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教育


 

共に生きるためのODA
2013/03/09                富沢 咲天(17)

 ODAというと、漠然と先進国が途上国を手助けするというイメージを持つ人が多いのではないだろうか。そもそもODA(政府開発援助)とは政府または政府の実施機関によって開発途上国の経済、社会の発展や福祉の向上に役立つために行う資金・技術提供である(外務省HPより)。資金を贈与する無償資金協力や、円借款と呼ばれる低金利で返済期間の長い緩やかな資金協力、そして日本の技術や技能を伝える技術協力がある。日本は1954年から継続してODAを行い様々な国々に人材・物資・技術・お金を提供してきた。しかし不況で日本の経済が落ち込んでいるなか、国内にこそお金を使うべきではないかという意見がある。ODAは今、本当に必要なのだろうか。

 外務省のホームページによると、一般会計ODA当初予算額は1997年の1兆1687億円をピークに減少している。2012年度の予算額は5612億円とピーク時の半分以下だ。

 外務省国際協力局政策課の杉村奈々子氏は「日本のODAを、国際社会の基準(対国民総所得比)で見ると、世界の他の国々に比べて少ない」と指摘する。世界的に見るとODAを行っている国でこの数字が日本より小さい国は韓国とギリシャしかない。しかも現在韓国はODAの増額に力を入れているので、日本が追い抜かれるのは時間の問題だそうだ。だからといって政府が出せるお金は限られているので「NGOやNPO、国際機関、企業などとうまく連携し、お金を無駄遣いせず効率よく使う必要がある」と杉村氏は語った。

 さらに、日本のODAは決してバラまきではなく戦略的であると杉村氏は強調する。例えばマレーシアに大規模な国際・大水深港を建設したが、それはマレーシアの液化天然ガスや、携帯電話などに必要なレアメタルを日本に輸出するためでもあるという。
 中国は今や日本を抜いて世界第2位の経済大国だが、そんな中国に金額は少なくなったもののいまだにODAを続けているのはなぜか。それは環境問題などを解決するにあたり、まだまだ日本の技術が必要とされているからだという。中国の環境汚染は深刻で、汚染物質は風に乗って日本にも影響が及んでいる。対中国のODAで重点的に行っている事業は大気汚染、黄砂など直接日本に悪影響をもたらすところに絞ってやっているそうだ。他国を援助することで日本にも良い結果をもたらす一例と言える。

 杉村氏は「ODAに対する様々な意見があることは承知している。国民がちゃんと判断できる材料がみんなに届いているのかをよく検討する必要がある」と語る。多くの日本人はODAが日本にとってどのような利益があるのかをよく知らない。このため最近「見える化サイト」(JICAホームページ)が立ち上げられた。杉村氏は「ODAの評価や効果をきちんと示して国民の理解を得る。ODAに関心のない人にも興味を持ってもらい、すでに高い関心を持っている人たちには、彼らが必要とする情報が伝わるようにしたい」と述べた。

 ではNGOにはODAはどのように映っているのだろうか。特定非営利活動法人「難民を助ける会」は寄付金だけでなく、ODAからも活動資金を受け取り活動している。シニアプログラムコーディネーターの穂積武寛氏は「NGOは一つ一つの団体がやっている事業規模は政府と比べると小さいが、パッと素早く動くことができることが強み」と言う。バラまきとの批判の反省から、政府は日本NGO連携無償資金協力(以下N連)という仕組みを作った。NGOの会費や寄付金は、財源として不安定なため収入が予測できず、大きな事業を計画しにくい。しかしN連 を利用すれば、承認された金額は確実に受け取ることができるので大いに役立っているそうだ。

 途上国がいつまでも援助に頼らず自立していくためには、資金調達や事業運営を自分たちで行う能力をつけてもらうことが必要である。難民を助ける会では地雷処理やエイズ予防の啓蒙活動のために現地人のスタッフを訓練し彼らに行ってもらっている。また、一人一人のニーズに合った車椅子を作るための技術を教え、事業を行うための資金調達のアドバイスなどの支援もしている。「国やNGOが援助を行わなくてもいい日が来るのが究極の目標。その日までは支援を続けたい」と穂積氏は語った。

 「ODAはsolidarity(連帯責任・連帯意識)だ」と強調するのはアフリカ・アンゴラ共和国大使館公使参事官のミゲル・ボンバルダ・ダ・クルーズ氏だ。アンゴラは2002年まで内戦が続き、経済的にも国を安定させるため支援を必要としている。アンゴラの主な産業は石油やダイヤモンドなどの資源関連で世界中に輸出している。しかし「石油はいつかなくなってしまうから産業を多様化する必要がある」と言う。アンゴラは資源に大変恵まれている国だ。およそ30種類ものレアメタルがあり、水資源が豊富で広大な国土は気候も良い。将来は大規模農業を行い、食糧を自給自足し、そして農産物を世界に輸出できるようにすることが目標であるという。ボンバルダ・ダ・クルーズ氏は「この大規模農業では日本の技術が使われるだろう。将来アンゴラが安定して平和を構築した時には、日本が困ったことがあったら必ず助ける」と語った。

