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「Let us in!」私たちも決議の場に!


                                     三崎 友衣奈(18)   

 国連気候変動枠組条約第15回会議(COP15)では、目的とされていた法的拘束力のある温室効果ガス削減目標の同意は難しい。このような懸念は、会議が開幕した12月7日以前からもたれていた。しかし、これほどの事態を誰が予想しただろうか。
会議では先進国と途上国との交渉は決裂に近い状態で、17~18日にかけて各国の首脳がコペンハーゲンにそろうまで、最悪な結果を誰もが想定してしまうような状況だった。そして、会場であるベラセンターの外もやはり混乱していた。

 COP最終週の始まりである12月14日、ベラセンター前には入場許可証の登録を待つ人が長蛇の列をつくった。その列は隣の駅まで続いていた。NGOやメディアの人々である。私たちもそのグループの中の一つで、朝9時から並んでいた。だが、列はなかなか進まない。雪のちらつく中で、国連からのアナウンスは昼ごろの「登録手続きの機械の故障のため一時間に15人しか入場できない」と、夕方前の「入場者が大変多く、会場内の人が出ないとこれ以上人を入れられない」という報告だけだった。この時点で収容人数1万5千人のセンターに1万7人が入っていた。
「Let us in!」、「Shame on UN!」、「Explanation!」とNGOやメディアの人々が声をそろえて叫びだしたのは、その報告のしばらく後だった。会場内からぞくぞくと人が出てきたにも関わらず、外で待っている人々は一向に中に入れなかったためだ。複数の警官がガードしているフェンスに向かって、人々は強く訴えかけた。
「What do you want? ――― Entrance!」「When do you want it? ――― Now!」。 そして、本来はNGOの人々とは別枠であるはずのメディアは、ようやくNGOの列と別に列が設けられ、しばらくたってから入場することができたようだった。  

バリゲート

 国連が待ちくたびれたNGOの人々にようやくはっきりとした説明をしたのは、17時30分になってからだった。「本日はもう人は入れられない。明日の朝8時にここで並べば登録手続きを開始する」。大ブーイングが起こるも、少なくとも午前7時頃から並んだ人々は入れることはできなかった。
 翌15日、私たちが午前7時にベラセンター駅を降りた時にはすでに多くの人が集まってきていた。ところが、ここにきても国連のアナウンスは矛盾していた。「Secondary Card」と呼ばれ、COP第二週目の入場制限のためのパスを持っていない人は入れないというのである。このパスは第一週目の「バッチ(登録証)」を持っている人しかもらえず、前日に登録できなかった私たちはバッチを持っていないという理由で会場内に入るのをあきらめざるを得なくなった。
結局、NGOの中でSecondary Cardを入手して会場に入ることができたのは世界的に名が知れていて実績のある大きな組織だけだった。その組織ですら入場する人の数を制限され、水曜日からはNGO関係者は一切入ることができなかった。これは異例の事態である。COPの常連という経団連の女性は「バリ会議のときもケニアでもこんな不都合はなかった」と不満気だった。
困っていたのはNGOだけではない。30年間環境問題を追い続けてきた韓国の新聞記者Cho Hong Sup氏やベルギーからのテレビ局のカメラクルーなど各国のメディアも8時間以上並ばされるという事態に驚いていた。
国連の不手際もさることながら、これほど予想をはるかに上回る人が駆けつけたCOPも今までなかっただろう。注目度の高さは重要性を示す。あれほど多くの人々が世界の国・地域からコペンハーゲンへ来て、強くCOP15の現場にいることを願望する様子は、まさしく世界の人々の環境問題への危機感を表しているように見えた。
今回、多くのNGOの人々が会場にすら入ることができなかったのは大変残念だった。これらの人々の熱い意思も決議に取り入れられるべきである。

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Interviews 社会

エコな技術を世界に広めよう

エコな技術を世界に広めよう

2009/11/14           三崎友衣奈 (18)

 4月から始まった、いわゆるエコカー減税によって日本の自動車業界が活力を取り戻してきている。自動車メーカーが売り出している減税対象のハイブリッド車やクリーンディーゼル車などが注目を浴びているのだ。エネルギーをすべて電池でまかなう電気自動車もそのひとつだ。
 
 慶應義塾大学環境情報学部教授の清水浩氏は、ベネッセコーポレーションなどの企業の出資を得て産学連携で今年8月、電気自動車による環境への負荷軽減を目指すシムドライブ社を設立した。代表取締役に就任した清水教授は「インホイールモーター」という技術を使った、環境にやさしい自動車づくりを目指し開発を行っている。

清水浩教授に取材

 清水教授たちが開発して2005年に発表した電気自動車「エリーカ」は、8個のタイヤに直接付いたモーターによって走行し、そのエネルギー源はすべて自動車に内蔵されたリチウムイオン電池等からくる電力である。最高速度時速370kmという数字は、スピードが弱みだとされた電気自動車の常識を一気に覆した。
 シムドライブ社は、単にものづくりのために設立された会社ではない。その特徴としては大きく2つある。
 
 一つは、「モノを売る」会社ではなく「技術を提供する」会社を目指したことだ。清水教授は「できるだけ多くの人に技術を使ってもらうことこそが、電気自動車を普及させるための一番の近道」というベネッセ・コーポレーションの代表取締役会長福武總一郎氏の意見を反映し、あくまでも環境にやさしい技術を普及させる点を目的にしていることを強調した。商品の販売よりも、いかに環境にやさしい技術を世界に広められるか、より多くの人に電気自動車を利用してもらうかを優先した姿勢がうかがえる。
 
 もう一つは、慶応義塾大学の学生を含めたチームで開発を進めていることである。その最大の理由として、清水教授は学生からの豊富なアイディアを利点に挙げた。「良いアイディアが出てくることは何よりも大事」と話し、実際に今まで多くの新鮮なアイディアを開発に活かしてきた。また、学生の要望にも積極的に答える。例えば、元々企業に任せようとしていたモーターの開発を、他の部門と同じく大学で進めていくことになったのも一人の学生の希望によるものだという。
 
 企業ではなく一人の大学教授が始めたプロジェクトだからこそ、このように利益だけにこだわることもなく、また学生にも学びの機会を与えられる。業績を極端に問われないことで、環境にやさしい車の開発と世界中の人々への車の供給という本来の目的にまっすぐに向かうことができる。

清水浩教授

 一般の自動車メーカーでも環境NGOでもできない、このような形の環境問題解決へのアプローチが若い学生たちとともに今、始まっている。


電気自動車の時代がやってきた     
2009/11/14            飯沼茉莉子(13)

 現在自動車から排出される二酸化炭素を削減するため、自動車メーカーは電気自動車、燃料電池車など環境に優しい車を次々と開発している。日本政府はそういった車の購入者に対して補助金制度を実施した。その結果予想以上の効果があり、現在では購入希望者が殺到して生産が間に合わない事態にもなっているほどだ。道を走っていると、今までより電気自動車をみる回数がぐんと増え、自動車の転換期がもうすでにスタートしているのをはっきりと感じとることができる。

 今回私たちは、電気自動車「エリーカ」を開発したジムドライブ社社長で慶応義塾大学SFC環境情報学部の清水教授に取材した。

高速電気自動車エリーカ

 清水教授に、政府の温室効果ガス25%削減発言は達成できるか聞いてみると「ちょうどいい目標だと思います。少しハードルは高いですが、頑張れば達成出来ると思います。リチウムイオン電池や太陽電池、トランジスタは全部日本が開発したものです。日本は良い技術をもっているので、こういうものがもっと普及し、今は高いけれど政府の補助などで国民が少し我慢すれば25%削減は可能だと思います。太陽光発電の設置も現在は高価ですが、たくさん作れば安くなります」と語った。
 
 清水教授はジムドライブ社を作る時に「物を売る」のではなく「技術・情報を提供する」という事を信念にしたそうだ。その理由は、「ベネッセコーポレーションの福武總一郎会長が『エリーカ』に試乗された時、エリーカは90%普及すると言ってくれました。だから自分たちで電気自動車を作って売っていくようになるのかなと思っていました。しかし、世界中の人々に技術を見てもらうことによって電気自動車はもっと普及する、と福武会長に指摘されて考えが変わりました」と語った。
 
 電気自動車の普及は始まったばかりだが、ハイブリッド車と対抗する商品として進めていくのか聞いてみると、「エンジンを使うハイブリッド車とモーターを使った電気自動車の二種類の中で生き残ることができるのは1つだけだと僕は思います。なぜかと言うと、どちらかが普及すると大量に生産するようになるため単価が下がり、どんどん安くなるため人気がでますが、一方は全く売れなくなって最後は1つだけが残るからです」と語った。
 
 「モノを売る」のではなく「技術・情報を提供する」ことを信念としているジムドライブ社は、環境を売り物にせず、地球を少しでも良くしたいという思いから技術を開発していることがよくわかった。若い学生たちのアイデアをたくさん詰め込み開発された電気自動車の普及が、地球温暖化の進行を食い止める大きな力になってくれることは間違いないだろうし、その日が一日でも早く来ることを願う。

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社会

子どもにもっと教えてほしい環境危機

子どもにもっと教えてほしい環境危機
2009/10/25                 飯沼 茉莉子(13)

 地球温暖化による気候変動の影響が、異常気象というかたちで私たちの日常生活でも体感できるようになりつつある。今とるべき行動によって地球の未来は大きく変わるということを、私たちは十分に理解しているのだろうか。

