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報告会、レクチャー

国際青少年メディア・サミットと石巻訪問・記者交流の報告会

 去る10月26日(日)14時30分から、コネクト渋谷で、7月14日~27日に参加した第9回国際青少年メディア・サミットと、8月16日に訪れた宮城県石巻市のキッズ・メディアステーションの記者たちとの交流の報告会が行われた
記者、修了生、保護者、理事、スタッフ、ユースワーカー、そして関係者たち約30名が集まり、メディア・サミットに参加した記者たちが撮影・編集したビデオを上映し、パワーポイント・スライドを使ってそれぞれ5分間のプレゼンテーションを行った。続いて石巻を訪れた記者の二人が7分間のプレゼンテーションを行った。

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Interviews 国際

イラン出身のハニア・アスガリ(34)さんにインタビュー

村上 類(15)

村上類(15)記者は、2014年7月14日から27日まで南カリフォルニアのアリソ・ビエホで開かれた第9回国際青少年メディア・サミットに参加した。そこで7つの課題の一つの「環境」グループに参加し、グループのアドバイザーであるハニアさんに出会った。村上記者にとってはイラン人に会って話をしたのは初めてのことで、様々なイラン事情をインタビューで聞いてみた。

Q. どのようなお仕事に就いていますか?
A. こどものメディア専門家で、フリーランスのメディア研究家・教育者として働いています。また、私が主宰している「ユナイテッド・ドリーム」というセンターでこどもの問題、とりわけこどものメディア問題に取り組んでいます。

Q. なぜそのお仕事に就いているのですか?
A. 私たちは21世紀に生きており、この時代はメディアが大きな役割を果たしていると思うからです。この分野で、とくにこどもや若者たちと仕事をすることはとても大切ですし、興味もあるからです。メディアは貴方たち若者に新鮮さと活力を感じさせるだけでなく、こどもたちがメディア・リテラシー(メディアの活用能力)を得るための基盤を与えます。ご存知のように最近はリテラシー(識字能力)には読み書きの能力だけに限りません。

Q. 貴女の宗教は何ですか?

  1. 私はイスラム教徒です。

Q. イランについて貴女が好きなところは何ですか?
A. イラン(旧ペルシャ)には偉大な文化があります。私たちの文化は紀元前3000年にまでさかのぼりますし、私はそれを誇りに思っています。

Q. イランにはどういう問題があると思いますか?
A. イランには多くの問題がありますが、主な問題はイランが世界の一部の地域から孤立していることです。イランは世界に門戸を開き、世界は私たちに対して門戸を開くべきだと思います。もしそれぞれの国が平和に暮らしたいと望むのであれば、自らの信念をもって心から他の国々を尊重しなければいけないと思います。政治的見解とは切り離すべきです。他の信仰や考えを受け入れるために私たちの門戸を開き、共に平和に生きる方法について他の意見に耳を傾けるべきです。いかなる敵対心も取り除くべきです。

Q. ソーシャルメディアはどのような影響がありますか?
A. 私がプレゼンテーションでお話ししたように、ソーシャルメディアは私たちの生活で最も大切です。ご存知のように今の人々を見ていると、個人生活、仕事場、そして余暇のときでも、みんなソーシャルメディアに深く関わっています。ソーシャルメディアが酸素のようになれば、大きな影響力をもつでしょう。私たちはソーシャルメディア無しには生きられません。ですから私たちは適切な方法でソーシャルメディアを使って知識を増やすべきです。

Q. イランでは小学校から高等学校までに共学の学校はありますか?
A. 幼稚園は共学です。小学校から高等学校までは完全に男女別学ですが、同じカリキュラムを学びます。小学校は6歳から始まり高等学校は18歳で卒業です。大学は共学です。

Q. 貴女はイランの大学に行きましたか?

  1. はい、行きました。イランで修士号の学位を取得しました。イランでは鉱山学のように実践的で難しい学部がありますが、大多数は男子学生が専攻しています。

Q. 大学院での専攻は何ですか?
A. コミュニケーション、メディア研究です。

Q. なぜコミュニケーションを選択されたのですか?

  1. 私はコミュニケーションが本当に好きなのです。前にもお話ししたように、私たちはメ

ディアの時代に生きているので、いつでもどこでもメディアに関わっていますから。
私たちはメディアからメッセージ攻めに遭っていますし、私たち自身が試練を乗り越えるためにメディアをつくることもできます。これは私にはとても興味があります。コミュニケーションは、実際には心理学、人間科学、法律、政治、国際関係のような他の自然科学をすべて含んだような専攻科目だからです。

