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教育

大学選び それでいいの?

飯田 奈々(17)

 2012年の冬、田中眞紀子文部科学大臣が、大学設置・学校法人審議会の答申を覆し、3大学の設置申請を認可しなかったことが、大きな話題となった。 結果として認可されたが、この背景には大学教育をめぐる本質的な問題点があるのではないか取材した。

文部科学省岡本仁弘氏と田辺和秀氏への取材
文部科学省岡本仁弘氏と田辺和秀氏への取材

 日本の大学は平成13年から平成23年の10年間で私立大学は103校も増加した。(文部科学省「学校基本調査」より)そして、平成23年度私立大学は45.8%もの大学が定員割れとなった。このような現実に加えて少子化も進んでいる。なぜ大学は増え続けるのか、今後どのようにして定員割れを克服すればよいのか。文部科学省高等教育局高等教育企画課の岡本任弘氏と同局私学部参事官付専門官の田辺和秀氏、そして桜美林大学院の教授であり「消える大学残る大学全入時代の生き残り戦略」の著者でもある諸星裕氏にインタビューした。

 岡本氏と田辺氏によると、大学が増え続けているという考えは間違っているのだという。私立大学の増加というのは私立短大から四年制私立大学への移行が多いためであり、全体の大学数は平成13年から減少しているそうだ。

桜美林大学院 諸星裕教授への取材

 また、諸星氏によると「日本の少子化が直接大学の定員割れに繋がっている訳ではない。少子化も進んでいるが、大学進学率も年々上がり、今では50%の日本人が大学へ進学する。これは大学の定員とほぼイコールなのだ」と言う。さらに、「それにも関わらず定員割れが起こる理由は、多くの日本人が少しでも上の有名大学に進学することを望むからだ」と述べた。

 定員割れを克服する方法として、諸星氏は若者一人ひとりの大学のとらえ方と日本の大学のあり方を変えることを提案した。
1つ目は、前述したように多くの日本人が少しでも上の大学、そして名の知れたブランド校に進学することを望む以上定員割れが起こることは当たり前である。しかし大学には、個々に合った大学があり、自分が一番成長できるであろう大学がその人にとって良い大学であり、大学に「入る」ことが目的ではなく、大学に入り「学ぶ」」ことが目的であることを意識して大学を選ばなければならない。すべての人の持っている良い大学と悪い大学の概念を変えることが大切であると語った。
2つ目は日本の学生は学部に入るから、在学中に自分の分野を変えることを容易にできない。しかしこのような調査結果がある。アメリカの大学に入学した1年生に「何を勉強したいですか?」と聞き、1、2年生で教養を身につけた後、3年生になって入った学部と1年生のときにこたえた分野が同じだった割合はたった28%だったのだという。このように若者のニーズは変わりやすいのだから、アメリカのように1、2年生の間はどこの学部にも所属せずに教養を身につけ、3年生になって学部を決めるという制度にするなど、その学校独自の制度を作ることも有効であると語った。

 岡本氏と田辺氏はニーズ調査を地域ごとにしていくことの重要性を指摘した。地域によって不足している学部や求められている学部が違うのだから、それをきちんと把握し、大学設立後もニーズの変化にあわせてどんどん変えていく必要性を訴えた。また、大学ができた地域にはそこの学生によって地域が活性化することにも繋がるから、地域と大学が連携していくことが、これから大切になってくることだと述べた。

 すべての取材を通じて共通していたことは、「大学は時代やニーズに合わせてどんどん変わっていくことが求められている」ということだ。それにともない、私たち高校生一人ひとりが責任をもって大学を選ぶことも求められている。狭い視野で大学を選ばずに、日々アンテナをはって様々な情報に触れ、今まで意識してこなかった新しい視点で大学を見定めることも重要である。

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Interviews 社会

Capital Punishment in Japan July 17, 2012 by Sara Tomizawa (16)

Capital Punishment in Japan
July 17, 2012
Sara Tomizawa
 (16)

A 2010 survey indicated that 85% of Japanese are in favor of the death penalty seeing it as unavoidable punishment for brutal crimes.  However, there are some groups seeking to abolish capital punishment in Japan. Will Japan maintain the death penalty in the future?  To come to a better understanding of the situation, parties on both sides of the issue were interviewed.

  Tsuneo Matsumura, Acting Chairman of the National Association of Crime Victims and Surviving Families (Asu no Kai)     Tsuneo Matsumura, Acting Chairman of the National Association of Crime Victims and Surviving Families (Asu no Kai) insists that capital punishment is necessary. He said “the possibility of wrongful convictions cannot be a reason to abolish the death penalty; it is the duty of the police to carry out proper investigations. The crime victims and surviving families demand the death penalty and such demand has nothing to do with wrongful convictions.”  “If you support respecting the human rights of criminals, then the same holds true for the victims and family members perhaps even more so.”

