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報告会、レクチャー

国際青少年メディア・サミットと石巻訪問・記者交流の報告会

 去る10月26日(日)14時30分から、コネクト渋谷で、7月14日~27日に参加した第9回国際青少年メディア・サミットと、8月16日に訪れた宮城県石巻市のキッズ・メディアステーションの記者たちとの交流の報告会が行われた
記者、修了生、保護者、理事、スタッフ、ユースワーカー、そして関係者たち約30名が集まり、メディア・サミットに参加した記者たちが撮影・編集したビデオを上映し、パワーポイント・スライドを使ってそれぞれ5分間のプレゼンテーションを行った。続いて石巻を訪れた記者の二人が7分間のプレゼンテーションを行った。

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Interviews 国際

イラン出身のハニア・アスガリ(34)さんにインタビュー

村上 類(15)

村上類(15)記者は、2014年7月14日から27日まで南カリフォルニアのアリソ・ビエホで開かれた第9回国際青少年メディア・サミットに参加した。そこで7つの課題の一つの「環境」グループに参加し、グループのアドバイザーであるハニアさんに出会った。村上記者にとってはイラン人に会って話をしたのは初めてのことで、様々なイラン事情をインタビューで聞いてみた。

Q. どのようなお仕事に就いていますか?
A. こどものメディア専門家で、フリーランスのメディア研究家・教育者として働いています。また、私が主宰している「ユナイテッド・ドリーム」というセンターでこどもの問題、とりわけこどものメディア問題に取り組んでいます。

Q. なぜそのお仕事に就いているのですか?
A. 私たちは21世紀に生きており、この時代はメディアが大きな役割を果たしていると思うからです。この分野で、とくにこどもや若者たちと仕事をすることはとても大切ですし、興味もあるからです。メディアは貴方たち若者に新鮮さと活力を感じさせるだけでなく、こどもたちがメディア・リテラシー(メディアの活用能力)を得るための基盤を与えます。ご存知のように最近はリテラシー(識字能力)には読み書きの能力だけに限りません。

Q. 貴女の宗教は何ですか?

  1. 私はイスラム教徒です。

Q. イランについて貴女が好きなところは何ですか?
A. イラン(旧ペルシャ)には偉大な文化があります。私たちの文化は紀元前3000年にまでさかのぼりますし、私はそれを誇りに思っています。

Q. イランにはどういう問題があると思いますか?
A. イランには多くの問題がありますが、主な問題はイランが世界の一部の地域から孤立していることです。イランは世界に門戸を開き、世界は私たちに対して門戸を開くべきだと思います。もしそれぞれの国が平和に暮らしたいと望むのであれば、自らの信念をもって心から他の国々を尊重しなければいけないと思います。政治的見解とは切り離すべきです。他の信仰や考えを受け入れるために私たちの門戸を開き、共に平和に生きる方法について他の意見に耳を傾けるべきです。いかなる敵対心も取り除くべきです。

Q. ソーシャルメディアはどのような影響がありますか?
A. 私がプレゼンテーションでお話ししたように、ソーシャルメディアは私たちの生活で最も大切です。ご存知のように今の人々を見ていると、個人生活、仕事場、そして余暇のときでも、みんなソーシャルメディアに深く関わっています。ソーシャルメディアが酸素のようになれば、大きな影響力をもつでしょう。私たちはソーシャルメディア無しには生きられません。ですから私たちは適切な方法でソーシャルメディアを使って知識を増やすべきです。

Q. イランでは小学校から高等学校までに共学の学校はありますか?
A. 幼稚園は共学です。小学校から高等学校までは完全に男女別学ですが、同じカリキュラムを学びます。小学校は6歳から始まり高等学校は18歳で卒業です。大学は共学です。

Q. 貴女はイランの大学に行きましたか?

  1. はい、行きました。イランで修士号の学位を取得しました。イランでは鉱山学のように実践的で難しい学部がありますが、大多数は男子学生が専攻しています。

Q. 大学院での専攻は何ですか?
A. コミュニケーション、メディア研究です。

Q. なぜコミュニケーションを選択されたのですか?

  1. 私はコミュニケーションが本当に好きなのです。前にもお話ししたように、私たちはメ

ディアの時代に生きているので、いつでもどこでもメディアに関わっていますから。
私たちはメディアからメッセージ攻めに遭っていますし、私たち自身が試練を乗り越えるためにメディアをつくることもできます。これは私にはとても興味があります。コミュニケーションは、実際には心理学、人間科学、法律、政治、国際関係のような他の自然科学をすべて含んだような専攻科目だからです。

Q. イランには女子大学がありますか?
A. はい、あります。非常に優れた教授陣をもつ有名な女子大学です。でも私は共学の大学に行きました。

Q. 貴女はイランの教育に満足していますか?
A. 正直言って満足していません。規則が厳し過ぎるからです。勉強する量もとても多いのです。私は教育とはただ学校に行って勉強するだけだとは思っていません。教育とは学校へ行って様々な活動をして、様々な技能(スキル)を習得することです。貴方たちは社会的活動が求められています。イラン人は教育水準が高いですが、私たちは他の側面にも目を向けなければいけないと考えています。

Q. イランでは政府がソーシャルメディアを規制していると思いますか?
A. はい、そう思います。イランには国営テレビ局とラジオ局しかありません。民間の放送局はありません。新聞社には民間企業がありますが、完全に政府の管理下におかれています。インターネットにはフィルタリング(監視チェック)がかけられています。

最後に、イラン人の日本人に対する印象について言わせてください。
イラン人は日本人を尊敬しています。日本は第二次世界大戦で完全に破壊されたのに、戦後の日本人は自分たちの国を再建するために団結して一生懸命働いたからです。日本人はとても礼儀正しいですし、イラン人は日本人を高く評価しています。貴方たち日本人は世界の手本(モデル)になるべきです。

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Interviews 教育

Interview: Ms. Hania Asgari (34) from Iran

photoRui Murakami (15), CE youth reporter, participated in the 9th International Youth Media Summit in Aliso Viejo, southern California, from July 14th through 27th, 2014. She joined one of the seven issue groups, Environment, of which Hania was the advisor. This was Rui’s first time to meet and talk to an Iranian and was eager to have an interview.

