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カンボジアでの偉業を成し遂げたクリッシャー氏

バーナード・クリッシャー氏への取材

青野 ななみ(18)
2011年3月、第2回カンボジア取材旅行に記者の一人として参加し、児童労働や児童買春問題に関わるNGOを取材した。児童問題は貧困問題の解決なくしては改善されないことを知った記者は、実際に貧困児童のためにカンボジア全土で数々の事業を展開しているバーナード・クリシャー氏(80)に成功の鍵や学生が学ぶべきことを取材した。
    
 「いかに女子の就学率を高め、学校に通い続けるようにするか」このミッションに立ち向かっているのが元「ニューズウィーク」アジア局長のバーナード?クリッシャー氏である。カンボジアにおけるポルポト政権の大虐殺後、1991年パリ和平条約協定が締結され、北京より帰国したシアヌーク殿下(元国王・国家元首)からの要請を受け、クリッシャー氏は国の復興・再建に協力することを決める。

 まず1993年に非営利団体「ジャパン・リリーフ・フォー・カンボジア」を日本に、「アメリカン・アソシエーション・フォー・カンボジア」を米国に設立し、両国で寄付や助成金を募り、世界銀行やアジア開発銀行からの資金を得て、カンボジアの貧しい農村に現在までに500以上もの学校を設立してきた。ジャーナリストだったクリッシャー氏は、同年カンボジアで初めての日刊英字新聞社「カンボジア・デイリー」を設立した。1996年には貧しい人に無償の治療を提供するシアヌーク病院「ホープ・センター」を創設し、2001年、国際的な慈善活動を称えて贈られるグライツマン賞を受賞した。

 「カンボジア・デイリー」によると、カンボジアでは半数以上の家庭が一日2ドル以下で生活し、未だに多くの数の子ども達が最悪の労働環境で働いているそうだ。このような子ども達を救うには、教育の普及こそが最も重要だとクリッシャー氏はいう。教育を受けることができれば、仕事に就くことができる。また、学校に行くことで同世代の子ども達と交流することができるし、保健授業を通してエイズについて学ぶこともできるというメリットもある。

 クリッシャー氏の数々の事業の一つに「Girls be Ambitious(少女よ、大志を抱け)」がある。途上国の貧しい少女を児童買春の被害者にさせないために最も効果的なアプローチは、そもそも児童買春されないようにすること。つまり、学校に通い続けられるようにし、教育を受けること。この事業は、そのような女子の就学率を高めるため、一ヶ月間毎日学校に通うことができたら、その家庭に毎月10米ドルを提供するというものだ。この方法は効果をあげ、メキシコなどでも似たような方法が始まったという。

 この行動力はどこから出てくるのだろうか。カンボジアを始め、多くの途上国では事業を実行する上で許認可をもらう役所に賄賂を払わないと進めていくことができないといわれている。しかし、クリッシャー氏は一度も払ったことがない。「当初賄賂を求められた際に、私はあなたたちの国を助けているのだから、賄賂を払わなければいけないのであれば、援助はしない」と言い切ったそうだ。「私には何も不可能なことはない。私は絶対に諦めない」という言葉には、ここまで様々な実績を残してきたからこその重みと説得力があった。

 1960年代にインドネシアのスカルノ大統領に「ニューズウィーク」東京特派員として取材をし、気に入られた。その後ジャカルタへ行った際にカンボジアのシアヌーク殿下を紹介された。シアヌーク殿下から要請された復興事業を始める際には、信頼できる現地スタッフを紹介されたという。また、スタッフには無料の医療を受けられるなどのサポートをしっかりしている。

 スタッフには教えることが多くあるが、そこで課題となるのは忠誠心だそうだ。カンボジア人は忠誠心を知らず、アンコールワットのフレスコ画に描かれている残酷な絵やポルポトの大虐殺のように、残酷な面もあるそうだ。常に嫉妬心を抱いている。些細なことでも大きな問題になってしまうため、クリッシャー氏は些細な問題と重大な問題を区別することを教えているという。

クリッシャー氏と記者

 では、カンボジアのような国で貧しい児童への支援活動をしたいと考える学生は何を学ぶべきであろうか。答えは「心理学、カウンセリング、社会学などを学ぶこと。また日本でも同じように児童買春被害者の支援をしている組織の中で働き、問題についてどのように対処しているのかを学ぶこと。そして何よりも大切なのは、机上の勉学だけでなく現地に行って経験をすることだ」とクリッシャー氏は強調する。そのような経験を積んでから、国際的に活動することができるのではないか、とも言われた。   新聞社、病院、学校、そして様々な大偉業を成し遂げた裏には、クリッシャー氏の、打たれ強い諦めない不屈の精神があった。

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