The global trend is toward abolition of capital punishment with fewer and fewer nations supporting it. One of the current conditions for a country to join the EU is that the death penalty be abolished if in existence.  Amnesty International reported in 2009 that approximately 30% of all countries including the United States, Japan, China, India, Iran, and Saudi Arabia have the death penalty. When asked about this trend, Matsumura responded “other countries have a religious basis behind this issue and Japan does not. Besides, if we look at population instead of the number of countries, more than half of the world’s population lives in an area with the death penalty.”

In addition, Matsumura is skeptical in regard to the introduction of life imprisonment as a substitute for capital punishment; currently more taxes are spent on prisoners than for supporting lower income families. Life imprisonment would increase the operational costs of prisons. Spending taxes paid by crime victims for the benefit of the criminals is unreasonable. “How could a murderer compensate for the life he took while still alive? Surviving families desire to recover their lost ones, but we know this is impossible. So, the only consolation available is to take away the life of the criminal.”

 Shizuka Kamei, the chairman of the diet members group for abolishing the death penalty   Shizuka Kamei, the chairman of the diet members group for abolishing the death penalty, advocates its elimination. As a former public official belonging to the Police Agency, he stated that it is impossible to prevent 100% false accusation. He said “even criminals should have their human rights protected. The government must protect their rights because it is its duty.”

Kamei points out that the survey indicating that the majority of the people support the death penalty was not developed properly. The questionnaire limits choices and leads respondents to choose that the death penalty is unavoidable. His group conducted a survey asking whether or not people were in favor of abolishing the death penalty when lifelong incarceration is put in place. The majority said “yes.” Based on this survey, he believed that the ratio of Japanese in favor of the death penalty would significantly fall if life imprisonment is alternatively proposed.

Kamei proposed life imprisonment as a first step to abolish the death penalty.  Life imprisonment could be crueler than imprisonment with the possibility of parole after 10-20 years.  However, he thinks there is no choice but for criminals to consider the damage they caused and reflect on their crimes. He strongly advocates as a politician that the government must not kill a citizen.

With the introduction of the jury system, ordinary citizens are now involved in the judicial process and need to deal with the application of the death penalty.  Accordingly, we are obliged to study and think about capital punishment. Debate over this issue will continue.

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報告会、レクチャー その他

CE Reporters Attended the 7th International Youth Media Summit, Aug. 2012

120822_summitTwo high school CE reporters attended the 7th International Youth Media Summit in Belgrade, Serbia from August 1st to 12th ,2012.

Around 50 young people from 18 countries such as the former Yugoslavian countries, (Slovenia, and Bosnia-Herzegovina), the United States, France, Sweden, Greece, Poland, Georgia, Hong Kong, and Japan were divided into 7 groups to discuss issues of international concern: poverty, violence, the environment, discrimination, women’s rights, youth empowerment, and health. Each group produced a 1-minute short film, which expressed their declaration to the world.

http://iyms.info/iyms

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報告会、レクチャー

The 10th Anniversary of CE, 2012

120803_10thOn June 17th, more than 60 people including reporters, members, youth workers, former reporters, staff, supporters, and board members celebrated the 10th anniversary of Children’s Express at Pria Shibuya. Everyone enjoyed watching  video works portraying CE’s first decade.

CE started its activities in April 2002. Since then, many reporters have written articles on various topics. Selected works were collected into a 10th anniversary brochure “A Decade of CE”.

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国際 報告会、レクチャー

Japan-UK Reporters Exchange Program 2011

111221nitieikouryu11_01From November 2nd to 8th, CE Japan welcomed 4 reporters and 2 staff from Headliners’ Belfast Bureau, the sister organization of CE. Belfast is the capital of Northern Ireland where Catholics and Protestants live separately because of the prolonged dispute between the two religions. Visiting members were from both residential areas. They visited temples and shrines in Japan where religious freedom is ensured by our national constitution. They also covered religious views of young Japanese.

Most of the expenses for this program were funded by the Great Britain Sasakawa Foundation.