Q. What kind of work do you do? 

I am a Children’s Media Professional working as a freelance media researcher & educator. I have also my own center called United Dreams devoted to children’s issues specially children’s media.

Q. Why did you choose that job?

Because I believe media plays a great role in our era as we are living in 21st century.Working in this field, especially with children and young people, it is both vital and interesting. It not only makes you feel fresh and active but also provides a platform to help children in gaining media literacy; as you know nowadays literacy is not limited to the knowledge of reading and writing.

Q.What is your religion?

I am Muslim.

Q.What do you like about Iran?

Iran has a great culture. Our culture goes back to 3,000 before Christ (BC) which makes me feel proud.

Q.What do you think the problems are in Iran ?

We have many problems in Iran but the main one is we are isolated from some parts of the world. We should open our doors to the world and they should open their doors to us.

If each nation wants to live in a peaceful world, we have to respect other nations with their own beliefs. We should distance ourselves from political views. We should open our doors to welcome other beliefs, other ideas, and listen to other comments on how to live peacefully together. We should remove all hostilities.

InterviewQ. What is the impact of social media?

As I mentioned in my presentation, social media is the most important part of our lives. If you look at the people nowadays, they are all involved in social media in their personal lives, workplace and in their leisure time. When social media becomes like oxygen, it has a great impact. We cannot live without it. So we should increase our knowledge on how to use it in a proper way.

Q. Are there any co-education schools in Iran from primary to secondary?

In Kindergarten, we have co-education. In primary and secondary schools, we are separated by gender but study the same curriculum. Primary school starts from age of six and secondary school ends at the age of eighteen. We have colleges and universities that are co-educational.

Q. Did you go to university in Iran?

Yes, I did. I earned my Master’s Degree in Iran.There are some practical and difficult departments that are predominantly pursued by male students such as mining.

Q. What is Master’s degree in?

Communications—Research in Media.

Q. Why did you choose Communications?

I really love it because as I mentioned earlier we are living in the media age and we are involved in it everywhere all the time. We are bombard by media messages and we can also produce media to overcome our challenges. This is very interesting to me. It is a major which is in fact a package of other sciences like psychology, human science, law, politics, international relations.

Q. Are there any women’s university in Iran?

Yes, there is. There is a well-known university with a very good faculty. But I went to a co-educational one.

Q. Are you satisfied with education of Iran?

Honestly not, because it is too strict. We have to study a lot. I don’t believe an education means you just go to school to study. Education means you go to school to have different activities and to learn various skills. You need to have social activities. Iranians are highly educated people but I believe we have to pay attention to other aspects as well.

 Q. Do you think that the government controls social media in Iran?

Yes, they do. We have only state TV and radio, no private stations. There are private newspapers but they are soft-censored. The internet is filtered. Let me talk about the Iranian impression about Japanese people In Iran people respect Japanese people because they work so hard.

After the World War II, Japan was completely destroyed but they kept their unity to rebuild their country. Japanese are very respectful and Iranians admire you.

You should be a model to the world.

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国際

第9回国際青少年メディア・サミットに参加して

村上 類(15)

  7月14日の朝、目覚めたら母国語ではない言葉が聞こえてくる。自分がいったいどこにいるのか状況が読めなかった。日本の学校で授業を受けて英語を身につけてきた私にとって、朝起きたらまずグッドモーニングと言う習慣は、まさに自分は日本にいないと思い知らされる瞬間である。そうだ、今日からは英語で自分の意見を主張しなければ!と私は気持ちを引き締めた。

グループで自然公園訪問

2014年7月14日から26日まで、アメリカのカリフォルニア州にある米国創価大学の施設を借りて第9回国際青少年メディア・サミットが行われ、チルドレンズ・エクスプレスから私を含め記者2人が参加した。このサミットには世界22ヶ国の14歳から25歳までの若者が集まり、世界で起きている7つの問題(女性の権利・貧困・差別・環境・若者の地位向上・健康・暴力)毎にグループを作り世界へ発信するためにビデオを制作した。

 私が参加した環境のグループはアメリカ、アフガニスタン、アルメニア、オーストリア、コソボから参加した7人だ。アドバイザーはイランから参加した女性だった。活動を通して、普段日本国内にいるだけでは絶対話す機会がない国の人たちと親交が深めることができた。
 最初に、『環境』と言っても一言では語りきれないため、世界で起きている自然現象や自分の国で感じられる地球温暖化の影響などを出し合い、どの項目が世界的な問題でまた映像で表現しやすいかを話し合った。そして世界共通で身近な水不足にテーマを決めて映像を制作することにした。その後、映像でいかに水不足を表現するのかアイデアを出し合い、水を無駄にしている人と、水を探し求めている人を交互に見せることに決めた。