Q. イランには女子大学がありますか?
A. はい、あります。非常に優れた教授陣をもつ有名な女子大学です。でも私は共学の大学に行きました。

Q. 貴女はイランの教育に満足していますか?
A. 正直言って満足していません。規則が厳し過ぎるからです。勉強する量もとても多いのです。私は教育とはただ学校に行って勉強するだけだとは思っていません。教育とは学校へ行って様々な活動をして、様々な技能(スキル)を習得することです。貴方たちは社会的活動が求められています。イラン人は教育水準が高いですが、私たちは他の側面にも目を向けなければいけないと考えています。

Q. イランでは政府がソーシャルメディアを規制していると思いますか?
A. はい、そう思います。イランには国営テレビ局とラジオ局しかありません。民間の放送局はありません。新聞社には民間企業がありますが、完全に政府の管理下におかれています。インターネットにはフィルタリング(監視チェック)がかけられています。

最後に、イラン人の日本人に対する印象について言わせてください。
イラン人は日本人を尊敬しています。日本は第二次世界大戦で完全に破壊されたのに、戦後の日本人は自分たちの国を再建するために団結して一生懸命働いたからです。日本人はとても礼儀正しいですし、イラン人は日本人を高く評価しています。貴方たち日本人は世界の手本(モデル)になるべきです。

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Interviews 教育

Interview: Ms. Hania Asgari (34) from Iran

photoRui Murakami (15), CE youth reporter, participated in the 9th International Youth Media Summit in Aliso Viejo, southern California, from July 14th through 27th, 2014. She joined one of the seven issue groups, Environment, of which Hania was the advisor. This was Rui’s first time to meet and talk to an Iranian and was eager to have an interview.

Q. What kind of work do you do? 

I am a Children’s Media Professional working as a freelance media researcher & educator. I have also my own center called United Dreams devoted to children’s issues specially children’s media.

Q. Why did you choose that job?

Because I believe media plays a great role in our era as we are living in 21st century.Working in this field, especially with children and young people, it is both vital and interesting. It not only makes you feel fresh and active but also provides a platform to help children in gaining media literacy; as you know nowadays literacy is not limited to the knowledge of reading and writing.

Q.What is your religion?

I am Muslim.

Q.What do you like about Iran?

Iran has a great culture. Our culture goes back to 3,000 before Christ (BC) which makes me feel proud.

Q.What do you think the problems are in Iran ?

We have many problems in Iran but the main one is we are isolated from some parts of the world. We should open our doors to the world and they should open their doors to us.

If each nation wants to live in a peaceful world, we have to respect other nations with their own beliefs. We should distance ourselves from political views. We should open our doors to welcome other beliefs, other ideas, and listen to other comments on how to live peacefully together. We should remove all hostilities.

InterviewQ. What is the impact of social media?

As I mentioned in my presentation, social media is the most important part of our lives. If you look at the people nowadays, they are all involved in social media in their personal lives, workplace and in their leisure time. When social media becomes like oxygen, it has a great impact. We cannot live without it. So we should increase our knowledge on how to use it in a proper way.

Q. Are there any co-education schools in Iran from primary to secondary?

In Kindergarten, we have co-education. In primary and secondary schools, we are separated by gender but study the same curriculum. Primary school starts from age of six and secondary school ends at the age of eighteen. We have colleges and universities that are co-educational.

Q. Did you go to university in Iran?

Yes, I did. I earned my Master’s Degree in Iran.There are some practical and difficult departments that are predominantly pursued by male students such as mining.

Q. What is Master’s degree in?

Communications—Research in Media.

Q. Why did you choose Communications?

I really love it because as I mentioned earlier we are living in the media age and we are involved in it everywhere all the time. We are bombard by media messages and we can also produce media to overcome our challenges. This is very interesting to me. It is a major which is in fact a package of other sciences like psychology, human science, law, politics, international relations.

Q. Are there any women’s university in Iran?

Yes, there is. There is a well-known university with a very good faculty. But I went to a co-educational one.

Q. Are you satisfied with education of Iran?

Honestly not, because it is too strict. We have to study a lot. I don’t believe an education means you just go to school to study. Education means you go to school to have different activities and to learn various skills. You need to have social activities. Iranians are highly educated people but I believe we have to pay attention to other aspects as well.

