The celebration of youth voices(若者の声の祭典)
2014/10/07
松本 哉人(15)
サミットに参加して3日目の昼、僕のグループ7人はオリエンテーションとしてそれぞれが自分のことを発表していた。みんなとちがって英語の得意でない僕はほとんど内容のないような事しか話せず、泣きたくなっていた。
しかし、仲間たちは辛抱強く聞こうとしてくれた。話が止まるたびに「ソーリー」を繰り返していた僕に「英語がうまくないからといって否定することはしないし、だから謝る必要もない」と励ましてくれた。この言葉をもらってから僕は「サンキュー」という言葉を多く使うようになった。そして、この言葉が残りのサミット期間中、僕に話す勇気をくれた。
ことし7月14日から27日まで南カリフォルニアにある米国創価大学のキャンパスで第9回国際青少年メディア サミットが開催された。アフガニスタン、イラン、イスラエル、パレスチナ、コソボなど22ヶ国から来た80人近くの若者が差別、貧困、暴力、健康、環境、女性の権利、若者の地位向上の7つのグループに分かれて話し合った。
僕は若者の地位向上のグループに参加した。僕のほかのメンバーはアルメニア、スロベニア、コソボ、アメリカ、メキシコ、ナイジェリアの若者たちだ。まず、それぞれの国の中で起きている若者の地位に関する問題を話し、共有し、改善するにはどうすればいいのか意見を交わした。ナイジェリアから来た女の子は金銭や社会的な立場の問題で自分の望む道に進めない若者がいることを話し、その場にいる全員が自分の周りにも同じようなことがあると話していた。
チームの課題は1分間のビデオ作品の制作だ。それぞれが自分の知っている映像を参考に見せ合いながら何を問題にするのか、どんな構成にするのかについて話し合った。その結果、テーマは「EVERY TALENT HAS ITS POWER」(全ての才能には活かしどころがある)で、自分の進むべき道を思い悩んでいる人たちに向けて自分の才能を信じるように呼びかける内容になった。
撮影は大学の構内で行った。メンバーはそれぞれ、プロデューサー、ディレクターなどの役を割り当てられた。各役割には専門家からのトレーニングも用意され、僕はガッファー(照明係)を担当した。ガッファーはライトや反射板を使って光の加減を調節する役で、撮影体験の少ない僕にとっては新しい知識だった。他のメンバーはほとんどの役割をよく理解していてビデオ作成の技術の高さに驚いた。意見がぶつかり合うことも多々あったが、結局はお互いの意見を理解した上で話し合い、納得する結論を出していた。日本では意見がぶつかると相手の話を聞かずにすぐに撤回したりしてしまうときが少なからずあるので、この点では日本は世界を見習うべきだと思った。 編集を終えてビデオ作品が完成した時はグループ全員で喜んだ。
もうひとつの難関はデクラレーション(宣言文)の作成だった。グループのメンバー全員が自分の国で起きている問題と解決方法について文章を作成し、その中から一人を選ぶ。選ばれた人は文章を読み上げて録画し、ビデオと一緒に閉会式で上映するのだが、若者の地位向上グループでは僕の提出した文章が選ばれた。日本の、子を持つ親や学校の先生達に向けて、子供にもっと励ます言葉をかけるよう呼びかける内容のものだ。英語の発音にとても苦労し、練習には多くの人の協力と時間とを必要としたが、ビデオ作品とともに閉会式でまとめて上映され、みんな達成感と喜びでいっぱいだった
気がつけば、サミットの最初には多くの不安を抱えていたのに、最後にはみんなとひとつになってビデオ作成や意見交換に取り組み、何事もまずやってみることが大事だということを学んだ。グループの中で口喧嘩になってふて腐れている様子などを見ていると、どこに住んでいても同じ人間であるということを実感させてくれたが、口喧嘩の原因がそれぞれの民族の信念の違いであったりすると参加者の「変えたい」という気持ちの強さを感じさせられた。それぞれの境遇の中で問題意識をもって参加した若者の中で共に作業できたことは世界に目を向けるいい機会になったと思う。また、自分の意見を発表し、人と話し合うことに長けた人たちの中にいると、自分の意見を主張し続けることの大切さやそのために必要な英語のスキルの重要性に気づかせてもらえた。
