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教育 国際

訪英取材より(6記事)

少年の軽犯罪 ~日英の対応と対策の違い~
2010/11/14                持丸 朋子(15)

日本で近年、少年の犯罪が増えている。警察庁によると昨年は検挙されただけでも 5 万人を超え、中でも万引き犯が 12000 人いるそうだ。理由としては家庭の事情や親に関心を持って欲しい、かまって欲しいなどが あ げられるという。このような身近な問題である万引きなど少年の軽犯罪の対応と対策はどのようになっているのだろうか。今夏、日英記者交流事業で記者として訪れた英国と、日本とで少年犯罪者への対応と予防対策について調べることにした。

ロンドンのYJB(少年司法委員会) 取材

<日本>

まず日本の警察庁へインタビューを行った。

そもそもなぜ軽犯罪をしてしまうのか。たとえば万引きの場合、理由は、お金がなかった、ゲーム感覚でやった、親にかまって欲しい、友達に強制的にさせられたというのが主なものだと生活安全局少年課理事官の佐野裕子氏はいう。

万引きをした少年は、親とのコミュニケーションが取れておらず居場所を求めている場合が少なくないことから、万引きに至った経緯や家庭の状況等について話を聞いてあげることが大切なのだそうだ。また、軽犯罪をする少年の中には、過去に虐待を受けた経験があり、それが万引きといった非行に影響している者もいるという。

「ぴあすぽ」取材

佐野氏はさらに、「警察庁は万引きをした少年がいたら警察に連絡するように店の人に呼び掛けている。警察へ通報された子どもは事情聴取をうけるとともに、親も呼ばれることになり、これをきっかけに、自らの行為をしっかりと振り返ることにつながる。事情聴取だけで終わる場合もあるが、その後、何度も補導されるなどして継続的に支援をする必要が認められ、保護者がこれに同意をした場合などは、警察が設置している少年サポートセンターという施設で立ち直り支援を受けることもがある」という。

警察は全国の道府県に少年サポートセンターを設置しているが、東京都は青少年・治安対策本部青少年課が民間の NPO に委託している。東京都から「ぴあすぽ」という名称で委託を受けている世田谷区にある特定非営利活動法人「日本子どもソーシャルワーク協会」へ取材に行った。

「ぴあすぽ」の寺出草太氏によると、ここには犯罪をした子ども、不登校などの問題がある子ども、そして保護監察中の子どももいるそうだ。

ここにきた子どもはユースワーカーの人と話したり、マンガやゲーム、スポーツをするなどをして居場所づくりができる。このようにして軽犯罪をした子どもを立ち直らせようとしているという。

<イギリス>

では、イギリスの場合はどうなのか。ロンドンにある Youth Justice Board( 少年司法委員会 ) で取材をした。少年司法委員会は、イングランド地方とウェールズ地方で少年犯罪対策を管轄している。

警視の Sian Lockley 氏によると、対策の一つとして、万引きをする子どもが多い昼時に学校近くのスーパーマーケットなどの前に、私服のガードマンと一緒に学校の教師が立ち、見張りをする。また、私服ガードマンが店内を周り、監視をすることもある。このような直接的な対策のほかに、軽犯罪を犯した少年の親の教育もするという。

Lockley 氏によると、イングランドとウェールズ地方の一部の地域では Youth Restorative Disposal( 少年修復処置 ) という更生方法をとっているそうだ。

この「少年修復処置」は、少年法が適用される 刑事責任年齢である 1 0~17 歳の子どもが万引きのような軽犯罪を初めて犯したしたときに適用されるそうだ。ただし、 200 ポンド (29,000 円※ ) 以上の高額商品を万引きした場合は警察に逮捕され、顔写真、指紋、 DNA 、調書などがとられ、保護者が呼び出される。逮捕歴が犯罪記録に残り、少年が将来就職をする際には、雇用主がこの犯罪履歴を見て、採用を見合せることがあるという。

「少年修復処置」がとられると、犯罪者は金銭で罪を償うのではなく、地元の清掃などのボランティア奉仕活動をすることで償う。この方法は、犯罪履歴が残らないため犯罪者の保護者も、被害者も喜んでいるという。

