演奏権と複製権〜複雑な著作権の世界〜
2016/1/17
三好 恵瑠(14歳)
昨年は東京オリンピックのエンブレム問題で著作権がニュースとなった。しかし、学校の生徒の間では毎年文化祭の時期になると自然と話題となってくるものだ。クラス企画でBGMを使うときや、発表に使う音楽など、ことあるごとに先生からは「著作権には気をつけて使え」と注意される。だが中学生では音楽著作権に詳しい生徒はいない。そこで学校活動でもなにかと身近な音楽著作権について一般社団法人日本音楽著作権協会(通称JASRAC)に取材した。
今回取材に応じてくれたのはJASRAC広報部の金口由布子さんだ。まず著作権とは何のためにあるのかという疑問については、「著作物を守るため」と金口さんははっきり言った。時間をかけて作った著作物が守られなければ、著作者たちが何かを作ることをやめ、新しいものが生まれなくなってしまうから著作権は存在するのだという。
音楽著作権は作詞家、作曲家そして音楽出版社が持つ権利である。そこで、文化祭などで著作権のある音楽を使うときに、許可を取らなくてもいい場合と取らなければいけない場合の判断基準は何なのかを聞いた。「著作者の死後50年を経過している場合は権利が消滅しているため自由に使えますが、それ以外の音楽を許可なしで流す場合には3つの条件があります」と金口さんは言う。それは非営利目的の催物である、出演料なし、入場料なし、の3つの条件を満たしている場合だという。だから入場料なしの文化祭で音楽をBGMとして流すことや、発表として演奏したり、歌ったりする場合は許可をとる必要はないということだ。
しかし、一方で「複製権」という権利も意識しなければならない。上記の3つの条件が適用されるのはあくまでも音楽を流す場合だけで、音楽を複製してBGM集を作った場合は複製権がかかわってくるのだ。そもそも音楽著作権には利用形態ごとに細かな権利が決まっている。3つの条件が適用されるのは演奏権であり、録音やコピーの場合にはあてはまらないということだ。
複製権とは音源を録音したりコピーしたりする場合の権利で、演奏権とは違い非営利であっても権利者の許可がいる。しかし例外はある。ウォークマンやipodなどの音楽再生機器に音源を入れる場合は明らかに音源をコピーしているが、個人的に楽しむ目的であれば問題ない。
演奏権と複製権は私たちが音楽を扱う場合に絶対に気をつけなければならない。細かくて複雑なルールだが著作者の権利を守るためには必要なことだ。著作権について、特に複製権の違反については心当たりのある人も少なくないだろう。ただ、これらは著作権に関して一部にすぎない。著作権が守られるからこそ、創作が生まれるという基本の理解が広まることをまず期待したい。
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