第9回国際青少年メディア・サミットに参加して
2014/10/07 村上 類(15)
7月14日の朝、目覚めたら母国語ではない言葉が聞こえてくる。自分がいったいどこにいるのか状況が読めなかった。日本の学校で授業を受けて英語を身につけてきた私にとって、朝起きたらまずグッドモーニングと言う習慣は、まさに自分は日本にいないと思い知らされる瞬間である。そうだ、今日からは英語で自分の意見を主張しなければ!と私は気持ちを引き締めた。
2014年7月14日から26日まで、アメリカのカリフォルニア州にある米国創価大学の施設を借りて第9回国際青少年メディア・サミットが行われ、チルドレンズ・エクスプレスから私を含め記者2人が参加した。このサミットには世界22ヶ国の14歳から25歳までの若者が集まり、世界で起きている7つの問題(女性の権利・貧困・差別・環境・若者の地位向上・健康・暴力)毎にグループを作り世界へ発信するためにビデオを制作した。
私が参加した環境のグループはアメリカ、アフガニスタン、アルメニア、オーストリア、コソボから参加した7人だ。アドバイザーはイランから参加した女性だった。活動を通して、普段日本国内にいるだけでは絶対話す機会がない国の人たちと親交が深めることができた。
最初に、『環境』と言っても一言では語りきれないため、世界で起きている自然現象や自分の国で感じられる地球温暖化の影響などを出し合い、どの項目が世界的な問題でまた映像で表現しやすいかを話し合った。そして世界共通で身近な水不足にテーマを決めて映像を制作することにした。その後、映像でいかに水不足を表現するのかアイデアを出し合い、水を無駄にしている人と、水を探し求めている人を交互に見せることに決めた。
撮影の前にはどんな行動をどんな状況で撮るのかを細かく記した絵コンテを描いていく。私は撮影中の指示や判断を英語で仕切ることが難しいため、この絵コンテを描く役を買って出た。それぞれの場面の役者のポーズから天気まで撮影の軸となる重要な場面を一つずつ漫画のように描いていくのはなかなか難しかった反面、とても面白くいい経験だった。
そして撮影。私たち環境グループにとって、水不足と水の無駄使いを分かりやすく見せるには太陽がどのシーンでも鍵を握るため、その日の天気にしたがってスケジュールを次々と変更する必要があり四方八方へ動き回った。
撮影後は編集作業に取り掛かる。しかしここで、外国ならではの問題が生じた。撮影しなおすか否かの話し合い中にグループのメンバー数人がいきなりどこかへ行ってしまったのだ。遅刻、欠席等の行動はありえないと考えられている社会環境で生活をしている日本人の「きっちりさ」を感じた瞬間である。しかし最終的には映像作成の経験があるメンバーが編集を積極的に進めてくれて、最後には無事納得のいく作品を作ることができた。
サミット最終日には各グループが作成した映像が上映された。どのグループの作品もそれぞれの問題を深く考えさせる完成度だった。日本ではせっかく映像を制作してもなかなか注目してもらえないことを考えると、日本はスポーツと勉強ができる人だけでなく、その二つに負けない才能を持っている若者にももっと注目をしてそれを発揮する機会を作るべきだと思った。
私が今回サミットに参加して強く感じたこと。それは国や宗教、肌の色に関係なく支えあっていけば、たとえ少人数であっても生活しやすくなる人が増え、うれしいと思う人が必ずいるということだ。実際私は今回のサミットでさまざまな人に沢山助けられた。もし助けがなかったらおそらく二週間私は無事に生活できなかったと思う。活動外の時間に同じグループだったアフガニスタンの女の子に寮の部屋に呼んでもらって絵コンテの書き方を教えてもらったり、アドバイザーの人がミーティング終了後にわからなかった部分をもう一回教えてくれたりと、数え始めたらきりがないほどサポートしてもらった。特にルームメイトのアルメニア人の女の子が言ってくれた「困ったらいつでも助ける」という言葉は心の支えになった。
自分の学校のクラスだけが交流関係の中心だと思っていた私をサミットは変え、世界は広いようだが全員人種は違っても同じ人間であり、互いを支えあっていく大切さに気づかされた2週間だった。
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