進学することを望むからだ」と述べた。

 定員割れを克服する方法として、諸星氏は若者一人ひとりの大学のとらえ方と日本の大学のあり方を変えることを提案した。
1つ目は、前述したように多くの日本人が少しでも上の大学、そして名の知れたブランド校に進学することを望む以上定員割れが起こることは当たり前である。しかし大学には、個々に合った大学があり、自分が一番成長できるであろう大学がその人にとって良い大学であり、大学に「入る」ことが目的ではなく、大学に入り「学ぶ」」ことが目的であることを意識して大学を選ばなければならない。すべての人の持っている良い大学と悪い大学の概念を変えることが大切であると語った。
2つ目は日本の学生は学部に入るから、在学中に自分の分野を変えることを容易にできない。しかしこのような調査結果がある。アメリカの大学に入学した1年生に「何を勉強したいですか?」と聞き、1、2年生で教養を身につけた後、3年生になって入った学部と1年生のときにこたえた分野が同じだった割合はたった28%だったのだという。このように若者のニーズは変わりやすいのだから、アメリカのように1、2年生の間はどこの学部にも所属せずに教養を身につけ、3年生になって学部を決めるという制度にするなど、その学校独自の制度を作ることも有効であると語った。

 岡本氏と田辺氏はニーズ調査を地域ごとにしていくことの重要性を指摘した。地域によって不足している学部や求められている学部が違うのだから、それをきちんと把握し、大学設立後もニーズの変化にあわせてどんどん変えていく必要性を訴えた。また、大学ができた地域にはそこの学生によって地域が活性化することにも繋がるから、地域と大学が連携していくことが、これから大切になってくることだと述べた。

 すべての取材を通じて共通していたことは、「大学は時代やニーズに合わせてどんどん変わっていくことが求められている」ということだ。それにともない、私たち高校生一人ひとりが責任をもって大学を選ぶことも求められている。狭い視野で大学を選ばずに、日々アンテナをはって様々な情報に触れ、今まで意識してこなかった新しい視点で大学を見定めることも重要である。

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大学の秋入学に向けて

大学の秋入学に向けて
2012/10/16               小川 真央(18)

 東京大学が秋入学の全面移行に向けて学内で検討組織を立ち上げて実動き始めたことを契機に、メディアが大々的に取り上げ、注目されるようになった「秋入学」。学生、大学、経済、社会にどのような影響を及ぼすのか、今、教育界・産業界・政府といった様々な場で議論されている。今回、関連する諸団体を取材し意見を聞いた。

 秋入学実現に向けていち早く動き出している東京大学・総合企画部長期構想担当課長の小野寺多映子氏は、東京大学は正式に秋入学を導入すると決めた訳ではないと強調したが、チャレンジ精神や高度なコミュニケーション能力をもつ「タフでグローバルな東大生」を育てるという教育理念に沿って秋入学を教育改革の手段として検討していると語った。同氏はまた、秋入学によって生じる高校卒業から大学入学までのギャップタームについては前向きにとらえ、知的な冒険・挑戦の機会であり、社会体験によって視野を広げられるし、大学での学問の全体感の構築など学習期間として有意義な時間を過ごすことが可能であると指摘する。学内にも、ギャップタームのある課題が特に大きい問題と考えている数理系の先生を中心とした秋入学反対派が存在するとの問いには、反対派の意見は問題点を提示し、解決策を考えるきっかけになっているため貴重であるとも述べている。

 また、地方の国立大学である徳島大学の高石喜久副学長・理事は、秋入学に対し、地域の差により生まれるデメリットは無いと語った。その上で慎重にならざるをえない理由として、秋入学が導入されることで地方に留学生が集まるか不明である点、就職・国家試験の時期とのずれといった社会整備が整っていない点を挙げた。しかし、日本全体としてグローバル化が必要との認識は他大学と変わらないため、教育改革の一環として秋入学を視野に入れており、大学院は既に春入学に加えて秋入学を導入していると述べた。

徳島大学の高石喜久副学長・理事

 日本経済団体連合会・社会広報本部主幹の長谷川知子氏は、産業界としては大学の秋入学に対し基本的に歓迎であるという。少子高齢化やブラジルやインドといった新興国(BRICs)の台頭など、現在の経済危機において日本にグローバル人材は必要であると実感しているそうだ。そこで、秋入学が日本の学生の国際化の手段として機能すれば、最終的に日本企業の国際競争力の強化につながると考え、大学に協力していく姿勢を見せている。学生の不安要素である就職時期については、企業は一括採用以外でも柔軟に対応できると述べ、どの程度の数の大学が秋入学に移行するかを見極め、採用方法を考えていることを示唆した。