 地球温暖化防止のために、市民の立場から提言し、活動しているNPO法人気候ネットワーク国際担当の川阪京子さんに話を聞いた。

 まず、日本政府の環境に対する取り組みについて川阪さんは、「日本政府はもっと真剣に温暖化対策に取り組むべきだと思います。京都議定書の後、日本政府は新たな法律を作ったりして二酸化炭素排出量を6%削減するための目標達成計画を作っていますが、どれも6%を削減できるような内容ではないと思っています。京都議定書ができる前に日本政府がやっていたことと内容的には全く変わっていないので、これから6%以上も削減するためには、新しい制度、例えば排出量取引制度とか炭素税など、きちっと排出を規制するような法律をつくって削減を具体的にできる社会にしていく仕組みを新たに作っていくべきだと思います」と語った。

NPO法人気候ネットワーク国際担当の川阪京子さん に取材

 鳩山首相が提案する25%削減目標を達成できると思うかと聞いたところ、実際に25%削減しても温暖化が全部ストップするわけではないことを考えると、達成できるかどうかというよりも、達成できるように何か新しい取り組みを始める努力が必要だという答えがかえってきた。

 それでは、25%削減に対して日本人一人一人は何ができるのか。これについて川阪さんは、「実際日本の排出量のうち約80%は産業に関係するところから出ていて、家庭からの排出量は言われているほど多くはないけれど、省エネの行動に取り組むことは大事です。例えば、省エネの家電製品を買う、車が必要ならばエコカーにする、食べ物は輸入品ではなく近くの農家で生産して運ばれるエネルギーの少ないものを買うなど、「地産地消」の物を選ぶことで削減できます。そうするとこで環境にやさしい商品が市場に出回るようになって、社会的仕組みが変わるので、一人一人ができる大きなことだと思います」と語った。

 一番聞きたかったのは若者の行動だ。これについて川阪さんは、「今何もしなければ若者が大人になったときには自然災害が増える世界になっている可能性が高いです。今はそれを変えられる最後のチャンスだと思うので、大人たちに対して、自分たちの未来のために何かしてほしいと働きかけてほしい」と熱く語ってくれた。大人が相手にしてくれないのであれば、若者が環境を良くするためのアイデアや技術を考え出して、未来を変えるよう諦めずに努力をして欲しい、ということだった。

 川阪さんは、将来日本がエネルギーや食糧の自給自足、地産地消が出来る仕組みになったらすばらしいと考えている。カンボジアのように24時間365日電力に頼らなくても生活ができる国があるのだから、ライフスタイルを変えたり、新技術を取り入れつつ化石燃料によるエネルギーをこれまでのように湯水のように使わない社会が実現できたらいいし、エネルギーを多く使っている人ほどもうかる社会ではなく、エネルギーを使わない人が一番得するような社会が実現出来ればいいと、今後の日本の環境について語った。

 今年の12月にCOP15が開かれるが、川阪さんは、「コペンハーゲンでは、2020年の世界のCO2削減目標を具体的に決めもらうために、毎日世界のNGOと情報交換をしながら政府に強く働きかけていきます」と語った。

 私たちにとって怖いのは、近い将来、地球環境が危機にさられることをその当事者となる子どもたちが気づいていないことだ。新聞やテレビでCO2を削減といくら耳にしてもほとんどの子ども達は理解できていない。地球温暖化を防ぐためには、もっと親や大人の協力が必要だ。親は普段の生活の中で子どもに環境のことを少し話すだけでもいい。学校では地球温暖化が子どもたちにとってどれだけ重大なことかを教師たちから具体的に伝えてもらいたい。新聞にも何%削減などというところにだけ着目するのではなく、子どもがどのような危機にさらされているかを具体的に示してもらいたい。

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座談会

小学生の環境教育

人類は地球上の生き物の仲間のひとつにすぎない。それを自覚すべき時代となって久しいが、環境保護の大切さを小学校の段階でどのように教えるべきか、また家庭や企業にはどんな役割があるか、4人のCE記者が意見を交換した。

出席者:宮澤結(15)、大久保里香(17)、寺浦優(14)、司会:三崎友衣奈(17)
2009/06/2

友衣奈:小学校で環境問題はどのように教わりましたか?

里香 :社会科などで、環境について触れることはありましたが授業に「環境」というタイトルはついていませんでした。

優  :社会科でリサイクルセンターなどに行きました。一応は環境教育をやっていたことが後から分かりました。

結  :総合学習の時間にリサイクルセンターに行ったり、田植えもしました。でも小学校の頃は環境教育を受けていたとい
    う実感はなかったです。

■環境という授業の設置を

友衣奈:皆に共通するのは「習った」実感よりも、「そういえば環境についてだった」という実感ですね。先生のほうも後か
    らでいいから分かってほしいという気持ちがあったと思うんだけども、今のままで充分だと思う?それとも自然と触
    れ合う授業などを増やした方がいいですか。    

里香 :一ヶ月に一回でいいから環境授業の枠を作る方が効果的だと思います。小学生は他の科目のなかに含めると環境教育
    を受けている実感は絶対わかない。

友衣奈:授業として環境の認識をしっかり持った方がいいということですね。他の皆さんの意見は?

結  :賛成です。私の場合は総合学習の時間に、環境だけでなく地域のことや校外学習もあったので、環境の授業を別に設
    けることで小学生の意識が変わると思います。

優  :小学生なので誰かに言ってもらって気づくことが多いと思うんです。実際私もそうでした。自分たちの生活に関わる
    環境問題だということをきちんとその部分で言わないと気がつかない・・・

■きっかけを与える教育

友衣奈:三人とも同じ意見でしたね。でも環境問題は、温暖化も含めて今までの地球自体の流れ(自然現象)だという人もい
    るでしょう?それを勝手に「温度が上がるのはいけないんだ」と小学校の頃に植え付けてしまうとそれは頭から離れ
    にくくなるし、反対意見を言われても「だって学校で習ったもん」となってしまわないですか?

里香 :人の行動が原因で悪くなったのではない環境問題もありますが、絶対に人間の行動が関連している問題があると思い
    ます。例えばゴミ問題や、クーラーの利用で有毒なガスが出るとか、それは人間の行動が原因であって、改善してい
    かなければならない。学校ではそういった絶対的なものを教えて、その後はきっかけを与えて学習を進めていけば子
    供たちが自分たちで環境についてもっと考えるようになるのではないかと思います。

優  :気づいてもらう、ということが一番大事だと思う。特に小学生の場合は先生が言うことは正しいと思い込んでしまう
    から、先生がきっかけを与えてあげることで、そこから興味を持つ子はどんどん調べていくと思う。環境に関しては
    分からないことがいっぱいあるから、きっかけを与えてあげるのが一番なんだと思います。

結  :例えばリサイクルセンターやゴミ処理場に行っても、私が小学校の時は行って感想を書かせて終わりだったんです。     

友衣奈:私が取材した名古屋大学の先生は「日本でリサイクルしても意味がない」という意見を言われるのね。「そんな微量
    を回収しても、回収費や人件費が無駄だ」って。そういう反対意見を小学生に言っても判断できないでしょう?自分
    が小学生だった頃を思いだせば分かるけれど、賛成と反対意見を比べて「じゃ自分で考えてね」って言える状況では
    ないですよね。自然と触れあう感覚を大事にするというだけではだめなのかな?例えばフィンランドは自然が多いか
    らそれを利用してふれあいを中心にして教育しているらしいんだけど、どうしたら小学生には一番いいのかな。

里香 :例えばリサイクルサンターに行ったら、みんな頭では「リサイクルはいいこと」って思うだろうけれど、行く前にリ
    サイクルをいろいろな側面から見せる授業をしなければいけないと思うんです。車で運ぶ時に出る二酸化炭素の量も
    考えるべきだし、環境問題自体が何が原因なのかよく分かっていない面もあるから、いろんな面を教えることで子供
    たちが将来大きくなって興味を持つきっかけになったり、教わったことに対して疑問を持った子は調べていけるよう
    になると思います。絶対一つの側面には相反するものがあるから、そこもちゃんと見せていかなければならないと思
    います。

友衣奈:小学生にも、例えば二酸化炭素が車から出て良くないからバスを使おうとか言っているけれども、一方では暖かいこ
    とは別に悪いことだけではないということを教えるってこと?

里香 :そのためにも環境というしっかりした授業がないと、そういう細かいことまで教えられないので、私は環境教育を作
    った方がいいと思います。

■小さい子は好奇心旺盛

友衣奈:でもそれって中学校で習わないですか?小学校から取り入れて早い段階で知っておくのはいいかもしれないけど。

里香 :小さい子の方が好奇心が旺盛だから、中学生になると高校受験の準備で「環境の授業なんてどうでもいいや」となる
    と思うんです。基本的な理解を小学生のうちになるべく早い時点で持つ方がいいと思います。

優  :小学生の方が「あれはどうなの、これはどうなの」って不思議に思うことが多いような気がするんです。私自身、中
    学生になると不思議でなくなることでも、小学生の時はすごく気になって調べたことが多くて、疑問に思うことが多
    いから小学生のうちに触れることは大事だと思います。     

結  :小学一年の時はいろんなところに行ったり、自然に触れることがメインでいいと思うんです。でも小学校高学年は考
    える力がついているから、校外学習も、行くだけではなくて、そこから自分は何ができるかを考えることは大切だと
    思います。

■授業時間が足りない中の環境教育

友衣奈:現実問題として、授業時間数が足りないのにわざわざ環境の授業をやるのは難しくないですか?社会科などに計画的
    に取り込まれていたのを(環境だけを)一個切り離すと・・。      

里香 :私は中学生の時に、地域でゴミ拾いなど環境を考えるセミナーがあって、積極的に子供たちの環境意識を育てていこ
    うとする活動があったんです。ゆとり教育のなかで、環境の授業を作るのはムリかもしれないけども、地域と一丸と
    なって環境の活動を促進していけたらいいと思います。

結  :学校の土日の休みを利用して、学校で環境セミナーみたいな感じでいろいろ開いたりとか、参加者を募ってやったり
    とか。

優  :平日は多くの教科があって、いろんなことを考えなければならないから、土曜日の午前中だけは環境について考えよ
    うと決めることで小学生が集中して考えることができるのではないかと思います。

友衣奈:最近は、英語が「五・六年生は必修」といわれるなかで、英語を「そんなにやって国語は大丈夫なのか」という反論
    もありますね?そういうなかでさらに環境を週一回でも一ヶ月に一回でも増やして小学生にとっては負担になりませ
    んか?