撮影準備

 撮影の前にはどんな行動をどんな状況で撮るのかを細かく記した絵コンテを描いていく。私は撮影中の指示や判断を英語で仕切ることが難しいため、この絵コンテを描く役を買って出た。それぞれの場面の役者のポーズから天気まで撮影の軸となる重要な場面を一つずつ漫画のように描いていくのはなかなか難しかった反面、とても面白くいい経験だった。

 そして撮影。私たち環境グループにとって、水不足と水の無駄使いを分かりやすく見せるには太陽がどのシーンでも鍵を握るため、その日の天気にしたがってスケジュールを次々と変更する必要があり四方八方へ動き回った。

 撮影後は編集作業に取り掛かる。しかしここで、外国ならではの問題が生じた。撮影しなおすか否かの話し合い中にグループのメンバー数人がいきなりどこかへ行ってしまったのだ。遅刻、欠席等の行動はありえないと考えられている社会環境で生活をしている日本人の「きっちりさ」を感じた瞬間である。しかし最終的には映像作成の経験があるメンバーが編集を積極的に進めてくれて、最後には無事納得のいく作品を作ることができた。

 サミット最終日には各グループが作成した映像が上映された。どのグループの作品もそれぞれの問題を深く考えさせる完成度だった。日本ではせっかく映像を制作してもなかなか注目してもらえないことを考えると、日本はスポーツと勉強ができる人だけでなく、その二つに負けない才能を持っている若者にももっと注目をしてそれを発揮する機会を作るべきだと思った。

自然公園で説明を聞く

 私が今回サミットに参加して強く感じたこと。それは国や宗教、肌の色に関係なく支えあっていけば、たとえ少人数であっても生活しやすくなる人が増え、うれしいと思う人が必ずいるということだ。実際私は今回のサミットでさまざまな人に沢山助けられた。もし助けがなかったらおそらく二週間私は無事に生活できなかったと思う。活動外の時間に同じグループだったアフガニスタンの女の子に寮の部屋に呼んでもらって絵コンテの書き方を教えてもらったり、アドバイザーの人がミーティング終了後にわからなかった部分をもう一回教えてくれたりと、数え始めたらきりがないほどサポートしてもらった。特にルームメイトのアルメニア人の女の子が言ってくれた「困ったらいつでも助ける」という言葉は心の支えになった。 自分の学校のクラスだけが交流関係の中心だと思っていた私をサミットは変え、世界は広いようだが全員人種は違っても同じ人間であり、互いを支えあっていく大切さに気づかされた2週間だった。

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国際

The celebration of youth voices(若者の声の祭典)

松本 哉人(15)

 サミットに参加して3日目の昼、僕のグループ7人はオリエンテーションとしてそれぞれが自分のことを発表していた。みんなとちがって英語の得意でない僕はほとんど内容のないような事しか話せず、泣きたくなっていた。
 しかし、仲間たちは辛抱強く聞こうとしてくれた。話が止まるたびに「ソーリー」を繰り返していた僕に「英語がうまくないからといって否定することはしないし、だから謝る必要もない」と励ましてくれた。この言葉をもらってから僕は「サンキュー」という言葉を多く使うようになった。そして、この言葉が残りのサミット期間中、僕に話す勇気をくれた。
ことし7月14日から27日まで南カリフォルニアにある米国創価大学のキャンパスで第9回国際青少年メディア サミットが開催された。アフガニスタン、イラン、イスラエル、パレスチナ、コソボなど22ヶ国から来た80人近くの若者が差別、貧困、暴力、健康、環境、女性の権利、若者の地位向上の7つのグループに分かれて話し合った。

グループ活動の報告

僕は若者の地位向上のグループに参加した。僕のほかのメンバーはアルメニア、スロベニア、コソボ、アメリカ、メキシコ、ナイジェリアの若者たちだ。まず、それぞれの国の中で起きている若者の地位に関する問題を話し、共有し、改善するにはどうすればいいのか意見を交わした。ナイジェリアから来た女の子は金銭や社会的な立場の問題で自分の望む道に進めない若者がいることを話し、その場にいる全員が自分の周りにも同じようなことがあると話していた。

チームの課題は1分間のビデオ作品の制作だ。それぞれが自分の知っている映像を参考に見せ合いながら何を問題にするのか、どんな構成にするのかについて話し合った。その結果、テーマは「EVERY TALENT HAS ITS POWER」(全ての才能には活かしどころがある)で、自分の進むべき道を思い悩んでいる人たちに向けて自分の才能を信じるように呼びかける内容になった。

撮影は大学の構内で行った。メンバーはそれぞれ、プロデューサー、ディレクターなどの役を割り当てられた。各役割には専門家からのトレーニングも用意され、僕はガッファー(照明係)を担当した。ガッファーはライトや反射板を使って光の加減を調節する役で、撮影体験の少ない僕にとっては新しい知識だった。他のメンバーはほとんどの役割をよく理解していてビデオ作成の技術の高さに驚いた。意見がぶつかり合うことも多々あったが、結局はお互いの意見を理解した上で話し合い、納得する結論を出していた。日本では意見がぶつかると相手の話を聞かずにすぐに撤回したりしてしまうときが少なからずあるので、この点では日本は世界を見習うべきだと思った。 編集を終えてビデオ作品が完成した時はグループ全員で喜んだ。