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教育

大学の秋入学に向けて

大学の秋入学に向けて
2012/10/16               小川 真央(18)

 東京大学が秋入学の全面移行に向けて学内で検討組織を立ち上げて実動き始めたことを契機に、メディアが大々的に取り上げ、注目されるようになった「秋入学」。学生、大学、経済、社会にどのような影響を及ぼすのか、今、教育界・産業界・政府といった様々な場で議論されている。今回、関連する諸団体を取材し意見を聞いた。

 秋入学実現に向けていち早く動き出している東京大学・総合企画部長期構想担当課長の小野寺多映子氏は、東京大学は正式に秋入学を導入すると決めた訳ではないと強調したが、チャレンジ精神や高度なコミュニケーション能力をもつ「タフでグローバルな東大生」を育てるという教育理念に沿って秋入学を教育改革の手段として検討していると語った。同氏はまた、秋入学によって生じる高校卒業から大学入学までのギャップタームについては前向きにとらえ、知的な冒険・挑戦の機会であり、社会体験によって視野を広げられるし、大学での学問の全体感の構築など学習期間として有意義な時間を過ごすことが可能であると指摘する。学内にも、ギャップタームのある課題が特に大きい問題と考えている数理系の先生を中心とした秋入学反対派が存在するとの問いには、反対派の意見は問題点を提示し、解決策を考えるきっかけになっているため貴重であるとも述べている。

 また、地方の国立大学である徳島大学の高石喜久副学長・理事は、秋入学に対し、地域の差により生まれるデメリットは無いと語った。その上で慎重にならざるをえない理由として、秋入学が導入されることで地方に留学生が集まるか不明である点、就職・国家試験の時期とのずれといった社会整備が整っていない点を挙げた。しかし、日本全体としてグローバル化が必要との認識は他大学と変わらないため、教育改革の一環として秋入学を視野に入れており、大学院は既に春入学に加えて秋入学を導入していると述べた。

徳島大学の高石喜久副学長・理事

 日本経済団体連合会・社会広報本部主幹の長谷川知子氏は、産業界としては大学の秋入学に対し基本的に歓迎であるという。少子高齢化やブラジルやインドといった新興国(BRICs)の台頭など、現在の経済危機において日本にグローバル人材は必要であると実感しているそうだ。そこで、秋入学が日本の学生の国際化の手段として機能すれば、最終的に日本企業の国際競争力の強化につながると考え、大学に協力していく姿勢を見せている。学生の不安要素である就職時期については、企業は一括採用以外でも柔軟に対応できると述べ、どの程度の数の大学が秋入学に移行するかを見極め、採用方法を考えていることを示唆した。

 文部科学省・高等教育局大学振興課課長補佐の白井俊氏は、秋入学を目指す大学に対しては支援をしていき、春入学を維持する大学に対しては秋入学を強要しない柔軟な対応をとると述べた。文部科学省は、秋入学の支援として、ギャップタームにおける体験活動の枠組みを提供する、産業界へ採用制度の変更を促す、国家試験の時期を変更することなどを具体的に考えている。 秋に移行した場合に6ヶ月間不足する運営資金の援助に関しては、国民の税金を使うことになるため国民の理解を得なければならないとする一方で、国際化を積極的に実施していく大学の取り組みに対しては援助する意向を示した。 確かに秋入学を実施することで学生達が強制的にギャップタームを過ごさなければならない点、就職活動への影響が出る点、半年間の身分の所在が不明確である上にアルバイトをすれば年金を支払わなければならない点、国家試験の時期にずれが生じる点、コストがかかる点など数多くの問題があることは事実である。しかし、複数の大学が協調することで、産業界や政府と連携が可能になり、秋入学に向けて社会の基盤は整っていくだろう。各大学の方針は尊重するべきであり、全大学が秋入学にする必要はないが、秋入学は日本の教育改革の一つの有効な手段になるのではないか。5年後の秋入学の導入まで社会がどのように変化していくか注目したい。

日本経済団体連合会(経団連)社会広報本部主幹の長谷川知子氏
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教育

国際化の一歩としての秋入学

瀧澤 真結(14)

東京大学・総合企画部長期構想担当課長の小野寺多映子氏

 東京大学の秋入学への全面移行という記事が目にはいった。秋入学とはどのようなことなのか、中高生にとって好ましい影響があるのか、どんな障害を乗り越えなければいけないのか疑問をもち、東京大学、産業界、文部科学省、徳島大学に取材をした。

 東京大学・総合企画部長期構想担当課長の小野寺多映子氏は「東京大学は秋入学に全
面移行するというのは、まだ決定事項ではなく、真剣に検討している段階だ」と述べた。東京大学が秋入学を検討するようになったのは、濱田純一総長がタフでグローバルな学生を育てたいと考えたからである。タフでグローバルな学生とは、知的でコミュニケーション力があり、リスクがあっても挑戦できる国際的な学生のことであり、そういう学生を育てる一つの手段として秋入学を検討することとしたのだそうだ。
 