 文部科学省・高等教育局大学振興課課長補佐の白井俊氏は、秋入学を目指す大学に対しては支援をしていき、春入学を維持する大学に対しては秋入学を強要しない柔軟な対応をとると述べた。文部科学省は、秋入学の支援として、ギャップタームにおける体験活動の枠組みを提供する、産業界へ採用制度の変更を促す、国家試験の時期を変更することなどを具体的に考えている。 秋に移行した場合に6ヶ月間不足する運営資金の援助に関しては、国民の税金を使うことになるため国民の理解を得なければならないとする一方で、国際化を積極的に実施していく大学の取り組みに対しては援助する意向を示した。 確かに秋入学を実施することで学生達が強制的にギャップタームを過ごさなければならない点、就職活動への影響が出る点、半年間の身分の所在が不明確である上にアルバイトをすれば年金を支払わなければならない点、国家試験の時期にずれが生じる点、コストがかかる点など数多くの問題があることは事実である。しかし、複数の大学が協調することで、産業界や政府と連携が可能になり、秋入学に向けて社会の基盤は整っていくだろう。各大学の方針は尊重するべきであり、全大学が秋入学にする必要はないが、秋入学は日本の教育改革の一つの有効な手段になるのではないか。5年後の秋入学の導入まで社会がどのように変化していくか注目したい。

日本経済団体連合会(経団連)社会広報本部主幹の長谷川知子氏
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国際化の一歩としての秋入学

瀧澤 真結(14)

東京大学・総合企画部長期構想担当課長の小野寺多映子氏

 東京大学の秋入学への全面移行という記事が目にはいった。秋入学とはどのようなことなのか、中高生にとって好ましい影響があるのか、どんな障害を乗り越えなければいけないのか疑問をもち、東京大学、産業界、文部科学省、徳島大学に取材をした。

 東京大学・総合企画部長期構想担当課長の小野寺多映子氏は「東京大学は秋入学に全
面移行するというのは、まだ決定事項ではなく、真剣に検討している段階だ」と述べた。東京大学が秋入学を検討するようになったのは、濱田純一総長がタフでグローバルな学生を育てたいと考えたからである。タフでグローバルな学生とは、知的でコミュニケーション力があり、リスクがあっても挑戦できる国際的な学生のことであり、そういう学生を育てる一つの手段として秋入学を検討することとしたのだそうだ。
 
 だが秋入学にはギャップタームや就職活動などの問題もある。ギャップタームとは東京大学の造語で4月から9月まで大学などの授業が始まるまでの間(東京大学の検討案には学生の身分をもたないパターンもある)、自主的な活動をする期間のことだ。小野寺氏は「その間は、ボランティアや留学、勉強などのプログラムを用意し、経済的な支援をしてあげれば有意義にすごせるし、企業は通年採用に方針を変えてきている」と語る。そのうえで、「とにかく、日本の今の教育のままでは世界との競争に負けてしまう。東京大学が先頭をきってグローバル化に向けて一歩踏み出し、日本全体の改革のエンジンになることが求められている」と小野寺氏は東京大学の決意を示してくれた。
 
 日本経済団体連合会(経団連)社会広報本部主幹の長谷川知子氏によると、経団連もグローバル人材の育成を目指していて、秋入学は日本人の国際化に向けた一つの手段だと歓迎している。ただ、日本中の大学全てが秋入学に移行しなくてもよいと考えており、国際化を目指している大学にはサポートをするという方針だそうだ。
文部科学省・高等教育局大学振興課課長補佐の白井俊氏によると、文科省でも秋入学をサポートしていきたいそうだ。ただし、就職時期の問題や年1回の国家試験の問題については、産業界や関係省庁の協力を得なければならないそうだ。また、秋入学へ移行するまでの運営資金も、文科省が補助する場合は国民の税金を使うことになるので、そう簡単には判断できない。しかし、日本が国際化するのは大事なことなので、できるだけサポートしていきたいと語った。
 