 Q. Do you think that the government controls social media in Iran?

Yes, they do. We have only state TV and radio, no private stations. There are private newspapers but they are soft-censored. The internet is filtered. Let me talk about the Iranian impression about Japanese people In Iran people respect Japanese people because they work so hard.

After the World War II, Japan was completely destroyed but they kept their unity to rebuild their country. Japanese are very respectful and Iranians admire you.

You should be a model to the world.

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国際

第9回国際青少年メディア・サミットに参加して

村上 類(15)

  7月14日の朝、目覚めたら母国語ではない言葉が聞こえてくる。自分がいったいどこにいるのか状況が読めなかった。日本の学校で授業を受けて英語を身につけてきた私にとって、朝起きたらまずグッドモーニングと言う習慣は、まさに自分は日本にいないと思い知らされる瞬間である。そうだ、今日からは英語で自分の意見を主張しなければ!と私は気持ちを引き締めた。

グループで自然公園訪問

2014年7月14日から26日まで、アメリカのカリフォルニア州にある米国創価大学の施設を借りて第9回国際青少年メディア・サミットが行われ、チルドレンズ・エクスプレスから私を含め記者2人が参加した。このサミットには世界22ヶ国の14歳から25歳までの若者が集まり、世界で起きている7つの問題(女性の権利・貧困・差別・環境・若者の地位向上・健康・暴力)毎にグループを作り世界へ発信するためにビデオを制作した。

 私が参加した環境のグループはアメリカ、アフガニスタン、アルメニア、オーストリア、コソボから参加した7人だ。アドバイザーはイランから参加した女性だった。活動を通して、普段日本国内にいるだけでは絶対話す機会がない国の人たちと親交が深めることができた。
 最初に、『環境』と言っても一言では語りきれないため、世界で起きている自然現象や自分の国で感じられる地球温暖化の影響などを出し合い、どの項目が世界的な問題でまた映像で表現しやすいかを話し合った。そして世界共通で身近な水不足にテーマを決めて映像を制作することにした。その後、映像でいかに水不足を表現するのかアイデアを出し合い、水を無駄にしている人と、水を探し求めている人を交互に見せることに決めた。

撮影準備

 撮影の前にはどんな行動をどんな状況で撮るのかを細かく記した絵コンテを描いていく。私は撮影中の指示や判断を英語で仕切ることが難しいため、この絵コンテを描く役を買って出た。それぞれの場面の役者のポーズから天気まで撮影の軸となる重要な場面を一つずつ漫画のように描いていくのはなかなか難しかった反面、とても面白くいい経験だった。

 そして撮影。私たち環境グループにとって、水不足と水の無駄使いを分かりやすく見せるには太陽がどのシーンでも鍵を握るため、その日の天気にしたがってスケジュールを次々と変更する必要があり四方八方へ動き回った。

 撮影後は編集作業に取り掛かる。しかしここで、外国ならではの問題が生じた。撮影しなおすか否かの話し合い中にグループのメンバー数人がいきなりどこかへ行ってしまったのだ。遅刻、欠席等の行動はありえないと考えられている社会環境で生活をしている日本人の「きっちりさ」を感じた瞬間である。しかし最終的には映像作成の経験があるメンバーが編集を積極的に進めてくれて、最後には無事納得のいく作品を作ることができた。

 サミット最終日には各グループが作成した映像が上映された。どのグループの作品もそれぞれの問題を深く考えさせる完成度だった。日本ではせっかく映像を制作してもなかなか注目してもらえないことを考えると、日本はスポーツと勉強ができる人だけでなく、その二つに負けない才能を持っている若者にももっと注目をしてそれを発揮する機会を作るべきだと思った。

自然公園で説明を聞く

 私が今回サミットに参加して強く感じたこと。それは国や宗教、肌の色に関係なく支えあっていけば、たとえ少人数であっても生活しやすくなる人が増え、うれしいと思う人が必ずいるということだ。実際私は今回のサミットでさまざまな人に沢山助けられた。もし助けがなかったらおそらく二週間私は無事に生活できなかったと思う。活動外の時間に同じグループだったアフガニスタンの女の子に寮の部屋に呼んでもらって絵コンテの書き方を教えてもらったり、アドバイザーの人がミーティング終了後にわからなかった部分をもう一回教えてくれたりと、数え始めたらきりがないほどサポートしてもらった。特にルームメイトのアルメニア人の女の子が言ってくれた「困ったらいつでも助ける」という言葉は心の支えになった。 自分の学校のクラスだけが交流関係の中心だと思っていた私をサミットは変え、世界は広いようだが全員人種は違っても同じ人間であり、互いを支えあっていく大切さに気づかされた2週間だった。

