VOCALOID™という文化
2014/10/04
坂本 光央(11)
読者の皆さんは、VOCALOID(ボーカロイド)というものを知っているだろうか。歌声の合成技術の一つで、VOCALOID楽曲を作るためのソフトウェアにも使われている。VOCALOIDという名前はVOCALOID小説などで聞いたことがあったり、ニコニコ動画でVOCALOID楽曲の曲名を目にしたことがある、という人もいるかもしれない。
具体的にはどのようなものなのか。VOCALOIDソフト発売元の一つであるクリプトン・フューチャー・メディア株式会社の広報担当 門野 亜由美氏、ニコニコ動画を運営している(株)ドワンゴ戦略的ETC事業部ユーザーマーケティング部クリエイティブプロデューサーの 阿部 大護氏、そしてVOCALOIDを開発したヤマハ株式会社 事業開発部 yamaha+推進室 VOCALOIDプロジェクト リーダー 剣持 秀紀氏に取材した。
そもそもVOCALOIDとは、はじめにも書いたように、ヤマハ株式会社が開発した歌声合成技術、そしてその技術の応用ソフトウェアの総称である。歌声は、実際の歌手の声をもとに作られた「歌声ライブラリ」とよばれる声のデータ―ベースをもとに合成している。この歌声ライブラリを変えることによって「初音ミク」「鏡音リン」などVOCALOIDキャラクターの声で歌わせることができる。さらに歌声ライブラリと、曲を打ち込む専用のVOCALOIDソフトウェアを使って曲を作ることができる。
門野氏によると、初めて日本語の歌声ライブラリ入りのVOCALOIDソフトウェアが発売されたのは2004年、「MEIKO」というソフトウェアだった。その後、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社では「KAITO」「初音ミク」などを発売していったという。このソフトウェアを使った楽曲の中で有名なのは昨年から今年にかけて放映されていたCMで使われた初音ミクの楽曲「千本桜」だろう。
VOCALOIDを作った理由を剣持氏に尋ねると、「いろいろな楽器があり、コンピューターのなかに音源があったりはしたが、歌声だけは実際の歌手を呼ばなければならなかった」からだそうだ。
阿部氏によると、 VOCALOID楽曲がニコニコ動画で流行り始めた時期は、2008年の半ばから2009年にかけてで、当時から初音ミクの楽曲は一番多かったそうだ。 また、現在のVOCALOID楽曲は、J-POPなどのカバー曲はほとんどなく、VOCALOIDのオリジナル曲、またそのカバー(既存曲を歌い手が歌ったものなど)がほとんどだという。
ニコニコ動画でのボーカロイド楽曲の人気ポイントを質問すると、「一つ目は一つの動画を映像も声も全て自分で創ることができること、二つ目はキャラクターの人気で興味を持つ人が増えて、自分たちの思うままに想像して創ることができる二次創作(VOCALOID小説など)の現象が起きたところが人気のポイントだったのではないか」と話す。
剣持氏に「VOCALOIDソフトを使った曲が最近増えてきているが何が魅力なのか」と聞くと、「いくつかあるが、人間の声のようでいて少し機械的なところ、また今までの常識にとらわれないところではないか」という。
VOCALOIDという技術は、これからどのように進化していくのだろうか。剣持氏は「どんどん人間の声に近づけていきたい、完全な人間の声にはならないが、完全な人間の声ではないところがまた新しい表現になるのではないか」と語る。
現在発売されている最新のVOCALOIDソフトはVOCALOID3で、このソフトでは、それ以前にはできなかった伴奏をつけることができるようになった。またiPadなどで楽しむことができる「iVOCALOID」や、自動作曲機能・ボカロデューサーを使った「ボカロネット」というものもある。
「VOCALOID」という一つの新しい文化が、これからどのように躍進するのか、日本や世界の映像と音楽にどのように変化をもたらしていくのかを見守りたい。
※VOCALOID、ボカロネット、ボカロデューサーは、ヤマハ株式会社の登録商標または商標です。 |