撮影中の照明係

 もうひとつの難関はデクラレーション(宣言文)の作成だった。グループのメンバー全員が自分の国で起きている問題と解決方法について文章を作成し、その中から一人を選ぶ。選ばれた人は文章を読み上げて録画し、ビデオと一緒に閉会式で上映するのだが、若者の地位向上グループでは僕の提出した文章が選ばれた。日本の、子を持つ親や学校の先生達に向けて、子供にもっと励ます言葉をかけるよう呼びかける内容のものだ。英語の発音にとても苦労し、練習には多くの人の協力と時間とを必要としたが、ビデオ作品とともに閉会式でまとめて上映され、みんな達成感と喜びでいっぱいだった 気がつけば、サミットの最初には多くの不安を抱えていたのに、最後にはみんなとひとつになってビデオ作成や意見交換に取り組み、何事もまずやってみることが大事だということを学んだ。グループの中で口喧嘩になってふて腐れている様子などを見ていると、どこに住んでいても同じ人間であるということを実感させてくれたが、口喧嘩の原因がそれぞれの民族の信念の違いであったりすると参加者の「変えたい」という気持ちの強さを感じさせられた。それぞれの境遇の中で問題意識をもって参加した若者の中で共に作業できたことは世界に目を向けるいい機会になったと思う。また、自分の意見を発表し、人と話し合うことに長けた人たちの中にいると、自分の意見を主張し続けることの大切さやそのために必要な英語のスキルの重要性に気づかせてもらえた。

宣言文を撮影される

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社会 IT

VOCALOID™という文化


2014/10/04                 坂本 光央(11)

「初音ミク」のソフトウェア

   読者の皆さんは、VOCALOID(ボーカロイド)というものを知っているだろうか。歌声の合成技術の一つで、VOCALOID楽曲を作るためのソフトウェアにも使われている。VOCALOIDという名前はVOCALOID小説などで聞いたことがあったり、ニコニコ動画でVOCALOID楽曲の曲名を目にしたことがある、という人もいるかもしれない。
   具体的にはどのようなものなのか。VOCALOIDソフト発売元の一つであるクリプトン・フューチャー・メディア株式会社の広報担当 門野 亜由美氏、ニコニコ動画を運営している(株)ドワンゴ戦略的ETC事業部ユーザーマーケティング部クリエイティブプロデューサーの 阿部 大護氏、そしてVOCALOIDを開発したヤマハ株式会社 事業開発部 yamaha+推進室 VOCALOIDプロジェクト リーダー 剣持 秀紀氏に取材した。

ボーカロイド開発者へ取材

   そもそもVOCALOIDとは、はじめにも書いたように、ヤマハ株式会社が開発した歌声合成技術、そしてその技術の応用ソフトウェアの総称である。歌声は、実際の歌手の声をもとに作られた「歌声ライブラリ」とよばれる声のデータ―ベースをもとに合成している。この歌声ライブラリを変えることによって「初音ミク」「鏡音リン」などVOCALOIDキャラクターの声で歌わせることができる。さらに歌声ライブラリと、曲を打ち込む専用のVOCALOIDソフトウェアを使って曲を作ることができる。

門野氏によると、初めて日本語の歌声ライブラリ入りのVOCALOIDソフトウェアが発売されたのは2004年、「MEIKO」というソフトウェアだった。その後、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社では「KAITO」「初音ミク」などを発売していったという。このソフトウェアを使った楽曲の中で有名なのは昨年から今年にかけて放映されていたCMで使われた初音ミクの楽曲「千本桜」だろう。

(株)ドワンゴ社へ取材

   VOCALOIDを作った理由を剣持氏に尋ねると、「いろいろな楽器があり、コンピューターのなかに音源があったりはしたが、歌声だけは実際の歌手を呼ばなければならなかった」からだそうだ。

   阿部氏によると、 VOCALOID楽曲がニコニコ動画で流行り始めた時期は、2008年の半ばから2009年にかけてで、当時から初音ミクの楽曲は一番多かったそうだ。 また、現在のVOCALOID楽曲は、J-POPなどのカバー曲はほとんどなく、VOCALOIDのオリジナル曲、またそのカバー(既存曲を歌い手が歌ったものなど)がほとんどだという。

   ニコニコ動画でのボーカロイド楽曲の人気ポイントを質問すると、「一つ目は一つの動画を映像も声も全て自分で創ることができること、二つ目はキャラクターの人気で興味を持つ人が増えて、自分たちの思うままに想像して創ることができる二次創作(VOCALOID小説など)の現象が起きたところが人気のポイントだったのではないか」と話す。

クリンプトン社へスカイプ取材

   剣持氏に「VOCALOIDソフトを使った曲が最近増えてきているが何が魅力なのか」と聞くと、「いくつかあるが、人間の声のようでいて少し機械的なところ、また今までの常識にとらわれないところではないか」という。
 
   VOCALOIDという技術は、これからどのように進化していくのだろうか。剣持氏は「どんどん人間の声に近づけていきたい、完全な人間の声にはならないが、完全な人間の声ではないところがまた新しい表現になるのではないか」と語る。

  現在発売されている最新のVOCALOIDソフトはVOCALOID3で、このソフトでは、それ以前にはできなかった伴奏をつけることができるようになった。またiPadなどで楽しむことができる「iVOCALOID」や、自動作曲機能・ボカロデューサーを使った「ボカロネット」というものもある。