この「少年修復処置」は 2007 年にイングランドとウェールズ地方の 8 地域で試験的に開始されてから、わずか 3 年で 33 地域に増えた。ロンドンのような大都会でも似たような処置がとられているそうだ。

「少年修復処置」の特徴の一つは、少年犯罪者と被害者が同意すれば直接会って話をすることができる。

ベルファスト局取材

少年犯罪者は、まず被害者に直接謝罪をし、なぜ犯罪をしてしまったのかを伝えることができ、一方被害者は被害がどういうことに影響を及ぼしているかなどを話すことができる、同じ地域で 再び会う 機会があるので、再犯の防止につながると L ockley 氏はいう。

また、犯罪者の更生はだれが行っているのかを尋ねたところ「各地域の家族や警察官、ソーシャルワーカー、教育スタッフ、メンタルヘルス担当官などから編成される『少年犯罪対策チーム』が 1 つの建物内で一緒に行っている」ということだった。

これは日本の警察が設置している少年サポートセンターと似ているのかもしれない。

ロンドン局取材

 しかし、万引きをした少年がいたらすぐに警察へ連絡するように呼びかけている日本の警察庁と、犯罪履歴を残さないために 200 ポンド未満の初犯の場合は、警察に逮捕されずに「修復的処置」をとるイギリスの少年司法委員会の方法は違うのではないか。

 日英共通して言えることは、親子の関係が原因であり、それをなおすことが一番の解決策のようだ。親子の関係が、子どもが軽犯罪をする一番の原因であると警察庁も「ぴあすぽ」も強く言っていた。

 日本とイギリスで方法は違うけれど、子どもの一番そばにいて大きな影響を与える大人との関係をよくし、話を聞いてもらえる人がひとりでもいることが大切なのではないだろうか。

(※円換算は 2010 年 11 月 12 日現在の対顧客売値で 1 ポンド= 145 円)

日本と違う? 高校時代の過ごし方
2010/11/14                宮澤 結(17)

ロンドン局取材

2009年、日本では97.9%の学生が高等学校に進み、そのうち53.9%の学生が大学へ進んだ(文部科学省「平成21年度 学校基本調査」より)。大学へ進むために多くの学生が塾や予備校に通っている。一方、イギリスの大学進学率は2000年に60.0%だった(文部科学省「平成18年度 教育指標の国際比較」より)。日本と大学進学率はそれほど変わらないイギリスだが、イギリスの中高生たちは大学進学をするためにどのような準備をしているのだろうか。
その点を知るため、イギリスの3つの局で、それぞれインタビューを行って見えてきたのが、イギリスの中高生の将来に対する職業選択の意識の違いであった。日本とイギリスの大学進学および職業選択の意識の違いについてまとめてみた。

日本では中学校を卒業する15歳までが義務教育で、その後進学するか就職するかを決める。イギリスの場合は16歳で義務教育が終了し、進学を希望する人も就職を希望する人も、卒業するにあたってGCSE(General Certificate of Secondary Education)という統一試験を受けなければならない。その後、就職を希望する生徒は日本でいう高等専門学校に進学し、就職に直結する専門のコースで学び、大学進学を希望する生徒は日本の高等学校にあたる「6th form」という2年間のコースに進む。
  6th form に進んだ学生は、大学に入学するために大学で専攻したい科目の関連分野3科目について専門的に学び、2年後の18歳でA Level(Advanced Level)という統一試験を受ける必要がある。A-LevelではA~Eまで5段階の合格基準があり、通常、大学で専攻したい科目の関連分野がC以上で合格することが、大学入学許可の条件となっている。

今回インタビューを行ったベルファスト局では13人中12人、フォイル局、ロンドン局では共に6人中6人の記者が大学へ行くと言っていた。その理由としては「経験を積むため」という意見や、「学位を取って仕事を得るため」など様々な意見が上がった。

大学進学のためにどうやって準備をするのかを聞いたところ、三つの局で「学校のテストで準備をする」という回答をもらった。日本の塾の写真を見せて説明をすると、どの局でも驚かれた。ベルファスト局のスタッフであるカイアン・マッカー氏(38)は「イギリスでは小学校に入学する前に勉強を始める準備のための幼稚園があるけれど、それは小学校受験のためではない。大学受験のための塾もないと思う」と言う。
どうして大学受験の準備の仕方に違いがあるのだろうか。

