2015/08/26                   松本 哉人(16)

 最近、テレビの番組を見ていると、地域に根差した奇抜で画期的な取り組みをする学校がしばしば特集されている。これらは地域の活性化のために児童生徒が一生懸命考えることや、その取り組み、それらのもたらすメリットが評価されているのである。そんな中こうした活動を支援する政府の制度が昨年度から始まった。グローバルリーダーの育成を目的に指定校に国の委託費を出す、スーパーグローバルハイスクール(SGH)制度について、その意義と実態を文部科学省と、渋谷教育学園渋谷中学高等学校(渋渋)、青山学院高等部(青学)の2つの指定校に取材した。

青山学院取材

 そもそもSGHとは何のためにつくられたのか。文部科学省初等中等教育局国際教育課の矢田裕美計画指導係長は、「グローバルな社会課題を発見・解決し、様々な国際舞台で活躍できる人材を輩出すること、例えば、グローバル社会に出て改革を起こし、新しいマーケットを開いたり、社会に対してインパクトを与えられる人材等も輩出することも一つの例だ」と語る。実際には、学校が5年間の構想調書を提出し、文部科学省側による専門家によって審査が行われ、選ばれた学校がスーパーグローバルハイスクールに指定される。そして指定された学校は、毎年度計画書を提出し、その内容に応じた予算が学校に配分され、それをもとに学校は取り組みを進める。取り組みは、毎年度に出す報告書や各学校の示す成果物などを介して把握される。しかし一方で、スーパーグローバルハイスクール事業は、まだ2年目を迎えたばかりであり、取組がよくなるように改善を図って行きたいとも語っていた。

青山学院高等部の藤井徹也国際交流委員

 では、指定された学校ではどのように制度を利用しているのだろうか。今回取材した渋谷教育学園渋谷中学高等学校の北原隆志SGH委員副委員長と、青山学院高等部の藤井徹也国際交流委員はそろって、SGHに指定されたことの効果のひとつは様々なことを始めるきっかけになったことだったという。北原先生は、「何年も前から少しずつ進めていた教科連携(教科間の授業テーマの共有)が学校を挙げて本格的にスタートしたのは、昨年度、SGHに選ばれてからでした」と話す。渋渋は建学の精神の中にグローバルリーダーの育成が挙げられており、元々SGHの目標に近い取り組みをしていた。昨年度からはその取り組みをSGHの補助によってより充実させることができたという。例えば、英語で広島についてのブローシャーを作成し、アメリカの提携高校で世界史の教材として使ってもらう取り組みはもともとあったそうだが、SGHへの参加によって、選ばれた生徒数名が現地に渡航できるようになった。同様に今年度にSGHに指定されたばかりの青学では新しい学内の交流の場を開設しようとしている。インターネットを使用することでSGH指定期間が終わったのちも活用できるシステムにしていく予定だと藤井先生は語った。青学では学外からボランティアなどに携わる人を招いて講演を聞くことで青学のキリスト教精神に繋がる取り組みにしているという。

 それぞれの学校が企画を出すというSGH独特の方法ゆえに、活動の多様さを感じさせられる部分もあった。それは渋渋と青学の間にある校風の違いである。渋渋は、教科連携を実現させ、SGHを完全に授業に取り込んだ。こうしてグローバルリーダーの育成を、授業を通して推進していた。他方、青学においては自由な校風の特徴を生かし、イベントの内容や提案、参加の有無も生徒側が決める想定で組まれていた。そのため、SGHのプロジェクトでは放課後の講演など授業外のイベントが多かった。

 グローバルリーダーを定義するのは難しく、学校によってさまざまなとらえ方があるが、それゆえに地域や校風に合わせた取り組みがそれぞれ行われているのだと思う。生徒としても、単純な勉強以上に自分たちで考えて取り組むことのできるプロジェクトは楽しい上に学習しやすいのではないだろうか。SGHが、より多くの学校がそういった取り組みを始めるきっかけになればいい。

By CEJ

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