  地方の国立大学の一つで、医学部、歯学部、薬学部、工学部と理系の学部の多い徳島大学の理事(教育担当)副学長の高石喜久氏に話を聞いた。高石氏は、「今は都会とか地方とかは関係ない。日本全体が国際化に向けて動き出すべきで、徳島大学も大学院はすでに秋入学を実施しており国際化の一つの手段として考えている」と語った。国家試験時期や運営資金の一時的不足の問題などは、国も支援してくれるのであれば秋入学も視野に入れて進めていきたいそうだ。
 
 秋入学に移行するためには、どのような障害を乗り越えなければならないのだろうか。まず、就職時期の問題がある。東京大学や経団連は企業が通年採用をする傾向になってきているという見方を示しているが、文科省では採用人数に着目すると実際には4月採用がほどんどで、通年採用は僅かな人数に留まっているそうだ。また、年1回の国家試験だが、秋入学になると一年も遅れて試験を受けなければならない。そして、4月から9月までの6ヶ月間の高卒者の身分を考えなければならない。その間アルバイトをしたら年金を納めなければならない問題も出てくる。このような問題は解決できるのだろうか。

 全ての取材を通じて共通していたことは「秋入学は日本の国際化に向けての一つの手段である」ということだ。日本は世界に負けないためにも国際化を目指している。他のやり方で国際化を目指す大学があれば、秋入学を選択する大学もある。さまざまな実験が始まっていることに注目したい。

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AO入試に見る大学の本質

勝部亜世満(18)

 大学全入時代に 2007 年度より突入したと言われるが、人気大学を巡る受験戦争はいまだに過熱中だ。その中では受験生だけでなく、各大学も自大学のカラーやアドミッション・ポリシー(求められる学生像)に見合った学生を確保するための制度改革に乗り出すなど奮闘している。

 その 1 つに「 AO 入試」がある。アメリカの大学における入試専門部署を模したアドミッション・オフィスを設置し、従来の筆記による学力試験だけでは判断できない能力を持つ受験生を、書類・面接等によって選抜するものだ。知識のみに偏らない「大学入試の多様化」を目指したものだが、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス (SFC) による 1990 年度導入を皮切りに、全国各地の国公立・私立大学で定着しつつある。

 今回、こうした入試制度改革によって大学の何が変化したのかを 知るために、 SFC と、国立大学法人の東北大学の担当教員に話を伺った。

 まず、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス (SFC) の AO 入試は出願方式により異なる部分もあるが、それまでの主だった活動実績、高校 3 年間における評定平均などといった書類審査によって一次選抜を行い、それをパスした受験生に対して面接が課され、最終合格者を決定する。

 「本当は 3 日間かけてじっくり面接を行いたい」という前 SFC 総合政策学部長・慶應義塾常任理事の阿川尚之先生は、「本当は能力のある受験生を一次選抜で不合格にさせてしまうことが絶対ないとは言えない」と AO 入試の限界点を指摘する。他方で、「たった数十分の面接で受験生の全てを知ることはできないが、話し方や目を見ると相手の正直さや知的興味、熱意がこちらに伝わる」とも言う。

 阿川先生によると、実際に AO 入試で入学した学生たちの意欲は極めて強く、オリジナルな計画を実現するなどの行動力で、一般入試によって入学した学生にも多大な刺激を与えているという。しかもこの学生たちの SFC に対する愛着は凄まじく、彼らの意欲が大学全体の活性化に直接貢献しているため、 SFC における AO 入試の導入は結果的に成功を収めているのである。

 次に、東北大学の AO 入試であるが、これは後期日程( 2 月下旬実施の国公立大学前期日程終了後、 3 月中旬ごろ前期日程合格者以外から選抜する方式)廃止に伴いその定員を新たにシフトしたものだという。研究者の養成を目的に、どうしても東北大学で研究に取り組みたいという意志の強い受験生を対象にしており、大学入試センター試験、独自の学力検査、評定平均と面接などによる入試で、一般入試に先立って行われる。一定の学力基準に基づいて第一次選抜を行うことにより志願者を絞ることで、大学側のコスト負担を軽減していることも特徴だ。 2000 年度より 2 学部で導入されたが、現在では全学部に AO 入試枠が存在する。

