国民文化祭 やまぐち2006 「やまぐち発 心ときめく文化維新」
子ども夢プロジェクト レポート
― 私達の夢を乗せて
寂しくなった休校・廃校にまた人々の笑顔を、華を咲かせたい
2007/05/03 CE地方記者 藤井沙紀(16歳)
毎年、各都道府県が順に行っている「国民文化祭」。第21回目の開催となる平成18年度の国民文化祭は、本州最南端の都、山口県で壮大に開催された。テーマは、「やまぐち発、心ときめく文化維新」。2006年11月3日〜12日の10日間にかけ、県内各地で文芸祭、美術展、陶芸展、彫刻展、合唱祭、演劇祭、茶会、舞踏祭など、多種多様な文化の祭典が開催され、約145万人の来場者を迎えた。
さて、今回の国民文化祭では山口県が独自に創設した、史上初の取り組みがあった。「子ども夢プロジェクト」である。このプロジェクトは、子ども達の考える夢や、アイデアを実現させようというもの。各グループに別れて、それぞれのプロジェクトに取り組むのだが、その内容は様々。踊りの披露、ものづくり、地域の伝統を学ぶ、合唱、お菓子の家作り、町を花いっぱいにする、紙芝居、里山保育など、幼児から、高校生までの夢、29個が実現された。
今回その中でとりあげたい1つのプロジェクトがある。
少子化の進む中、次々に閉鎖されていく学校。かつて、子ども達の笑顔が溢れ、人々が集まり、賑やかだったその場所をもう一度、「人々の想いでいっぱいにしたい!華を咲かせたい!」そんな女子高生の夢から生まれたプロジェクト、『らぶふみ』である。優しさ溢れる温かなこの夢、どうやって実現させたのだろうか。過疎の場所に、どうやって人々をもう一度呼び込んだのか。
答えは、休校・廃校を、美術館や映画館にすることであった。
美術館では、生徒たちが自身の憧れるアーティストに手紙を書き、協力をお願いし、12名のアーティストの協力を得、その作品を2つの小学校に分けて展示した。作品は全て、廃校美術館ならではのもの。教室全面を使ってアートを作り出したものや、来場者に手を加えてもらって初めて作品が完成するアートもあった。期間中は、「フロッタージュ」という、床や壁などの模様や傷を擦りだす絵画の手法を使い、来場者に校舎に刻み込まれている様々な「想い」を擦りだしてもらった。
映画館では、全国から募った「恋文(ラブレター)」の一つを映画化した。
スタッフたちに話を聞いてみると、「地域の方や、資金援助をしてくれる企業の方など、いろんな人の協力が必要で、大人との交渉は大変だったけど、すごく好意的に力を貸してくれました。たくさんの人の協力でこのプロジェクトを成功させることができ、感謝しています。計画を立て、それを如何に実行していくかということを考えるのは難しかったけれど、とても勉強になりました。また、学校生活の中での失敗は、先生が責任を取ってくれるけど、外ではそうはいかない。社会の厳しさを感じました。」と語る。
また担当の教員は、どのような場面が印象に残っているかという質問に対し、「本当にたくさんありますね。強いて言うなら・・・準備の山場。文化祭開催の1週間前に作品の搬入をしました。そのときアーティストさんと生徒がいろいろ言葉を交わし、協力して会場が出来上がっていくのを見ていると、本当に楽しかったですね。」と、語る。そして最後に、「たくさんの人の力のおかげでこのプロジェクトは成功することができました。本当に、感謝しています。」と、話していた。
たくさんの人々の“想い”によって成功したこのプロジェクト、『らぶふみ』。それは、人間の温かさが無ければ成功し得ないものであった。私は、参加した人々みんなが、活き活きと、楽しそうにプロジェクトに取り組んでいるのを見た。また、帰り際には来場者の表情がとても活き活きとしていた。プロジェクトは、生徒達に学びの場を与え、地域に大きな協力の輪を生み出したこのような機会が増え、私達子どもの意見や力がもっと社会の中で使われるようになって欲しいと、私は思う。
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