 だが秋入学にはギャップタームや就職活動などの問題もある。ギャップタームとは東京大学の造語で4月から9月まで大学などの授業が始まるまでの間(東京大学の検討案には学生の身分をもたないパターンもある)、自主的な活動をする期間のことだ。小野寺氏は「その間は、ボランティアや留学、勉強などのプログラムを用意し、経済的な支援をしてあげれば有意義にすごせるし、企業は通年採用に方針を変えてきている」と語る。そのうえで、「とにかく、日本の今の教育のままでは世界との競争に負けてしまう。東京大学が先頭をきってグローバル化に向けて一歩踏み出し、日本全体の改革のエンジンになることが求められている」と小野寺氏は東京大学の決意を示してくれた。
 
 日本経済団体連合会(経団連)社会広報本部主幹の長谷川知子氏によると、経団連もグローバル人材の育成を目指していて、秋入学は日本人の国際化に向けた一つの手段だと歓迎している。ただ、日本中の大学全てが秋入学に移行しなくてもよいと考えており、国際化を目指している大学にはサポートをするという方針だそうだ。
文部科学省・高等教育局大学振興課課長補佐の白井俊氏によると、文科省でも秋入学をサポートしていきたいそうだ。ただし、就職時期の問題や年1回の国家試験の問題については、産業界や関係省庁の協力を得なければならないそうだ。また、秋入学へ移行するまでの運営資金も、文科省が補助する場合は国民の税金を使うことになるので、そう簡単には判断できない。しかし、日本が国際化するのは大事なことなので、できるだけサポートしていきたいと語った。
 
  地方の国立大学の一つで、医学部、歯学部、薬学部、工学部と理系の学部の多い徳島大学の理事(教育担当)副学長の高石喜久氏に話を聞いた。高石氏は、「今は都会とか地方とかは関係ない。日本全体が国際化に向けて動き出すべきで、徳島大学も大学院はすでに秋入学を実施しており国際化の一つの手段として考えている」と語った。国家試験時期や運営資金の一時的不足の問題などは、国も支援してくれるのであれば秋入学も視野に入れて進めていきたいそうだ。
 
 秋入学に移行するためには、どのような障害を乗り越えなければならないのだろうか。まず、就職時期の問題がある。東京大学や経団連は企業が通年採用をする傾向になってきているという見方を示しているが、文科省では採用人数に着目すると実際には4月採用がほどんどで、通年採用は僅かな人数に留まっているそうだ。また、年1回の国家試験だが、秋入学になると一年も遅れて試験を受けなければならない。そして、4月から9月までの6ヶ月間の高卒者の身分を考えなければならない。その間アルバイトをしたら年金を納めなければならない問題も出てくる。このような問題は解決できるのだろうか。

 全ての取材を通じて共通していたことは「秋入学は日本の国際化に向けての一つの手段である」ということだ。日本は世界に負けないためにも国際化を目指している。他のやり方で国際化を目指す大学があれば、秋入学を選択する大学もある。さまざまな実験が始まっていることに注目したい。

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社会

新3Kの農業

澤山友佳(17)

 163万人もの従事者がいながら、高校生の進路ガイドブックには決して乗ることのない仕事、農業。農林水産省の統計によると、平成22年度の新規就農者は54,570人。4年前と比較すると33%減少した。「きつい、汚い、稼げない」という ネガティブな3K がつきまとう。そんな中、新しいスタイルでそうしたイメージを打ち破る人たち がいる。

 株式会社みやじ豚代表取締役の宮治勇輔氏(34)は NPO法人農家の「こせがれネットワーク」代表理事・CEOも務める。勤めていた都内の大手企業を辞め、養豚業を営む実家に戻ったのは7年前。育てた豚で バーベキューを開催すると大好評。噂は口コミで広まり、「みやじ豚」として ブランドにまでなった。現在では生産量の約5割をレストランへの卸売りやオンラインショップでの販売などの直接販売でさばき 、利益率は養豚業界トップクラスを誇る。