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国際

The celebration of youth voices(若者の声の祭典)

松本 哉人(15)

 サミットに参加して3日目の昼、僕のグループ7人はオリエンテーションとしてそれぞれが自分のことを発表していた。みんなとちがって英語の得意でない僕はほとんど内容のないような事しか話せず、泣きたくなっていた。
 しかし、仲間たちは辛抱強く聞こうとしてくれた。話が止まるたびに「ソーリー」を繰り返していた僕に「英語がうまくないからといって否定することはしないし、だから謝る必要もない」と励ましてくれた。この言葉をもらってから僕は「サンキュー」という言葉を多く使うようになった。そして、この言葉が残りのサミット期間中、僕に話す勇気をくれた。
ことし7月14日から27日まで南カリフォルニアにある米国創価大学のキャンパスで第9回国際青少年メディア サミットが開催された。アフガニスタン、イラン、イスラエル、パレスチナ、コソボなど22ヶ国から来た80人近くの若者が差別、貧困、暴力、健康、環境、女性の権利、若者の地位向上の7つのグループに分かれて話し合った。

グループ活動の報告

僕は若者の地位向上のグループに参加した。僕のほかのメンバーはアルメニア、スロベニア、コソボ、アメリカ、メキシコ、ナイジェリアの若者たちだ。まず、それぞれの国の中で起きている若者の地位に関する問題を話し、共有し、改善するにはどうすればいいのか意見を交わした。ナイジェリアから来た女の子は金銭や社会的な立場の問題で自分の望む道に進めない若者がいることを話し、その場にいる全員が自分の周りにも同じようなことがあると話していた。

チームの課題は1分間のビデオ作品の制作だ。それぞれが自分の知っている映像を参考に見せ合いながら何を問題にするのか、どんな構成にするのかについて話し合った。その結果、テーマは「EVERY TALENT HAS ITS POWER」(全ての才能には活かしどころがある)で、自分の進むべき道を思い悩んでいる人たちに向けて自分の才能を信じるように呼びかける内容になった。

撮影は大学の構内で行った。メンバーはそれぞれ、プロデューサー、ディレクターなどの役を割り当てられた。各役割には専門家からのトレーニングも用意され、僕はガッファー(照明係)を担当した。ガッファーはライトや反射板を使って光の加減を調節する役で、撮影体験の少ない僕にとっては新しい知識だった。他のメンバーはほとんどの役割をよく理解していてビデオ作成の技術の高さに驚いた。意見がぶつかり合うことも多々あったが、結局はお互いの意見を理解した上で話し合い、納得する結論を出していた。日本では意見がぶつかると相手の話を聞かずにすぐに撤回したりしてしまうときが少なからずあるので、この点では日本は世界を見習うべきだと思った。 編集を終えてビデオ作品が完成した時はグループ全員で喜んだ。

撮影中の照明係

 もうひとつの難関はデクラレーション(宣言文)の作成だった。グループのメンバー全員が自分の国で起きている問題と解決方法について文章を作成し、その中から一人を選ぶ。選ばれた人は文章を読み上げて録画し、ビデオと一緒に閉会式で上映するのだが、若者の地位向上グループでは僕の提出した文章が選ばれた。日本の、子を持つ親や学校の先生達に向けて、子供にもっと励ます言葉をかけるよう呼びかける内容のものだ。英語の発音にとても苦労し、練習には多くの人の協力と時間とを必要としたが、ビデオ作品とともに閉会式でまとめて上映され、みんな達成感と喜びでいっぱいだった 気がつけば、サミットの最初には多くの不安を抱えていたのに、最後にはみんなとひとつになってビデオ作成や意見交換に取り組み、何事もまずやってみることが大事だということを学んだ。グループの中で口喧嘩になってふて腐れている様子などを見ていると、どこに住んでいても同じ人間であるということを実感させてくれたが、口喧嘩の原因がそれぞれの民族の信念の違いであったりすると参加者の「変えたい」という気持ちの強さを感じさせられた。それぞれの境遇の中で問題意識をもって参加した若者の中で共に作業できたことは世界に目を向けるいい機会になったと思う。また、自分の意見を発表し、人と話し合うことに長けた人たちの中にいると、自分の意見を主張し続けることの大切さやそのために必要な英語のスキルの重要性に気づかせてもらえた。

