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教育


 

 セルビア共和国は南東ヨーロッパのバルカン半島にあり、人口は約750万人、面積は北海道と同じくらいである。旧ユーゴスラビア連邦で、歴史的に戦争が絶えない地域でもあった。1990年以降、連邦の中で独立が相次ぎ、2006年のモンテネグロ独立に伴ってセルビアも独立宣言をした。
 このセルビアの首都ベオグラードで、8月1日から12日まで、第6回国際青少年メディアサミットが開かれた。ギリシャ、マケドニア 、ボスニア・ヘルツェコビナ、コソボなどのバルカン諸国をはじめ、米国、フランス、ドイツ、スエーデン、カナダなど16カ国から約50名の若者が集まり、世界が抱える諸問題を話し合った。  以下は日本から参加したCE記者の体験ルポである。

共通の思い
2011/09/11                富沢 咲天(16)

 8 月 1日から 12 日まで 、 セルビアの首都ベオグラードで 第6回国際青少年メディア・サミットが開催された。 サミット参加者は 世界の7つの問題別にグループに分かれ、 差別、貧困、暴力、保健、環境、女性の権利、若者の地位向上のテーマで解決方法を討議した。このうち貧困問題のチームに加わりながら密着取材をした。

 貧困のグループはセルビア人(男13才)、韓国系アメリカ人(女16才)、トルコ人(女17才)、コソボ人(男20才)、そして日本人の私の5人だ。1人1人個性的で、課題である1分間の映像を作るために多くのアイディアがでた。

 大きな画用紙を机の中央に置いて、どのようなコンセプトでストーリーにするかが 話し合われた 。

 貧困で苦しんでいる人たちを助けるにはどのような方法があるのか。短期的な方法は救援物資を届けることだろう。今生き延びるために必要なものを提供する。しかし一時的な援助物資だけでは貧困層の人たちは長期的に自立できない。 「安定した収入の職につけない→貧しい→教育を受けられない→安定した収入の職に就くことができない→貧しい」の繰り返しになってしまうといった意見がでた。

 注目されたのは 教育だった。 子どもたちがちゃんと義務教育を受け、読み書きや社会に出るためのスキルを身に着ければ、将来安定した仕事に就けるはずだ。それが負の連鎖の脱出につながるという考えで一致した。
 スクリプトを作るにあたり、どのようにして観客の興味をひくか、どのチームも苦労した。 繁華街や学校を舞台にするなど様々な意見が出され1つにまとめるのが大変だった。 1つ1つのシーンにこだわり完璧な映像にしたいという思いはみな同じだった。

 ベオグラードの街中で撮影し終わった後は、編集作業に取りかかる。だがメンバーたちは5大陸から来た様々な背景を持っており、 、場 面ごとのBGMの選択や挿入方法、場面のカットなど、みな自分の理想にこだわり何度ももめた。 提出締切日の前夜は、午前3時までみんなでひたすら編集作業をした。眠い中 互いを励まし合い、やっとの思いで映像作品を完成させていた。

 サミットの閉会式でそれぞれのチームが制作した 作品が上映された。 どのチームも感慨無量の表情だ。 撮影2日目でメンバーの1人がいきなりコソボに帰国してしまったり、セルビア人のメンバーの学校の友達が役者として協力してくれたり、いろいろなこととがあった。「長い時間話し合って夜遅くまで編集したかいがあったね」と誰もが 喜びを抑えきれなかった。

 交流のなかでギリシャ語やトルコ語、セルビア語など 、みんなでそれぞれの言語の簡単なあいさつを覚えた。サミット終盤、ナイジェリアの人たちが来た時には彼らの伝統ダンスを練習するなど文化交流も盛んであった。

 サミットに参加した多くの人たちが東日本大震災と原発事故に関して関心を示した。 「なぜ日本人は非常事態でも周囲の人のことを思いやれるの」「どうしてそんなにすぐ立ち直れるの」「復興までにはあと何年かかるの」などと様々な質問が飛んできた。
日本のことをそのように 心配してくれているとは予想していなかった。

