大学入試改革のメリット・デメリット
2013/10/25
毛利 真由(16)
2013年日本政府は大学入試のセンター試験を廃止して新たな試験を実施する検討に入っている。次に用いられる統一試験方法はフランスのバカロレアやイギリスのGCSEを参考にするともいわれる。日本では、なぜ長年続けたセンター試験を見直すのか、そのメリット・デメリットは何なのか。GCSEやA―LEVEL を受験しているイギリスの学生を現地で取材した。
日本での一番の改革理由は、大学教育で必要な能力があるかどうかを高校の間で身につけた学力で丁寧に測る仕組みが必要であるからと言われている。また、いまのような“一発勝負”ではなくその前段階の学校における評価や達成度を反映することが重要視され始めたこともあるようだ。
GCSEはイギリスで公認されている統一試験のことだ。これは高校生が受けるもので、一年の間に何度も受験することができる。その評価は大学進学だけでなく就職の際にも必要な資格とされている。複数の科目から自分の将来に役立つ科目を選択することができる。
これらを14歳で科目選択をするため、幼い時から自分の将来について真剣に考えることになる。取材したCEの姉妹団体のロンドン、ベルファスト、フオイルの3支局で若者の話を聞いた。「自分のことは自分が一番に知っているから自分で選べるのがいい」と17歳の少女は語る。「ある程度将来の方向性を定められるのがいい」「たくさんの選択科目から定められるのがいい」などという意見があった。GSCEのメリットは、自分が得意なものを率先して学ぶことができ、就職のときにもそれが生かされることのようだ。
だが14歳で必修科目を選ばなくていけない厳しさもある。自分の人生の方向性を決めるのは早すぎる年齢だ。「選ばなかったのも自分の責任なので、自分の可能性を自分で閉じてしまうかもしれない」と20歳のマイケルは語る。将来の夢や職業のことを考えたとき科目を変更したいと思ってももう追いつけないほど授業が進んでいることや、その授業のクラスに空きがない場合も少なくないという。
自分の意思で科目を選択する人も多くいるが、逆に何をとっていいかわからない生徒や将来やりたいことがまだ決まらない場合は友達と同じ科目をとったり、親の方針の影響を受ける人もいる。
一方、日本で行われているセンター試験は一度しか実施されないため、直前で何等かの理由で受験できなくなった場合に今までの努力と時間が無駄になってしまう。AO入試では早期合格者の学習意欲の減退が他の生徒に悪影響を与えることや、大学に入った時の一般入試者との実力の差が生じることが指摘されている。自分の可能性を広げ、より多くの可能性を時間をかけて見つめ、学ぶためにはセンター試験のほうが効果的に見える。しかし、イギリスと比べてみると受験機会が一度だけであることや、マークシート式なため文章を“書く”こということを試すことができないなどの問題を抱えた日本の大学入試は改善の余地があるし、新しい試験方法を模索しながら変えていかなくてはいけない段階にきているのだろう。
若者の大学受験のゆくえ
2013/10/25
村上 類(14)
日本の政府は大学受験生の学力をより正確にみるため、センター試験を見直して新しい到達度テストを導入する検討に入っている。若者としては新しい統一テストがいつ始まり、どのようなものになるのかすぐ知りたいところだが、なぜ今新しいテストが導入されようとしているのだろうか。
そもそもセンター試験とは、「受験生が高校で勉強した基礎的な学習の達成の程度を判定することを目的としていて、国公私立の大学がそれぞれの判断と工夫に基づいて適切に利用することにより、大学教育を受けるにふさわしい能力・適性等をさまざまな面から判定するために実施するもの」と大学入試センターの概要に記してある。
この概要をベースにして今指摘されている改革理由の第一は、受験の機会が一年に一回しかないことだ。これだと体調をたまたまテストの日に崩しただけで何年もの苦労が水の泡になってしまう。二つ目は回答形式がマークシート式であることだ。「困ったら鉛筆を転がして解答できる」ことで有名なこの方式は、たまたま高得点を取ることができて大学に入学できる可能性もある。
新しいテスト方式はイギリスのGCSE・GCE-Aレベル、アメリカのSATそしてフランスのバカロレアを参考にするようだが、どのようなテストにもメリットとデメリットは存在する。私たちはこの夏に参加した訪英プログラムの際にイギリス各地にあるCEの3姉妹局を訪ね、GCSEを実際に受験した若い記者たちにインタビューした。
まず日本のセンター試験と大きく異なる部分は、テストがGCSEとGCE-Aレベルの二段階あることだ。GCSEは日本でいう中学3年生が対象で、このテスト結果は大学に行かない人もその後の就職活動に使われる。大学へ行かない人は職業訓練学校に行く道があるものの、学費が高いなどの理由からなかなか行く人は少ないと彼らは言う。つまりすぐ就職する人にとってはGCSEが唯一の“認定資格”になるのだ。このシステムについて、すでにテストを受けた人もこれから受ける人も「将来についてこの年齢で決断するのは早すぎる」と口をそろえて答えた。
そしてGCSEを受けた後に待っているのがGCE-Aレベルのテストだ。これは大学へ行くためのテストで、日本のセンター試験に近い。大学入学に向けてということでテストの科目選択をするシステムになっている。このシステムは自分のやりたいことが見つかるし、科目選択の幅が広いので興味が探れるからいいと答える人がいる反面、将来やりたいことが途中で変わった場合、クラス変更は可能だが簡単にはできないし、その後勉強に追いつくのは大変という意見があった。