  「VOCALOID」という一つの新しい文化が、これからどのように躍進するのか、日本や世界の映像と音楽にどのように変化をもたらしていくのかを見守りたい。
※VOCALOID、ボカロネット、ボカロデューサーは、ヤマハ株式会社の登録商標または商標です。

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社会

住民のため、地域を伝える「地域新聞」

米山菜子(17)

  8月16日、真夏にも関わらず肌寒かったこの日に宮城県石巻市を訪れた。東日本大震災最多の被災者を出したこの町で、被災者でありながら、「伝える使命」を背負い情報を発信し続けた人々がいる。震災直後、避難所に張り出した「壁新聞」が広く評価された石巻日日(いしのまきひび) 新聞社だ。社員28名(そのうち記者は6名)で、宮城県石巻市、東松島市、牡鹿郡女川町の2市1町をエリアとして発行している。地域新聞のありかたについて、武内宏之常務(57)に取材した。

石巻漁港

 「地域の回覧板たれ」
 石巻日日新聞を創刊した山川清初代社長の言葉だ。まるで回覧板のように、地域住民に必要な情報を届ける地域新聞でありたい、という思いが込められている。「震災を経て大正元年の創刊当時の原点に戻りました」と武内氏は語る。震災前は、新聞は報道機関であって回覧板ではないという反発の気持ちが武内氏にはあったが、「震災直後は、被害状況や給水車がいつ来るのかなど、住民に必要な生活情報を提供する壁新聞はまさに回覧板のようでした」という。

石巻日日新聞が長年にわたって築き上げた住民との信頼関係は「住民とともに石巻で生活し、毎日のように顔を合わせ、共に考える。この日々の積み重ねが、住民と同じ思いを持ち、活発な情報交流を行うことにつながりました」。「震災当時、私たち記者も被災者と同じ経験をしたので、被災者が何を欲しいのかがよくわかりました。自分の家族の様子もわからないまま、記者として取材を続け、家に帰りたくても帰れない状態の中で、住民のために新聞を作り続けました」と武内氏は当時を振り返る。

 石巻日日新聞は地域新聞ではあるが震災後は、最大規模の被災地である石巻がどのように復興するのかを全国に発信するために、ネット配信Hibi-netを始めたそうだ。武内氏は「これから首都圏直下型や南海トラフ地震が予想されるので、他の地方の人たちの参考になればと思います」と言う。そして、武内氏はタブレット端末による発信も将来の視野に入れているそうだ。石巻には高齢者が多く、字の小さい新聞は読みにくいため敬遠される。タブレットは字を拡大できるので、ニュースも読んでもらえると期待する。また真冬の震災時、多くの高齢者は閉め切った室内にいて、外で流れる津波警報のサイレンや防災無線のアナウンスが聞こえなかったため、今後は防災機能としても使えると言う。新たな取り組みにも一貫して「地域のため」という強い意志がある。

武内常務に取材

 そして地域貢献にも力を入れる石巻日日新聞社では、スポーツを通して未来の担い手であるこどもたちを育てている。少年野球大会は半世紀以上も前から行われている。また、震災後多くの人に震災を知ってもらうために絆の駅「石巻NEWSee(ニューゼ ニュースの博物館の意味)」を開設した。誰でも無料で入館でき、震災当時の写真の展示や地域の人々と交流できる場として、武内氏は館長を務めている。

 石巻に生まれ育つ若者たちにとって、石巻日日新聞は生活に身近だという。遠藤友さん(19)は、「地域のニュースをたくさん伝えてくれるので、全国紙とは全然ちがいます」。そして木村ひな子さん(15)は「地域の祭りに家族と行って、そのことが新聞にも載ったりするからとても身近」と答えた。武内氏はこの言葉を聞いて、嬉しいと笑みをこぼした。そして、作家井上ひさし氏の「自分の住んでいる地域の歴史を軽んじる地域に未来はない」という言葉を引用して「自分の住んでいるところを知らなくて日本のことや世界のことを語るな、と思いますよ」と言った。地域新聞は地元のことを知るために必要不可欠な存在だ。

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社会

石巻は今

坂本 光央(11)

 あれから3年半がたったが、皆さんは3月11日のことをどれだけ覚えているだろうか。マグニチュード9.0、最大震度7の地震は東日本全体を襲い「東日本大震災」と名付けられた。また、この地震は大きな津波を引き起こし、三陸沿岸の市や町を流し去った。そんな多大な被害を受けた被災地の現在の状況と、そこに住んでいるこどもたちからこの被災地がどのように見えるのかを知るため、8月16日に宮城県石巻市と女川町を回り、石巻で活動しているキッズ・メディア・ステーションのこども記者に取材した。

   最初に、石巻駅前から観光タクシーで石巻の日和山公園、石巻港、湊小学校、そして女川町地域医療センター(旧女川町立病院)を訪ねた。日和山公園は、石巻市街を一望できる高台で、ところどころに震災前の写真が掲示してあり、震災前と今でどこが変わってしまったのかが一目で分かるようになっている。その写真と今の様子を比べてみると、明らかに建物が減り、南浜地区や門脇地区にはほとんど建物がなく、旧北上川の中洲も、面積が小さくなっている。津波で流されてしまったのである。

   石巻港には、津波で半壊した建物が未だに残っていて、とても痛々しかった。
 湊小学校は、震災により2013年に閉校した湊第二小学校と統合していた。湊小学校の前には「湊第二小学校  沿革」「湊第二小学校閉校記念碑」などの石碑が建っていた。
  