優  :いま環境が世界的に大きなテーマで子供たちが大人になった時にどうなるかは分からないから、今から少しずつでも
    考えたり話し合ったりすることで、自分たちが将来どうしていくべきなのかが見えてくると思う。英語もこの先必要
    になることだから、必要になることをやっていくのはいけないことではないと思うし、むしろ必要なんじゃないのか
    なって思います。

友衣奈:でも重要なことはたくさん増えてくると思うのね、これから。減ることは絶対ない。教科はいま国語、算数、理科、
    社会があって、家庭科とか体育もあって、英語もプラスされて、さらに環境もプラスされて・・・、それでもいいと
    思う? 

里香 :私の場合は小学校が勉強に特化した学校ではなかったんです。中学は勉強をすごく一生懸命やる学校に入ったことも
    あって、教科も増えたし、やることも増えたからすごく大変になって・・・・小学一年生に言っても分からないでし
    ょうが、自分がやることっていうのはこれだけあって、今知らなきゃいけないことがこんなに沢山あるんだというこ
    とを分からなければいけないと思うんです。     

友衣奈:では中高の勉強の予習というか、一気に詰め込む型ではなくてだんだんやっていく方式として小学校でもいれていく
    ということ?

結  :環境教育はけっして今やっておいて損ではないし、むしろ得だし、自分たちの将来に関わってくることだから、そう
    いう時間を設けた方がいいと思う。

■親にも環境教育を

友衣奈:学校でやらなくても、例えば家で「ペットボトルの処分」とか「アルミと牛乳パックを分別しなきゃいけない」とか
    、そういうところから子供に「何で?」という疑問が湧いて、「それは焼却炉からダイオキシンが出るから」とかそ
    ういうふうに家庭で教えることってできませんか。     

結  :私は家であんまりゴミ問題を考えてなくて、学校の方が環境について学ぶことが多いかなと思います。

優  :家庭でやるとバラツキが出てしまう。親から教わることはすごく子供にとっては大きいと思いますが、やらない親も
    いるし、学校でみんな均等に知識がある方がいい。

里香 :私は環境の授業は作った方がいいという意見に変りはないのですけど、確かに家庭生活で親がすごく環境に興味があ
    れば、その子供も環境に興味を持つと思うんです。だから親に対する環境の授業も開いて、学校にまかせるだけでな
    くて、家でも環境教育ができるような状態にしたらどうかなと思います。

■企業の授業参加

友衣奈:今の小学校では、例えば三洋のエネループという「繰り返し使える電池」について企業が小学校に‘出前授業’にき
    て紹介するケース出てきています。そういうものだけだと足りないと思う?これは多分小五小六が対象なんだけど。

里香 :小五小六になると自分で考えることができるので、出前授業を受けて環境に興味を持てれば、自ら調べ出すと思う。
    学校で教えられなくてもテレビをつければ環境番組やCMが流れているし、いま環境問題を軽視している人はそんな
    にいないと思う。自分で何ができるかということだけをとりあえず教えて、学校だけでなくても地域や家庭でも教え
    ていければいいと思います。

優  :先生自身も、三洋の人がそうやって来て授業をしてくれると、深い話をより細かく知ることができると思う。そうい
    うものを見ることで疑問も生まれてくると思う。     

友衣奈:これは企業の宣伝ではないかとか、そういう疑問はある?

結  :宣伝とかの問題ではなくて、専門家が言うことに疑問を持ったらその人にその場で質問することができるし、そうい
    う場を持つことはすごく大切だと思う。現状だと社会科では環境問題でも地理的なことをやり、理科では二酸化炭素
    がどうなっているかを学び、それらを総合学習でつなげることもできる。

■多様な環境学習

友衣奈:では今の総合学習の時間の使い方には特に異議はないということですね。

優  :道徳などは「総合」の時間でやるしかないと思う。環境教育は、やる学校はやり、やらない学校はやらないのはおか
    しいから、そこは徹底して必ず含めなければいけないと思います。文部科学省が総合の時間に「必ず年に何回」とい
    う規定を作れば総合の時間の中なら取れると思う。そうでないと、やらない学校がどうしても出てくると思います。

友衣奈:出前授業は、やる小学校が限られているから、行き渡らない?

優  :行き渡らないし、環境の教育を「総合」のなかでやらない学校が出てくると思うから。

友衣奈:総合の時間はいろんなことをやり、その中で少しでも環境に触れあうとか、企業の人にきてもらうとか、そういう時
    間はとった方がいいということですね。今までの討論をまとめると、理想は、学校でしっかり環境の授業を作っても
    らうことだけれども、現実には時間が足りず教科が多すぎて出来ない。いま私たちがやってほしいことは、平等に文
    科省から「ここまで」っていう規定をもらって、それを絶対各学校でクリアすることと、家庭でも絶対的にこれは事
    実だとか認められていることを教え、賛否両論があるところも教えて、固定観念を持たないようにする。出前授業も
    いいけれども総合的な時間のなかで社会とか理科でやってきたことをつなげる授業をしてほしいということですね。   

                                                    以上 

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「環境」という授業は必要か?

「環境」という授業は必要か?
2008/12/06               寺浦 優(14)

 日英記者交流プログラムのメンバーとしてベルファスト、フォイル、ロンドンの各支局を訪れ、英国 Headliners の 記者たちに 8 歳から 11 歳まで の子どもに対して 行われている環境教育について取材を行った。そこからわかったことや考えたことを報告する。

Headlinersベルファスト支局で取材

 今回の取材を行うまで、私は「英国では環境教育が行われている=環境という教科がある」と考えていた。実際、英国のブリティッシュ・カウンシルが主催する気候チャンピオンの活動で一緒だった英国の気候チャンピオンのステファニー・リンチさん (18) からは、環境に関する授業が行われていると聞いていたからだ。

 だが、「今までに環境についての授業を受けたことがありますか?」と英国の記者に質問すると「そんなの受けてないよ」と、どこの局でも同じ答えが返ってきた。英国では科学や地理の時間を利用して環境問題を授業に取り入れているそうだ。そのため、子どもたちの中に環境教育を受けているという認識は無い。

 質問をしていくうちに、アル・ゴアの『不都合な真実』を学校の授業で見ている記者が数人いることがわかった。しかし、同じ地域でも見ていないという人もいる。学校や地域によって違いがあるようだ。

 英国の子どもたちは、学校の授業よりも TV やラジオ、雑誌などで環境について訴えかけられる方が影響力があると言っていた。 TV やラジオは授業よりも、子どもたちの身近にあるからだろう。しかし、英国政府は学校の授業で環境教育を行っていると強く話していたのに現場にその思いが届いてないのが悲しかった。

 帰国後、日本は 2009 年度から環境教育の充実化をはかることが決定 された ことがわかった。

文部科学省初等中等教育局教育課程課教育課程第二係の栗林芳樹さん

 文部科学省初等中等教育局教育課程課教育課程第二係の栗林芳樹さんにお話を伺った。栗林さんによると、日本は今まで教科ごとに環境教育を行ってきた。しかし今、環境問題が世界的に大きなテーマとして取り上げられ、国内でも 60 年ぶりに教育基本法が改正されたことから、小・中学校の学習指導要領の改訂を行った。しかしあくまでも教科ごとの充実化をはかるという。

 今まで、英国記者と同様に、環境教育を受けている認識は私たちには無かった。しかしその認識が無くても、私は環境問題に興味があるから調べたいと思うようになった。きっかけは、小学校生活 6 年間で学んだ「自然とふれあい、 ( 自然の ) 大切さを 理解する」をテーマにした総合学習だ。直接環境問題について授業で触れたわけではないが、自分の好きな動物とのつながりも知り、調べ始めた。

 英国で取材中には、英国も日本も環境という教科があった方が良いような気がした。なぜなら、学習の格差が無くなるからである。教育は、平等に行うことが大切なのではないかと思う。

 だが、環境という教科がなくても環境問題に興味を持った自分のことを考えると、環境という一つの教科を作り、教えてもらうことが全てではないとも思う。

 大切なのは、各教科から様々な視点できっかけを与えてもらい、子どもたちが自分なりに気づくことではないだろうか。これは、英国も日本も変わらないことである。

 これからの未来を担っていくのは、今の子どもたちなのだから。

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「環境」という教科をつくろう

「環境」という教科をつくろう
2008/12/06                 大久保 里香( 16 )

 環境問題は現在、世界的に大変大きな課題である。 2008 年の夏、私たち CE 記者は、すでに積極的に環境教育を実施しているイギリスへ行き、若者たちにイギリスの環境教育の実態について取材する機会を得た。

 日本では平成 21 年 4 月から環境教育の充実化を図るという意向を文部科学省が示した。日本と実施方法が同じといわれるイギリスの環境教育を見ていくことで、真に求められている環境教育とはどのようなものか考えた。

 イギリスでは、環境という教科自体はなく、地理や理科といったさまざまな教科の中で環境問題を取り扱っている。例えを挙げてみると、イギリスでは地理の時間に氷河の溶解について取り扱ったり、理科の時間に二酸化炭素の排出について取り扱ったりしている。この方法は日本の現段階の環境教育の実施方法とまったく同じである。

