イヤホンの使い方
2014/05/01              松本哉人(14)

 街を歩いていると必ずと言っていいほど使用している人を見かけるイヤホン。しかし、多くの人はその危険性を意識しつつも正しい知識を持っていない。イヤホンの危険性の正しい理解のため、専門医に話を聞き、小学生から高校生までの記者6人で話し合った。

栃木県那須塩原の国際医療福祉大学病院の耳鼻咽喉科部長中川雅文教授を3月19日に訪ねた。中川先生によると、まず難聴とは、1日の耳の許容量を超える音量を聞きつづけることによって高い周波数の音が聞こえなくなっていくことである。難聴は段階的に進んでいき、高い周波数の音から聞こえなくなっていく。そして難聴は現在の医学では治らない。現在私たちの身の回りで行われている聴力検査では20歳の聴力を基準としているため、20歳未満の若者が仮にその年齢の聴力の基準値以下であったとしても発見できないという。このため10代の難聴は感じている人も少ない。

次になぜイヤホンは危険であるのか。中川先生はイヤホンをはめることによって耳をふさぐことになり、耳の空洞部分の容積が小さくなってしまうと話す。耳の空洞が狭くなると、反響する音の範囲が普段聞きなれない高い周波数の音に限定されてしまう。そうすると、高い音をもっとよく聞こうと音量を上げてしまい、難聴をひきおこす。難聴になると高い音がさらに聞き取りにくくなるのでもっと音量を上げてしまい難聴が悪化していく。

さらに周囲の環境も大事だという。街中や乗り物の中、そうでなくても周りに音のある場所にいる人がイヤホンで音楽を聴くと、音楽以外に周りの音も耳に入ってしまう。そうすると周りの音よりも高い音量で音楽を流さなければ音楽を聞くことができない。現に、インタビュー中に換気扇を止めたところ、止める前より先生の声が楽に、明瞭に聞こえるようになった。

では、イヤホンをどのように使えば安全に音楽を楽しむことができるのだろうか。中川先生は、「基本的には僕らの考え方は、イヤホンはやめましょう。ヘッドホンにしましょう」だと話す。決してヘッドホンを推奨するわけではないが、より防音性の高いヘッドホンのほうがまだいいそうだ。そしてなるべく周りの音が少ない環境で聞くべきだという。ヘッドホンが嫌だと言う人に対してはノイズキャンセルイヤホンというものも紹介していた。これは、周りの音を打ち消す音を出すイヤホンで、普通のイヤホンより周りの音が聞こえないが普通のイヤホンよりも値段が高い。また35歳未満の若者なら耳の許容量を超える音を聞いても48時間耳を休ませることによって聴力を回復する力があるため、大きな音を聞いた後は適度に耳を休ませることも大事だそうだ。

ではこのような危険性を若者はどう認識しているのか。また、先生の話す安全な使い方はどの程度実践可能なのか。小学生から高校生までの記者6人で話し合った。

最初に音楽をどの程度聴いているか尋ねると全員が日常で音楽を聴いていると答えた。また、聴いているのは歩きや交通機関の中などの移動中、勉強中など家に一人でいるときで、多い人は一日5時間以上も聴いているという。そこで、中川先生の話を披露したところ、ほぼ全員が少しは分かってはいたけれども大きな危機感はなく、知ってしまってもイヤホンの使用をやめることはないという返答だった。しかし、音量を下げたり聴く時間の長さを考え直してみたりとイヤホンの使い方を変える気にはなったようだ。また、ノイズキャンセルイヤホンについて、移動中に音楽を聴いている記者は、もし買えるとしても周りの音が聞こえなくなると困るので買わないと答えた。

若者にとって、イヤホンはもはや生活に深くつながる重要なツールのひとつといえるが、まだまだ多くの人が危険な使い方を続けている。しかも、知らないうちに失われた聴力は取り戻すことができない。まずは一人ひとりが正しい知識をもち、人に伝えていくことが大切である。


イヤホンの危険性  
2014/05/01               小泉璃奈(16)

 道を歩いている時や電車内で周りを見渡すと多くの人の耳にはイヤホンが装着されている。どこへでも自分の好きな音楽を持ち歩くことが容易なイヤホンは私たち、とくに若者の生活に欠かせないものとなっている。一方で常に音楽を聴くことが聴覚障害を引き起こす危険性はないのか不安でもある。国際医療福祉大学病院耳鼻咽喉科部長の中川雅文氏に取材をした。

中川雅文先生への取材

 中川先生によると若者を対象にした聴力検査では聴覚障害と判断できないこともあるそうだ。難聴は高い周波数(Hz)から聞こえなくなる。しかし今一般に行われている聴力検査では20歳の聴力を基準とし、125~8000Hzの周波数がどのくらい聞こえるかを検査している。ところが私たち10代は50~20000Hzの音を聞く力がある。つまりもし高い周波数が聞こえなくなっていても検査ではわからないということになる。検査の結果正常だと診断されても気づかないうちに、難聴の危険にさらされていることもあり得るのだ。さらに、例えば検査で難聴と診断されなかったので今まで通りイヤホンを使用しても問題はないのかというと、中川先生は、金属疲労がある段階になるとその金属が折れてしまうように、耳もたくさん音を聞いていると、ある時を境に難聴になってしまうと警告する。つまり、耳がどんなに過酷な状況であっても自分達が自覚することは難しいということだ。