女川町地域医療センターは海抜18メートルの高台にあった。それでも津波が押し寄せて、一階が2メートルほど浸水したそうだ。また、通る道の途中には、あちこちに「津波到達高」を示す看板があり、また狭い仮設住宅などがあって、実際に行ってみないと分からないことが多かった。
    そして、一般社団法人キッズ・メディア・ステーションの記者たちに震災について話を聞いた。キッズ・メディア・ステーションは、「石巻日日こども新聞」を作っている団体である。

石巻漁港

  まず、地震が起きた時の気持ちを尋ねると、八重樫蓮君(石巻中学校1年)は、「その時(小学4年生)は学校にいたので、家族のことが心配でした」と語った。

石巻の町がこれからどのような町になって欲しいかについて聞くと、松林拓希君(蛇田中学校1年)は「震災後は津波の影響で、こどもたちの遊び場が屋内だけだったので、屋外に遊び場をたくさん作ってほしいです」。木村ひな子さん(門脇中学3年)は「震災後は商店街も閉まってあまり人がいないので、店が開いてもっと明るくなってほしいと思います」。八重樫蓮君は「郊外に店が集中して、みんなそっちに行ってしまい、中心市街地を賑やかにしてほしい」など、津波によって大きく変わった町の環境に対する希望が多かった。

また、今の石巻はみんなの理想の街に近づいているかどうかについて、酒井理子さん(門脇小学校6年)は、「近づいているとは思うけど、まだまだ理想の街とは思わない」。阿部文香さん(蛇田小学校6年)は「門脇小学校があった南浜地区は津波でほとんど流されてしまって今は雑草だらけで夜になると灯りがなくて暗いので、そこを明るくしてほしいです」と語り、まだまだ震災前の状態にさえ戻っていない様子がうかがえた。  

    被災地に対して、全国の人たちにして欲しいことは、「石巻のことをもっと目立たせてほしいし『石巻日日こども新聞』(http://kodomokisha.net/index.html)を読んで欲しい」(酒井さん)と、記者ならではの意見もあったが、「石巻に来て一緒に交流して欲しいです」(木村さん)。「今よりもっと観光客が増えてほしいし、震災のことをもっと色々な人に知ってもらいたい」(阿部さん)など、石巻を訪れてほしいという希望が多かった。

   最後に、震災を通して全国の人に伝えたいことを聞いてみると、八重樫君は「石巻の人たちが(寝る時には懐中電灯を枕元に置くなど)備えているのは震災があったからなので、ないところでは備えをしてほしいです」。木村ひな子さんは「地震はいつ起きるかわからないし、津波がくるかもしれないから、備えはした方がいいと思います」。酒井さんは「地震が起きたら、どういうことをしなければならないかを考えて欲しい」など、震災を経験した人ならではの「備え」を話してくれた。

   今回、石巻を訪ねて、ニュースやテレビのドキュメンタリーなどではわからない、被災地の空気を感じ、現地の人々に直接聞かないと分からないことはたくさんあると改めて感じた。 一人でも多くの人が現地に出向いて大地震や津波のことを知ることは、これから起きると予想されている首都圏直下型や南海トラフ地震などの被害を少しでも減らせるのではないかと思う。

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報告会、レクチャー

第9回国政青少年メディア・サミットにCE記者2名が参加

第9回国際青少年メディア・サミット

 2014年7月14日~27日まで、南カリフォルニアのアリソ・ビエホで開催された第9回国際青少年メディア・サミットに、CE記者2名が参加した。ナイジェリア、イスラエル、パレスチナ、イラン、アフガニスタン、香港(中国)、スエーデンなど22カ国約50名の若者が参加し、世界共通の課題である貧困、差別、暴力、女性の権利、など7つのグループに分かれて1分間のビデオ作成を制作し、世界に向けて「宣言文」をビデオを通して発信した。

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社会

筆記具流行の秘密

前田 佳菜絵(13)

 最近の女子中高生は、大型文房具店で多くの筆記具を買い、筆箱の中に入れている。決して安くはない筆記具をなぜ多く集め、持ち歩くのだろうか。また、女子中高生に注目を集める筆記具の魅力とは何だろうか。

取材をする記者

 実際に女子中高生にアンケートをとってみた。まず、今筆箱に入っている筆記具の数を聞くと、ほとんどの人が毎日10本以上の筆記具を持ち歩いていた。だが、その中で毎日使う数はほとんどの人が10本を下回った。分が持ち歩いている筆記具は多いと思うか尋ねると、12本持っていて多いと思うという意見もあったが、40本以上持ち歩いていても多いと感じていない意見もあった。理由は全部使うかもしれないから、きれいなデザインのものや可愛いキャラクターの筆記具を持っていたいから、という意見が多かった。また、10本以上の筆記具を毎日必ず使うという意見も少なくなかった。

 アンケート結果を元に、株式会社パイロットコーポレーションへ取材に行った。営業企画部筆記具企画グループの二宮清夏氏は、「女子中高生が持つ筆記具は昔から多かった例えば今販売している『ハイテックC コレト』(以下コレト)の前身『ハイテックC』は20年以上前から発売しているが、その頃から若い女の子たちの間で流行していたと思う」と話す。そして、「昔は単色のペンが多かったが、今はコレトのような『カスタマイズペン』や『多機能ペン』が増え、筆記具を選ぶ選択肢が増え、女子中高生の筆箱の中身が変化、多様化したのではないか」とも話した。カスタマイズペンは、本体のデザインや、中に入れるインクの色、数などを自分で決めることができる。

