2009/12/12 三崎 友衣奈(18)
鳩山首相が9月に出した「主要各国の参加の上での温室効果ガス25%削減」に対する反応の多くは「歓迎」であった。一方であまりにも厳しすぎると、これを批判してきたのが日本の経済界である。では、産業の一つとして大きな役割を果たす電力会社は今回の日本の目標についてどう対応していくのだろうか、東京電力に聞いた。
東京電力では、発電の効率性、使用時の効率性、そして技術の向上という3つの面で温室効果ガス削減に向けて動いている。
発電時は、 CO2 を排出しない原子力発電や、石油よりも CO2 排出量が少ない液化天然ガス( LNG )の使用が東京電力全体の7割近くを占める。また火力発電の熱効率を上げたり、最新技術によって石炭からの発電を高効率にしたりという取り組みを推進している。
電気の使用者、特に若者への呼びかけでは、教育に重点をおいている。生徒に対してだけではなく、教師も知識を高めて正しい意識を持ってもらうのが狙いだ。教育は効果がでるまでに長い期間がかかるが、無駄なことではないという考えに基づいて、他社よりも率先して活動を行っているという。
技術の面では、ヒートポンプという技術を使用した「エコキュート」を開発している。これによって投入する電気エネルギーより3倍~6倍多いエネルギーをつくることができるそうだ。また電気自動車やそれに伴う急速充電器の開発も行っており、本格的な使用に向けて動いている。
このように活発な活動を実践している東京電力だが、前政権の温室効果ガス 2005 年比の15%削減から一挙に 1990 年比25%削減 (2005 年比 30 % ) という目標を掲げた鳩山政権について、どう考えているのだろうか。
「我々は、決して反対はしていない」。環境部国際環境戦略グループの高橋浩之氏はこう強調した。会社として、低炭素社会にむけてビジネスを変えていくことについては前向きに捕らえているそうだが、懸念もあるという。日本の武器ともいえる先進的な技術に関してだ。高橋氏は「日本として世界に貢献できることは高度な環境技術を世界へ輸出することだが、25%削減目標はその芽をつぶしてしまうのでは」と語る。つまり、環境に配慮して作る日本製品はコストが上がるため、それがいくら地球に優しいと謳っても、環境に配慮していない国の安価な製品の方を消費者が購入しかねないというのだ。
確かに、「鳩山イニシアチブ」は評価が高かった一方で、あまりにも飛躍しすぎた目標数値や、具体策の不透明性が指摘されてきた。しかし、25%削減という一見大きな数値を「日本をいち早く先進的なエコ国家にする」という宣言と捉えると、高い目標数値は逆に日本のさらなる技術向上へのきっかけになるとも思える。
多くの企業が製造と環境対策とを両立させる経営に向かっていくので、高橋氏が「消費者にもコスト負担を理解してほしい」というように国民の意識が高まれば日本の技術が損に終わることはない。
そのような理想的な国家を目指す中で、「 CO2 の排出量が多い東京電力だからこそ、逆に解決策がたくさんある企業となってほしい。