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座談会

『13歳のハローワーク』を読んで13歳が考えたこと
出席者:川口洋平(13歳)、島田大河(12歳)、藤原沙来(14歳)、河村光(14歳) 司会:秋津文美(16歳)
2004/01/18

 作家の村上龍さんを中心にして作られた『13歳のハローワーク』は、発売後すぐにベストセラーとなった。13歳の子どもに限らず、広く支持を受けている。一方で、この本に対するいくつかの批判もあるようだ。では「13歳」あるいはその年代の子ども達は、この本をいったいどのように受け止めているのだろうか? CEの中学生記者達が話し合った。

『13歳のハローワーク』は発見がいっぱいで楽しい!
文美:みんな『13歳のハローワーク』をなぜ読もうと思ったんですか?
洋平:自分の将来について、そろそろ考えなきゃいけない時期だと思ったからです。
文美:自分から読んだんですか?
洋平:自分から読みました。
大河:お父さんが買って来てくれたので少し読んでみたら、なかなか面白かったので読みました。
沙来:読んだのは、このラウンドテーブルをやるためだったんですが、読んでよかったなってすごく思いました。自分の将来に夢が何個かあるけれど、さらに夢を広げてくれたいい本だと思いました。
光:私もこのラウンドテーブルがあるから読みました。大河くんからメールをもらうまでは知りませんでした。読んだら、けっこう面白かったです。
文美:みんなけっこう面白かったって言ってるけれど、読んで役に立った?
洋平:とっても役に立って、自分の考えというか、見方が広がりました。
文美:これまでにもこういう職業説明みたいな本は、図書館とかにもいっぱいあったと思うんですが、この本は違ったのかな?
洋平:この本は、他のに比べて書かれている職業の種類が一番多かったと思います。しかも単に多いだけじゃなくて、ひとつひとつの職業について細かく書いてあったんで、とてもいいと思いました。
大河:この本がなぜいいかというのは、やっぱり「13歳の」っていってるように中学校1?2年生向けに書かれているっていうのがはっきりしていて、しかもなんでこういう本を出したかっていう理由もはっきりしてるから、読みやすい。
沙来:この本のいいところは、他の本に比べて(職種が)たくさん書いてあるっていうことですが、今やりたいことがある人でも、他にもこういう面白いことがあるんだっていう発見ができるし、今夢がない人にとっては見つけられる、すごい大切な本だと思います。
光:この本を見たら、今まで自分が知らなかったり、内容もよくわからなかったような職業が詳しく書いてありました。別にその職業になりたいと思わなくても、見てて楽しいし、それに自分が今好きなことをどういうふうに活用できるかとかがわかるので、参考にいいと思います。


「夢」があると今を頑張れる
文美:ひとつ気になったのが、自分から率先して読んだ川口くんだけが、将来具体的になりたいものはないことなんだけど。やっぱりないから読むのかな。
洋平:ないから読みました。探すために。夢っていうか、なりたいものを探すためにこの本を読んでみました。 
文美:将来何になるか、職業という「夢」はやっぱり欲しいですか? それは必要ですか?
洋平:必要だと思う。やっぱり目標がないと、生きててもつまらなかったり、いまいち勉強がちゃんとできなかったりするので、目標を持つことが大切なんじゃないかなと思います。
文美:目標があるとやっぱり違いますか?
大河:それはわからないけど、今、たとえば自分のなりたい職業っていうのをなくしたら、なんか面白くなくなるかもしれない。やっぱりなりたいものがあるから、今こうしている自分っていうのもたぶんあると思う。
文美:具体的に努力をしている?
大河:具体的にはあまりないけど、やっぱり目標があるとないとでは違うんじゃないかな。
文美:でも、その考えている、なりたいものっていうのはまだ夢なんだよね。夢っていうか、あまり現実味はない。でももうあと10年したら、みんなはたぶん何かになってるんだよね。
大河:うん。