宣言文を撮影される

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社会 IT

VOCALOID™という文化


2014/10/04                 坂本 光央(11)

「初音ミク」のソフトウェア

   読者の皆さんは、VOCALOID(ボーカロイド)というものを知っているだろうか。歌声の合成技術の一つで、VOCALOID楽曲を作るためのソフトウェアにも使われている。VOCALOIDという名前はVOCALOID小説などで聞いたことがあったり、ニコニコ動画でVOCALOID楽曲の曲名を目にしたことがある、という人もいるかもしれない。
   具体的にはどのようなものなのか。VOCALOIDソフト発売元の一つであるクリプトン・フューチャー・メディア株式会社の広報担当 門野 亜由美氏、ニコニコ動画を運営している(株)ドワンゴ戦略的ETC事業部ユーザーマーケティング部クリエイティブプロデューサーの 阿部 大護氏、そしてVOCALOIDを開発したヤマハ株式会社 事業開発部 yamaha+推進室 VOCALOIDプロジェクト リーダー 剣持 秀紀氏に取材した。

ボーカロイド開発者へ取材

   そもそもVOCALOIDとは、はじめにも書いたように、ヤマハ株式会社が開発した歌声合成技術、そしてその技術の応用ソフトウェアの総称である。歌声は、実際の歌手の声をもとに作られた「歌声ライブラリ」とよばれる声のデータ―ベースをもとに合成している。この歌声ライブラリを変えることによって「初音ミク」「鏡音リン」などVOCALOIDキャラクターの声で歌わせることができる。さらに歌声ライブラリと、曲を打ち込む専用のVOCALOIDソフトウェアを使って曲を作ることができる。

門野氏によると、初めて日本語の歌声ライブラリ入りのVOCALOIDソフトウェアが発売されたのは2004年、「MEIKO」というソフトウェアだった。その後、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社では「KAITO」「初音ミク」などを発売していったという。このソフトウェアを使った楽曲の中で有名なのは昨年から今年にかけて放映されていたCMで使われた初音ミクの楽曲「千本桜」だろう。

(株)ドワンゴ社へ取材

   VOCALOIDを作った理由を剣持氏に尋ねると、「いろいろな楽器があり、コンピューターのなかに音源があったりはしたが、歌声だけは実際の歌手を呼ばなければならなかった」からだそうだ。

   阿部氏によると、 VOCALOID楽曲がニコニコ動画で流行り始めた時期は、2008年の半ばから2009年にかけてで、当時から初音ミクの楽曲は一番多かったそうだ。 また、現在のVOCALOID楽曲は、J-POPなどのカバー曲はほとんどなく、VOCALOIDのオリジナル曲、またそのカバー(既存曲を歌い手が歌ったものなど)がほとんどだという。

   ニコニコ動画でのボーカロイド楽曲の人気ポイントを質問すると、「一つ目は一つの動画を映像も声も全て自分で創ることができること、二つ目はキャラクターの人気で興味を持つ人が増えて、自分たちの思うままに想像して創ることができる二次創作(VOCALOID小説など)の現象が起きたところが人気のポイントだったのではないか」と話す。

クリンプトン社へスカイプ取材

   剣持氏に「VOCALOIDソフトを使った曲が最近増えてきているが何が魅力なのか」と聞くと、「いくつかあるが、人間の声のようでいて少し機械的なところ、また今までの常識にとらわれないところではないか」という。
 
   VOCALOIDという技術は、これからどのように進化していくのだろうか。剣持氏は「どんどん人間の声に近づけていきたい、完全な人間の声にはならないが、完全な人間の声ではないところがまた新しい表現になるのではないか」と語る。

  現在発売されている最新のVOCALOIDソフトはVOCALOID3で、このソフトでは、それ以前にはできなかった伴奏をつけることができるようになった。またiPadなどで楽しむことができる「iVOCALOID」や、自動作曲機能・ボカロデューサーを使った「ボカロネット」というものもある。

  「VOCALOID」という一つの新しい文化が、これからどのように躍進するのか、日本や世界の映像と音楽にどのように変化をもたらしていくのかを見守りたい。
※VOCALOID、ボカロネット、ボカロデューサーは、ヤマハ株式会社の登録商標または商標です。

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