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大学の秋入学に向けて

大学の秋入学に向けて
2012/10/16               小川 真央(18)

 東京大学が秋入学の全面移行に向けて学内で検討組織を立ち上げて実動き始めたことを契機に、メディアが大々的に取り上げ、注目されるようになった「秋入学」。学生、大学、経済、社会にどのような影響を及ぼすのか、今、教育界・産業界・政府といった様々な場で議論されている。今回、関連する諸団体を取材し意見を聞いた。

 秋入学実現に向けていち早く動き出している東京大学・総合企画部長期構想担当課長の小野寺多映子氏は、東京大学は正式に秋入学を導入すると決めた訳ではないと強調したが、チャレンジ精神や高度なコミュニケーション能力をもつ「タフでグローバルな東大生」を育てるという教育理念に沿って秋入学を教育改革の手段として検討していると語った。同氏はまた、秋入学によって生じる高校卒業から大学入学までのギャップタームについては前向きにとらえ、知的な冒険・挑戦の機会であり、社会体験によって視野を広げられるし、大学での学問の全体感の構築など学習期間として有意義な時間を過ごすことが可能であると指摘する。学内にも、ギャップタームのある課題が特に大きい問題と考えている数理系の先生を中心とした秋入学反対派が存在するとの問いには、反対派の意見は問題点を提示し、解決策を考えるきっかけになっているため貴重であるとも述べている。

 また、地方の国立大学である徳島大学の高石喜久副学長・理事は、秋入学に対し、地域の差により生まれるデメリットは無いと語った。その上で慎重にならざるをえない理由として、秋入学が導入されることで地方に留学生が集まるか不明である点、就職・国家試験の時期とのずれといった社会整備が整っていない点を挙げた。しかし、日本全体としてグローバル化が必要との認識は他大学と変わらないため、教育改革の一環として秋入学を視野に入れており、大学院は既に春入学に加えて秋入学を導入していると述べた。

徳島大学の高石喜久副学長・理事

 日本経済団体連合会・社会広報本部主幹の長谷川知子氏は、産業界としては大学の秋入学に対し基本的に歓迎であるという。少子高齢化やブラジルやインドといった新興国(BRICs)の台頭など、現在の経済危機において日本にグローバル人材は必要であると実感しているそうだ。そこで、秋入学が日本の学生の国際化の手段として機能すれば、最終的に日本企業の国際競争力の強化につながると考え、大学に協力していく姿勢を見せている。学生の不安要素である就職時期については、企業は一括採用以外でも柔軟に対応できると述べ、どの程度の数の大学が秋入学に移行するかを見極め、採用方法を考えていることを示唆した。

 文部科学省・高等教育局大学振興課課長補佐の白井俊氏は、秋入学を目指す大学に対しては支援をしていき、春入学を維持する大学に対しては秋入学を強要しない柔軟な対応をとると述べた。文部科学省は、秋入学の支援として、ギャップタームにおける体験活動の枠組みを提供する、産業界へ採用制度の変更を促す、国家試験の時期を変更することなどを具体的に考えている。 秋に移行した場合に6ヶ月間不足する運営資金の援助に関しては、国民の税金を使うことになるため国民の理解を得なければならないとする一方で、国際化を積極的に実施していく大学の取り組みに対しては援助する意向を示した。 確かに秋入学を実施することで学生達が強制的にギャップタームを過ごさなければならない点、就職活動への影響が出る点、半年間の身分の所在が不明確である上にアルバイトをすれば年金を支払わなければならない点、国家試験の時期にずれが生じる点、コストがかかる点など数多くの問題があることは事実である。しかし、複数の大学が協調することで、産業界や政府と連携が可能になり、秋入学に向けて社会の基盤は整っていくだろう。各大学の方針は尊重するべきであり、全大学が秋入学にする必要はないが、秋入学は日本の教育改革の一つの有効な手段になるのではないか。5年後の秋入学の導入まで社会がどのように変化していくか注目したい。