 イギリスにおけるこうした環境教育の実態を知って、「環境」という教科を持たずにいくつかの教科で環境教育を行うというこの方法には、次のような 2 つの大きな問題点があると考えるようになった。

 一つ目は、環境について学んでいるという認識が薄いことだ。中には「環境教育というものを受けたことがない」と語るイギリスの若者もいたが、詳しく話を聞いてみると環境を話題とした授業を実際は受けているのだ。各教科の中に、環境についての学習を含めようとすると、環境について断片的にしか学ぶことができず、環境の学習を行っているかどうかさえ、あいまいになってしまうのだ。教科の中で環境の話題を取り扱ったとしても、環境について学んでいるという認識が受講者になければ意味がないのではないだろうか。

 二つ目は、各教科の中で環境の話題を取り扱っても、環境について詳しくは学べないということだ。環境ブームといっても過言ではない世界において、メディアも非常に多くの環境問題についての情報を提供している。「学校では、基本的なことしか教えてくれないので環境問題についてはテレビやインターネットから情報を得る」というイギリスの若者もいた。これでは、本当に環境教育が機能しているといえるのだろうか。

 もちろん、基礎的な環境問題の知識を学校で教え、身につけさせることは大事だが、そこまでで終わってしまう教育は結局メディアが果たしている役割と同じであり、何の意味もないのではなかろうか。

 文部科学省、初等中等教育局教育課程課教育課程第二係の栗林芳樹氏は「もちろんできる限り多くの時間を取り、詳しく環境について教育したほうがよい。しかし、学校の環境教育の一番の目的は、何かきっかけを子供たちに与え、将来環境に対して主体的に行動できる人材をはぐくむことだろう」と語った。

 確かに、環境問題に対するきっかけを学校で子供たちに提起することは非常に重要なことである。しかしながら、環境教育を受けている意識が低いために子供たちの中にはそのきっかけすら得ることができない子がいるのも事実である。

 この二つの問題を考えると、環境の授業という科目を作ったほうがよいのではないだろうか。第一に科目があれば確実に子供たちは環境について学んでいるという実感を得ることができる。そして、環境問題を断片的に雑然と学ぶのではなく体系付けて学ぶことで、子供の環境の意識と知識を高めることができるのではないだろうか。

 環境教育を行っていても成果が出なければ意味がない。各教科のなかで環境教育を行うことは確かに効率がよいかもしれないが、これからは教育の内容と子供たち、そして地球の将来を重視して、現在本当に求められている環境教育の実現を目指すべきだと思う。環境教育は環境問題を解決する大きな一歩となる可能性を秘めているのだ。

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廃プラスチックはどうなるの?

廃プラスチックはどうなるの? 
2008/10/14                曽木 颯太朗(16歳)

 東京23区では収集区分の変更が行われ、プラスチックごみについては、 2008 年から 順次汚れていない容器包装は資源ごみに、その他は可燃ごみになった。プラスチックを燃やすとダイオキシンが発生すると小学校で習ったせいか、プラスチックを燃やすと聞いてかなり違和感を持ったものだ。おまけに私の住む区では 突然 4 月から 区分が変わったので、しばらくの間ごみを捨てるのに手間取ってしまった。最終処分場を延命させるためだという話を耳にしたが、そのためにプラスチックを燃やして環境に害は無いのだろうか、全部リサイクルできないのか、など様々な疑問が頭に浮かんだ。

 東京 23 区のごみの焼却・破砕(ごみの中間処理)を行う東京 23 区清掃一部事務組合の総務部企画室長の小林正自郎さんと広報・人権係長の石井菜穂子さんにお話を伺った。小林さんによるとプラスチックを不燃ごみとして扱うようになったのは、燃やすことによる汚染物質排出の問題もあったが、なにより生ごみを優先的に焼却する必要があったこともある。さらに、増大一途のプラスチックごみを他のものと共に焼却した場合、発熱量の違いから工場の調子が狂うおそれもあったという。

  しかし、その後の公害防止設備の設置などによって汚染物質の排出は減少した。特にダイオキシン類対策特別措置法の制定後、対策を進めた結果、ダイオキシン類をはじめ汚染物質の排出は国・都の基準を大幅に下回っている。モデル地区で出されたプラスチックを可燃ごみとして焼却しても問題はなかったそうだ。

プラスチック処理促進協会 神谷氏

 今回プラスチックと皮革・ゴム類が不燃ごみ扱いされなくなると不燃ごみは以前の 40% に減り、収集・運搬を集約化できるほか、処分場の寿命も 30 年から 50 年超まで延ばせるという。

 しかしプラスチックにはリサイクルという方法もある。小林さんも「プラスチックはリサイクルすることが前提」とおっしゃっていた。 プラスチック・リサイクルを進めてごみを圧縮できないのだろうか。廃プラスチックの活用方法の研究や広報活動を行っているプラスチック処理促進協会広報部の神谷卓司さんによると、実は材料として再利用するマテリアル・リサイクルだけでなく、焼却すること自体がリサイクルになるのだという。焼却することで電力としてそのエネルギーを回収するこの方法はサーマル・リサイクルと呼ばれている。

 廃プラスチックのうち埋め立ててしまうのは全体の 13% に過ぎず、全体の実に 50% はサーマル・リサイクルで処理されているという。一方で材料化するマテリアル・リサイクルはコストが高く、付着物があると上手く処理できないため、家庭からの廃プラスチックを処理することは難しい。油化・ガス化するケミカル・リサイクルは技術的には完成しているものの、普及は進んでいない。いずれも初めて聞いた話だった。

 いくら工場でダイオキシンが基準を下回っているとはいえ 30 万トンもの不燃ごみが焼却される場合の環境への負荷は分からないという話も聞いた。それでもやはりプラスチックを焼却すること自体がリサイクルでもあるのだから、可燃ごみとして積極的に扱っても構わないだろう。

 一方でどうして廃プラスチックが可燃ごみになるのか最終処分場の延命問題ばかり伝わってきて、エネルギー資源と成りうることはちっとも取り上げられていない。うちのマンションでは区分変更が行われてから丸一月は以前のままで、現在も変更の告示があるだけで以前のように捨てている人もいるようだ。最終処分場の問題だけなら「自分だけなら別に不燃ごみとして捨てても大した量ではない」と以前のまま捨ててしまうことだってあり得る。資源としてプラスチックはどのように利用できるのか、リサイクルの実態を積極的にアピールして各家庭の意識をあげる必要があろう。


プラスチック、可燃ごみで大丈夫?
2008/10/14                大久保 里香(16)

 今までは不燃ごみとして処分していたプラスチックを現在、可燃ごみとして処分している地域が日本で増えている。東京 23 区でも平成 20 年度 から 順次 可燃ごみとしてプラスチ ックを処分する予定だ。

 そもそもなぜプラスチックを不燃ごみとしてではなく可燃ごみとして処分する地域が増えているのだろうか。理由のひとつが埋め立て量の限界だろう。 プラスチックは不燃ごみ全体の 52 パーセントを占めている。このまま、プラスチックを不燃ごみとして処分し続けると埋め立て地が数十年と待たずにいっぱいになってしまうだろう。しかし、プラスチックを可燃ごみとして処理すると埋め立て量の約 60 パーセントを削減できる。 今まで埋め立てられていたごみの体積を半分以下に抑えることができるのだ。将来を見越すと、プラスチックを可燃ごみとして処分することで埋め立て地が抱えている問題を軽減できるなら画期的な方法かもしれない。

 2 つめの理由が、プラスチックリサイクルの難しさにあるだろう。プラスチックには多くの種類があり、同じ種類のプラスチックだけを多量に集めるのはまず難しい。ペットボトルやトレーなどは一目見ただけで誰でも分別できるので例外的に再び集めたもので製品を作ることができる。あまり知られていないが、プラスチックが資源として回収されても再び製品となるケースは少ないのだ。

 また、プラスチックは塗装がしてあることや、残飯などが付着して回収されることが多いので、仮にプラスチックを再形成してもにおいと色の問題でリサイクルパレットなどの用途に限られてしまう。こういった、製品にはならないプラスチックはエネルギーリサイクルとして活用される。エネルギーリサイクルとはごみなどを燃焼させるときに燃焼効率を上げるために鉄鉱石や石油の代わりに製品としては使えなくなったプラスチックを使うことである。

東京二十三区清掃一部事務組合 小林氏

 取材を受けていただいたプラスチックの処理促進協会の神谷卓司氏は「無理をしてプラスチックを製品として再びリサイクルしようとすると、逆にエネルギーがかかり環境に対して負荷になる。」とおっしゃっていた。プラスチックの可燃ごみ化は環境に対しての不信感を抱く人もいるだろうが、可燃ごみ化もプラスチックの有効なリサイクルといえることは間違いない。また、プラスチックを可燃ごみとして処理することやエネルギーリサイクルをすることは今問題になっている石油の枯渇や資源問題の解決策にもなりうるのだ。これからは、あまり知られていないプラスチックのエネルギーリサイクルも世間に広めていくべきだろう。

 しかし一見、よいことだらけに見えるプラスチックの可燃ごみ化だが、プラスチックを可燃ごみとして処分することで環境への悪影響は本当にないのだろうか。

 取材を受けていただいた 東京二十三区清掃一部事務組合の小林正自郎氏は「公害防止設備が向上し、また国のダイオキシン対策特措法によって平成 14 年 12 月までに清掃工場のダイオキシン対策が義務づけられているので、プラスチックを可燃ごみとして処理をしても環境に有害なガスは出ない。しかし、原則として資源としてリサイクルすることは大切である。」とおっしゃった。 環境の面では、プラスチックの可燃ごみ化は問題ないといえる。しかしながら、プラスチックの可燃ごみ化は日本で統一されているわけではないので、個人が住んでいる地域以外でごみを捨てるときのごみの分別が大変になることは間違いない。ごみの分別の統一化はプラスチックの可燃ごみ化にとってもっとも重大な課題だろう。