これにはイギリスの教育制度が関係していると思われる。イギリスでは公立私立に関係なく、統一試験だけが唯一の大学入学試験であり、試験の合格基準によって行ける大学が決まるのに対し、日本は大学入試センター試験はあるものの、それに加え大学ごとに独自の試験を行うことところがほとんどだ。そのため、日本では志望大学ごとの対策が必要となり、塾や予備校に通って大学受験の準備をする人が多いのだろう。日本では学校の終わった後の放課後や休日を利用して塾などに通う。

大学進学のための準備についてインタビューしていくうちに、イギリスの中高生は大学の先を見越して大学進学をも考えている様子が見えてきた。イギリスにはWork experienceという制度があるが、彼らは職業体験を重視し、この制度を利用している。この制度では自分の希望する職種・分野の仕事で2週間働くことができるのだ。
ロンドン局でインタビューをした大学2年生のジャメリア(20)は「就職するにはCollege(単科大学)かUniversity(総合大学)に行って学位を得ることが有利だと思う。でも、自分が希望する職種に就くには技能を身につけることが必要で、一番大切なのは経験を積むことだ」と言っていた。そのために彼女がしたことがWork experienceだった。「アルバイトは長期的にできるしお金も得られるけれど、Work experienceの方が将来したい仕事により近い仕事ができる。私はこの制度を使って、音楽雑誌の会社で働いた」と彼女は語った。
また、フォイル局ではWork experienceを経験している人はいなかったものの、グレイス(15)は「私の学校では15歳から17歳の間にWork experienceを利用して、新聞社で働ける制度がある」と言っていた。

今回の取材を通して、日本とイギリスの中高生時代の過ごし方に大きな違いを感じた。日本では、大学合格のために、学生生活の多くの時間をただひたすら塾に行って受験勉強に費やすように思われる。したがって、一番の目標が大学合格であれば、大学入学と同時にその目標は失われ、その先を見失いがちになってしまうのではないかと思う。イギリスでは大学受験の勉強は学校で行い、放課後の時間は、「自分は将来何をしたいのか考えること」に時間を費やせる。
イギリスの同年代の学生が大学卒業後の就職を考えて中高時代を過ごしていることが、本来の学生の姿であるように思えた。

自分のやりたいこと、考えている?  日英の比較
2010/11/14                持丸 朋子(15)

日本の成人式の説明をしているところ

日本では 15 歳で義務教育が終了した後の進路は、平成 19 年の文部科学省のデータによると 99.7 %が高等学校へ進学。その後、 51.2 %が大学や短期大学などへ進学する。 その際、 大学ならどこの学校でもどこの学部でもいい、就職もどこでもいいから企業へ入りたいといって、大学で専攻した学部とまったく関係のないところへでも就職するということが多くあると言われる。その傾向は就職氷河期と言われている現在、特に激しいとも聞く。

このようなことは他の国でも同じなのか疑問に思い、この夏の訪英プログラムで訪れたイギリスの子どもたちに、大学進学や就職に対してどうかんがえるのか、聞いてみた。

英国にあるチルドレンズ・エクスプレスの姉妹団体 Headliners の 3 つの局(北アイルランドのベルファースト局、フォイル局、イングランド地方のロンドン局)で、大学へ行きたい、もしくは既に行っている人にその理由について聞いた。すると、日本の現状とは大きく違う答えが返ってきた。すべての局で返ってきた答えは「自分の興味のある分野を専門的に学びたいから」というものだった。

たとえば、ロンドン局で記者を修了して現在は局で働いているジェイミー (20) は「将来メディアにかかわる仕事がしたいから、メディアについて大学で学んでいる」と答えた。フォイル局の記者トーマス (18)は「学位が取れ、就職で有利だから」と答えた。このようにただ大学に入るだけでなく、入ることによっての自分へのメリットをしっかりと考え、大学で学んだことや学位など得たことを就職へ生かそうとしている。

就職を考えるという点では、英国にはユニークな制度がある。 Work Experience (職業体験)という制度だ。これは仕事に就いた時、つまり就職のための準備の一つである。また、実際にその職業に就く前に体験してみることによって、その職業の見えていない部分などもよくわかり、その職業が自分に向いているかどうか、などを見極める機会ともなる。

