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学校授業のSST
2014/06/16                松本 哉人(15)

 「乱暴な性格だ」「引っ込み思案だ」「愛想がない」「自己中心的だ」・・・。
誰もが一度は周りから言われたことがあるであろう。しかし、分かっていてもいきなり翌日から改善できるものではない。だが、そのような人付き合いを苦手とする人々は性格のせいではなく、人間関係が上手な人が自然に駆使しているノウハウを知らないだけなのではないだろうか?

SST(ソーシャル スキル トレーニング)というものがある。これは人付き合いの上手い人が駆使するノウハウを「スキル」として整理し、そのスキルを苦手な人に気付かせ、身につけさせようというトレーニング方法である。臨床分野では,カリフォルニア大学ロサンゼルス校の医学部精神科のロバート・リバーマン教授がパイオニアとして知られており、精神疾患患者のために開発されたが、同じ時代に、発達領域で適応できない子ども達や更正施設の少年対象にも用いられたりした。現在は、対人不適応の予防だけではなく、円滑なコミュニケーションの形成を目標にして、一般の人々にも利用されつつある。

今、このSSTを学校教育に応用しようという動きが広がっている。集団、それも学校において使うことについて、どのような効果があるのかについて専門家に話をきいた。

SSTでどのような効果が期待されるのか。法政大学文学部心理学科・渡辺弥生教授は「個人のいいところをどんどん開発することができる。すなわち、性格が悪いから対人関係がうまくいかないと自信をなくしていた人に、練習次第でより良い方向に変われるのだという意欲を与える」と指摘する。また、「いじめや不登校、軽い人間関係の問題を予防でき、起きてしまった問題にも各個人のスキルを見て改善していくように働きかけることによって臨床的にも対処できる」と語る。さらに、その効果は授業の前後に行うアンケートの回答によって比較して確認されており、このトレーニングの効果を明らかにしてきている。

SSTの授業では何をするのだろうか。法政大学大学院人文科学研究科心理学専攻博士後期課程の星雄一郎さんは「SSTの授業は学校によって変わるものの、道徳などの時間の中で年に5〜10回ほど行い、毎回の授業で各回に習得してほしいスキルを決める」と話す。
しかし、それぞれの授業の基本構造は同じで、以下の四つの部分でできているという。

  1. インストラクション(教員がそのスキルがなぜ必要なのか、学ぶ意味は何なのか、どういったことを学ぶのかということを言葉で説明する。)
  2. モデリング(教員がそのスキルが使えている場面と使えていない場面がどう違うのか、使えている場面はどのように使えているからいいのか、使えていない場面ではどのように使えていないのかを寸劇などを使って説明する。)
  3. リハーサル(生徒が小さいグループになってスキルの正しい使い方を体験する。)
  4. フィードバック(生徒がお互いに反省点などの意見を出し合って考えを深める。教員がアドバイスする。)

具体的に言えば、
「人の話を聞くときにあいづちを打つ」というスキルを見るならば、「人の話を聞くときにはあいづちを打つといい」というインストラクションと、「人の会話を見ながら、あいづちを打っている人と打ってない人を見比べてどちらがいいか考える」というモデリング、さらに自分が「人と会話しながらあいづちを打ってみる」というリハーサルを行い、最後に自分のあいづちを見ていた人の意見を聞く(フィードバック)ことで「あいづち」という動作を習得するのである。

 喧嘩が少なくなってきたといわれる現代では多くの人がストレスをため込んでいるように感じられる。しかし、お互いに少しずつ、あいづちなどの相手の心の負担を減らす技術を身につけることで日々の暮らしが楽になっていくのではないだろうか。

 

 

 

 

 

 

渡辺弥生教授へ取材

 

 

 

 

 

 

 

星 雄一郎氏へ取材