 プラスチックの可燃ごみ化は将来の地球を見据えた魅力的な方法であるといえる。しかし、プラスチックをむやみやたらに可燃ごみとして私たちが捨てるのでなく、資源としてリサイクルするか、エネルギーとしてリサイクルするかをしっかり考え、分別することでより一層、環境に優しいシステムが確立されるだろう。


ごみを分別しなくてもいいの?
2008/10/14                川口 洋平(18)

 「紙は燃えるごみ、プラスチックは燃えないごみに捨てなさい」。

小さい頃からこう言われて育ってきた。しかし東京23区では、プラスチックも燃えるごみになりつつあるそうだ。あれだけ注意されて育ってきた身としては、なんとも奇妙な感覚である。

 東京都でプラスチックが不燃ごみとして扱われ始めたのは、今から約35年前の昭和48年から。大量生産、大量消費の幕開けとも言える高度経済成長の当時、ごみは年々増加し、清掃工場で焼却処理しきれなくなったものはそのまま埋め立てをしていた。その結果、処分場に近い江東区で悪臭やハエの発生という環境被害を招いてしまった。それらの発生原因となっていた生ごみや紙を優先的に焼却処分し始めたのが分別の始まりだ。

 その当時の状況からしてみれば、分別は面倒だが仕方がなく、プラスチックごみは分別してそのまま“埋めるしかなかった”のだ。

 ところが21世紀になり科学技術が飛躍的に進歩した今、プラスチックを燃やしても有害物質が出ない焼却炉に全て入れ替わった。平成11年に国がダイオキシン類対策特別措置法を制定し、清掃工場が排ガス対策するようになったからだ。現在は有害物質そのものを測定できる限界値を下回る工場があるほど、きちんと排ガス、排水、焼却灰について対策がなされている。

 東京都の調査によると、不燃ごみの 57.8% を占める(※1)プラスチック類を焼却処分することで、30年しかないと言われている最終処分場の寿命も50年程度に延びるそうだ。

 プラスチックごみの分別をしなくても良い理由は分かったが、ごみを回収する市区町村によっては、分別をしなくてはいけない地域もある。処分方法を統一することはできないのだろうか。

ごみの焼却などの中間処理を担う、東京都二十三区清掃一部事務組合によると、プラスチック資源化施設の設置、コスト負担の考え方など、各区によって事情が異なり、23区内での収集方法統一は難しいという。

 平成17年に廃プラスチックの収集方法統一を検討した特別区の助役会では「各区事項としてそれぞれの創意工夫により再生利用を推進する」としたまでで、統一をする方向性はないようだ。

 原油高の今、貴重な原油から作られているプラスチックを簡単に焼却処理してしまうことに疑問視する声もある。

 廃プラスチックを適切に処理するための研究開発を行っている社団法人プラスチック処理促進協会によると、ペットボトルなど資源化しやすいものを除き、廃棄物から使えるプラスチックを選定する必要があり、プラスチックの資源化にはコストがかかるという。また、汚れたプラスチックの資源化を無理に行うより、エネルギーとして利用するサーマルリサイクルをするほうが効率がよいともいう。従来は焼却処理をする際に、紙や生ごみだけでは炉の温度が上がらず、炉で燃やすための燃料を投入していたこともあるそうだ。プラスチックは燃やすと高温になるため、炉の温度をあげる燃料の代わりにもなるのだ。

 他の自治体の状況を調べていくうちに、意外にも日本や世界全体で見ると、プラスチックは燃えるごみとして使用され、焼却の際に発生するエネルギーを回収、利用するサーマルリサイクルをしている地域が多いようだ。ごみを新しい製品や材料にする、マテリアルリサイクルが環境に良いように見えるが、目に見える形でリサイクルされることが必ずしも最善とは限らないのだ。

 急に分別がなくなったのは、こういった背景があった。一方で、プラスチックの処分方法は自治体によって異なる。プラスチックごみは、原料として生まれ変わることもあれば、熱エネルギーとして利用されることもある。どちらもきちんとリサイクルされていることには変わらない。

 プラスチックを再資源化する方法が違うということをきちんと広報することが、より効率的な再資源化につながるのではないだろうか。

※1平成18年度清掃工場等搬入先ごみ性状調査報告書より

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インターナショナル・ユース・メディア・サミット2008

インターナショナル・ユース・メディア・サミット2008
2008/09/15               三崎 友衣奈(16)

 セルビア共和国という国を知っているだろうか。南東ヨーロッパのバルカン半島にあり、人口は約750万人、面積は北海道と同じくらいである。旧ユーゴスラビア連邦で、歴史的に戦争が絶えない地域でもあった。1990年以降、連邦の中で独立が相次ぎ、2006年のモンテネグロ独立に伴ってセルビアも独立宣言をした。

 そのセルビアでこの夏8月20日~27日に、インターナショナル・ユース・メディア・サミットが開かれることとなり、首都ベオグラードには世界18カ国から約40名の15歳~22歳までの参加者が集まった。2006年にアメリカ・ロサンゼルス、翌年にはオーストラリアのシドニーで行なわれたサミットに続く第3回目の開催である。

 このサミットでは差別、環境、女性の権利、暴力、貧困、保健、ユース・エンパワーメントの7つのグループに分かれた若者たちが出した結論を、極力言葉を使わずに1分間のフィルムにまとめ、世界へ発信する。 私が参加した『女性の権利』では、「女性をエンパワーする」ことをソリューションとした映像をつくることになった。

 アイディアを出し合いながら大まかなスクリプトを作り上げ、どのような映像を撮るかを細かく決めたストーリーボードを完成させる。映像を撮り終わると、編集に取り掛かる。ここからは個人的な主観も入り、小さなシーンでも意見の食い違いが出てくるが、一週間の日程で時間と闘いながらやっと作り上げられたときはみんなでほっとした。

  グループで編集をしているとき、映像全体をセピア調にしたいという意見と、色を残したいという意見で分かれた。セピア調を押し切って勝手に編集してしまう場面もあったが、結局元の色彩を活かしたもので治まった。ともすれば強引とかわがままに見えてしまいそうだが、それほど1シーンに対して自分の意見を押そうとする意気込み、意思の強さに感心した。撮影・編集の技術ではなく、映像に対して自分のこだわりをしっかり持っていることが肝心だと学んだ。

 国が違うということは、育ってきた環境が違う。だからこそ、ひとつのものを作るときにも全く予期しない意見が出てきて、とても新鮮だ。映像では同じことを伝えようとしているのに、表現方法が異なってくる。日本では経験しないことに始めは慣れなかったが、次第に自分の意見が言えるようになってきた。

 どう相手と自分の考えをひとつに取り入れるかも重要だった。 また、セルビアは風景も日本と全く違う。旧ユーゴスラビア時代の建物も残っており、歴史を感じられる建物ばかりだ。ときどき一部が崩壊したままの建物も見る。しかし町はのんびりとしていて、宿泊していたユースホステルの近くにはキオスクやスーパー、雑貨屋もあった。サミット中はホステルで他国の参加者も混ざった3人部屋での寝泊りだ。食事は向かい側にある建物の中の食堂でとり、すぐ隣の建物にある図書室で活動する。

 すべてが違うわけではない。それも今回学んだ大きな収穫のひとつだった。それはやはり一つの最終的な目的があったからだと思う。何となく欧米とアジアは一線を越えられないかと感じていたときに、同じグループのセルビア人の女の子が「私はあなたがとても身近に感じられるよ」と言ってくれた。その言葉は、私が勝手に感じていた壁を壊してくれた。違うことが当たり前であるからこそ、悩み事や感じ方が同じだったときはとても親近感が沸く。同年代でも、全く違う生き方をしてきたティーンとこうして活動できたことは、私に広い視野を与えてくれた。

International Youth Media Summitに参加して
2008/09/15               藤原沙来(18)

 2008年8月20日~27日、セルビア共和国の首都ベオグラードにて3rd International Youth Media Summitが開催された。セルビア共和国・ブルガリア・キプロス・ナイジェリア・スウェーデン・アメリカ合衆国・韓国・日本など18カ国から集まった15歳~22歳の若者たちが“健康、貧困、環境、人種差別、暴力、女性の権利、若者の地位向上”をテーマにした映像と宣言書を作った。  

 各国の参加者は事前課題として、Filmmakerなら3分間のビデオ、Diplomatなら最も興味のある1つのテーマに関する文章、どちらかの提出が必要であった。参加が正式に決まってからは、Filmmaker・Diplomatのどちらもサミットへの下準備として、7テーマから選んだ1つのテーマに関する自国の問題点のレポートを提出した。 各自がテーマに沿った明確な問題意識を持った上でこのサミットに臨んだため、映像や宣言書作りは非常に内容の濃いものとなり、多くの討論が重ねられ異なる意見の集まった価値のある7つの映像と7つの宣言書となった。

 私は“環境”を最も興味のあるテーマに選び、Filmmakerとしてこのサミットに参加した。環境グループとして活動したのは私の他に、オーストラリア人、スコットランド人、キプロス人、韓国人、セルビア人であった。まず、私たちのグループは映像と宣言書を作るにあたり、それぞれが事前にまとめた各国の問題点、解決策を共有し合った。

 日本の環境に関する問題として、夏には歴代最高気温を更新し続け、また、突然の雷雨が頻繁に起こり、冬は年々気温が上昇していて雪は滅多に見なくなったことなど気候変動による数多くの影響が顕在化してきた点を挙げた。気候変動による大きな被害を私たちは受けているのにも関わらず、便利な生活に慣れてしまい、日常生活での気候変動を改善するための小さな我慢もできない人が、日本人の半分以上を占める現状も紹介した。