GCSEとGCE-Aレベルの二つのテスト受験者の声を聞くと、イギリスではもう高校生の時点で自分の将来については自己責任となっていることがわかる。しかしCEの姉妹団体Headlinersの記者たちのほとんどはイギリスのテストが日本のテストよりもいいと話す。日本のテストは勉強をコツコツとする人にとってはいいし、答えが分からなくても適当に答えられるからいいという意見もあったが、イギリス方式のほうが将来についてより考える機会になると考えている記者がとても多かった。
取材の結果、実はイギリスでも統一テストを改革する動きがあることがわかった。これは国際バカロレア機構が定める教育課程を修了すると得られる資格「国際バカロレア」を中高生に向けて新しく作るというのだ。では、なぜ今改革をするのか。イギリスの文部省に取材した。
GCEのレベルの改革の主な理由は、レベルが的確にできていて且つ厳格であることを確認し、大学'や雇用者の要求に歩調を合わせることと、大学の学者が過去の結果を分析した結果、受験者の水準が常に適切に学部コースに適していないことが要因だと担当者は語った。今後は熟達した準備の熟達度や、それぞれの科目の深い知識と知的能力を図るためにテスト用の学習よりも、学習そのものに焦点を当てたテストにしていくそうだ。
日本で新しいテスト方式を作ろうとしているなか、参考モデルの英国のテストの一つが変わろうとしている。これから受験を控える若者、学校、学習塾などが無用な混乱に直面しないように日本の大学受験改革については実施開始時期を含め、早く決めて知らせてほしいものだ。
将来の職業につながる教育
2013/10/25
瀧澤 真結(15)
文部科学省がセンター試験を5年以内に廃止し、新たに複数回受験できる到達度テストを導入する方針であるとの新聞報道があった。それによれば文科省はイギリスのGCE‐Aレベル、アメリカのSAT、フランスの国際バカロレアなどの統一試験を参考にするという。では、欧米の試験がどのようなものなのか、現在のセンター試験との相違点はあるのかを調べるため8月上旬にCEの姉妹団体であるHeadlinersのロンドン局、ベルファスト局、フォイル局を訪ねて、実際にGCEやGCSEを受けている学生たちに取材をした。
イギリスの学生たちにはまず日本のセンター試験は一回で結果が決まってしまうが、複数回受験し、一番良い結果を選択することができるイギリスのGCSEやGCEとどちらが良いかと聞いた。結果は、どの局でも学生たちの意見が分かれた。イギリスのシステムの方が良いと言った人は、「一回ではプレッシャーが大きすぎる」、「どんどん点数を良くしようと頑張るから継続的に成績があがる」、「何度もチャンスが欲しい」という意見だった。それに対して、ロンドン局のプレシャスさん(18)は「複数回受けられると最初に頑張った人と後から頑張った人の評価は同じものになってしまって、最初から頑張っていた人が報われない」と語った。一度だけのチャンスに向けて勉強をする方が、全員平等の結果が出るため、日々勉強している人にとっては一度の勝負が公平だという。
驚いたのは日本のセンター試験に比べ、GCEやGCSEでは100科目という幅広い科目数から受験科目を選択することだ。そこで、このメリット、デメリットについて聞いた。メリットは、「自分の将来を真剣に考えられるようになる」、「得意な科目、興味のあることを選択することができる」などが挙がった。フォイル局のマイケル君(20)は、「自分のことは自分が一番良くわかっているから、自分にとって良い選択ができる一方で、自分で自分の可能性を閉じてしまうことになるかもしれない」と不安も語った。他のデメリットとしては、「14歳で自分の生涯に関わる科目を選択しなければいけないので、若すぎるのではないか」という意見が多くあった。また、イギリスでは選択した科目を途中で変更する場合は早い段階で決めなければいけないため、他の授業とかぶっていないか、受験枠の人数に空きがあるかなどの条件を満たさなければいけないそうだ。そのため、選択する前に考えることが大事なのだと数人が述べていた。
最後に将来自分のやりたい職業に就くために大学は必要かと尋ねると、ほぼ全員が「必ずとは言えない」と答えた。理由は、企業はどのような学科や大学を卒業しているかよりも、経験を重視するからだという。ロンドン局のガブリエル君(17)は、記者になりたいと思って、文系の学科などに入って勉強をしても、HeadlinersやChildren Expressなどの子ども記者団体に入って実際に記事を書いたほうが良い記者になれると語った。ただし、医者や先生などの特定の職業に関しては大学は必要だと答えていた。
各局への取材を終えて、イギリスの制度にも日本の制度と同じようにメリットとデメリットが存在することが分かった。また、日本がマークシート式なのに対して、イギリスでは記述式を重視した試験にしているという違いも知った。イギリスで取材した際、多くの学生がマークシート式の方が当たる確率が高いから受けやすいと答えていた。それに対してフォイル局のケイティーさん(17)は、マークシート式は答えの選択肢が似たりよったりしているので、正確に答えを知らなければいけないから難しいと語った。取材の最後にイギリスの制度と日本の制度のどちらが良いか、最初に聞いたが意見が変わったかと聞いた。結果は完全に変わったという人は少なかったが、どちらの制度にもメリットとデメリットがあり、学生たちのことをよく考えて作られてあると語っていた。
日本の教育制度がこれから変わろうとしているが、どの制度にもメリット・デメリットは存在する。それよりも、私たちの学生にとっては、将来の職業や専門につながる勉強や経験を重視した教育をすることが大事なのではないだろうか。少なくともイギリスはそういう方向であることが感じられた。日本の文科省の判断を待ちたい。
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