 大学自身が東北地方を代表する立場であるために、夏のオープンキャンパスには東北 6 県を中心に多くの受験生が集まり、東北大学の研究に直に触れて「試食」することができる。また大学側からも東北地方の各高校に教官を派遣し、東北大学の研究活動等を広報していくことで高校との緊密な関係を築き、その高大連携の橋渡しとして AO 入試を位置づけている。

 東北大学高等教育開発推進センターの倉元直樹准教授によると、この AO 入試によって入学した学生の成績は概ね一般枠の学生より高い水準で、学問に対する意欲も高いという。特に工学部においては“先取り学習”として数学・物理学の演習講座を設置しており、一般科目に先立ち単位を修得する学生が大半となる。また AO 入試で不合格となっても一般入試で合格した学生は毎年 100 人以上にのぼり、彼らの受験生活で培われた粘り強さも、その後の研究に生きてくると考えられている。こうして東北大学における AO 入試は、 SFC とはまた異なった形で成功を収めている。

 この 2 大学のように、 AO 入試を大学の活性化に活用している大学が存在する一方、 AO 入試を学生の早期囲い込み、いわゆる「青田買い」に利用して問題化している大学もある。「青田買い」で批判されているのは、経営資金確保のために入学者を一定数確保することが最優先されてしまうことだ。それにより受験期の試行錯誤を経験しない学生が入学し、大学全体の学力低下を進めてしまう。大学は、そうした学生の底上げへ労力を費やすことになり、大学本来の使命を果たすことから更に遠ざかっていくことになる。

 これに関して倉元先生は、「 AO 入試は SFC が素晴らしい才能を発掘するために導入した画期的な制度であったが、多くの大学が専門組織を整えずに追随したことによって、本来の目的とは異なる方向に進んでしまった」と残念がる。

 「大学とは、自分の頭で考える力をつけ、新しい問題に対処する力をつける場所」と阿川先生は述べていたが、そういった本質的な意味での「学問」に取り組もうとする姿勢をもった学生と教授が集まってこそ、大学の意味があるのではないだろうか。 AO 入試は今や「多様化」というスローガンのもと、大学ごとに独り歩きしてしまい、ひとくくりに成否を論じることは不可能に近い。ただ AO 入試の導入によって過熱した受験戦争をある程度冷却できていることは確かである。そして、「大学入試がゴールではない」ことを示そうとする AO 入試に関して考えることは、大学を目指すことに対する本質的な意味について考えることに直結していると言えるだろう。

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AO入試は何のためにあるの?

2010/07/08               宮澤 結( 16 )

 みなさんは大学入試の方法のひとつである AO 入試というものを知っているだろうか。

 AO 入試とは、学力試験の結果だけで合否を決めるのではなく志望理由書を書かせ面接を行うことで受験者の能力と個性を評価する、新しい選抜形式である。 1990 年に日本で初めて慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス( SFC )が導入し、その後多くの大学が取り入れるようになった。

 AO 入試には募集人数の総定員に対する割合や募集時期などに関し法的な規制はなく、選抜方法も学校ごとに自由に設定することができる。したがってその大学に合った学生をとることができるのだが、募集時期を早くすることで大学が学生数を確保する青田買いの手段としているという問題も指摘されている。一言で「 AO 入試」といっても、その方法は大学によって様々なのだ。

 今回は AO 入試を行う多くの大学の中で、独自の方法で AO 入試を確立した国立大学法人東北大学の高等教育開発推進センター准教授である倉元直樹先生と、私立慶應義塾大学の阿川尚之慶應義塾常任理事(前慶應義塾大学総合政策学部長)にお話を伺った。

 「東北大学では、『学力重視の AO 入試』を行っている」と倉元先生は言う。東北大学では、面接を行う前に書類の出願とともに学力テストを行ったり、学部によっては一般受験の人とともにセンター試験を受けて、その結果を添えて出願するそうだ。「事前にテストを行うことで沢山の学生を面接する教員の手間を省くことができるし、学力が高いうえに目的意識の高い学生が入ってくるのです」と倉元先生は語った。

 一方、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス( SFC )では、「テストの点だけでなくその人自身を見ること」に重点を置いている。阿川先生は、「本当は3日間ほどかけて受験者を見たいですね」と語る。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス( SFC )が導入した AO 入試で重視していることをたずねると、個人的な意見としたうえで二つ挙げてくれた。

