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教育


 

インターネットは民主主義の敵か、味方か
2017/07/22                     須藤亜佑美(17)

 去年のアメリカの大統領選挙では、「どの大統領候補を支持するかによって、Facebookなどで受け取る情報が大きく異なってしまう」という現象が話題になった。また、私たちは普段インターネットを通して数え切れないほどの情報を得て、発信しており、もはや、Google, Facebook, Twitter, LINEなどのサービスは現代人の生活にとって欠かせない存在となった。しかし、そこまで身近となったインターネットサービスを私たちは正しく使えているのだろうか。「フィルターバブル」と称される、インターネットの情報の「タコツボ化」が起きている現状について、朝日新聞のIT専門記者の平和博さんにインタビューをした

 「フィルターバブルは情報のパーソナル化によって生じる現象です」と平さんは説明する。FacebookやGoogleの検索エンジンは、ユーザーがどのようなサイトや記事にアクセスしたかというデータを常に集めており、フィルターにかけて、そのユーザー個人の関心に合う情報を中心に表示している。Facebookによると、1日にニュースフィードに届く記事の本数の平均は1500本だが、画面に表示されるのは300本のみ。つまり、8割はFacebookのアルゴリズム(コンピュータが自動的に情報を処理するプログラム)によって、そのユーザーの興味のなさそうな情報は排除されていることになる。結果として、同じサービスを受ける友達がいても、または、同じ言葉を検索エンジンで検索しても、各人によって、表示される情報が変わってくる。こうした仕組みは、インターネットサービスが、収入となるサイト上の広告を見てもらうために、閲覧の滞在時間やアクセス数を増やしたいという意図に基づいている。タダのサービスにはタダである理由があるのだ。

 しかし、そのフィルターバブルの何が悪いのだろうか。私たちにとって関心のある情報だけが流れることは、むしろ効率的で良いことなのではないのか、と思う人も多いかもしれない。そのような疑問に対し、平さんは「隣の人がどんな情報に接しているのかを知らず、自分が見ている情報が世界の全部だと思い込んでしまうと、民主主義が成り立たなくなってしまう危険性があります」と平さんは前かがみになりながら熱弁する。「民主主義とは様々な立場の人が情報を共有し、議論を通じて共通の土台や理解を作ることで初めて成立する。情報の共有ができず、相手が何を考えているのか関心もなく、また分からないとなると会話が成立しない。そうするとお互いを理解し歩み寄る姿勢が見られなくなる。これは非常に怖い状況です」と続ける。インターネットサービスによってピンポイントで提供される、自分の意見に合う情報や関心のある情報のみを受け取ってしまうと、どうしても視野が狭くなってしまう、ということだ。

 まして、フィルターバブルの存在に気づいていないがゆえに、自分の受け取る情報がすべてだと勘違いしてしまうことが問題だと平さんは強調する。実際、東京の学校でアンケートをとり、「人によってインターネットでの検索結果が違うことを知っていますか」と尋ねたところ、35人中28人は「知らない」と答えた。こうした「情報のタコツボ化」という問題が生じていることを知らないと、対策もとりようがない。

 「フィルターバブル」による情報のタコツボ化は、避けることはできるのか。それは、「サービス設定を変えることで、フィルターを外すことも可能」と平さんはいう。「ただ、アルゴリズムを変えるための設定はパソコンの非常にわかりにくいところにあり、ある程度の知識がないと設定を変えることはできない。ただ、自分が利用するサービスがどういう仕組みなのかを理解した上で、自分の好みや考え方と違う情報を意識的に集めるようにすることで、『フィルターバブル』の外側に出ることは可能です」と平さんは真剣な眼差しで訴えた。

 「民主主義」は一般人にとって、まして高校生にとっては、掴もうとしても掴みようがない、ふわっとした概念のように感じられる。しかし、根本的には、自分の立場とは違った様々な意見を聞くことから始まるのではないか。意識さえすれば、自分の「フィルターバブル」の外の情報は私たちの手の届く範囲にある。インターネットが民主主義の敵となるか、味方となるか。それはユーザーの肩にのしかかっている。

フィルターバブル問題を知る
2017/07/22                     愛澤 響(18)