 日本に限らず、他の国でも同じような状態のようで、「自分の街にはリサイクルのシステムがない」というような小さなことから「ごみの処理を他国に委託している国もあり、それぞれの政府がもっと自国の環境問題に目を向けるべき」といった政府規模にまで及び、数多くあげられた。それに対して、解決策は非常にはっきりとしていて

1.『環境に関する教育を学校や家庭でする』、
2.『私たちの環境に対する態度を変える』、
3.『私たちの生活習慣を変える』の3つに絞られた。

この3つの解決策を軸に映像と宣言書が作られた。 環境グループは個人個人の主張がとても強く、誰ひとりとして自分の意見を譲ろうとはしなかった。そのため、早々に軸となる3つの解決策は決まったのだが、映像や宣言書を作る際には常にぶつかり合い、なかなかまとまらなかった。

 しかし、ぶつかりあいやそれぞれの意見の主張がなければ誰の意見も組み込まれていないつまらない映像や宣言書になっていただろう。まとまるには時間がかかったが、環境グループとして誇れるような映像、宣言書を作ることができたのではないかと思う。

 Closing partyで7つの作品を上映した際は、参加者全員がお互いの努力をたたえ合い、ここに至るまでの意見のぶつかり合いを誇りに思い、達成感を抱いた。8日間という短い間ではあったが今までに感じたことのないような感情を抱いているようだった。人種、文化、言語など、異なる背景をもった若者たちが同じ場所に集まり同じゴールを目指して活動できたことに一体感を感じた。

 同じ問題意識を持った若者同士が意見をぶつけ合い、アイディアを共有し合い1つのものを作り上げる過程は容易なものではなかったが、私にとっては刺激的な体験であった。同世代であるからこそ思ったことや考えたことを気兼ねなく口にして伝えられ、理解をしてもらうことができるのだと思った。

 さらに若者であるからこそ同じ目的に向かって激しく意見を交換し、私たちなりのメッセージを社会に伝えていけるのだとも思った。そして、何より、人種、文化、言語が何であれ自分の意見をしっかりと持ち、責任を持ってはっきりと発言すること、相手の意見を自分とは異なる意見としてまず受け入れることの大切さを感じた。

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子ども環境サミット in KOBE(5記事)

2008年5月21日~24日、神戸市で「子ども環境サミット in KOBE」が開催された。これは民間主導型のG8環境大臣会合関連事業で、日本を含む21カ国から子どもたちが集まり、環境問題について意見を交わし未来へのメッセージを世界へと発信しようというものだ。
このサミットには、ブリティッシュ・カウンシルが選んだ「国際気候チャンピオン」(日本を含む13カ国から選んだ高校生39名)と日本国内から選んだ「気候チャンピオン」(小学生から高校生たち7名)も参加した。国際気候チャンピオたちは、こ

▲英国環境大臣との会談

の「子ども環境サミット」への参加に先立ち、ロンドンで開かれた国際気候チャンピオン会議に出席し、各国の気候変動の問題やそれへの取り組み・改善方法などについて意見を出し合った。そこで出た意見を草案とし、世界の子どもたちからの投票を経て、「神戸チャレンジ」と題した「提言」がこの「子ども環境サミットin KOBE」でまとめられた。国際気候チャンピオンは「神戸チャレンジ」を、ヒラリー・ベン英国環境大臣に手渡した。
このサミットを、日本の気候チャンピオンでもあった2名を含むCE記者4名が取材した。

子ども環境サミット in KOBE」に参加して
2008/7/13                 寺浦 優(14歳)

 サミットには、世界21カ国の小学生から高校生までの幅広い年代の人たちが参加していました。ここに、私は日本の「気候チャンピオン」の一人として参加し、日本の気候チャンピオンたちの意見を代表して発表しました。各国からの参加者の話を聞き、多くの刺激も受けました。開会式では、ツバルを取材した女優の藤原紀香さんの話のほか、ツバルの女の子アンジェラさんの話も直接聞くことができたり、貴重な体験をすることができました。その経験について報告します。

  
サミットでは、世界13カ国の「国際気候チャンピオン」が、国ごとに自国の環境問題の状況やチャンピオンたちの活動内容を、各々3分間にまとめたプレゼンテーションを行いました。私は日本のプレゼンを担当しました。日本のチャンピオンたちは、「日本人の環境問題に対する意識の低さと、それを解決するには自ら率先して活動しなくてはならない」という2つを強く訴えかけることにしました。

 昔から「MOTTAINAI」(もったいない)は日本特有の考えとして受け継がれてきました。しかし今、「MOTTAINAI」という考え方が国民の心の中から薄れているように感じます。これは、「日本人の環境問題に対する意識の低さ」につながっていると私たちは考えました。そして解決のためには、「マイバック・マイはし・マイボトル」の使用を呼びかけるのはもちろんのこと、小中学校への出張授業でこれからの未来を担う小中学生に気候変動の実態を伝え、一緒に活動してもらえるようにお願いしたり、「エコな商品」や「エコなサービス」の開発や提供を企業に働きかけたりしようと計画しています。

 3分という短い時間の中で、私たち「気候チャンピオン」の思いを全て入れるのはとても大変でした。前日も夜遅くまでかかって、「私たちの生活が便利になればなるほど気候変動や環境問題は悪化していく。しかし今私たちは改善に向けて動き出さなければいけない。今の私たちの行動は、私たちの未来、私たちの子どもの世代に直接影響する。意識改善を今すぐ始めることが必要だ」ということが一番大事だと確認し合いました。

 私の言葉で果たしてうまく伝えられるのか不安もありましたが、精一杯伝えたつもりです。プレゼンが終わった時の達成感と、このサミットでプレゼンできた喜びは忘れることができません。

 「子ども環境サミットin KOBE」に参加し、私には「国際気候チャンピオン」をはじめ世界に沢山の仲間がいると思うことができました。それは、海外にも自分たちと同じように出張授業を行ったり、友人に呼びかけている人たちが沢山いたからです。イタリアのチャンピオンは「今まで地球を汚してきたことに対して、私たちが責任ある行動を取っています」と発言していて、説得力のある言葉だと感じました。
こういった仲間が沢山いることは、これからの活動への大きな自信となりました。そして気候変動をグローバルに考えている彼らからは、「自分ももっと広い視野で考え行動しなくてはならない」と刺激を受けました。

 私がこのサミットに参加して最も忘れられないことの一つが、ツバルのアンジェラさんの次の言葉でした。「私はツバルが大好きです。だから沈まないと信じています」。家族が大好きだから、島が大好きだから、沈むと思いたくないという、アンジェラさんの素直な気持ちは、私の心に響いています。こんなに島を愛しているのに生活できなくなってしまうかもしれないということには、憤りを感じました。今自分に出来ることを考え、何の罪もないツバルの人たちを少しでも助けたいと、心に誓いました。  私たち「気候チャンピオン」のスローガンは「OUR CRIMATE, OUR FUTURE, OUR VOICE」(私たちの気候、未来、声)、そして「SAVE OUR PLANET」(私たちの惑星を救え)です。私は、このサミットが開催されたことで、私たちの未来そして地球を守っていくことができると信じています。

「私たちの気候・未来・声」~気候変動を考える~
2008/7/13                 佐藤 美里菜(16歳)

▲中国の気候チャンピオンに取材

「子ども環境サミット in KOBE」が開催され、5月24日には神戸芸術センターで閉会式が行われた。私はその閉会式に参加し、そこでG8環境大臣会議への提言「神戸チャレンジ」が発表されるのを見ると同時に、気候変動について考える子ども達に取材を行った。

◇              ◇  

 現在、英国や中国の一部では洪水、中国の北京、ブラジルのサンパウロなどの都市では大気汚染、メキシコ、ロシアでは水質汚染、というように、気候変動は世界的な規模で深刻となっている。そうした気候変動について、世界の約40名の子どもたちが話し合って改善策を練り、それを子どもたちから大人へのメッセージである「神戸チャレンジ」として、G8国の環境大臣に提言した。

 神戸チャレンジの草案は3月にロンドンで行われた「国際気候チャンピオン会議」において三つ決められた。それを、ブリティッシュ・カウンシルのWebサイトを通じて行った世界の人からの投票により、一つに決定した。三つの草案に共通しているのは「気候変動に関する教育を」というものだった。

 日本で気候変動に関する授業などを行っているところは少ないようだが、英国、南アフリカ、カナダ、中国(北京)ではすでに教育制度に導入されているという。

英国の気候チャンピオン、ステファニー・リンチさん(18)によると、英国では11-14歳の授業に「気候変動問題」を取り入れているそうだ。南アフリカのザネル・ヴァン・ジルさん(17)によると、政府が作成した「ライフ・オリエンテーション」というプログラムがあり、彼女の学校はそのプログラムで、アル・ゴアの映画『不都合な真実』を観て、教育を受けているそうだ。また大学の建築学や理工学では環境に良いビルや家をつくるよう教育されているという。中国のチャンピオンである丁英瀚くんの通う北京の公立高校では「クライメート・クール・プログラム」という週1回の気候変動に関する授業があるそうだ。選択授業ではあるが、彼は「必須科目とするべきであり、特に低学年の授業に取り入れるべきだ」と話す。

 しかし気候変動についての教育を導入したくても言語の違いがある国や識字率が低い国では難しい。公用語が11もあるインドのカラン・セガールくん(17)は、この問題について「本やインターネットを通してメッセージを伝えて理解する」「映画や歌、路上パフォーマンスによって多くの人々にメッセージを伝える」というアイディアもあると語り、言語が多くても教育することは決して不可能ではないことを伝えてくれた。ブラジルのギレム・ディ・シキィラ・パストレくん(17)は「識字率が低く、教育制度が必ずしも優れていない」と話すが、彼の学校では地理などの授業で気候変動について学んでいるようだ。