 一つ目は出願書類だ。「高校生のうちに、将来何になりたいか、なぜこの大学に入りたいのかという問いは一度は考えてもいいこと。応募書類を書くことはそのきっかけにもなるし、同時にその大学についても考えるきっかけになる」と言われた。

 二つ目は面接。実際に会うことでその人の知的好奇心や熱意が分かるそうだ。

 お話を伺った2校は国立大学法人と私立大学であるし AO 入試の方法も異なるのだが、共通していたことは AO 入試を行うことによってやる気のある生徒が入ってくることである。 AO 入試は一般入試に先駆けて行われるために、その大学を第一志望とする人たちが受験する。

 阿川先生は言う。「自分の通っている大学が好きだというのはとてもいいこと。 AO 入試で入学してくる学生には大学に対する関心があるから、意欲が高い。また、そのような学生が他の学生のやる気をうながしている」。

倉元准教授に取材するCE記者

 倉元先生は AO 入試の問題点について「最近の AO 入試は受験生の力を底上げするような入試設計がされていない。したがって学生はテクニックばかりを磨いていて、本当の力をつけずに大学入試が最終ゴールになっている。 AO 入試とは何かという考えを、皆で変えていかなくてはならない」と語った。

 東北大学も慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス( SFC )も、 AO 入試で合格して入る学生が一般入試で入る学生を刺激して影響を与えているのは、 AO 入試を実施する目的が明確であるからともいえるだろう。

 「 AO 入試の本来の目的は何なのだろうか」。学力試験だけで合否を決めない選抜形式であるからこそ、多くの大学で導入されるようになった今、大学も受験生もこの問題をもう一度考えるべきなのではないだろうか。

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AO入試で求める学生像をつくる

富沢 咲天(14)

 学力テストだけでなく面接や志望理由をふくめ合否を判断する AO 入試が 1990 年に日本に導入され、今では多くの大学の受験生たちにはその制度がかなり知られてきている。だが、受験生以外には、「大学によっていろいろな入試方式があるらしい」という程度の知識しかないのではなかろうか。そこで今回、 AO 入試についてもっと深く知るために、詳しい方たちにインタビューを申し込んだ。 

東北大学の倉元准教授に取材

 まず最初にお話を伺ったのは東北大学の倉元准教授。東北大学の AO 入試は、センター試験や独自の学力テストなどを最初に行い、それを通過した人に面接を行うという。学力試験を行うのは、膨大な受験者の人数を試験で減らして時間と手間を省くためだそうだ。学力試験を行う理由はそれだけでない。学力試験を経た学生は、一般入試で入った学生との学力差があまり出ず、大学が学力の劣る学生の勉強をフォローする必要がない ことだ という。

 このように、東北大学はまず学力があった上でこの大学に入りたいと強く思っている人、さまざまな能力を持っている人を求めている。「AO入試だと簡単に大学に入れるから受けよう、とは決して思ってほしくない」と倉元先生は語った。

 次にお話を伺ったのは阿川尚之慶應義塾 常任 理事(前慶應義塾大学総合政策学 部 部長)。 SFC (湘南藤沢キャンパス) の AO 入試 では 主に 書類審査と面接で合否を判定している。 阿川先生によると、 面接では強い意志、意欲のある人、なにか光るものを持っている人、などを積極的にとっている という 。このように向上心あふれる生徒たちは大学に入ってからも活躍し、周囲の学生たちにも好影響をもたらすそうだ。 阿川先生は「 いろいろな制約もあり、 慶應義塾大学 SFC の AO 入試は世界一だとは思わないが、 熱意のある 良い学生を取っていきたい」と熱く語った。

 倉元先生も阿川先生もともに、 AO 入試は大学にとって良い効果があり、導入してよかったと語る。だが、満足はしていない。課題はたくさんある。

 たとえば、 AO 入試は時間も人手もかかる。一般入試とは別に AO 入試用の独自のテストを作らなければならない。また大勢の受験生たちを面接するため、先生たちは多くの時間を費やさなければならない。大学側にとって、これはとても負担だ。

 面接も十分納得できる時間をとっているとはいえない。短時間の面接で、受験生の素質が本当に全部分かるのか、という疑問も残る。「本当は 20 時間 3 日間 くらい面接したいくらい。でも時間は限られている」と阿川先生は言った。