Work Experience を利用すると、高等学校に在学している間の第 10 学年と第 11 学年にあたる 15 歳から 17 歳の時に約 2 週間、もしくは大学在学中か大学卒業後に、自分の興味のあるところで働けるのだ。 Work Experience を学校のプログラムとして実施するところもあるという。フォイル局の記者グレース (15) によれば「彼女の学校では「新聞社へ行って Work Experience ができる」。 そうだ

 高等学校に在学している間の Work Experience は、大学へ入るときには特に評価されないという。その代わり、就職するときに評価される。高校時代にこの制度を利用する人は、つまり、将来、就職するときの自分のために、高校にいるときから自分の時間を割いて準備をしているのだと言える。

日本の高校生 の多くは 、学校のほかに塾へ行って大学受験の勉強をしてとりあえず大学に入り、大学で専攻していたことと関係が無くても、とりあえず就職をと考える。一方、英国の高校生は とても早い段階から自分の将来を考え、そのために大学では何を専攻するのか、 Work Experience をやるかやらないか、やるならば何をいつやるのかなどを決めている。

イギリスで記者に取材をし、イギリスの子どもは自分の行きたい進路がはっきりしているうえに理由もきちんとあり、進路や就職などの将来に対しての意識が高いことに驚いた。 

日本でも、将来に対しての意識がこれくらいあるといいと思う。そのためには、 英国の学生たちのように、早いうちから自分がやりたいことを考えられるように、職業に関しての情報がもっと子どもたちに届くといいと思うし、職業を体験できる機会もあるといいのではないかと思う。

成人年齢の「日英比較」
2010/11/14                富沢 咲天(15) 

現在、日本の成人年齢は20歳である。成人年齢になると日本では選挙や飲酒、喫煙の権利が与えられる。しかしイギリスの成人年齢は日本より2年早い18歳だ。なぜ日本とイギリスとでは成人年齢が違うのだろうか。その点を疑問に思い、両国の若者たちは、成人年齢は何歳がいいと考えているのか、また、その理由はどんなものなんかなどを知るため、選挙や飲酒、喫煙に焦点をあてて両国の若者にインタビューをした。

まず最初に選挙権についての意見を比較してみよう。
日本の20~30代の若者に実施した街頭インタビューでは、16人中9人が「選挙権は20歳でいい」、残りの7人が「18歳がいいと思う」と答えた。わずかだが20歳支持派が多かった。20歳でいいという女性(29)は「18歳だとまだ政治について分からないことが多いから、選挙権は20歳のほうがいい」という理由だった。

イギリスの若者21人からは「18歳か16歳がいい」という答えが圧倒的に多く、「20歳がよい」という回答はゼロだった。「18歳になると大学に行けるし、軍隊にも参加できるし、16歳から働くことができるので18歳がいい区切りだ」とロンドン局のジャメリア(20)は言う。

早い年齢から政治に興味を持ち積極的に参加したいという意見と、政治について正しい判断ができると思われる20歳まで待った方がいいという意見。イギリスは早い年齢の積極派が多く、日本はどちらの考えも一定の支持があった。

次に飲酒の年齢について聞いてみた。
日本では20歳以上の大学生の3人に意見を聞いた。日本では「大学のコンパなどで、20歳未満の学生も一緒にお酒を飲む機会が多い。この点から、日本も飲酒可能年齢は18歳からがいい」という1人の意見があったが、残りの2人は別に20歳でもよいという意見だった。

日本での飲酒は20歳からなのに対し、イギリスでは18歳から飲むことができる。そのうえリンゴ酒やビールならば、親同伴の条件で16歳から飲むことができるという。それはイギリスでは19世紀末までは生水の衛生状態が悪く、幼児でも水代わりにリンゴ酒を飲んでいたという歴史からきているのかもしれない。イギリスの若者たちは現状の飲酒解禁年齢に不満はないそうだ。