實川氏の梨園「みのり園」

 千葉県で梨を育てる のは實川勝之氏(32)。父の怪我を機に農家である実家を継ぐまではパティシエとして洋菓子 店で働いていた。元々栽培していた米や野菜に加え、新たに梨栽培を始めた。コンセプトは「梨というfruitsを梨というsweetsに」。目指すのはケーキのような、上品で少し特別な存在だ。そのための努力は惜しまない。試行錯誤を重ね、独自の栽培方法を編み出した。美しさにもこだわる。自身の農園を「工房」と呼び、ショーケースのように整然とした「日本一美しい梨園」と自負する。現在10種類以上を生産。購入 者 に好きな梨を見つけてもらうためだ。さらには一本の木を購入し、接ぎ木により梨をカスタマイズできるオーナー制度を導入 したり、もぎ取り体験を実施したり、客とのコミュニケーションを通して信頼関係を築く 工夫を凝らす。

 農地や設備がそろ っており、親から技術指導を受けられ、周りの農家や 客 からの信用も得ているという 就農 条件が整っている農家出身者と比べると、非農家出身者はいささか険しい道を迫られる、と宮治氏は言う。だが、非農家出身者が挑戦しているケースも 少なくない。北海道でアスパラガスを栽培する押谷行彦氏(42)は この道13年のプロだ。 前職は兵庫県尼崎市にあるスーパーマーケットの従業員。大学時代、 スポーツに打ち込んでいたこともあり、「一日中エアコンが効いた 室内で働くより、 季節を感じながら汗を流して働きたい。」一念発起して憧れの北海道へ渡った。大学へ入り直して知識と人脈を得、さらに2年間農園で研修を受けた。スーパーで働いていた分、客の感覚が分かる。「平均的な価格だけど他のものより美味しい。」そのシンプルな戦術 がオンライン販売だけで多くのリピーターを生み出す秘訣だ。味で差別化を図るからには、栽培へのこだわりは半端 ではない。アスパラの太さは通常の二倍ほど。さらに、10cmほど余分に育て、出荷の際に根元の10cmをカットする。柔らかく美味しい部分だけを残すためだ。

 宮治 、實川 の両氏が指摘するように、従来農業は「味に関係なく農協を通して画一的に生産物が出荷され、価格決定権がないばかりか、顧客からのフィードバックも受けることが出来ない」、「おいしいものを届けたい」という思いが評価されにくい世界だった。押谷氏を含め3人に共通するのは、一度他の業界で経験を積んでいること。独自の視点を活かして生産から販売までを一貫してプロデュースすることで、その問題を克服した。さらに、消費者と直接つながりができることはやりがいや喜びにもつながる。宮治氏は「農業は3K(かっこよく、感動があって、稼げる)産業だ」と語る。

 農業従事者が減少していく今は、非農家からの就農の好機 でもある。ただし、「ブームに乗っていいイメージだけを持って来る人や、他の仕事が嫌で逃げてくる人には農業は続かない。農業は自然に左右される仕事。決められた時間働けば決められた収入が得られるわけではない 」と語る押谷氏は 。自らの 経営が軌道にのるまで5年間は辛抱が続いたという。それでも「『おいしいものを届ける』ことに喜びを感じられる人、『自然を残したい』という思いのある人なら継続できるはず」と新規就農者にエールを送る。 。「家族と触れ合う時間が持て、地域発展にも貢献 できる、そしてお客さんの喜ぶ顔を見ることができ る」と實川氏は農業の魅力をこう語る。インターネットやソーシャルメディアの発達した現代、ビジネスのスキルを身に付けた若者にとって、自然の中で働く仕事「農業」は現実的かつ魅力的な選択肢となっていくのかもしれない。

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社会

若者の改革で変わる農業

米山菜子(15)

 若者にとっての農業。それは、一度はやってみたいと憧れはあるものの、将来の夢の選択肢には入りにくいものである。
現在、農業就業者の平均年齢が1年に1歳ずつ上がっている。計算上は新しい若い人が新規参入しないまま農家の高齢化は進んでいることになる。では、身近で魅力的に感じられる農業とはどのようなものだろうか。若者の目線を持った後継者として新しいスタイルの農業を展開する3人に話を聞いた。

 お茶としいたけを生産・販売する「貫井園」(埼玉県)で働く貫井香織氏(34)はコンサルティング会社とPR会社で働いたあと、両親の経営する貫井園に戻ってきた。貫井氏は新聞に毎朝丹念に目を通す。販路を探すためだ。そして、何か可能性を感じる記事を見つけたらすぐに電話をする。会社員時代に身に付けたスキルだという。貫井園のホームページには、お茶やしいたけの選び方、健康効果や料理のポイントを載せている。貫井氏は女性であることや会社で得たことを農業に生かした。