 倉元先生は「最近の高校では大学に入るため、試験に合格するためだけの勉強しか行っていない傾向がある。本来学校というものはそのようなことを教える場所ではない。大学に入ることだけが人生の目的のようになっているが、それは違う。本当のゴールというものは大学を出てからあるものなのだ」と語る。そして「 AO 入試を理想の入試に近づけたい」という。

 阿川先生のお話で、大学の卒業生に望む「 Decent 」という言葉が印象に残った。人として正しく生きるというような意味だという。勉強ができる、仕事ができる、経済的に豊かになるなどの成功だけではなく、人としてどう生きるべきかは、自分の頭でよく考えなければいけない。

 そもそも AO 入試というものが日本で導入されたのは、時代の流れで社会が求める人材像が変わり、それに対応するためといわれている。以前は 経済的に 安定した 経済の 社会で あったため 、みんなほどほどの同じような能力が求められた。しかし先行きの見えない不安定なこれからの社会では 、 与えられた課題ができるだけでは十分ではなく、「課題を自分で見つける力」、「自分の頭で考え解決する力」が必要だ。どんなに勉強ができても、なにか深刻な問題が起こった時に、問題に対処するために自分の頭で考える力がないと困る。これからの学校 で は単に知識を詰め込むだけでなく、自分で考える力を身に付けなくてはいけないだろう。そのためにも、学生に自分で考える力をつけさせ、行動力や意欲を引き出すのに AO 入試が活用されるべきだと言えよう。

 今回の取材ではたくさんある AO 入試の中で、二つの大学の AO 入試の現状を知ることができた。これらの大学の AO 入試の意義、問題点は他の大学の AO 入試とも共通しているのではないだろうか。

 取材前、「大学は、将来なりたい職業につくために行っておくべきところ」、「 AO 入試は早く合格が出ていいな」くらいにしか思っていなかった自分の甘さを反省した。大学は、学力も必要だが自ら考える力を持つ学生を求めていて、そういう力を持った学生は社会に出ても通用するということがわかったからだ。

 日々なんとなく過ごしている私には、意欲も意志も考える力も全然足りない。今回お伺いした先生方の言葉を心にとめて、もっと自分の頭でとことん考え、弱い意志を鍛えていこうと思う。

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受験者の熱い思いが評価されるAO入試

寺浦 優(15)

 大学に入学するための一つの手段、それが AO 入試である。

 AO 入試では、学力テストを行う学校は少なく、高校 3 年間の取り組みなどが評価される。では、 AO 入試とはいったいどんな入試なのだろうか。

 今回、慶應義塾理事(前総合政策学部長)の阿川尚之先生 (59) にお話をうかがった。

 AO 入試(アドミッション・オフィス入試)は、 1990 年に慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス( SFC )の総合政策学部と環境情報学部が設立されたときに、日本で初めて導入された。筆記による学力試験の結果による一面的な能力評価ではなく、書類選考と面接試験によって多面的、総合的に評価する入試形式だ。

 SFC では近年志望者がおおむね増える傾向を示しているという。また、 SFC が実施した 2005 年の調査によると、入学後の成績、活動、学術・芸術・社会活動・文化活動において優れた成績を挙げた学生を大学内で顕彰する「塾長賞」や「塾長奨励賞」などの受賞実績において、 AO 入試で入学した学生は一般入試で入った学生より良い結果を出しているそうだ。

 阿川尚之先生は、「個人差はあるが、 SFC を志望するにあたり、 SFC について調べ、訪れ、大学で何をしたいか考え、文章にする。その過程で SFC が好きになる人が毎年相当数存在する」と言う。さらに、 AO 入試で入学した学生の多くは、入学後も積極的で、その意欲がキャンパスを満たし、一般入試の学生に刺激を与えるという。

 阿川先生は個人的に「 AO 入試では、面接を大事にしている」と言っていた。その理由はいったい何なのか。

 それは、近年 AO 入試対策の塾などで、大学に受けがいい志望理由の書き方などを教わる人が出てきたからだ。その文章を本当に受験生本人が自分で書き、思いを素直に伝えているかどうかどうかが必ずしもはっきりしない。大学としては本人に直接質問することで、本人が自分の力で考える力を有しているかを見抜き、欲しい人材を選抜する。だから面接が重要なのだ。

 しかし、面接の時間は限られている。それに、まず大学入試で緊張しない人などいないだろう。そんな、緊張と限られた時間の中で、面接官の質問に完璧に答えられる人などは数少ない。その点について聞くと、阿川先生は「大学は、ただ勉強をする場所ではない。考える力を身につけるところ。すぐに答えられなくても、考える姿勢と意欲が大切」と言う。

