ファッション雑誌は付録で売るもの?
2010/09/28
毛利 美穂 (15)
最近、街で同じ鞄をもった女性をよく見かける。その多くは雑誌の付録だ。雑誌に付録をつける出版社の意図は何だろうか? 雑誌に実用性の高い付録をつける宝島社と、専属モデルが高い人気を誇る『 Seventeen 』を出版する集英社の 2 社に取材に行った。
宝島社は雑誌『 mini 』で他企業とコラボした付録のタオルをつけたことをきっかけに、雑誌に付録を取り入れた。現在では宝島社は付録を「ブランドアイテム」と呼び、連載の一部として考えている。
宝島社マーケティング本部広報課課長の桜田圭子氏は「付録をつけることによって、定期的に読まない方もその雑誌を手にするきっかけとなり、読者の幅が広がった」と話す。洋服やバッグなどでも人気の高いブランドとコラボし、編集部が読者にとって魅力的な付録を決めている。さらに、誌面やホームページに付録の使い方の例まで載せることで、読者がより手に取りやすくなっている。
宝島社の雑誌の表紙には日本でもファッションリーダーと呼ばれるモデルや話題のタレントが使われていることが多い。桜田氏は「企画にあったタレントやモデルを起用している。専属モデルに頼ってしまうとそのモデルの人気がなくなったときに一緒に雑誌も人気がなくなってしまうから」という。「専属モデルを使わないぶん、ブランドのイメージなども気にしながら、編集者は、ブランドを魅力的に見せるモデルやタレントを考ている」と続けた。
一方『 Seventeen 』では、人気専属モデルが雑誌の専属から卒業していっても、雑誌の人気にはあまり関係しないという。集英社『 Seventeen 』編集部主任の加藤朋子氏は「専属モデルの卒業は半年ほど前から決まっていて、それまでに次の人気モデルをつくっておく」という。また、『 Seventeen 』には確かに人気モデルがいるが、それぞれのモデルがまめにブログなどを更新するなどして、自分の個性を発揮している。読者の女子高生は更新されたブログなどを見て、モデルたちをより身近に感じるからこそ、『 Seventeen 』のモデルたちには人気があるのかもしれない。
加藤氏も「『 Seventeen 』のモデルは普通の女子高生よりも 0.5 歩だけ先を行っている。日本のファッションリーダーたちよりももっと身近な存在として感じてほしい」と話した。
また、付録については、『 Seventeen 』の場合、ポーチやチャームなどが多く、ブランドもティーン世代に人気の高いもので、大人はあまり使わない。「モバイルサイトなどでアンケートを行って人気の高いブランドを使うようにしている」という。女子中高生に人気の高い雑誌だけに、付録も女子中高生向けに作っているのだ。
今回の取材から、宝島社の『 sweet 』は私たちのファッションをリードすることに、集英社の『 Seventeen 』は読者の意見を反映させて読者と同じ目線で雑誌を作ることに、それぞれ重点を置いているという感を持った。
読者の雑誌選びの基準は多様化してきているが、いずれの雑誌にも共通していたのは、女子中高生のおしゃれに関する憧れの対象が、身近に感じることのできる個性的なモデルたちだということが確かなことだろう。
また今の女子校生向けの雑誌のほとんどには付録というものが付いていて、読者の雑誌選びの大きな要因のひとつとなっている。同じ付録を使っている人が多く見られるようになったのも、以前は「付録は外で使いたくない」という思いだった読者の価値観を出版社が変えていった結果だと言えよう。その結果により、街中で同じ付録のかばんを使う女性達が増えたのだ。
売れずに廃刊になってゆく雑誌が多くなる一方のファッション雑誌の世界で生き残っていくためには、いかに読者の心をつなぎとめておくかが重要だ。そのためにも読者が雑誌を手に取りやすくするため、魅力的な付録を付けていく雑誌は今後また増えていくだろう。
付録がなくてはならない時代?
2010/09/28
谷 彩霞(14)
最近の女子学生がよくブランド物の同じ小物を手にしているのを見る。雑誌の付録だと知った。彼らは付録のために雑誌を買っているのだろうか。渋谷と原宿の周辺で女子学生に取材をした。また、出版社側の狙いは何か。ファッション誌で売り上げが高い『 sweet 』を出版している宝島社と、中高生に人気の高い『 Seventeen 』を出版している集英社に取材をした。
37 人の女子学生に聞いたところ、「付録目当てで雑誌を買う」と答えた人は 10 人だった。一方「選び方が雑誌によって違う」という意見も多かった。愛読している雑誌を買った後にかわいい付録を見つけて、それが付いていた雑誌も買うという人が少なくない。また、付録で雑誌を選んだ場合は雑誌を読まずに捨ててしまい、「付録しか使わない」人も 7 人いた。なお全員が「付録は学校内や近所にお買い物に行く時しか使わない」と答えた。
発行部数が 100 万部を突破した『 sweet 』の宝島社マーケティング本部広報課課長の桜田圭子氏は「 2002 年から不定期的に付録をつけていたところ評判がよく、 2004 年から毎号全誌にブランドとコラボをした付録を付け始めた。付録のブランドアイテムは雑誌の連載の一部として考えている。誌面はもちろん、付録も、読者に喜ばれるものを作れるよう全社で努力している」という。
誌面やホームページでは付録の使い道まで書いている。さらに毎号新しい 100 万人の読者の獲得を目指し、幅広い年齢層に読んでもらうため、多くの人に喜ばれる企画を考えているという。 また「表紙のモデルが専属モデルでは人気が落ちた時に雑誌の売り上げにも影響するため、旬に合ったモデルや女優を採用している」と話す。
中学生や高校生に人気の高い『 Seventeen 』を出版している集英社『 Seventeen 』編集部主任の加藤朋子氏は「不況の中、雑誌会社として勝ち残るために、またブランドの名前を知ってもらうために付録を付け始めた」という。しかし、「ティーンズ誌なので扱っているブランドが他社とは違い、中高生しか持ち歩けないものなので、付録はそこまで重視はしてはいない。付録よりもモデルや特集を重視している」と話す。「 26 人( 2010 年 9 月現在)のモデルを採用し、そのモデルのキャラクターを引き出すことによって読者が自分に合ったモデルを見つけてもらえるようにしている」という。また雑誌は「読者と同じ目線で作り、固定ファンを作る等、読者とのつながりを大事にしている」と話す。
今回の取材を通じて、付録目当てで雑誌を買う人が圧倒的に増えてきていることが分かった。しかし、雑誌を読まずに捨ててしまう人もいるという実態も明らかとなった。とすると、このままいけば、雑誌自体が付録のような存在になってしまうのではないか。付録がなければ買わない雑誌より、誰もが読みたくなるような、中身が充実した雑誌を作ることが、出版社としての使命ではないのだろうか。
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