日本経済団体連合会(経団連)社会広報本部主幹の長谷川知子氏
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国際化の一歩としての秋入学

瀧澤 真結(14)

東京大学・総合企画部長期構想担当課長の小野寺多映子氏

 東京大学の秋入学への全面移行という記事が目にはいった。秋入学とはどのようなことなのか、中高生にとって好ましい影響があるのか、どんな障害を乗り越えなければいけないのか疑問をもち、東京大学、産業界、文部科学省、徳島大学に取材をした。

 東京大学・総合企画部長期構想担当課長の小野寺多映子氏は「東京大学は秋入学に全
面移行するというのは、まだ決定事項ではなく、真剣に検討している段階だ」と述べた。東京大学が秋入学を検討するようになったのは、濱田純一総長がタフでグローバルな学生を育てたいと考えたからである。タフでグローバルな学生とは、知的でコミュニケーション力があり、リスクがあっても挑戦できる国際的な学生のことであり、そういう学生を育てる一つの手段として秋入学を検討することとしたのだそうだ。
 
 だが秋入学にはギャップタームや就職活動などの問題もある。ギャップタームとは東京大学の造語で4月から9月まで大学などの授業が始まるまでの間(東京大学の検討案には学生の身分をもたないパターンもある)、自主的な活動をする期間のことだ。小野寺氏は「その間は、ボランティアや留学、勉強などのプログラムを用意し、経済的な支援をしてあげれば有意義にすごせるし、企業は通年採用に方針を変えてきている」と語る。そのうえで、「とにかく、日本の今の教育のままでは世界との競争に負けてしまう。東京大学が先頭をきってグローバル化に向けて一歩踏み出し、日本全体の改革のエンジンになることが求められている」と小野寺氏は東京大学の決意を示してくれた。
 
 日本経済団体連合会(経団連)社会広報本部主幹の長谷川知子氏によると、経団連もグローバル人材の育成を目指していて、秋入学は日本人の国際化に向けた一つの手段だと歓迎している。ただ、日本中の大学全てが秋入学に移行しなくてもよいと考えており、国際化を目指している大学にはサポートをするという方針だそうだ。
文部科学省・高等教育局大学振興課課長補佐の白井俊氏によると、文科省でも秋入学をサポートしていきたいそうだ。ただし、就職時期の問題や年1回の国家試験の問題については、産業界や関係省庁の協力を得なければならないそうだ。また、秋入学へ移行するまでの運営資金も、文科省が補助する場合は国民の税金を使うことになるので、そう簡単には判断できない。しかし、日本が国際化するのは大事なことなので、できるだけサポートしていきたいと語った。
 
  地方の国立大学の一つで、医学部、歯学部、薬学部、工学部と理系の学部の多い徳島大学の理事(教育担当)副学長の高石喜久氏に話を聞いた。高石氏は、「今は都会とか地方とかは関係ない。日本全体が国際化に向けて動き出すべきで、徳島大学も大学院はすでに秋入学を実施しており国際化の一つの手段として考えている」と語った。国家試験時期や運営資金の一時的不足の問題などは、国も支援してくれるのであれば秋入学も視野に入れて進めていきたいそうだ。
 
 秋入学に移行するためには、どのような障害を乗り越えなければならないのだろうか。まず、就職時期の問題がある。東京大学や経団連は企業が通年採用をする傾向になってきているという見方を示しているが、文科省では採用人数に着目すると実際には4月採用がほどんどで、通年採用は僅かな人数に留まっているそうだ。また、年1回の国家試験だが、秋入学になると一年も遅れて試験を受けなければならない。そして、4月から9月までの6ヶ月間の高卒者の身分を考えなければならない。その間アルバイトをしたら年金を納めなければならない問題も出てくる。このような問題は解決できるのだろうか。

 全ての取材を通じて共通していたことは「秋入学は日本の国際化に向けての一つの手段である」ということだ。日本は世界に負けないためにも国際化を目指している。他のやり方で国際化を目指す大学があれば、秋入学を選択する大学もある。さまざまな実験が始まっていることに注目したい。

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