 AO 入試は、この大学にどうしても入りたいという熱い思いがある人にとっては、嬉しい入試方法だ。大学に行くのなら、好きな大学に行って好きな勉強や研究をしたほうがいい。そのほうがやる気も出るし、考える姿勢も強化できる。結果的に大学生活がエンジョイできるとも言えよう。

 ただ残念なことに、今世間では AO 入試を廃止したほうがいいなどと AO 入試を批判する人もいる。確かにテレビや新聞で、大学の新入生の学力低下が指摘されている。しかし、考える姿勢や意欲は、ペーパーの学力テストだけでは計れない。 AO 入試だからこそ見てもらえるのだと思う。受験者の熱い思いや、意欲も評価してもらえる AO 入試のメリットは、大きいのではないだろうか。

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自分を表現する力が大切~阿川尚之慶應義塾常任理事に聞く~

飯沼茉莉子(13)

 AO 入試に興味のある人なら、慶應義塾大学の湘南藤沢キャンパス( SFC )を知っていると思う。慶應義塾大学の湘南藤沢キャンパスの2学部(総合政策学部、環境情報学部)は 1990 年の開設と同時に、日本で最初に AO 入試制度を導入したことで知られている。今回私たちは自分たちにも読者にも役に立つ情報を得たいと思い、 AO 入試の面接を担当されたこともあり、また総合政策学部の前学部長でもあった慶應義塾常任理事の阿川尚之先生( 59 )に取材をした。

慶應義塾常任理事の阿川尚之先生
慶應義塾常任理事の阿川尚之先生

 SFC の 2 学部の AO 入試について、個人的に気をつけていることは「第一次試験の書類審査で、活動報告書など提出書類を正直に自分の力で書いているか」であり、「第二次試験の面接では、短時間に、自分がどれだけこの大学に興味を持ち、入りたいという意欲があるかをアピールできるか」だと阿川先生は言う。

 つまり、親や塾の先生の手を借りずに文章が書けないといけない。先生は、高校生に完璧な文章を期待してはいないと言う。親や塾の先生が手を入れた文章が第一次審査を通ったとしても、面接では落ちるだろう。面接者は面接の時に、書類に書いてあることを本人が自分で考えて書いたものかを見抜くために相当ひねった質問をしてくる。受験生はそういう意地悪とも思えるような質問にも答えられなければならない。自分で考えて書いていない受験生は質問に答えられず黙ってしまうという。

 面接の時は誰でも緊張するだろう。質問をされても、緊張のあまりすぐに答えがでないかもしれない。しかし、そこで、すぐに答えは出ないけれど一生懸命考えているところを先生たちはしっかりみている。静かな受験生の場合は特に丁寧にみるという。また、この大学に入りたい気持ち、大学に入って何をしたいのか、情熱をアピールすることが大切だという。それには、自分がどういう人間かを面接者にわかってもらうために、自分の言葉で表現できないといけない。

 阿川先生のお話から、合格している子に共通していることは、どれだけ真剣に物事を考えているかであるということがわかる。書類にどれだけ立派なことを書いても、面接で見抜かれてしまうのだ。

 阿川先生は、 AO 入試は多くの受験生の書類を読み、面接を一日中行うのでとても大変だが、自分が会ったことのない個性の強い受験生に会えるのがとても楽しいと言っていた。逆に、もっともらしいことを言うだけの学生には、阿川先生はあまり魅力を感じないと言う。

 今、世間では AO 入試での入学者の学力低下が問題視されているが、阿川先生は、「 SFC は AO 入試をやって良かった」と言う。『日本の論点 2009 』(文芸春秋・編)にも書いているが、「 AO を通じて素晴らしい学生をとることができる」、「生身の若者に接し、その力と意欲を全身で感じ取って合格者を決められる」ので、 SFC では AO 入試を中止したり縮小をするつもりは全くないと言う。これからも SFC の AO 入試は続くだろう。

 AO 入試は、学力試験の点数だけではわからない、受験生の人間性と能力をみることができるところが優れているところだという先生の考えに、私も共感する。成績はずば抜けて良くなくても、自分の人間性や活動内容を評価してくれるところがとても魅力的だと思う。

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