 次に、農家の後継者を中心に支援するNPO法人「農家のこせがれネットワーク」代表理事であり、「株式会社 みやじ豚」(神奈川県) 代表取締役の宮治勇輔氏(34)に話を聞いた。宮治氏も一度企業に就職したが、実家の養豚業が気になり、実家に戻ることを決意した。そして、幅広い人脈を生かし様々な知り合いをバーベキューに招き実家の豚を口コミで広げた。社会で学んだビジネスや人脈を使って実家の豚をブランド化した。

 千葉県の實川勝之氏(32)はパティシエの道に進んだが、その後実家の農家に戻った。そして株式会社アグリスリーを立ち上げ 代表取締役となった。實川氏は実家の野菜や米の栽培だけでなく、パティシエの経験からケーキのような甘味の果実を栽培しようと梨園を作った。

 それを「全て同じ形をしたケーキを表現した梨園」 と紹介した。実際に千葉県横芝光町にある梨園を訪れてみると、確かに木はショーケースに並ぶケーキのようにどこから見ても美しく一直線に並び今までの梨園のイメージを覆す。現在は自ら作った梨でスイーツの試作もしているという。こうして實川氏はパティシエの経験を農業に生かした。

 農家の後継者に対し、養豚業の宮治氏は「実家を継ぐにしても一回社会に出るべき」と語る。ビジネス界で様々なノウハウを得たうえで実家の農業に付加価値をつける。様々なスタイルの農業があるなか、それがとても大切な財産となるそうだ。

 農家に生まれた後継者と、都会で生まれ育った若年層の新規就農者。ともに農業をする若者であっても環境は大きく違う。後継者には親から受け継いだ土地、機械、地域の人付き合い、生産や販路のノウハウなどがあるが、新規就農者にそれがない。

 これらのことは、農業をする上でとても大変なことであり新規就農者には厳しいスタートになると宮治氏は言う。そのため、「新規就農者を増やす必要はない」とさえ言った。やみくもに新規就農者の数を増やすよりも1人でも多く、優秀な後継者がいた方が農業全体には好結果をもたらすのだという。

 農業の新しい流れもある。前述の元パティシエ、實川氏は会社を大規模経営にして、農業に興味のある若者たちを雇用している。農業会社で働くことで、環境やノウハウは實川氏が持っているものを使うことができるし、いずれ農家として自立するとなったときにも条件は良い。實川氏は、近隣の農家の高齢者たちから耕作地を任されている。これらを休耕地にしないためにも、従業員たちを自立させ耕作地を与えて独立させようと計画している。

 實川氏のこのフランチャイズのシステムは、宮治氏が指摘する新規就農者の厳しい状況を解決できるかもしれない。おそらく、いま必要とされているのはこのような農業スタイルであり、農業をしたいと思う若者の手助けをしてくれるだろう。

 一昔前は農業には生産するというイメージしかなかった。しかし、今の農業は若者の手によって付加価値をつけた農業へと変化しつつある。手間ひまかけた、品質の良いこだわり抜いた農産物を提供し、オンラインショップやオーナー制の販売などが始まっている。言い換えると、ただ生産するだけの場ではなく生産から販売までを一貫してプロデュースする農業になりつつある。
 
 「農業はビジネスだ」 宮治氏のこの言葉は農業の新しいスタイルを表している。

宮治氏にインタビューする記者たち
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社会

これからの農業「こせがれ」という新しいカタチ

南雲 満友(17)

梨園「みのり園」で説明をする實川氏

 農業という言葉を聞いて、何を思い浮かべるだろうか。ともすれば農業は「きつい・汚い・かっこ悪い」いわゆる3K産業として考えられてきた。都会へ出て働く若者は田舎には戻らず、農家は高齢化の一途をたどっている。その一方で、農家の後継者である「こせがれ」が、親の農業に付加価値をつけて継ぐという新しいスタイルが注目を集めている。

 宮治勇輔氏(34)は、一般企業に勤めた後、神奈川県にある実家の養豚業を継ぎ、「みやじ豚」というブランドを成功させた。バーベキューイベントを定期的に開催し、口コミによって豚肉の品質に対する信頼を獲得し、消費者を拡大してきた。NPO法人「農家のこせがれネットワーク」を設立し、代表理事を務めている。宮治氏の目標は近い将来、農業が「かっこよく・感動があって・稼げる」3K産業へと成長させることだ。小学生の就職人気ランキング1位をめざし、活動を続けている。
 
 宮治氏は「こせがれ」が実家の農業を継ぐ利点について、「新規就農者は農地や農機などにコストがかかり、販路を自ら探しださなくてはいけない。一方、こせがれは土地も機械もあり、そのうえ地域の人とのつながりがある。こせがれが実家の農業を継ぐことが一番だと思う」と語った。また今は規模を拡大できるチャンスだという。「こせがれ」が農業を継ぐことで、ビジネスで培ったノウハウを実践できるという。

