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待機高齢者問題を考える


2015/03/10                  小泉 璃奈(17)

  今日の日本は高齢社会と言われている。高齢社会の問題の一つとして「待機高齢者」の存在が挙げられる。特別養護老人ホーム(以下特養)に入所を希望しているが、空きがないために待っている高齢の人たちのことだ。増え続ける待機高齢者の実態について取材をした。

青葉台地域ケアプラザ成田所長

 まず初めに神奈川県保健福祉局福祉部高齢施設課課長代理兼グループリーダー川元昌二氏に取材をした。「特養への入所を希望する高齢者が実際に増加しているか」という質問をしたところ、答えは「増加している」だった。平成12年に介護保険制度が施行され、それ以降毎年4月に特養への入所希望者の人数を調査している。神奈川県を例に挙げると調査開始のこの年は6300人だった。その後平成16年には2万1585人と約1万5000人も増加した。その後も増加傾向にあり、平成26年は2万2928人となっている。これには高齢者人口の増加が大きな原因としてあるという。

神奈川県保健福祉局の川元氏を取材

次に社会福祉法人試行会青葉台地域ケアプラザ所長で、介護支援専門員・社会福祉士の成田すみれさんに取材をした。ここには日常生活で何らかの不自由や困難を有する高齢者等が訪れる。中には地方にいる親の介護相談のために来る人も少なくない。ケアプラザでは介護保険に際しての要支援介護の認定申請を受け付けている。介護保険利用では、まず本人または家族が居住地の町村や地域包括支援センターで申請をする。その後認定調査員が自宅などを訪問、また届出のあった主治医により意見書が作成される。それらをもとに保健・医療・福祉の専門家で構成される市町村での介護認定審査会で審査・検討が行われ、要支援1・2、要介護1~5、自立のいずれかが認定される。数字が大きい方が支援や介護の必要性が高い。もし要支援1・2の認定を受けると介護予防ケアプランが作成される。要介護度1~5の認定を受けると担当のケアマネージャーと相談してケアプランを作成する。または利用する施設を選んで申し込むことができる。つまり特養への入所「資格」が認められるというわけだ。しかし希望するホームが満員だった場合、入所待ちをしなければならない。これがいわゆる待機高齢者だ。

神奈川県大和市特養老人ホームのル・リアンふかみ

 要介護度が高く特養への入所を希望しているのに待機することになると日常生活の維持が困難になってしまう。そこで生活支援の必要性が大きくなるが、最近では生活支援サービスが充実してきていると成田さんは言う。例えば調理や掃除・洗濯などの家事援助、家庭の代わりに入浴や食事提供をする日中通って過ごす場など、このようなサービスのおかげで負担は軽減することができる。

 また前出の川元氏によると待機高齢者が増加する原因として挙げられるのが一度に複数の施設への申し込みや、すぐに入所を希望しない申し込みだ。つまり将来の不安から一度に複数の特養に申し込みをしている人が多くいるということだ。そしていざ入所が可能になると、まだ体を自由に動かすことができる状態にあったり、家族による介護を受けられることを理由に入所しないケースが多々あるそうだ。

神奈川県大和市特養老人ホームのル・リアンふかみ

 誰でも自分の老後について不安を感じるのは当たり前のことだが、待機高齢者を減少させるためには、不安に駆られてすぐに特養に申し込むのではなく自分にあった生活支援サービスをうまく活用することが大切だろう。

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未来のまちづくり~スマートシティ~

2013/06/03               前田佳菜絵(12)

UDCK染谷康則氏に取材

 現在、日本は環境問題、高齢化社会問題、経済問題を抱えている。そんな中、日本ではスマートシティという未来のまちづくりの構想が広まりつつある。スマートシティとは、情報通信技術・環境技術などの先端技術を用いて社会インフラを効率化・高度化した都市や地域のことだ。現在、日本のスマートシティではどのような新しいことが進んでいるのだろうか。
実際に政府に環境未来都市に指定された、千葉県柏市の「柏の葉スマートシティ」を4月13日に訪問し、後日柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)ディレクターで柏市企画部企画調整課副参事の染谷康則さんと柏市企画部企画調整課統括リーダーの伊藤浩之さんに取材をした。
 柏の葉スマートシティでは、日本の3つの問題の解決モデルとなるように「環境共生都市」「健康長寿都市」「新産業創造都市」をテーマにおいている。環境問題については、エネルギーマネジメントの実施と、災害時に元々太陽光発電などでためておいた電気を公道の向かい側に送ることが出来る電力融通、高齢化社会問題については、市民の健康データのストック、経済問題については、グローバルネットワークでの国際的なビジネスコンテストの開催などを実現しようとしている。
「柏の葉スマートシティが他のスマートシティと大きく異なる点は、まちの人、大学、企業の「公民学」が連携して活動をしていることだ」と染谷さんは話す。UDCKとは、いわゆる「まちづくりセンター」の機能も持ち、「『公民学』のそれぞれの立場に平等、中立的な組織だ」と染谷さんは言う。
 現在柏の葉では、「公民学」が連携して、高齢者などの健康を守るための口腔ケア、利用者の要求に合わせて運行する「オンデマンドバス」などに取組み、成果を得てきたそうだ。若者との連携では、市民、市街の方、行政、関係事業者、学生などが参加する「まちづくりスクール」を実施して、まち作りについて学ぶ機会を設けたり、東京大学柏キャンパスの大学院生が中心の学生サークルが小学生の夏休みの宿題の手伝いをする機会を設けているという。