 私の通う高校では授業での教育はしていないが、古紙やブリックパックを回収しリサイクルしている。そういった実践的なことも含めて、もっと世界中で学校としての積極的な取り組みが必要だと思う。

 神戸チャレンジの中にもある「国際的排出権取引制度」については英国のヒラリー・ベン環境大臣と子どもたちが意見を交換する場面もあった。

  排出権取引制度(Cap & Trade)とは、国や企業ごとにCO2の排出枠を決定し、排出枠に余裕のある国・企業と排出枠を超えている国・企業が取引(トレード)する制度である。つまり、地球規模でのCO2排出量をコントロールしようということだ。

 大臣は「どの国が排出したCO2かを見分けるのは困難である」と話す。その現実に対して国際気候チャンピオンたちは「深刻な問題であるが、世界での認識を高め、世界規模でのCO2の排出を制限しなければならない」と語った。チャンピオンたちは「先進国はもっと途上国に対して技術や資金を提供するなどの支援をするべきだ」と考えている。

  私もこの問題のように世界規模の問題に関しては、「支え合う社会」を意識することによって少し解消されるのではないかと思う。

 いずれにせよ、子どもたちの力だけではこの問題を解決することは不可能である。チャンピオンたちは「大人は子どもたち以上に気候変動に対する認識を高めるべきであり、技術や資金などで世界規模の影響力をもつ大人が行動にでるべきである」「将来、直接影響を受ける僕らの声に耳をかたむけてほしい」と強く語った。

 今すぐ、大人が率先し気候変動について積極的に取り組むべきである。そして未来を生きる子どもたちは「自分たちの気候」「自分たちの未来」であることを強く意識し地球とうまく付き合う生活を送ることがとても重要だと思う。

  現代社会において、環境に優しい生活を送ることはそこまで難しいことではない。自分ができることを少しでも生活に取り入れてみてはどうだろうか。その努力は地球だけでなく、必ず自分にとってもプラスになると、私は思っている。

子どもたちから未来への提言~子ども環境サミット in KOBEに参加して~
2008/7/13                 宮澤 結(14歳)
 皆さんは「気候変動」についてどう考えているだろうか? おそらくこのような質問を突然投げかけられたらびっくりするだろう。また、「そんなの考えたことがないから分からない」という人も多いのではないだろうか。その答えを考えて行動していた子どもたちの思いが、「神戸チャレンジ」という形でG8国の環境大臣に伝えられた。その様子を取材し、参加した子どもたちの意見を聞いた。

▲インドの気候チャンピオンに取材

 様々な環境問題を子どもたちの視点で地球規模に見ていこうと、ブリティッシュ・カウンシルが主催して、3月にロンドンで「国際気候チャンピオン会議」が行われた。そこで話し合われた内容から「神戸チャレンジ」のための三つの草案が生まれた。そのうちの一つを、5月24日に神戸で開催されたG8環境大臣会議に提言するため、世界各国のブリティッシュ・カウンシルがウェブサイトを通して、世界の若者たちに投票を呼びかけ、23日までに17,000もの投票が寄せられた。
「子ども環境サミットin KOBE」では、神戸で再会した13カ国の国際気候チャンピオンと日本国内の気候チャンピオンとがその投票結果に基づいて話し合い、「神戸チャレンジ」の内容を次のように決め、G8の環境大臣会議に提言した。

気候変動対策に取り組むために、私たちは、その難しさを認め、責任を受け止め、一貫性をもって対応しなければなりません。
・すべての教育制度に気候変動を取り入れ、実用的に解決策を全社会に提示して下さい。
・厳しい国際的排出権取引制度を導入して、排出を制限してください。
・気候変動の避けられない影響によって受ける最悪の打撃のために、技術と資金を提供してください。

 この提言の中でも特に気候変動に関する教育を充実させることについては、多くの期待が寄せられているのを感じた。今回「神戸チャレンジ」を議会に提出したことを報告したヒラリー・ベン英国環境大臣は「より多くの人が教育を通して気候変動の問題を理解して政治を変えることができるから、教育は大切だ」と述べた。また、私たちの世代が将来、直接影響を受けるのだから、同年代の子どもたちに学校教育という形で理解してもらえば数年後に良くなっているだろう、と話す国際気候チャンピオンも多くいた。

「教育制度に気候変動を取り入れる」ということに関して、すでに実行している国の話も聞くことができた。カナダのメーガン・マックイーンさん(16)によるとカナダでは「エコ・スクール・プログラム」というのを設けて環境基準を設定し、電球を省エネタイプに変えたり、緑を植えたり、ゴミを減らすように努力しているそうだ。また南アフリカでは、文部省が作成した「ライフ・オリエンテーション」というプログラムがあり、エイズや自国の直面する問題について人々とどのようにコミュニケーションをとるのかを学校で学ぶという。南アフリカのザネル・ヴァン・ジルさん(17)の学校では、アル・ゴアのドキュメンタリー映画『不都合な真実』を見て環境について教育を受けているそうだ。

一方、気候変動についての教育を受けられない国の事情なども聞けた。都市部だろうと農村部であろうと、気候変動は人々に影響する問題であるのに、インドでは識字率が約50%と低いので学ぶことができない、とインドのカラン・ヤーくん(17)は言っていた。

 各国で問題になっている気候変動の被害についても聞いてみた。香港の陳旭培くんよると、内陸での砂漠化が進んでいて、都市部にも黄砂が飛んでくることが問題らしい。ブラジルのギレム・ディ・シキイラ・パストレくん(17)は、アマゾン川流域の森林伐採が問題になっていると言っていた。ザネル・ヴァン・ジルさんは、5000種もの南アフリカ固有の植物が気候変動の影響を受けていると言った。

ザネル・ヴァン・ジルさんは「私たちが大人になってからでは遅すぎるから大人たちには今、行動を起こしてほしい」と言っていたし、インドのカラン・セーガルさん(17)も大人たちの経験や資金が無ければ実行できないから、大人に協力してほしいと言っていた。この問題においては、世代を越えての協力が必要となってくるだろうし、やはり大人の力が必要だと思った。

各国の気候チャンピオンたちの話を聞いて印象的に思ったのは、どのチャンピオンもしっかりと自分の意見や考えを持ち、真剣に話してくれたことだ。取材前の私は正直、「他の人が頑張れば」と他人任せな思いが少しばかりあった。だからこそ気候変動について深く考えている気候チャンピオン達は輝いて見えたし、今までの自分の考え方が恥ずかしくなった。恐らく前の私のように考えている人は多いだろう。だが、この気候変動は、他の誰でもなく、私たちの世代の問題である。誰一人として知らん顔は出来ないし、世界が一丸となってこの問題に取り組む必要がある。サミットに参加してみて、「自分の出来ることは何があるのか」と考えてみた。冷房の設定温度を数℃上げてみるとか、電気をこまめに消すとかほんの小さなことでいい。今日から自分の出来ることを見つけて、地球をいたわっていこうと思う。そして自分が実行することで、自分の周りの人にもその考えかたを浸透させていきたい。

「子ども環境サミット in KOBE」に参加して
2008/7/13                 三崎 友衣奈(16歳)
 7月の北海道洞爺湖サミットに合わせ、5月17日~25日に開催された「子ども環境サミットin Kobe」では、国際気候チャンピオンたちによる活発なディスカッションが行われたほか、京都へ観光に行ったり、神戸祭りに参加したり、グループに分かれて企業訪問に行ったりと、日本の様子も見学した。また、このプログラムに対し多額の寄付をしてくれた女性との対話の時間もあったほか、日本人としての意識を改めて考えさせられる場面もあった。参加しての報告と感想をまとめた。

▲日本のチャンピオンによるプレゼンの様子

サミットでは、国際気候チャンピオンたちによるディスカッションが多く行なわれた。自分が自国の大臣になったつもりで国民にやってもらいたいことを考えたり、他国の国民に成り代わってその国にやってもらいたいことを話し合い、その国のチャンピオンに提案したりした。特に京都議定書に関しては盛り上がり、アメリカのチャンピオンが「国がやっていることと国民の意思とは大きな違いがある」と主張し、気候変動の問題に対する真剣な姿勢をアピールした場面もあった。

今回の「子ども環境サミット」の日本開催には、同サミットが企画したロンドンでの「国際気候チャンピオン会議」で話し合われた内容を「神戸チャレンジ」という形で「G8環境大臣会合」に提出するという目的があったため、その準備も進められた。主に、ロンドン会議で出された案を再確認し、内容をより深めるための話し合いが重ねられた。

チャンピオンたちがオープニングセレモニーに向けてプレゼンテーションを考えていたとき、スタッフから一人の女性が紹介された。この女性は、このサミットを企画し、多額の寄付をした人の一人だ。簡潔な紹介のあと、多くの質問がチャンピオンから飛び出した。「サミットを企画した動機は?」「どうして寄付しようと思ったの?」など、みな積極的に手を挙げて質問する。

 時間が押していた中で最後に「なぜ‘若者’を対象としたのか」という質問が出た。この質問に対して彼女は「直接影響が出る未来に生きる人たちでもある若者に考えてほしいから」と10代の若者への大きな期待を語った。

 サミットでは世界規模だけでなく、日本人としての意識を改めて考えさせられる機会もあった。ある夜、豆腐や漬物、刺身、すき焼きなどの日本料理が振る舞われたときのことだ。外国の料理とは全く違うため、豆腐の触感が気持ちが悪いから、また味付けが合わないからという理由で料理を残す人が多かった。そんな中、一人の外国人チャンピオンが友達の料理がほとんど手付かずのまま残してあったのを見て、「作った人に申し訳ない」と残りをつまんでいた。自分で身近にできる範囲のことを、自然に実行していた姿に感心した。

