カンボジアに携帯?
2007/05/02 佐藤 美里菜(14歳)
「カンボジアで携帯電話が普及している」と聞いて私はとても驚いた。そして不思議に思った。そこで、2007年3月27日〜4月1日に行われたCEカンボジア研修旅行で調べようと思った。
発展途上国であるカンボジアでは、2005年の時点で100人中2.66人という割合で携帯電話が普及している。そして、世界で初めて携帯電話の普及が固定電話の普及率を超えた国でもある。使われている携帯電話はノキア社かモトローラ社だが、ノキア社が1番人気だと、シェムリアップの街で携帯電話を売るメイン氏(29)は言う 。
機能は日本のとほとんど変わらない。電話、メールはもちろんカメラやカラオケ、ラジオを聞けるものもあった。着信メロディーや音楽をダウンロードすることもできる。中には日本の歌もダウンロードできるのもあるそうだ。
今回私たちが話しを聞いた地元の中学生、高校生、大学生によると、「普及している」とはいっても中学生や高校生は携帯電話を持っておらず、持ち始めるのは早くても大学生からだ。平均収入が一ヶ月約20ドルに対して、携帯電話は安いものでも20ドル、高いものは400ドルもする。子どもにはとても買い与えられないのだ。
家族や知り合いの人との連絡のために使うこともあるが、一般的には携帯電話を持ち始めるきっかけは「仕事」のためがほとんどだ。話を聞いた高校生の親は、不動産仲介業のために、また、観光地で働くガイドも仕事に携帯電話を使っていた。
日本ユネスコ協会連盟の寺子屋に通っている子ども達に「もし携帯電話を持っていたら何に使いたいか」と聞くと、12歳の少年まで「ビジネスに使いたい」と言う。具体的にどのように使いたいかは考えていないが、仕事、すなわちお金を稼ぐために使いたいと考えているようだ。もちろん、家族や知り合いの人との連絡に使いたいと言う子どももいた。
そして、携帯電話を持っていない高校生に「もっと普及したら生活はどう変わると思うか」と聞くと「問題が起きたときの解決が早くなる」という意見が出た。たとえば病院と連絡が緊急にとれる。携帯電話を持っていなかったら、助かる命が助からないかもしれないのだ。携帯電話の存在はとても大きいことが分かる。
携帯電話によっていろいろな情報を得ることもでき、それを共有することもできる。それはカンボジアの発展につながるだろう、と日本ユネスコ協会連盟シェムリアップ事務所プログラムオフィサーであるシニン氏は話す。それはカンボジアだけのことではなくどこの国でもそうだろう。
カンボジアに行く前には、携帯電話があることすら不思議に思ったが、実際に訪れてみると、想像以上に普及していることがわかった。
人々が生活をしていく上で一つの便利な道具として存在する携帯電話。それは発展途上国であるカンボジアでも大きな存在感を示していた。
携帯電話の普及がカンボジアに与えるもの
2007/12/19 三崎 令雄(16歳)
カンボジア王国の北方にある町シェムリアップ。その近郊には世界遺産にも登録されているアンコール遺跡があり、シェムリアップは世界各地から訪れる観光客で賑わっている。しかし、現在寺院となっている場所はポルポト時代、刑務所があり、大虐殺が行われた場所でもある。また、ポルポト政権下ではクメールルージュの兵士として、ベトナムが進軍してくると今度はベトナム兵として、かつての同胞だったクメールルージュと戦わなければならなかったという奇妙な体験をした人たちがいた。
そんなシェムリアップの町では現在、携帯電話を使用している現地の人をよく見かける。携帯電話を売る店も多く、隣りあっているものさえあった。日本では若い世代にも浸透してきた携帯電話だが、カンボジアでは大学生から持つ人が多い。また、町ではほとんどの人が持っているが、少し離れた村では話が別のようで、国全体で見ると普及はまだまだこれからといった印象だ。
携帯電話に聞いてみると、カンボジアではプリペイド式が主流で値段は40ドルから、高いものでは1000ドルを越える。電話だけのものもあれば、カメラやカラオケ機能などがついているものまで機能も値段によって様々。さすがに E-mail や Internet はないだろうと思いきや、あることはあるが、とても高額なため購入する人は少ないようだ。一言で「カンボジアの携帯電話」といってもその中身は多種多様。もし、「カンボジアの携帯電話について簡潔に説明せよ」といわれても無理な相談だ。
そんなカンボジアの携帯電話だが、それを大人が使っているのを見て現地の子どもたちは携帯電話にどんな想いをはせているのだろうか。トンレサップ湖に浮かぶ寺子屋の子どもたち、クラバン村の公立小学校に通う学生に聞いた。
日本の学生の約6割が携帯電話を欲しいというが、それはカンボジアでも変わらず、欲しいという方が多かった。ただし、「もし、あったら何に使いたいか」という質問についてはほとんどの日本の子どもたちとは異なり、「ビジネス(収入につなげられること)」という答えが返ってきた。やはり貧しいので、携帯電話を使って収入を得てよりよい生活がしたいのだという。「家族や友達との連絡」という答えは日本と共通するかもしれないが「おしゃべり」などの遊び目的なものは見当たらなかった。
「携帯電話が普及したら社会はどう変化するか」という質問については、さすがに小中学生の世代の子どもたちには検討もつかないようだった。大学生たちは「すばやく情報を得ることができ、シェアできる」「問題が起きてもすぐに解決できる」「様々な人との連絡、ビジネス、医療に使える」そして、そのため「国や社会は発展する」と言っていた。
確かに、携帯電話の普及が国の発展につながり、国民の生活が向上するのはいいことだ。しかし、携帯電話の普及は現在の日本と同じ様に、「ワンクリック詐欺」「オレオレ詐欺」「架空請求」などの携帯電話を利用した犯罪が多発することを意味する。
携帯電話の普及が決して、トンレサップ湖にある水上寺子屋、クラバン小学校で出会った子どもたちの笑顔を奪うものであってはほしくないと思う。そして、そうなるのであれば、それは国の発展とは言えないだろう。地雷の危険が戦争の爪痕として未だに残るカンボジア。そんなカンボジアの子どもたちを新たな危険から救うには、実際に問題を抱えている私たち日本人が何かを果たす必要があるだろう。
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