13歳で職業を考えるのは現実的か、非現実的か?
光:私たちは中学生で12歳から14歳だけど、今それぞれに好きなことがあって、自分が「なりたいな」みたいなそういう夢があるけど、この『13歳のハローワーク』っていう本には、「これが好きな人はこれが向いてる」と断定しているというか、そういう決めつけみたいなものがけっこうあると思う。例えばスポーツが好きな人はスポーツ選手になればいい、というようなことが書いてあるけれど、本当にそうなのかなって思うところもあります。中には「この本を見たから自分はこれになるんだ」みたいに、自分の中で確定しちゃう子が絶対いると思うんですよ。参考程度に見ればけっこう面白い本かもしれないけど。
沙来:確定しちゃうのは私もいけないと思うけど、将来これになりたいっていう目標が見つかれば、これからもその得意なことを伸ばすことができると思うし、他にやりたいことがあったら、今度からこれに挑戦してみようとか、新しい世界が見えてきて、視野が広がると思います。この本は、今自分がすごい夢中になっていることが将来何に役立つのか、将来にどのようにつながるのかというのがわからない子が、どんな職業があるか知って、将来のために目標を持つことができる本だと思います。13歳っていうのは、ちょうどいろいろ将来の夢とかを考える時期だと思うんですけど、(この本は)とても大切だなと思います。
文美:夢中になっていることが将来につながるっていうのは、趣味とかに終わらずにってことかな? でも、その「好きなことは向いている」っていうのには、決めつけもちょっとあるということですか?
光:そうだと思います。13歳っていうと中学1年生ですよね。受験をした人は受験が終わってこれから遊ぶぞって思ってる時かもしれないし、受験しなかった人も部活を一生懸命やりたいとか、思う時かもしれない。中学校生活を楽しくやりたいと思う、そういう時に、自分は将来これになりたいと思うことはいいことだと思うけど、それになるためにこういう勉強をする、といったことは、13歳で考えるのかなって思います。
文美:まだ早い?
光:考えてる人はいるかもしれないけど、なんかすごく現実を突きつけられるって思っちゃう子もいると思います。
大河: 13歳の人っていっても日本だけでも何百万人もいて、今やりたいことをやってる人もいれば、将来のことを考えてる人もいる。そういう人すべてに対して好きなことを職業にしてみませんかって言っても、実感のわかない人もいるわけだから、13歳にこの本をあげますっていうのはどうかと思う。
洋平13歳っていうのは、自分がなりたいものがあった時に、この頃から努力をすればどんな職業にも就ける時期だと思うんですよ。だからある意味13歳っていう時期を大切にしないと、後で後悔することになるんじゃないかなと思います。
文美:みんなはたぶん高校や大学にも行くと思うから、就職はけっこう先だよね。2年後にはもう働けるけど、みんなやっぱり職業はちょっと遠いですか?
光:2年後に働ける年になるかもしれないけれど、私としては高校に行くと思ってるから、仕事に就ける歳になるって言われても「ふーん」で終わっちゃうと思います。