 「MOTTAINAI」(もったいない)という日本語は世界で広がっている、日本独自のものの言い表し方である。しかし現在、日本では一人が一日当たり平均約50gもの食べ残しを出しているという。古来の日本人の心持ちを受け継いだ「もったいない」を実践できる人でありたいと思った出来事だった。  世界中の同年代の若者と話し合う中で、気候変動についてだけでなく世界の中の日本を垣間見ることができたと思う。「MOTTAINAI」を発信する日本人として、未来をつくるティーンとして、この大きな問題に立ち向かおうと思う。気候変動は規則や条例によって改善される問題ではなく、一人一人が、将来を見据えていかに行動するかが大きく関わってくる。若者が、気候変動という将来に大きく関わってくる問題を敏感に感じ取っていくことができれば、世代が変わっていく中で違いが現れてくると信じている。

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CE記者2名が「気候チャンピオン」に選出

CE記者2名が「気候チャンピオン」に選出 2008/03/16

 藤原沙来(18)記者と三崎友衣奈(16)記者の2名が3月16日、英国の国際文化交流機関ブリティッシュ・カウンシル主催の「気候チャンピオン」 に選出された。

 同日都内で行われた 「気候チャンピオン」発表記者会見では、 気象予報士の石原良純さんをゲストに迎え、制作作品の発表を行った。

  気候チャンピオンは世界33カ国 で、気候変動を伝える役割を担う。5月22日から開催される「子ども環境サミット in KOBE」に参加、
意見交換をし、G8環境大臣会合への「神戸チャレンジ」提言を行う予定。

  日本の気候チャンピオンは全国の小中高生を対象に身近な気候変動の実態をとらえた映像作品を募り、106件の応募作の中から作品の内容や面接などで10人が選出された。
 
  藤原記者は10人の「気候チャンピオン」の中から、日本代表である3人の「国際気候チャンピオン」の1人として13カ国が参加する「 ロンドン国際気候チャンピオン会議」(3月24日(月)~3月30日(日))に参加する。

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食物を無駄にしているのは誰?
2007/10/09                          三崎 友衣奈( 15 )

 近年関心が高い環境問題の中でも日本の大きな課題である廃棄。「 MOTTAINAI 」が世界に知られていても、当の日本では全国で一日 33000 トン、東京だけで 6000トンの食料が捨てられている。

 なぜ、こんな大量の食料が捨てられなければならないのだろうか。少しでも捨てる量を減らすことができないのだろうか。

 セカンドハーベスト・ジャパン( 東京都台東区 )は、食品メーカーから余った在庫を寄付してもらい、それを生活困窮者や孤児院などへ無償で配給している非営利団体( NPO )だ。 2000 年よりホームレスに食事を配給する炊き出しを始め、 2002 年からは正式に NPO として今の活動を試みた。

 浅草駅からほど近いその事務所には、幅が 4 , 5 メートルほどの奥の広い場所に、ダンボールが所狭しと積み上げられている。そこにある中央のテーブルの横にある人が一人通れるくらいの通路の間をスタッフが縫うように作業している。

 一見、何の問題もないように見えるこのダンボールの多くは、運搬中に段ボールに傷ついたというだけで問屋やスーパーに受け取ってもらえなかったものなのだ。中身は問題ないのに、なぜ受け取られないのか?「日本の消費者は厳しい」。理事長のチャールズ・ E ・マクジルトン氏は苦笑いした。

ハインツ日本株式会社へ取材

 ハインツ日本株式会社では 2003 年からセカンドハーベスト・ジャパンに対して常温のレトルトのカレーや缶詰のスープなど、月に 300 ~ 400kg の食品の寄付を行っている。

 食品メーカーは一定期間にどの商品がどの程度売れるか、販売予測を立てるのだが、やはりどうしても余ってしまうそうだ。「消費者の『できるだけ新しいものがいい』という厳しい見方があるとともに、缶がへこんでいるなどの見た目の良くない商品は受け取ってもらえない」と池田真理子広報室マネジャーは語る。

 株式会社ローソンは 2006 年6月から 横浜市中区 の「さなぎの食堂」に販売期限が切れ、かつ消費期限は切れていないパンや弁当などを寄付している。「さなぎの食堂」では、それを再加工した温かい食事を寿地区の路上生活者を対象に低価格で提供している。

 ローソンでは弁当などの食品には厳しい販売期限を設け、それが切れた場合、すぐに店頭から下げている。これらの多くは消費期限が切れるまで数時間あるものばかりだ。「万が一事故があってからでは遅い。 100 %安全でなくては店頭におけない」と CSR 推進ディレクターの篠崎良夫氏は語る。

 篠崎氏によると「日本で PL 法が施行されてから、米国とは違って寄付した後でも生産者の責任が続くことから、多くの食品メーカーはリスクを感じてこのような活動に積極的でない」そうだ。セカンドハーベスト・ジャパンのマクジルトン理事長は、「日本は『念のため』が多すぎる」と語る。不二家の一件でも、外国からみればおおげさに見えるそうだ。

ローソンへ取材

 ハインツの企画担当執行役員のポール・モリ氏もリスクを分かった上で「今のところ問題はないので続けていく。結果としてはイメージアップになっている」と笑顔を見せた。

 食に対する安全は、賞味期限という数字だけでなく自分で判断する力も必要だ。「念のため」に余裕期間を見込んで定めた賞味期限を少しでも過ぎると食べなくなる。このような消費者の数字に依存した姿勢が、生産者にプレッシャーを与え、結果として大量の無駄を出しているのではないだろうか。

 私たちが毎日食べているのは、念には念を重ねた上で出荷されている食品である。それを我々が贅沢にも捨てている陰で、多くの人々が飢餓で苦しんでいるのを忘れてはいけない。


食べ物の裏事情
2007/10/09                          大久保 里香( 15 )

東京では一日 6000 トンもの食べ物が捨てられている。「日本では、食べられるものを捨てすぎではないだろうか?」この先進国ならではの問題について興味を持ち調べ始めた。

 現在日本の企業は驚くべき理由で食べ物を捨てている。商品のパッケージに傷がつくと中身に問題がなくても捨てることは当たり前であり、スーパーなどのお店が引き取ってくれないという理由から、商品が入っているダンボールに傷がついただけ、賞味期限が三分の一過ぎただけでも商品を捨ててしまうのだ。こういったまだ食べられる食品を有効活用しようとする活動がフードバンクだ。 

セカンドハーベスト・ジャパンへ取材

 このフードバンクの活動をしているセカンド・ハーベスト・ジャパンというNPO団体に取材に行った。この団体は企業からまだ食べられる食品を引き取り、その食品を炊き出しに使ったり、経済的に苦しい人たちに配ったり、福祉施設に提供している。日本ではこのフードバンクの活動はあまり知られておらず、フードバンクに食品を提供してくれる企業はまだ少ないそうだ。また提供をしている企業を調べてみるとほとんどは外資系の企業であった。「日本では捨てられるものが多すぎる。もったいないと感じ、捨てられる食品を有効利用できないものか、と思ったのがこの活動を始めるきっかけ」だと、セカンド・ハーベスト・ジャパンのチャールズ・マクジルトン理事長は語った。

 アメリカでは、フードバンクの活動は活発に行われており、食品を提供した後は食品の製造責任はフードバンクに移るといった企業が提供しやすくなるような法律も定められている。日本は食品を製造した企業が最後まで責任を負わなくてはならない。このことが、日本ではフードバンクが浸透していないこと、そして食品を提供することで企業へのリスクが増すために提供することをためらってしまう原因であると感じた。

 日本企業でありながら食品リサイクルを積極的に行っている株式会社ローソン執行役員の篠崎良夫氏は、企業が食品リサイクルやフードバンクにあまり取り組まない理由として「万が一でも食品で問題が起きたら製造者が責任を取らなければならい。日本の現在の法律では活動をするのに企業に多大なリスクが伴い、法律が変わらなければ活動は浸透しない」との理由を挙げていた。

 コンビニのローソンでは、食品のリサイクル活動のひとつとして、余ったまだ食べられるお弁当やパン、工場で余ったお弁当の残り物を「さなぎ達」というNPOの団体が経営している食堂に食品を提供している。この食堂では、提供された食材を使って料理を作り、安い価格で横浜市中区の寿地区の生活困窮者の人たちに食事を提供しているのだ。

 そもそも、日本でこんなにも多くの食品が捨てられるのは私たち消費者側のせいでもあるのではないだろうか。私たちは商品の中身に問題がないとわかっていても傷がついた商品を進んでは買わないだろうし、賞味期限もなるべく遅いものを買おうとする人も少なくない。私たちが捨てられる商品を間接的に作っているともいえる。もし、消費者が傷のついた商品を進んで買うようになったり、賞味期限が古いものから買うようになったらきっとダンボールに傷がついたり、賞味期限が三分の一以上過ぎてもスーパーなどのお店も商品を引き取るようになるだろう。  

  日本にも、生活困窮者は多くいる。十分に食べることができない人がいるにもかかわらず食べられる食品を捨てるのが当たり前になっている日本の社会はおかしいと思う。国内でフードバンクや食品リサイクルの活動が広まり活発になれば、食べられる食品の廃棄量をゼロにすることも可能になり、その食品で生活困窮者の人も毎日きちんと食事が取れるようになるかもしれない。私たち消費者はできる限り企業が廃棄する食品を出さないように買い物をするときに気を配らなければならないし、企業はできる限り食品を有効に使うように努力しなければならないと思う。そうすれば、きっと食べ物が日本内ですべての人々にうまく循環するだろう。

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