 女子中高生の多くが持っている、本体にいろいろな柄がついたペンについては、二宮氏によると、昔から販売はしていたが、数ヶ月に一回というように頻繁に発売するようになったのはごく最近だと言う。ほとんどが女子中高生向けで、二宮氏は「ペンも一つの雑貨。手にとって可愛いほうが楽しいだろうし買ってもらえるだろう」と話す。

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PILOTの二宮清夏氏

 パイロットは過去2回、女子中学生向け雑誌ニコラとコラボレーションしたコレトを発売したことで有名だが、それについても女子中高生がターゲットだと言う。二宮氏は「どのようにしたらもっと女子中高生に買ってもらえるか、どうやったらもっと使ってもらえるかと考えた」と言う。具体的な開発策を聞くと、最初はニコラを発行している新潮社を訪ねファッションの流行などに合わせたデザインを考えて、実際にニコラのモデルや読者へのアンケートで人気だったデザインを製品化したうだ。反響については、「初めてニコラとコラボしたときは春に製品を発売したので、初めてニコラを読んだ人、新学期に向け新しく筆記具が欲しい人たちに買ってもらえたのではないか。コラボしていないペンは、たまたま店頭で見て買ったという人も多いだろうが、コラボした製品はニコラでの宣伝により製品を知って、本当に気に入ってもらってから買ってもらえたのではないか」と二宮氏は語った。

 女子中高生向けのように男子向けの製品は発売しないのかという質問には、「どうしても今は筆記具のユーザーは女子中高生が多い。男子向けの製品について協議はしてはいるが、今のところ予定は無い」と二宮氏は話す。以前男子向けのキャラクターとコラボレーションしたペンが発売されたが、それはキャラクターを作った会社側からのオファーだったそうだ。

 これからはどの世代向けに製品を開発、販売していくか計画を聞くと、「パイロットは老若男女向けに製品を発売しているし、これからもそうするつもりだ。例えば、万年筆は年配者向け、色鉛筆は小さいこども向け、カスタマイズペンは女子中高生向け、というように製品によって対象とする世代、性別は変えていく。並行して期間限定、数量限定などやコラボレーションした製品は今後も発売していきたい」と二宮氏は語った。また、「インクなどの機能の追求、技術の革新を進めていきたい。外見が変わっても機能などが変わらなければ、本当の意味では新しい製品にはならない。柄などのデザインも新しくはしていくが、まずは新しい機能の追求が先」とも語る。 女子中高生の間で筆記具が流行する理由は、筆記具メーカーが女子中高生のニーズを追いかけてきたからこそあった。これから女子中高生の間の流行はどのように変化していくか、まだ誰も分からないが、筆記具メーカーがどのようにそのニーズを追いかけていくか目が離せない。

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女子中高生の筆記具 ~なぜそんなに多いの?~

三好 恵瑠(13歳)

 なぜ、女子中高生の持ち歩いている筆記具は多いのか?
中学1年生の私の筆箱には、26本の筆記具がはいっている。まわりの友だちの持っている筆箱もパンパンだ。柄ものの筆記具も増え、ますます女子中高生の欲しそうな筆記具が店頭に並んでいる。

今、女子中高生たちは筆記具についてどう思っているのだろうか。

その理由を探るために記者仲間やその友だちにアンケートをとった。その結果、平均20本前後筆記具を持ち歩いていることや、自分の筆記具についてどう思っているのかがわかった。これは企業の戦略にのせられてしまっているのだろうか?女子中高生向け雑誌「ニコラ」とコラボしたカスタマイズペンを発売している株式会社パイロットコーポレション(PILOT)に取材した。

PILOTの二宮清夏氏

 アンケート結果から、20本前後の筆記具を持ち歩いている女子中高生は、柄をみて買っていることや、全部使うかもしれないと思っていることがわかっていた。その結果を持って質問をぶつけてみた。

 PILOT営業企画部筆記具企画グループの二宮清夏氏は、女子中高生の筆記具が昔より増えているという認識はないという。しかし、昔から多かったという。PILOTでは、約20年前から女子中高生向けに文房具を販売しているが、その中身は変わってきているらしい。

 「はじめは、1本ずつ様々な色のペンを持っていた。それが、いまでは、ペン本体を買い、中にいれるインクを自分で選びカスタマイズするのが主流。筆記具の選択肢が増え、筆箱の中身が多様化してきた」と二宮氏は語った。

 また、カスタマイズ商品「コレト」については、もっと多く使ってもらうために考えた結果、女子中高生に人気が高い雑誌「ニコラ」とコラボすることにしたという。柄物の筆記具は、女子中高生向けのものが多く、「ニコラ」とコラボすることで、彼女らの生の声を聞き「かわいい」と思ってもらえる物を作ろうとしたという。

 雑誌とのコラボの反響は大きかった。
平凡なデザインだと偶然見つけて、たまたま買うことになる場合が大半だ。だが、雑誌とのコラボでは記事に納得して気に入ってから買う場合が多い。売上も伸びたという。

筆記具の新商品

 さらに、地方での反響については、東京に比べるとさすがに小さいが、あまり格差はないという。なぜなら、PILOT社は全国に営業マンがいるため、小さい店にまで営業に行き商品を置いてもらっているからだ。このようなこともあり、全国的に女子中高生は筆記具をたくさん手にしているという。