 實川勝之氏(32)は、父親の怪我がきっかけでケーキ・パティシエを断念し、千葉県の実家に戻った。米や野菜作りを続けながら、パティシエの経験を生かし、新たに梨の栽培を始めた。同氏は自らの梨園を「工房」と呼ぶ。「ショーケースに例えて、工業製品のようにクオリティーを統一することを目指した」という。様々な新種の梨を一つの木に接ぎ、ショーケースにあるケーキのように配列し、美しく栽培することで付加価値をつけた。顧客が好みに合わせて木に接ぐ梨の種類をカスタマイズできるオーナー制度も確立している。また株式会社を設立し、農業に興味のある若者を雇い、独立できる実力がつけば農地や農機、ノウハウを提供するというフランチャイズ方式で農業経営を続け、農業と地域の活性化を目指している。

 埼玉県のお茶・椎茸農家の三代目、貫井香織氏(34)は、ベンチャー企業でキャリアを積んだ後、実家に戻った。「社会でビジネス経験を積んだことが、今農業に生かされています」と自信をにじませて語る。プロジェクトの立案の方法や、新聞を毎朝読んで、販路に繋がる情報を目にすると、すぐに電話をかけるという習慣は、会社勤めの経験が役に立っているという。商品開発では女性の視点でのアイデアをカタチにしているそうだ。

 既存の事業に付加価値をつけていくには、新しいアイデアと実行力が必要だ。その点で三氏は、ビジネスの経験を農業経営に生かし、新しい農業のスタイルを構築していると言えるだろう。今、日本は食糧自給率が40%を切り、TPP問題など大きな変革の時を迎えている。宮治氏は「農業も今までの仕組みが崩壊している。新しい方法で僕たち“こせがれ”から現場を変えなければいけない」と語った。 農業に新しい風をもたらす「こせがれ」たちの今後の活躍に目が離せない。

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Interviews

Interview: Mr. Bernard Krisher

Nanami Aono (18), a Children’s Express Japan youth reporter, interviewed Bernard Krisher (80) on February 21st, 2012.

Bernard Krisher, a journalist working as Newsweek’s Asia Bureau Chief until 1980, founded American Assistance for Cambodia in the US and Japan Relief for Cambodia in Japan and the independent newspaper, the Cambodia Daily, in 1993. He launched the Sihanouk Hospital Center for the American charity HOPE in 1996. He has built more than 500 schools for the rural poor in Cambodia.

Nanami visited Phnom Penh in March 2011 with four other CE youth reporters and carried out interviews with local NGOs and the Cambodia Daily.  She began to think about need income-generating projects that offer poor children the skills necessary to earn their own living.  To learn more about how to develop such projects in Cambodia and what she should study during college, she met with Bernard Krisher.

Q. Why did you decide to help girls go to school?

A. I have to tell you about Nicholas Kristof, a writer for the New York Times.  When he visited Poipet, he went to a brothel and talked to one of the working girls asking, “How did you get here?”  The girl replied, “I was trafficked.”  She wanted to quit prostitution and so we paid her money to open a shop, but she disappeared.  Another girl, rescued by Nicholas, ran off with her boyfriend.  I realized that I was not able to help these girls.  So I decided to start to help girls go to school.  I think education is the best way to help the poor children in Cambodia.

Q. What do you emphasize in your projects?

A. Our projects aim not to rescue children but to prevent them from straying to the wrong way of life.  We encourage them to go to school, to have peers, and to connect with other people.  Once they leave school, it is hard to return.  School means a better job, a chance to go to university, and to become a homemaker.  We are also educating girls about healthcare including HIV and parents too because we need their support.  Our project is called “Girls be Ambitious” giving poor families $10 a month to prevent girls from child trafficking by going to school every day.  We stop giving $10 if the girls stop going to school.

Q. Have you had any difficulties working with Cambodians?

A. Not really, but the language can be a problem.  People inPhnom Penh might be able to speak English but people in the villages cannot. So, foreigners can’t work in the villages without interpreters.

Q. How have you found reliable staff inCambodia?

A. My staff is very loyal to me, because they appreciate what I am doing and how I treat them.  However, one problem in Cambodia is Cambodians do not truly understand loyalty.  The culture has a sense of cruelty as you see in the fresco paintings in Angkor Watt, which describe many cruelties.  Also, you have heard about Pol Pot’s genocide. Cambodians have experienced too much jealousy, criticism, and fighting amongst themselves mainly due to the lack of education.  So, trivial matters become quite important to them.  We try to teach the importance of distinguishing between trivial and important matters in their lives.