 柏の葉では、一部の住民は太陽光発電で作られた電気を使っていたり、家にも電気の「見える化(家で消費している電力をタブレット等で見られる仕組み)」を取り入れたりしている。共同の畑で作物を育てる施設もあり、畑を耕している人に話を聞くと、「高齢者や子供も積極的に参加している」ということだ。クラブハウスでは、市民たちで立ち上げた様々なクラブが活動することができる。しかし目標はまだまだ先にあるようだ。市民からは「これからのまち。将来に期待したい」との声があがっている。
しかし、まだ建設中の施設も多く、染谷さんは「完成まで10年かかるが、市は最後までやらなければいけない」と言う。 柏の葉スマートシティには日本の3つの問題(環境、高齢化、経済)に対する政策が見える。しかし、それを実現するためには、染谷さんが言うようにまだ10年はかかるようだ。これから、日本のまちづくりがどのように変わっていくのかが楽しみだ。

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これからの農業「こせがれ」という新しいカタチ

南雲 満友(17)

梨園「みのり園」で説明をする實川氏

 農業という言葉を聞いて、何を思い浮かべるだろうか。ともすれば農業は「きつい・汚い・かっこ悪い」いわゆる3K産業として考えられてきた。都会へ出て働く若者は田舎には戻らず、農家は高齢化の一途をたどっている。その一方で、農家の後継者である「こせがれ」が、親の農業に付加価値をつけて継ぐという新しいスタイルが注目を集めている。

 宮治勇輔氏(34)は、一般企業に勤めた後、神奈川県にある実家の養豚業を継ぎ、「みやじ豚」というブランドを成功させた。バーベキューイベントを定期的に開催し、口コミによって豚肉の品質に対する信頼を獲得し、消費者を拡大してきた。NPO法人「農家のこせがれネットワーク」を設立し、代表理事を務めている。宮治氏の目標は近い将来、農業が「かっこよく・感動があって・稼げる」3K産業へと成長させることだ。小学生の就職人気ランキング1位をめざし、活動を続けている。
 
 宮治氏は「こせがれ」が実家の農業を継ぐ利点について、「新規就農者は農地や農機などにコストがかかり、販路を自ら探しださなくてはいけない。一方、こせがれは土地も機械もあり、そのうえ地域の人とのつながりがある。こせがれが実家の農業を継ぐことが一番だと思う」と語った。また今は規模を拡大できるチャンスだという。「こせがれ」が農業を継ぐことで、ビジネスで培ったノウハウを実践できるという。

 實川勝之氏(32)は、父親の怪我がきっかけでケーキ・パティシエを断念し、千葉県の実家に戻った。米や野菜作りを続けながら、パティシエの経験を生かし、新たに梨の栽培を始めた。同氏は自らの梨園を「工房」と呼ぶ。「ショーケースに例えて、工業製品のようにクオリティーを統一することを目指した」という。様々な新種の梨を一つの木に接ぎ、ショーケースにあるケーキのように配列し、美しく栽培することで付加価値をつけた。顧客が好みに合わせて木に接ぐ梨の種類をカスタマイズできるオーナー制度も確立している。また株式会社を設立し、農業に興味のある若者を雇い、独立できる実力がつけば農地や農機、ノウハウを提供するというフランチャイズ方式で農業経営を続け、農業と地域の活性化を目指している。

 埼玉県のお茶・椎茸農家の三代目、貫井香織氏(34)は、ベンチャー企業でキャリアを積んだ後、実家に戻った。「社会でビジネス経験を積んだことが、今農業に生かされています」と自信をにじませて語る。プロジェクトの立案の方法や、新聞を毎朝読んで、販路に繋がる情報を目にすると、すぐに電話をかけるという習慣は、会社勤めの経験が役に立っているという。商品開発では女性の視点でのアイデアをカタチにしているそうだ。

 既存の事業に付加価値をつけていくには、新しいアイデアと実行力が必要だ。その点で三氏は、ビジネスの経験を農業経営に生かし、新しい農業のスタイルを構築していると言えるだろう。今、日本は食糧自給率が40%を切り、TPP問題など大きな変革の時を迎えている。宮治氏は「農業も今までの仕組みが崩壊している。新しい方法で僕たち“こせがれ”から現場を変えなければいけない」と語った。 農業に新しい風をもたらす「こせがれ」たちの今後の活躍に目が離せない。

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