いつから始めるの、外国語教育
2006/08/29
三崎友衣奈( 14 )
現在、日本では小学校から英語教育を必修化することに関して様々な意見が出ている。実は、これは英国でも同じことで、 2008 年から第一外国語を小学校でも教える方向にあることに対し、英国でもやはり疑問の声は高いようだ。
第一外国語は小学校からやって本当に効果があるのだろうか。もしやるとしたらどのようにやっていけばいいのだろうか。チルドレンズ・エクスプレス日英記者交流の機会を使って英国のCE記者たちに話を聞いた。交流では 8 月 21 日〜 28 日の間に北アイルランド地方のベルファスト、ロンドンデリー、そしてロンドンの3箇所にあるCE局を訪問、インタビューも含めた交流を行った。
まず、英国の外国語教育について聞いたところ、フランス語、スペイン語からの選択が主流で、北アイルランドではアイルランド語を選べる学校もあった。英国での外国語教育は 11 歳〜 14 歳までで、 15 歳からは、やるかやらないか自分で決められる。授業の内容としては、読み書きが中心で、聞いたり話したりするのは最後。それにより、ほとんどの生徒が簡単な日常会話程度で精一杯だそうだ。
日英の外国語教育をくらべると、目立つのが意欲の違いである。今、世界の公用語は英語であり、特に日本では大企業や国際的な職業についきたい学生は英語の習得は必至である。それに対し、母国語が英語である英国の生徒は外国語の必須期間が終わるとやめてしまう。やはり英語が世界で通じると思うのだろう。
この外国語習得の意欲の違いがある上で同じように読み書きなどの授業を受けているにも関わらず、結果的に日本人と英国人の外国語が使えるレベルは同じである。そんな授業内容では、いくら小学校から英語をやっても結果は同じであろう。では、どのように英語を習っていけばよいのだろうか。
1998 年〜 1999 年まで英国で中学校のフランス語とスペイン語の教師だったポール・マーフィー氏は、「生徒は授業を面倒くさがるから、なるべく楽しくするようにゲームなどを授業の最初にとり入れている」と話す。
彼は小学校からの外国語教育に反対だ。「外国語の先生の私が反対するのもおかしな話だけど、英語が完璧でない小学生が別の言葉を勉強するのはおかしい」。実践するなら本当に基本的なことを遊びながら、「外へ出て公園で地図を広げ、右、左、と覚えていくなど、経験が大切だ。これは英国で英語を習い始めるときに似ている。とにかく、黒板を見て、ずっと書いているようなことは無くすんだ」。マーフィー氏は現在は小学校の教師をしている。
確かに、日本では中学校から英語を始めると机に向かって奮闘する人が多い。嫌々やっていたのでは上達するわけもない。時期を早めるより、中学校からでも、まず学ぶのが楽しいと感じさせることが肝心である。そのためには「英語は楽しい!」と思えるような授業が不可欠になってくる。日本ではまずそのような工夫こそ必要だろう。
このままでいいの?日本の英語教育
2006/08/29
川口 洋平( 16 )
現在、日本の外国語教育制度が揺れ動いている。小学校からの英語教育導入が叫ばれている中で、日本の外国語教育はどのようにしていくべきなのか。日本の外国語教育の問題は何なのであろうか。英語を外国語として学んでいる国との比較はされているが、あえて、英語が母国語である英国の教育制度と比較した。
ロンドンで小学校教師をしているポール・マーフィー氏(31)によると、英国の外国語教育は、主に仏、独、西語を11歳頃から学び始め、1週間に4〜5回、文法、読解、会話の授業をしていくそうだ。北アイルランドの高校生によると、授業でのネイティブスピーカーの先生の割合も10%程度に留まり、多くが非常勤講師の先生だと言う。
日本と同様に地域、学校等の条件により若干の違いはあるものの、多くの学校が、日本と同じような教育制度であるといえる。しかし、英国と日本の最も大きな違いは、外国語を学ぶ意識である。
2002年のベネッセ教育総研による「高校生の学力変化と学習行動」の調査によると、全ての学力階層において、90%以上の高校生が「単語や英文法を覚えることは必要」と答えている。日本人は主に、世界の公用語とされている英語を学ばないと、国際会議等の場で通用しないのはもちろんのこと、海外旅行でも不自由という意識があるために全体的に英語学習の意欲が高いのではないだろうか。
一方、英国の外国語に対する生徒の学習意欲に関してポール・マーフィー氏は「GCSE(General Certificate of Secondary Education)という英国の高校生の統一試験で、外国語を選択しない生徒はすぐに外国語を学ぶのをやめてしまう」という。
ロンドンの高校生に「なぜ外国語を学ぶのか」とインタビューをしたところ、「スペイン語は発音がきれいだから勉強したい」「そもそも言語を学ぶより歴史を学んだほうが重要だと思う」という答えが返ってきた。日本人の学習意欲から比べると、とても低いといえる。
世界での外国語教育の取り組みは様々だ。スウェーデンでは6歳から英語を学び、最初はゲームから入り、外国語学習への抵抗をなくし、授業では詩のスピーチコンテストをするなど、様々な授業を展開している。
韓国では、一般の小学生は英語を3年生から学び、特に意識の高い人たちの間では、小学生から英語を習うための早期海外留学熱が高まっている。さらに、外国語を専門に学ぶ外国語高校があり、卒業時には、英語の他に2つ3つ外国語を話せる生徒もいるという。
日本と同じ英語を母国語としていない国は、次々に教育を始める時期を変え、教育方法を変え、あの手この手で、外国語教育を推進している。
英語を母国語としている英国と、母国語でない日本では、明らかに学ぶ意識や目標としている水準に違いがあるにも関わらず、教育制度が一緒というのでは生徒の学習意欲に応えられない。
日本ではどのような外国語教育を行うのが良いのだろうか。 そもそも、文部科学省の高等学校学習指導要領では、外国語を学ぶ目的を「外国語を通じて、言語や文化に対する理解を深め、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り、情報や相手の意向などを理解したり自分の考えなどを表現したりする実践的コミュニケーション能力を養う。」と定めている。だが、「実践的コミュニケーション能力を養う」という目標は、まだまだ達成されていないと言えるだろう。
ネイティブな発音からはほど遠い日本人の先生が教壇に立ち、文法を説明しながら板書をするという一般的な授業スタイルで、実践的コミュニケーション能力を養うことは不可能だ。目的を考えると、全ての教師がネイティブ・スピーカーで、授業中のコミュニケーションを全て英語で行ってもいいくらいだが、予算の関係で実現は難しい。
単純に、小学校から英語教育を導入して、英語を学習する時期を早めれば良いという問題ではないだろう。本来の目的を達成することを考えれば、中学生と同じ内容ではなく、スウェーデンのように、スピーチコンテストを行ったりゲームなどをしながら、英語の面白さを体験し、英語でコミュニケーションをしたくなるような内容にすれば良いと思う。せっかく学習意欲がある生徒がいるなかで、いかに魅力的な授業をするかが重要である。
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