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社会

ビッグイシューを通して身近に感じるホームレス

2015/08/26                   前田 佳菜絵(15)

   家や学校、職場の近くの路上で、ホームレスが売っている雑誌がある。その雑誌の名前は「THE BIG ISSUE 日本版」(以下、ビッグイシュー)。ビッグイシューを発行する有限会社「ビッグイシュー日本」はホームレスに雑誌の販売という仕事を提供して自立を支援することを目的として活動している。「自分とは関係ない」と心のどこかで思っていたホームレスについてビッグイシューを通して考えた。

東京事務所長の佐野未来さん

 「ビッグイシュー日本」東京事務所長の佐野未来さんによると、2014年時点で日本のホームレスは7,508人だそうだ。ここでいうホームレスは「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」における「都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所として日常生活を営んでいる者」のことであって、いわゆる「ネットカフェ難民」や「ホテル暮らしの人」などは含まれていない。佐野さんは「現場の実感として、リーマンショック以降は若いホームレスが増えているのではないか」と話す。
 
 厚生労働省が行った「ホームレスの実態に関する全国調査」によるとホームレスのうちの60.4%が廃品回収などの仕事をしているが、そのうち90.4%の収入が月給1万円未満。佐野さんが出会ったホームレスの人たちは「まさか自分が」というという。野宿の状態になるということは住居だけでなく、労働、家族、金銭を失うことでもある。「一度野宿の状態になると、元の生活に復帰するにはいくつかの条件を一気にクリアしなければならないため、一人では非常に困難。私たちの仕事はホームレスの人が野宿の状態から自立できるように支援すること。それに、野宿の状態に至る前のサポートのようなセーフティーネットも張っていけたら」と佐野さんは話す。

雑誌を購入

 ビッグイシューは英国のロンドンで誕生した雑誌だ。創刊者のジョン・バード氏はあるホームレスの青年の「物乞いをするくらいなら、何でもする」という言葉をスローガンとして発刊を始めた。日本では2003年に創刊され、現在14都道府県で販売、これまでに累計651万部を発行したという。また、販売者には延べ1,581人が登録され、現在は約140人が販売している。ビッグイシューは一冊350円で売られていて、仕入れ値の170円を引いた180円が販売者の収入となる。そしてそのお金で簡易宿泊所などに泊まりながら、少しずつ貯金をして住居と住所を確保して、定職を探すというのが販売者の目指す未来だ。

こだわっているのは「質の高い雑誌づくり」とホームレスだけが販売できる「独占販売」だ。「販売者はビッグイシューを売ることでほぼ毎日人と接する。その中で仲間や応援してくれる人に囲まれるように感じる。一方の購入者も販売者の存在に安心したり励まされたりする」と佐野さんは語った。実際「ビッグイシュー日本」の東京事務所で話を聞いた常連客という女性も「毎朝同じところにいる安心感がある」という。

 一度失敗してもやり直しのきく社会を作ろうと「ビッグイシュー日本」を母体として2007年に設立された認定NPO法人ビッグイシュー基金という組織もある。ビッグイシュー基金はホームレス状態の人に対して、生活自立、就業、文化活動などの支援を総合的に行っている。貧困問題の氷山の頂点とも言えるホームレス問題の解決に寄与することを目的としており、活動の軸は「ホームレスの自立応援プログラム」と「問題解決のためのネットワーク作りと政策提案」、「ボランティア活動と市民参加」だ。佐野さんは「誰もが排除されず、すべての人に居場所と出番のある社会をつくるためにある」と語った。

 これまで「ホームレスは自分とは関係ない」と考えていたが、「ビッグイシュー日本」の取り組みを知り、佐野さんの話を聞く中で「ちょっとしたきっかけで自分もホームレスになるかもしれない。今まで思っていたよりも身近な問題なのかもしれない」と考えるようになった。他人事と考えず、もっと理解を深めることがホームレスの社会復帰の手助けになるはずだ。

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