Q. How did you find your staff when you first began in Cambodia?

A. When Prince Norodom Sihanouk returned to Cambodia in 1991 after the Paris Peace Accords, and Hun Sen established a monarchy again, I had dinner with Prince Sihanouk and he asked me to help with the restoration and the reconstruction of Cambodia.

I met Mrs. Nuon Phaly, President of the Future Light Orphanage through Prince Sihanouk and she asked me to hire her nephew Thero.  He is polite and intelligent, and became my assistant.  Thero is very honest, and so I could hire reliable staff through him.

Q. How did you meet Prince Sihanouk?

A. I interviewed President Sukarno of Indonesia for Newsweek and he liked me. When I went to Jakarta again, President Sukarno introduced me to Prince Sihanouk.

Q. I understand that bribes need to be paid when dealing with the Cambodian government.  What percentage of your project’s total budget is spent on bribes?

A. We have never paid a bribe.  I just said, “I don’t pay bribes because I’m helping your country.”  In addition, I am not asked for bribes because I am a friend of the king.  Furthermore, if you pay once, you have to pay forever.

Q. What is the main reason you could succeed with your business development?

A. Success is my personality as I never give up.  I believe nothing is impossible, and everything is possible.  My friends call me “a pusher.”  Anything I want to do, I keep pursuing.  That is why I could have a private interview with Emperor Hirohito as the first foreign correspondent in Japan.

Q. Have you laid off staff?

A. I never lay off staff unless they are disloyal or dishonest. Teachers in our school including computer teachers are an exception.  As donors pay their salaries, if we don’t receive donations they have to be let go.  However, we usually assign the teachers to another school.  We give them one-months notice. Sometimes, we give staff who served for a long time some kind of compensation as they don’t have unemployment insurance inCambodia.

Q. I really want to stop child prostitution. What do you think I should study in college?

A. Psychology, counseling, and sociology. In addition, you should get experience working in some organizations.  There is trafficking in Japan, too.  People from Vietnam and other countries are also in trouble.  You should find an organization helping them, work for that organization, talk to the people involved, and ask what the problems are.  Then you could work in the developing countries.  Practical experience is important.  It is not possible to understand only by learning at school.

Q. Did your organization received grants from the Asian Development Bank and the World Bank?

A. I used to receive matching funds, that is, they gave half of the money to build the schools.  However, due to the recession the amount of funds is quite limited now. However, we have received grants from Keidanren CBCC (Council for Better Corporate Citizenship) for hospital and school projects inCambodia.

Q. If you had another life, what would you do?

A. I would do the same thing all over again.

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Interviews

Interviews The Great East Japan Earthquake March 11, 2011, 2:46 pm

Mayu Nagumo (16) and Sara Tomizawa (16), CE youth journalists, interviewed nearly 30 people from around the world during the 6th International Youth Media Summit held in Belgrade from August 1-12, 2011 in regard to The Great East Japan Earthquake.  Both youth journalists experienced first hand the impact in Japan and were interested to find out the reactions of those from other countries.  The majority interviewed was youth participants in the Summit and came from a variety of countries including America, Canada, France, Germany, Greece, Macedonia, Nigeria, Serbia, Spain, Sweden, and Turkey.  A summary of the interviews follows the questions below.


How did you first hear about the earthquake? Through what media?

Nearly all the interviewees stated the internet followed by television. Many used social network sites to follow the news once hearing about the earthquake and tsunami.  Basically multiple forms of media were involved.


How did your country report the news?

 Once again nearly all the respondents used terminology such as disaster, devastating, catastrophic event followed by dangers and risks.


When did you talk about the news with your family and friends?

 All the interviewees except one discussed it immediately with their families whether in-person or via telephone or computer.  Many families were concerned about the Japanese and also their own families that lived near nuclear power plants in other countries.

What do you know about the Fukushima nuclear power plant incident?

 Many realized how serious the situation was, that the Japanese government did not seem to be releasing all available information, and that the situation was still not stable at the time of our interviews.


Do you think that nuclear power plants should be abolished?

Although many respondents answered a resounding yes, quite a few people felt it was a difficult question to answer.  The general belief was that although nuclear power plants are a danger to the environment, they are an important source of power.  Until viable alternative sources are available, nuclear power plants are inevitable.


What new energy sources will we see in the future?

Mainly people mentioned existing energy sources that are not used today such as wind, solar, biomass, and hydro-power rather than new types of energy.

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