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英国の少年司法システム ~日本との違い~

英国の少年司法システム ~日本との違い~
2008/12/06                原 衣織( 16 )

 罪を犯した時は刑罰を受けるという刑法上の責任を、刑事責任という。日本では最近、この刑事責任年齢に合わせて刑事処分可能年齢を 14 歳に引き下げたことが話題を 呼 んだが、この責任を 10 歳から負うとされている国がある。英国だ。

英国の少年司法システムはどのようになっているのか。これについて調べるため、英国 法務省の少年司法関係部局と児童・学校・家庭省の少年司法関係部局を統合した合同少年司法委員会の Simon Emerson 氏にEメールを通して質問に答えてもらった 。また、 少年司法システムの運営、主務大臣への助言等を職務とする非政府公益機関である少年司法委員会の広報責任者 Claire Forbes 氏に、「日英記者交流事業」で訪英した際に話を聞いた。

10 歳と い う年齢は、日本以外の他の諸外国と比べても低いと言える。 10 歳の少年が大人の犯罪者と同じような刑を受けることがあるのか。国として少年犯罪に対し厳罰の姿勢をとっているということなのか。

Emerson 氏は 10 歳という年齢 設定 のメリットを、「早期の介入により犯罪を防ぎ、若者に自分自身の犯罪行為に対する責任を育てることができる」ことだと説明する。 Forbes 氏も 10 ~ 11 歳を「犯罪的行動に引きずり込まれ始める年齢」だとし、「早めに当局が介入することで犯罪の方向に進むのを防止できる」と述べる。そして、 10 歳で刑事責任を持つということは、 「 10 歳から大人の犯罪者と同じように扱われることを意味するものではない 」 と 言う 。施設収容を命じる「収容 およ び訓練命令」の対象も 12 歳以上であり、 10 歳、 11 歳の少年が施設に収容されることはない。

12 歳以上の少年が「収容 およ び訓練命令」を受け取ると、主に年齢や居住地によって「少年犯罪者施設( Young offender institution )」「子ども収容施設( Secure children’s home )」「収容訓練施設( Secure training centre )」の 3 種類の施設のうちいずれか一つに収容される。これらの施設は日本の少年院に相当するもので、義務教育を終えた年長の少年向けの「少年犯罪者施設」では職業教育を実施し、年少者向けの「 Secure children’s home 」では 2 人に 1 人の割合でスタッフを配置するなど、それぞれの施設ごとに異なったアプローチによって少年を更生させている。また、全ての施設に週に最低 25 時間の教育が法律で定められており、必要に応じてカウンセリングなどもあるという。

とはいえ、英国では 18 歳以下の施設収容は「最後の手段」であり、実際少年司法委員会の年間統計によると 2005 年から 2006 年の 1 年間で、少年施設への収容命令を受けたのは 21 万人以上の少年犯罪者のうちたったの 3 パーセントだという。では、残りの大多数はどうなるのか。

英国には、施設収容以外の様々な処遇方法が存在する。親に対しカウンセリング授業またはガイダンス授業の受講を要求する「養育命令」や、治安判事裁判所が個々の少年に禁止事項を言い渡す「反社会的行動禁止 命令 」、保護観察官の監督のもと被害者またはコミュニティ全体に賠償を行う「賠償命令」などだ。

そのほかに、 10 歳未満の少年が罪を犯した場合には責任オフィサーが児童を監督する「児童保全命令」や、所定の期間中、午後 9 時~午前 6 時まで所定の地域内の公共の場所への立ち入りを禁ずる「地域児童外出禁止命令」が出され、施設収容ではなく地域内で児童がこれ以上犯罪の方向に進まないよう予防する。

ロンドンYJB取材

そして、地域で少年犯罪の防止や非行少年の更生に従事するのが、少年司法委員会の地域担当部局としてイングランドとウェールズの全ての自治体に配置されている「少年犯罪対策チーム」だ。保護観察官・公的ソーシャルワーカー・警察官などで構成され、少年司法業務の提供の調節や、「少年司法計画」に定められた職務を行っている。このような機関があるからこそ、地域内での少年への働きかけが為 され うるのだ。

先ほど触れた「賠償命令」は、被害者が望む場合は加害者から直接賠償、謝罪を受けることができるという 。 日本ではまだ珍しい方法だが、このように被害者と加害者が直接に接触を持つ 手法として他に、修復的司法がある。こ れは 1998 年の「犯罪・秩序違反防止法」によって英国の少年司法システムに導入された手法で、被害者・加害者・家族などその犯罪に関係する人々が 一堂に会し、 話し合いを行う場を設けることで更正へと繋げるというものだ。加害者である少年には、自分の行為がどういう結果をもたらしたかを理解して被害者に謝る機会を、被害者には、自分の思いを表明する機会を与えることができるという。

今回 、 英国の少年司法システムについて取材を行い、英国が少年犯罪に対して様々なアプローチを行っていることを知った 。 英国の少年司法システムの全てが素晴らしいと言いたいのではない。実際 Forbes 氏は、「統計上、初犯の数は減っているものの再犯は増えており、今最も心配されている」と話す。それに、全く違った社会的背景を持つ英国と日本では少年犯罪の内容や傾向も異なるだろうし、英国のシステムをそのまま日本に導入したからといって効果を現すとも思えない。

しかし、親へのガイダンスやカウンセリングで家庭に働きかけ を行うなど、 日本にも取り入れたらどうだろうかと思うような手法も存在することは確かだ。

Headlinersのロンドン支局で取材

近年多くの先進国が頭を悩ます重大な社会問題である少年犯罪。日本でも、近年少年犯罪が「凶悪化」していると言われ、この数年の間に相次いで少年法の改正が行われるなど、少年司法システムが大きく変化している。処罰や少年院送致などの対象年齢の引き下げや犯罪被害者の配慮だけに留まらず、今後は罪を犯してしまった少年の更生、再犯防止にも今まで以上に熱心に取り組む必要があるだろう。その際、今後各国の様々な取り組みを知ることで見えてくるものもあるのではないだろうか。

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