 他国の若者と協力して、お互いの意見を取り入れながら一つの作品を作っていく ために 、お互いに関心を持ち、コミュニケーションを積極的にとることは大切であった 。ともに苦労した仲間とやりとげた喜びを共有できたことは、サミットに参加して本当によかったと思う。

 

Shape the Future (未来を形作る)
2011/09/11                南雲 満友(16)

 2011年8月1日から12日まで、南東ヨーロッパのバルカン半島にあるセルビア共和国の首都ベオグラードで、第6回国際青少年メディア・サミットが開催された。サミットのテーマは、世界の若者たちが映像作品を通して未来を形作る(Shape the future)。環境、貧困、差別、暴力、健康、女性の権利、若者の地位向上の課題別に、世界16カ国の若者が50名ほど集まり、1分間のビデオを作った。

 サミットに応募するにあたり、各自が関心のある課題について2〜3分のビデオ作品を作って提出した。私は、3月11日の東日本大震災後、実際に仙台を訪ねて目の当たりにした瓦礫の山、福島第一原子力発電所の事故によって起きた放射能汚染、大津波による塩害を例に、震災後の日本の環境の変化についての作品を作った。サミット3日目に参加者たちの前でこの作品を発表する機会があり、外国人から多くの質問を受け、震災が世界に与えた影響について考えさせられた。

 私が参加した環境グループは、アメリカ人、トルコ人、ボスニア・ヘルツェコビナ人そして日本人の私の4人だった。グループ活動が始まると、意見交換を経て、ビデオのスクリプトとストーリーボード(絵コンテ)を作った。3つのアイディアが出て、グループ内に意見の食い違いが生じた。自分の意見を主張しながらも、相手の意見に耳を傾け、その妥協点を探ることが大変だった。しかし、この意見の食い違いが、作品をよりよいものにしたと感じている。私はグループの代表として、参加者の前でスクリプトを発表した。

 1分間というのは、短いようで長い。1シーンを色々な角度から撮影し、それぞれを効果的に挟みながら編集することで、やっと1シーンが完成する。それが積み重なり、1分間のビデオ作品となるのだ。環境グループのビデオは、パラレル・ストーリー(2つのストーリーを並列させる)だったので、環境に敏感な人と無頓着に汚染する人を対照的に表現することが大変だった。

 ビデオ作品とは別に、参加者全員がテーマの問題についてアピールする1分間の宣言文を作成した。私はサミット応募のために作成したビデオで主張したことを、宣言文に反映させ、原子力エネルギーや海洋生物の生態系が、世界で議論されるべきだと主張した。この宣言文は、グループの代表として選ばれ、ビデオに収録された。英語での宣言文に最初は緊張して、言葉に詰まったり、表情が硬くなってしまったが、音声の不具合で再度挑戦する機会をあたえられた。撮影前に言われた「これからあなたが輝く時間だよ」という言葉で、自信を持って撮影に臨むことができた。

 サミットの閉会式で各グループのビデオ作品と宣言文が上映された際、これまでの10日間が走馬灯のように駆け巡り、グループの仲間と1つのものを作り上げることができた喜びをわかちあえた嬉しさで、胸がいっぱいになった。また今回Youth Committee(実行委員)のメンバーに選出されてことで、責任感とともに、自信がついた。

違う″ということは決してマイナスではない。育った環境も考え方も違う同世代の若者が集まり、議論を重ね、時にはぶつかり合いながら、アイディアを出し合い、1つのものを作り上げていく過程で自分の意見に真っ向から反対されたり、同じことを考えていても表現方法が違ったりするが、この違いが化学反応を起こし、大きな力になった。様々な国の同世代の若者から発せられる意見やアイディアの1つ1つが、魅力的なエッセンスのようであった。

違う″ということを恐れない。これも大切なことだ。自分と他人が違うのは当たり前。臆病にならず、自分の意見をはっきり主張し、相手の意見にも耳を傾けることがよい議論、そしてその先につながっていくと感じた。