2014/07/12 村上 類 (15)
毎日、雨傘を持ち歩かなければ困る夏がここ数年続いている。今までは地球温暖化による影響の一つとして学校やニュースで何気なく聞いていた気候変動がすでに始まっていることにうすうす気づき始めた人は多いのではないだろうか。
2011年に東日本大震災に見舞われた日本では、放射性物質が人体へ与える危険性を心配してすべての原子力発電所稼働をストップし、現在主に化石燃料を使った火力発電に頼っている。一見、原発稼働を停止したことにより目に見える危険性は減ったように思われるものの、その代わりに大量の二酸化炭素を排出しているのが現状だ。
これからの世界を担う若者はどのように地球温暖化に向き合い、行動をとるべきなのか、WWFジャパン(公益財団法人世界自然保護基金ジャパン)気候変動・エネルギーグループリーダーの山岸尚之氏に取材した。
これから進んでいく温暖化の影響として山岸氏は気候変動による二種類の影響を挙げた。一つ目は文化的な影響だ。日本では昔から四季を重んじる考え方が根強くあるが、中でも桜は春の入学式や新年度の始まりのシンボルだ。しかし近年、平均気温の上昇によって、桜の開花日が東北、北海道を除いて4月から3月にまで早まっている。つまり卒業式や年度末に開花しているのだ。実害は少ないかもしれないが、このように伝統文化にも気候変動が影響していることを忘れてはいけないと山岸氏は指摘する。
もう一つは自然的な影響である。世の中にもよく知られている北極をはじめとする極域での夏季の海氷面積の減少や、アメリカやオーストラリアで起きている熱波や寒波。世界の熱帯低気圧が年々強くなる傾向にあるほか、今年4月にヒマラヤで起きた今までにない規模の雪崩による大事故も山頂付近の氷河の決壊が原因の一つだと考えられているそうだ。
これらに加え、私たちが体験したことがない新しい気候現象も、近い将来地球温暖化をストップしない限り起きていくことは確実という予想まで出ている。例えば、日本では蚊が運んでくるマラリアなどの感染症が拡大する。淡水、つまり海水ではなくて普通の水不足の打撃を受ける人々が数億人単位で増加、特に中東諸国では干ばつによる水不足で紛争が起きる危険性も指摘されている。
しかし、WWFは二酸化炭素排出を減らさなければと焦って原子力発電所をすべて再稼働させる必要はないと考えている。実際、東日本大震災後の東京都はそれ以前に比べて15%も省エネにより節電されたという数値も出ていて、まだまだある無駄をなくせば、再生可能エネルギーによって未来の日本は電気を賄える可能性が考えられるという。また幸か不幸か、日本は人口が減少傾向にあり、必要とされるエネルギーの量も減っていくので希望すらもつこともできると山岸さんは語った。
では原子力の代わりにどんなエネルギーがあるのか。現在でも比較的使用されている風力や太陽光を始め、最近ではジオサーマルつまり地熱を使ったり、木材や家畜の糞を燃やすバイオマス、海の波の力を利用する海洋エネルギー、海の浅瀬と深海の海洋温度差を利用するものなどのグリーン電力と呼ばれるエネルギーが開発されている。
若者にも地球温暖化をストップさせられる行動は沢山あると山岸氏は言う。両親が選挙の投票に行くときに若者が「環境目標などを政策に入れている候補者を選んでほしい」と伝える方法だ。地球温暖化を軽視している人が当選したら温暖化対策が進まない。
そして日本にはまだ広まっていないが、グリーン電力の供給会社のエネルギーで作られた商品を買うことで再生可能エネルギーを支援することができる。WWFジャパンでも風力発電を使って作ったWIND MADEと呼ばれる認証をとった企業のタオルを販売している。アサヒビールでは2009年からスーパードライの生産の電力に風力とバイオマス発電を利用している。このような商品にはラベルに、グリーンエネルギー(G)を使用しているというマークがついているので消費者にもわかりやすく、日常の中で探してみるのもいいのではないだろうか。
アメリカにはすでに発電、送電、売電と3つの事業に分かれた業者があるが日本でも2016年度から規制緩和で一般家庭でも売電が出来るようになることが今年6月11日に発表された。今まで東京都民は東京電力からしか電気を購入できなかったが、これによって他の電力会社からでも可能になる。火力発電の会社の代わりにグリーンエネルギー発電の会社から購入する人が増えれば、地球温暖化の減速につながるのではないだろうか。
環境問題は決して軽い問題ではないけれど、これからはもっとポジティブに考えていくべきではないだろうか。放っとけば温暖化はどんどん進行していってしまう。身近なことから将来のためにも、温暖化対策をはじめていくことが大切だ。