好きでしょうがないことを職業にできるか?
文美:この本の帯でも言っていますが、好きで好きでしょうがないことを職業としてやっていけると思いますか?
大河:好きで好きでしょうがないことを職業としてやっていける人っていうのは少ない、半分もいないとは思います。でも好きで好きでしょうがないことが実際に職業となれば、人生がすごい充実したものになるだろうから、好きで好きでしょうがないことを職業としてやっていきたいというのは悪いことではないと思う。
洋平:好きならどんな職業にもなれると思うし、自分が嫌いならその職業になってもやっぱりつまらないと思います。
沙来:好きで好きでしょうがないことを職業としてやれる人は少ないと思うんですけど、この本は、その職業になれなかった人に対して、他の職業も探してみれば?っていう励ましにもなるのじゃないかと思います。今、別の職業についている人から、明るい道が開けてるからきっとあなたにもできるっていう、そういう励ましになる。なれた人にとっては自分も頑張ればできるんだってそういう励みになるし、なれなかった人にも励みになる、とても大切な存在の本だと思います。
光:好きでしょうがないことを職業にしたとしても苦労はあると思うけれど、でも自分の好きなことだからやっていけると思うし、頑張れると思います。逆にもし自分が別にそんなに好きじゃないことを仕事にして、すごい苦労するはめになったとしたら、やる気がなくなると思う。そういうことを考えると、やっぱり好きでしょうがないことを仕事にできたら、それはその人にとってすごくいいと思います。
文美:みんながこういう仕事に就きたいと考える時の動機はなんですか? やっぱり好きだからですか? 憧れというか……。
大河:僕は、好きっていうのとはちょっと違うかもしれないけど、今そういう職業に就いてる人を見て、憧れて、それになってみたいって思っています。小学生低学年の頃だったら、テレビで見たようなかっこいい職業か、それとも普通のサラリーマンか、というふうにしか(職業が)見えないと思うんですよ。それが、だんだん視野が広がってきたのが13歳であるのかもしれない。その13歳の人にとって、「普通のサラリーマン」ていうのは仕事ではいったい何をしているんだろうって話になる。職業っていうのは何百種類もあるとわかるのが13歳の頃だと思うんですよ。
文美:いっぱいあるから、好きなだけじゃ決めきれない?
大河:好きというだけで、その職業に就くっていうのは違うんじゃないか、将来の仕事に対してそういうふうに、いろいろ考えられるようになるのが13歳だと村上龍さんは言いたいんだと思う。
文美:大河くんは具体的になりたいものがあるって言ってたけど、それを決めたのは働いてる人に憧れたから?
大河:はい。
沙来:私は何か伝える裏方の方の仕事に就きたいんですけど、憧れとかじゃなくて、やってたら楽しいだろうなと、そういう単純な気持ちで将来の夢というのを今決めちゃってます。でもやったら楽しいだろうなって思うことで、今、頑張ることができるし、夢に向かって今何ができるだろうかって逆に考えることができるし、憧れじゃないことによって自分なりの目標に向かってやれることが見つかったりすると思います。
光:私は、例えばOLみたいに、上の方の人から言われてコピーとったり、パソコンに入力したりするのはいやだなって思っています。私も自分が好きだからこういうのになりたいという夢が、今あります。
洋平:小さい頃に憧れていても、夢とかあっても、ちょうどこの時期に現実というのが見えてきて、それでその夢をあきらめることもあると思うんですけど、やっぱりやりたければどんなにつらいことでもやっていけるんじゃないかな、みたいに思っています。だからこの時点で、簡単に夢をあきらめちゃいけないんじゃないかなと思います。


大切なのは夢を持ち続けること、自分次第だということ
文美:変なことを聞くようですが、自分が大人になった時、未来は絶対明るいと思いますか?
光:すごく現実的なことを言ってしまうと、税金の問題とか、環境問題とかもあるし、私たちが次の環境問題を解決しなくちゃいけないのかもしれないし、そういうことを考えると決して明るくはないと思うんです。でも自分の好きなことを職業にするために頑張ってる人がいるなら、その人にとっては未来は楽しいことだと思うし、そうなれたら明るくなると思います。
文美:そうだよね。自分の仕事が好きで打ち込めたら、たぶん日本は明るいなと思うんですが。
沙来:私は暗いか明るいかじゃなくて、明るくしたいって思ってます。暗い中で自分がやっていくのもいやだし、自分が明るくしていくっていうのも無理だけど、明るくして自分が楽しくなるように、自分だけじゃなくてみんなも楽しくなるように、導いていけたらなって思います。
大河:日本の将来っていうのは今は全くわからない状況にあると思います。例えば、イラクに攻撃されたりしたら、自分が野球を好きでも野球やってる場合ではなくなるし、好きでしょうがないことを職業としてやっていけるっていうのはすごく難しいことだと思います。でも、野球をやりたかったけど物を作る仕事になってしまったっていう人が、結果的にすごい物を作っちゃったりするかもしれないし、一回好きで好きでしょうがないことが職業になっても、その後がどうなるかっていうのは全くわからないわけだから、夢をあきらめないっていうのは何歳になっても大事なことだと思う。野球がやれなくてもサッカーがやれなくても飛行機で世界中を飛び回れなくても、その中で明るい未来っていうのを作っていくことは十分可能だと思う。
洋平:スケールが大きなところで言えば、この先暗いのかなとも思うんですけど、ただ自分がちゃんとやりたいことができてれば、自分にとって明るい未来になるんじゃないかと思います。
文美:夢をあきらめないためには夢を持ち続けること、自分次第ということかな?
洋平:自分次第です。
文美:みんなそうですね。