イギリスでは18歳から飲酒できるので、日本の大学でのような問題は起きない。ジャメリアは「パブでお酒を飲むことによって学生同士が仲良くなれるが、自分で飲む量を調節できるかどうかが大切だ」と言った。人にもよるが、年齢が低いほど酒量のコントロールが難しいという欠点もある。リスクをおかしてでも学生にまかせるイギリスと、リスクのことを考えて飲酒年齢を上げておく日本とでは考え方が違うようだ。

最後に喫煙年齢についてだが、日本は20歳、イギリスは18歳からである。イギリスでは喫煙年齢はあまり問題にならないそうだ。「イギリスでは法律で、公共の場で吸ってはいけないと厳しく決められているから、タバコを吸う人は少ないよ」とロンドン局のジェイミー(21)は教えてくれた。実際私たちがイギリスに滞在している間、タバコを吸っている人をほとんど見かけなかった。イギリスではタバコが日本の3~4倍もの値段で売られているということも影響しているのかもしれない。日本でインタビューした大学生3人も皆20歳の現状でよいと答え、不満は感じられなかった。これは喫煙が健康を害するということをみんなが自覚しているから、あえて年齢の引き下げは望まないのではないだろうか。

今回のインタビューでは、日本とイギリスの若者の考えがいくつかの点で違っていることがわかった。個人的には、選挙と飲酒の年齢は社会に出て働いて納税する人も増える18歳から、喫煙年齢だけは健康に関係することなので現状のままで、そして喫煙の場所の法規制がイギリス並みにもっと厳しくなればいいと思った。

印象に残ったのは、イギリスの若者たちは大人になることについてみな「私たちは若くても自分の考えをちゃんと持っているから大丈夫」と自信たっぷりに話してくれたことだ。日本人のインタビューの中でも、もっと成人年齢を下げても「日本の若者はしっかりした意見を持っているから大丈夫」「政治に興味がある若者もたくさんいる」などの心強い意見もあったが、「まだ早い」「できない」「分からない」「責任を負えない」という自信のなさがあらわれた意見もあった。

これらの年齢は、私たちの属する社会が何を重視して考えるかで決まるのではないだろうか。イギリスでは若者を自立した個人として扱うことを重視していて、日本では若者を未熟な人間として保護することを重視していると思う。歴史や文化、国民性や風土が違うイギリスと日本でまったく同じ意見になる必要はない。意見が違っても、相手の考え方を知ることでお互いがもっと深く理解しあえるのではないだろうか。これらのテーマについてイギリスの若者の率直な意見が聞けたことで、彼らをとても身近に感じられるようになったと思う。

大人になるために大切なこと~日英の違いから学ぶ~
2010/11/14                南雲 満友(15)

イギリスの成人年齢は 18 歳で、日本のように行政のホールなどに一堂に会する成人式はないという。

これをはじめとして、イギリスと日本では、成人すなわち「大人になること」に対する意識には差があることがわかった。 飲酒、喫煙、選挙権について、イギリスの記者たちにインタビューし、 意見交換を通して見えてきた「大人になること」の意味について、まとめてみた。

 日本では 20 歳を成人年齢とし、 20 歳の誕生日になると、何もしなくても「はい、どうぞ」と飲酒も喫煙も法律で許され、選挙権も同時に与えられる。一方、イギリスでは事情が異なる。イギリスでは、かつて 21 歳が成人年齢と決められ、飲酒、喫煙、選挙権が与えられるのは 21 歳からだった。しかし成人年齢の引き下げを求める学生運動により、 1969 年から法律上の成人年齢が 18 歳になったのだ。ただ、成人年齢を 21 歳とみなす慣習はまだ強く、 18 歳、 21 歳どちらを成人とするかは、各家庭で決められることが多い。これは、自分の子供の成人年齢は、慣習的に親自身の考える「成人」という定義に任されているからだ。したがって、 21 歳を成人とみなす家庭の子供も、 18 歳になっていれば法律上は飲酒、喫煙が許され、選挙権を持てるというのが現状だ。

 飲酒についてイギリスの記者たちに聞いてみると、、ほとんどの記者が「お酒を今までに飲んだことがある」と答え、「場所は家やバーなどで」だったという。飲酒年齢について聞いた時、ロンドン局のボランティアスタッフ( 21 )は、「自己管理できるなら 18 歳は適切な年齢だと思う」と答えた。また「 18 歳未満の記者にバーでお酒を飲んだ時に、年齢を聞かれたか」を聞いたところ、「全く聞かれなかった」とフォイル局の女性記者( 18 )は答えた。