“デジタルネイティブ世代”とも呼ばれる1980年以降に生まれた人々にとって、インターネット上で情報をシェアすることは、もはや日常生活の一部である。世界中の人々と繋がり、多様な意見を交わし合い、また“ググり(Googleで検索すること)”さえすればどんな情報も手に入る。そんな感覚を多くの人が日々感じている。しかし、ある問題の実態を知らないと、ネット情報が公平には届いていないことに気が付かない。

ある問題とは“フィルターバブル問題”だ。Googleなどが検索結果のランキングを画面に表示する際に起きている。検索エンジンはアルゴリズムという機能を使い、ユーザーの興味に合う情報を選んで表示する。逆にそのユーザーが興味のなさそうな情報は排除してしまう。その結果、観点が違う情報から隔離され、実質的に自分だけの文化的、思想的なバブルの中に孤立してしまう危険性を秘めている。

 このフィルターバブル問題をもっと詳しく知り、解決策を見つけるために、朝日新聞社IT専門記者で、デジタル分野の動向を追い続ける平 和博氏に話を聞いた。平氏は15年以上この問題に注目してきたという。  

平氏によると、Facebookのタイムライン上ではユーザーの好みやシェア数に見合う情報が主に表示され、当人にとって関心がなさそうな約8割の残りの情報は自動的に削除されているという。「その結果、異なる意見を持ったユーザー同士が歩み寄り、社会全般で共通する理解の土台をつくることが難しくなる」と警鐘を鳴らす。「インターネットが民主主義の敵になる、という可能性もはらんでいるのです」と真剣な面持ちだ。

フィルターバブル問題が起きる背景には、広告収入を得るためにユーザーになるべく長い時間SNSを利用してもらおうとするソーシャルメディアの運営会社の姿勢もある。ただ、ユーザーが幅広く公平に情報を得るためには、「SNSのシステムをしっかりと理解することが重要だ」と平氏は述べる。平氏は、その一例としてパソコンを開き、FacebookとTwitterのタイムライン表示設定を切り替えることが可能なことを示してくれた。「ハイライト表示」から「最新情報表示」に切り替えることで、全ての投稿が時系列で流れ始めた。これで自分に興味のない情報、または違う考え方の意見に出会う機会が増える。

だが、問題はさらにある。平氏は「フェイクニュース(偽情報)がフィルターバブルを狙いすまして情報を混乱させている」ことを憂慮している。平氏によれば、その対策として政府、メディア、そしてサービス事業者が様々な取り組みを行なっており、ドイツではFacebookなどがフェイクニュースなどを排除しなかった場合、多額の罰金を科す法律を作った。また、FacebookやGoogleなどのサービス会社側は、フェイクニュースによってホームページへのアクセス数を稼ぎ、広告収入を増やしているサイトに対して、広告を配信しない対応策をとっているようだ。アメリカの既存メディアも情報を確認するノウハウによって事実確認を行い、フェイクニュースの拡散を防ぐ対策をとっているという。

平氏は、「一番重要なのは、ユーザーのリテラシー(判断能力)です」と強調した。従来であれば、新聞やテレビの報道を鵜呑みにせず、批判的に捉えるというメディアリテラシーが必要だった。それに加えて、SNSの普及に応じた新たなメディアリテラシーが必要になったという。平氏が重要視しているのは、情報の発信源や内容を確認し、その情報を検索にかけてみて他のサイトとも比較し、真偽を見極める分析力と、その投稿をシェアするべきなのかどうかをしっかりと考えた上で決めるといった判断力である。

東京で高校生47人にアンケートを行った結果、ネットは使う人によって検索結果が違って出てくることを知っているのは全体の20パーセントに満たなかった。フィルターバブル問題という言葉を知っている人数の割合はさらに少なく、学校ではメディアリテラシー教育が十分になされていないことが分かった。インターネットやSNSの進化が目まぐるしいため、学校が教材を作り、教師が専門知識を学ぼうとしても追いつかない状況だ。

平氏への取材と、高校生へのアンケートを通して、自分たちの力でフィルターバブルを乗り越え、できる限り公平な目で情報を見るようにしなければならないことが分かった。そのためには普段使っているSNSのシステムを十分に理解する必要だ。そして情報を発信する立場となれば、読者がどんな情報を欲し、またどのような伝え方をすれば真意が伝わるのかをしっかりと考える必要があるということをもっと多くの人が認識する必要があるだろう。

 

 

 

 


▲平和博氏