 音というのは距離が半分になるとその音の大きさは倍になるが、イヤホンを装着することは耳の空洞の容積が狭くなるので耳にはさらに大きな負担になる。音量が大きいほど耳への負担が大きくなるのにもかかわらず、なぜイヤホンで聴くときボリュームをあげてしまうだろうか。中川先生によると私たちの体は普段125Hz以下の重低音を体の振動を通して聴いている。例えばライブや太鼓の音だが。イヤホンからでは重低音を流すことが難しいため、私たちはついその音を求めてボリュームをどんどんあげてしまっているのだそうだ。

 それではどのようにイヤホンを使用すれば耳に負担をかけずにすむのか。中川先生によると人は、85デシベル(山手線の走行音に相当)の音を8時間、91デシベル(新幹線に相当)の音を4時間聴くと耳の限度を超えてしまう。だが48時間耳を休めれば耳にかかった負担を軽減する力が私たちにはあるそうだ。あるいはイヤホンでなくヘッドホンを使用することも耳への負担軽減になる。ヘッドホンはイヤホンに比べて周りの余分な音を防ぐことができる。そのためボリュームを過度にあげなくてもよい。どうしてもイヤホンを使う場合は静かな環境で適度な時間聴けば負担を少なくすることができるそうだ。

 実際に日頃イヤホンを使用している10代の若者にこの取材結果をもとに話を聞いた。
まずイヤホンの危険性について意識したことがあるか、という問いに対して「なんとなく耳に悪いような気はしていたが、そこまで意識したことがない」という答えが多かった。そこで取材して将来難聴になるリスクが高いこと、形状はイヤホンよりもヘッドホンの方が耳への負担が少ないことが分かったと伝えた上で、これからはヘッドホンを使用しようと思うかと尋ねた。すると、「外では大きくて邪魔になるからイヤホンを使用し続ける」とする人がほとんどだった。一方「家ではヘッドホンを使用することもある」と答える人もいた。また、イヤホンの使用を制限しようと思うかという問いには「生活の一部になっているから今まで通り使用する」「制限するべきとは思うけどこのまま使用すると思う」という声が多かった。若者のイヤホンに対する危険意識が低いことが明らかになった。 自分の好きな音楽を外でも聴けるイヤホンは私たちにとって必要不可欠なものになっている。便利さ手軽さを追求した結果私たちがイヤホンに依存してしまうようになった。イヤホンとうまく付き合うために危険性の認識をもっと広めていく必要があるだろう。


イヤホン使用の危険性
2014/05/01                近藤さくら(16)

 最近、街中や電車・バスの中でイヤホンやヘッドホンなどのオーディオ機器を使用している人がとても多い。周りの人に迷惑をかけず、自分だけで音楽を楽しめる利点はあるが難聴の危険性はないのだろうか。国際医療福祉大学病院耳鼻咽喉科の中川雅文先生にインタビューした。

まず難聴とはどのようなものなのか、中川先生によれば、私たちの耳は正常な場合50Hz~20000Hzまで聞こえるという。難聴の症状がある人はこの20000Hzという高音域から徐々に聞こえなくなる。それもたくさんの音を聞いていて、それが積み重なってある日金属疲労でポキッと折れるように症状がでるという。つまり難聴は普段会話などで使用する高さの音域よりも高い音から聞こえなくなっていくので難聴であると自覚するのはとても難しいと言える。学校や病院で聴力検査を行う際に検査する範囲は125Hz~8000Hzなので、難聴の症状があっても検査ではわからないことになる。これらの理由から具体的にどれほど多くの難聴患者がいるのかは把握できていないが、実際に増えていると思うと中川先生は語った。

イヤホン使用による難聴はもう少し特殊だ。中川先生の説明によれば、耳の中にイヤホンをいれると鼓膜までの空洞がせまくなり、高い音が耳の中よく響くようになる。イヤホンを使用しないときよりも耳への負担が大きくなり、その状態が長く続くと耳が金属疲労のような状態になる。難聴の症状がでて高音が聞こえづらくなるので高い音聞きたさにさらにボリュームを上げてしまう。またイヤホンでは低い音は出せないのに、その音を聞きたいと思うがゆえにまたボリュームを上げてしまう。これらの悪循環で難聴の症状が進んでいってしまうという。

こうした危険性を回避するためにはイヤホンをどのように使用していくべきなのか、中川先生はこう指摘する。

まず耳が一日に聞く音の許容量を超えないこと。許容量は85デシベル(db)、つまり山の手線内の音の大きさで一日8時間、95db(新幹線の自由席音)で一日4時間である。一日のうちにこれほど長い時間聞かないかもしれないが、許容時間は音量が上がるとともに反比例していくので2~3時間ほどで許容量を超えてしまいかねない。つまり何か聞くときはできるだけ静かな場所で優しい音で聞いて耳に負担をあまりかけないようにすることがポイントである。その際ノイズキャンセリング機能があるイヤホンやヘッドホンを使用するとよい。
二つ目は、仮にたくさんの音を聞いてしまったらしっかりと耳を休ませることが重要だ。私達には耳を48時間休ませると元に戻る力が備わっているという。

では難聴になったとして治療法はあるのか。中川先生は「iPS細胞に期待をよせているが、仮にiPS細胞が適応できたとしてもその細胞は音を認識できてもその音がどういう意味を持つのか認識できない。この音がこういう意味であるということをもう一度ふきこまなければいけないので有効な治療法はまだない」と語った。ということは自分で難聴にならないように注意していかなければならない。

チルドレンズエクスプレスの記者6人(小6から高2)に話を聞いたところ、イヤホンの問題点を意識していた人は一人だけだった。私達の世代ではイヤホンを使用しないということは考えられないという。危険性の認識が低いままだと難聴はますます増えてしまう。とくに若い人は医師の指摘にもっと耳を傾けるべき状況であることがわかった。

By CEJ

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