 PILOT社のこれからの筆記具について聞いてみた。
まず、機能性にはこれからも力をいれていくという。そうしなければ本当の意味で新しいものが作れないからだ。しかし、並行して雑誌とのコラボや期間、数量限定の商品も作り、色々な年代の人に楽しんでもらえる商品を作っていきたいと考えているそうだ。

 今回の取材やアンケートの結果から、女子中高生の筆記具が以前から多いことは分かったが、企業がいち早くそれを察し、対応していることも分かった。そして、女子中高生にかける企業の熱意を見ることができた。時代の流れに敏感な女子中高生の筆記具は、これからどのように変化していくのだろうか。

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ストップ!温暖化 知らないフリをしていませんか


2014/07/12                 村上 類 (15)

 毎日、雨傘を持ち歩かなければ困る夏がここ数年続いている。今までは地球温暖化による影響の一つとして学校やニュースで何気なく聞いていた気候変動がすでに始まっていることにうすうす気づき始めた人は多いのではないだろうか。

WWF山岸尚之氏

 2011年に東日本大震災に見舞われた日本では、放射性物質が人体へ与える危険性を心配してすべての原子力発電所稼働をストップし、現在主に化石燃料を使った火力発電に頼っている。一見、原発稼働を停止したことにより目に見える危険性は減ったように思われるものの、その代わりに大量の二酸化炭素を排出しているのが現状だ。

これからの世界を担う若者はどのように地球温暖化に向き合い、行動をとるべきなのか、WWFジャパン(公益財団法人世界自然保護基金ジャパン)気候変動・エネルギーグループリーダーの山岸尚之氏に取材した。

 これから進んでいく温暖化の影響として山岸氏は気候変動による二種類の影響を挙げた。一つ目は文化的な影響だ。日本では昔から四季を重んじる考え方が根強くあるが、中でも桜は春の入学式や新年度の始まりのシンボルだ。しかし近年、平均気温の上昇によって、桜の開花日が東北、北海道を除いて4月から3月にまで早まっている。つまり卒業式や年度末に開花しているのだ。実害は少ないかもしれないが、このように伝統文化にも気候変動が影響していることを忘れてはいけないと山岸氏は指摘する。

 もう一つは自然的な影響である。世の中にもよく知られている北極をはじめとする極域での夏季の海氷面積の減少や、アメリカやオーストラリアで起きている熱波や寒波。世界の熱帯低気圧が年々強くなる傾向にあるほか、今年4月にヒマラヤで起きた今までにない規模の雪崩による大事故も山頂付近の氷河の決壊が原因の一つだと考えられているそうだ。

 これらに加え、私たちが体験したことがない新しい気候現象も、近い将来地球温暖化をストップしない限り起きていくことは確実という予想まで出ている。例えば、日本では蚊が運んでくるマラリアなどの感染症が拡大する。淡水、つまり海水ではなくて普通の水不足の打撃を受ける人々が数億人単位で増加、特に中東諸国では干ばつによる水不足で紛争が起きる危険性も指摘されている。

しかし、WWFは二酸化炭素排出を減らさなければと焦って原子力発電所をすべて再稼働させる必要はないと考えている。実際、東日本大震災後の東京都はそれ以前に比べて15%も省エネにより節電されたという数値も出ていて、まだまだある無駄をなくせば、再生可能エネルギーによって未来の日本は電気を賄える可能性が考えられるという。また幸か不幸か、日本は人口が減少傾向にあり、必要とされるエネルギーの量も減っていくので希望すらもつこともできると山岸さんは語った。

では原子力の代わりにどんなエネルギーがあるのか。現在でも比較的使用されている風力や太陽光を始め、最近ではジオサーマルつまり地熱を使ったり、木材や家畜の糞を燃やすバイオマス、海の波の力を利用する海洋エネルギー、海の浅瀬と深海の海洋温度差を利用するものなどのグリーン電力と呼ばれるエネルギーが開発されている。

 若者にも地球温暖化をストップさせられる行動は沢山あると山岸氏は言う。両親が選挙の投票に行くときに若者が「環境目標などを政策に入れている候補者を選んでほしい」と伝える方法だ。地球温暖化を軽視している人が当選したら温暖化対策が進まない。

 そして日本にはまだ広まっていないが、グリーン電力の供給会社のエネルギーで作られた商品を買うことで再生可能エネルギーを支援することができる。WWFジャパンでも風力発電を使って作ったWIND MADEと呼ばれる認証をとった企業のタオルを販売している。アサヒビールでは2009年からスーパードライの生産の電力に風力とバイオマス発電を利用している。このような商品にはラベルに、グリーンエネルギー(G)を使用しているというマークがついているので消費者にもわかりやすく、日常の中で探してみるのもいいのではないだろうか。

 アメリカにはすでに発電、送電、売電と3つの事業に分かれた業者があるが日本でも2016年度から規制緩和で一般家庭でも売電が出来るようになることが今年6月11日に発表された。今まで東京都民は東京電力からしか電気を購入できなかったが、これによって他の電力会社からでも可能になる。火力発電の会社の代わりにグリーンエネルギー発電の会社から購入する人が増えれば、地球温暖化の減速につながるのではないだろうか。

 環境問題は決して軽い問題ではないけれど、これからはもっとポジティブに考えていくべきではないだろうか。放っとけば温暖化はどんどん進行していってしまう。身近なことから将来のためにも、温暖化対策をはじめていくことが大切だ。

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