 飲酒について、イギリスではユニークな条件もある。イギリスの飲酒解禁年齢は 18 歳であるが、 16 歳以上であれば、大人同伴ならバーやパブでリンゴ酒やビールを飲むことは、合法とされているのだ。イギリスの義務教育終了年齢が 16 歳であること、そして大学入学年齢が 18 歳であることを考えると、この条件は合理的だと言える。

 喫煙については、イギリスの記者たちに、日本で未成年者の喫煙防止のために導入された「 taspo 」についてどう思うかと聞いた。フォイル局の女性記者( 18 )は「本当にたばこを買いたい人は、知人に頼めるから意味がないと思う」と答え、ロンドン局のボランティアスタッフ( 21 )は「イギリスにも ID カードはあるけど写真がないから使い回しできる。日本の taspo は写真入りだからそれができない。イギリスもそうしたシステムを導入すべきだと思う」と語り、賛成、反対それぞれの意見が聞けた。

イギリスで驚いたことは、たばこの自動販売機がないことだった。「どうしてイギリスには自動販売機がないと思うか」と質問したところ、フォイル局の女性記者( 15 )は「自動販売機でならば、どこでもいつでも買えるから、未成年が買ってしまうので、イギリスにはないと思う」と語った。また、ロンドン局のボランティアスタッフ( 21 )は「法律で公共の場所での喫煙は禁止されているから、(買っても吸えないため)イギリスにはないと思う」と答えた。

 選挙権については、「あなたは選挙に行きましたか」と聞いたところ、ロンドン局のボランティアスタッフ( 21 )は「自分の税金がどう使われているのか気になるから、選挙に行った」と答えた。またベルファスト局の記者たち 12 歳~ 17 歳に聞くと全員が「 18 歳になったら行く」と言った。調べてみると、 イギリス 2010 年総選挙の投票率は 65 %、日本 2009 年衆議院議員総選挙は 69.6 %と日本の方が高かった。しかし、年齢層別の統計では、 30 歳以下年齢層投票率は日本では 33 %、イギリスでは 52 %だった(ダイヤモンド社ビジネス情報サイトによる)。若者の選挙に対する関心は、イギリスの方が日本よりはるかに高いことがわかった。

今回の取材を通じ、飲酒・喫煙・選挙権について、両国の制度や、若者の意識の違いを知ることができた。

喫煙については、イギリスは、国が制定した法律により、年齢にかかわらず公共の場での喫煙を禁止し、根本的な部分で規制をかけているのに対し、日本は、公共の場での禁煙は法制化せず、末端の自動販売機にだけ未成年に対して規制をかけている。実際に未成年者の禁煙を進めるのであれば、日本の今のやり方でいいのだろうか。

また選挙に関して、私は、自分が働いて収めた税金の使い方を決める人を選ぶ権利が、働いている人にはあると思った。日本では 20 歳以上でも働かずに親の仕送りなどで暮らしている人がたくさんいる。それに対し、中学校を卒業してすぐ、就職して働いている人も少なくないが、この人たちは選挙権がない。最近、選挙権の年齢の引き下げがとりただされているが、 18 歳に一律引き下げではなく、働いている人には選挙権が与えられ、働いていない人には選挙権が必要か考えてみることも大切かもしれないと考えるようになった。

日本でも参政権運動などを経て、今は 20 歳(成人年齢)になると考える間もなく、男女とも選挙権が与えられる。権利には責任が伴うが、新成人の大半は選挙にもいかず、その責任を果たしているとは言えない。しかし飲酒、喫煙だけは享受しているようにも見える。一方イギリスの若者は 18 歳で選挙権が得られる以前から、投票や政治に興味を持ち、与えられる権利に伴う責任についても考えていると感じた。

「大人になること」つまり成人年齢に達するということは、自分の行動や言動に責任を持ち、与えられた権利に対して義務や責任を果たしていくことなのではないだろうか。その点で、イギリスの若者は「大人になること」についてよく考えていると言えると思えるが、日本の若者はもう一度よく考え、行動していく必要があるのではないだろうか。

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