 現在のODAは与えるだけの一方通行の支援ではなく、日本にも利益をもたらすようになっている。支援する側とされる側の両方が得をすることにより、世界の経済、環境、生活、治安、衛生などが少しずつ向上していくのではないだろうか。共に生きていく世界の仲間として、政府とNGOが協力してODAをうまく活用することもこれからますます必要になるだろう。

 

なぜ日本はODAを続けているのか
2013/03/09                青野 ななみ(19)

 現在日本は戦後最大の財政赤字を抱え、決して国にお金があるとは言えない。そのような状況の中、日本は5612億円という額をODA(政府開発援助)に使っている(2012年度予算、外務省HPより)。ODAとは、開発途上国の経済・社会の発展や福祉の向上に役立つために行う資金・技術提供による公的資金を用いた協力のことである(外務省HPより)。何のために日本はODAを続けているのか、続けていく必要が本当にあるのかを知るため、外務省、認定NPO法人難民を助ける会、駐日アンゴラ共和国大使館に取材をした。

 ODAを続けている理由の一つ目は、「絆」の形成にある。日本は関東大震災、世界大戦や阪神淡路大震災、記憶にも新しい東日本大震災など、これまで多くの震災や戦争を経験してきた。それらの復興の助けとなったのは世界中の国からの支援であった。「東日本大震災でこれほど多くの国からの支援があったのは、日本がこれまで国際社会に貢献してきた証」と外務省国際協力局政策課・外務事務官の杉村奈々子氏は言う。このように国際社会の「絆」としてのODAがある一方で、民間レベルでの「絆」もある。現在、ODAには長期間低金利で貸し出す有償資金協力と、返す必要のない無償資金協力など様々な形態がある。その中でも、緊急災害発生時にすぐに支援ができるよう即日、遅くとも数日以内にNGOにお金がいくようにするジャパン・プラットフォームという仕組みがある。「このような仕組みができたおかげで、NGOはすぐに現地へ向かうことができるようになった」と難民を助ける会の穗積武寛氏は言う。難民を助ける会は1979年に設立され、数々の海外支援を行っている。それらの事業の資金の一部は、外務省がODAのひとつとして提供している「日本NGO連携無償資金協力(N連)」を利用している。N連を使った事業のひとつに、タジキスタンでの車椅子の製造がある。障害者支援が制度として十分成り立っていないタジキスタンにおいて、車椅子の生産技術を向上させ、同時に、職業訓練をバラエティーに富んだものにしたという。このように、国だけではなく、NGOや民間企業のノウハウや技術を活用してODAを行っているのである。

 現在無償資金協力をしている国でも、経済発展に伴って有償資金協力へ移行することもある。そのひとつの例がアンゴラである。アンゴラは、約5世紀もの間ポルトガルの植民地支配を受け、その後1975年に独立を果たすも2002年まで内戦が続き経済が疲弊していたが、現在は石油やダイヤモンドの輸出等により毎年高い経済成長を遂げている(外務省HPより)。そのため、「これまでは無償資金協力のみだったが、これからは有償資金協力に切り替えていくことになった」と駐日アンゴラ共和国大使館・公使参事官のミゲル・ボンバルダ・ダ・クルーズ氏は言う。国の実状に合った資金形態へ変えることによって、より無償資金協力が必要な国に協力できるようにしているそうだ。

 ODAによって受益国が豊かになることはどのような意味があるのだろうか。 ボンバルダ氏と杉村氏が「ODAはgive&take(ギブ&テイク)である」と主張しているように、日本国民の税金を無条件に与えているわけではない。「経済が安定し、平和になり、国同士の関係を強化していける。他国を知ることができ、将来のビジネスがよりスムーズにできるようになる」とボンバルダ氏が言う。また、「アンゴラはアフリカの中でも有数の資源国であり、レアメタル(希少金属)や水資源にも恵まれているが、その資源を生かせる人材がいない」とも言った。資源を効率よく利用するための人材育成をODAによって行うことにより、アンゴラに天然視点の生産加工の効率性に貢献し、将来、日本はアンゴラで生産加工された原材料を輸入するようになっているかもしれない。このように、ODAは受益国だけではなく、日本にとってとても重要な利益をもたらすのである。

 「ODAについてもっと理解を深めてほしい」と杉村氏は何度も主張した。国家予算におけるODA予算は1%程度であり(外務省資料より)、その金額でどれほどの利益が日本と受益国にもたらされているのだろうか。将来の日本を支えていく私たち若者が、ODAによって世界の国々と「絆」を形成していくことの重要性を理解し、伝えていかねばならないと思う。

アンゴラ共和国公使・参事官のボンバルダ氏を取材

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外務省の杉村氏を取材

 

 

 

 

 

 

 

難民を助ける会の穂積氏を取材

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アンゴラ共和国大使館での記念撮影