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教育


 

夫婦別姓
2012/09/02               毛利 美穂(17)

 現在の日本では、夫婦双方の希望であっても夫婦別姓は法律では認められていない。しかし1996年には法制審議会が選択的夫婦別氏制度を含む「民法の一部を改正する法律案要綱」を答申していて、一時は夫婦別姓が日本で認められるのも間近であると思われていた。ではなぜ未だに夫婦別姓は行われていないのか、賛成派、反対派の双方から話を聞いた。

 榊原富士子弁護士は夫婦別姓を希望する人の大きな理由として、それぞれのアイデンティを尊重できるということをあげた。名字が変わることで、他人がプライバシーに踏み込んでくるということもその理由に挙げた。

 東京都に住む夫婦別姓賛成派の渡辺二夫氏と加山恵美氏(いずれも40代)は、事実婚夫婦である。二人は一度渡邊姓で結婚したが、恵美さんが仕事上で旧姓の加山を通称として使用することに限界を感じ、姓のために戸籍上は離婚した。
  
 反対する男性たちは、名字を変えることで女性が男性の家に嫁ぐという考えや、名字を変えることが離婚した場合に困るという考えに結びついてしまうという理由からである。しかし渡辺氏たちは、国民全員が夫婦別姓にするべきだといっているのではなく、夫婦別姓にすることを選択できるようにしてほしいと考えている。加山氏は「離婚するときには、相手の姓か、自分の姓かを選べるのに、結婚する時に選べないのはおかしい」と話した。旧姓の通称使用は公的文書やホームページのプライバシーマークページなどではできない。そこだけ違う姓での記入になってしまうのである。また事実婚だと、互いに法定相続人にはなれず、手術の立会いや承諾書に署名する際、家族として扱ってもらえない可能性があるなどさまざまな日常生活上の不便や不利益が発生しすることがある。

 これに対し、反対派の亀井静香衆議院議員は「今までの風習を乱してしまうし、社会生活で不便が生じてしまうような危ない冒険をする必要はない」と語った。強要ではなく選択性にすることを認めて欲しいということにも、「話し合って、姓をどちらかに合わせられるから男女差別でもないし、便利さを壊してまで変えてしまう必要はない」と言う。また、生まれてくる子供の姓が親と違うというのは世間に本当の親子であるかと疑問を抱かせてしまい、幼い子供の姓を親が勝手に決めてしまうことにも問題があると指摘した。賛成派の渡辺氏は「子供の姓と親の姓が違うというのは、これから制度を整えていけば世間にも夫婦別姓が知られるだろうし、問題はない。また、『加山君のお父さん』と呼ばれても柔軟に対応すれば、問題ないと」と話した。榊原氏は、「夫婦別姓の選択肢を認めるのは、女性があたり前に働きつづけることを社会が支援すること、婚姻をしやすくすることでもある」と語った。

 先進国の中で夫婦別姓が認められていないのは日本ぐらいであるが、これからの夫婦別姓問題は、少子化にもつながってゆき、私たち若者に大きく関係してくる。将来結婚する時に、姓を選べるようになっているか、今のまま選べないのか、注目していくべきなのは私たち若者なのである。

 

夫婦別姓のメリット・デメリット
2012/09/02               飯田 奈々(16)

 夫婦別姓選択制に対する平成8年6月の世論調査では、「婚姻をする以上,夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきであり,現在の法律を改める必要はない」と答えた人は39.8%だったが、平成13年5月調査では29.9%に低下した。逆に「夫婦が婚姻前の名字を名乗ることを希望している場合には,そのように法律を改めてもかまわない」と答えた人は32.5%から42.1%に上昇した。

 ここから分かるように、国民の夫婦別姓への関心は徐々に高まってきているようだ。そこで、夫婦別姓について賛成派の弁護士である早稲田大学大学院法務研究科教授の榊原富士子氏と会社員で夫婦別姓を名乗るため事実婚をしている渡辺二夫氏、反対派の衆議院議員、亀井静香氏にインタビューした。

 榊原氏は夫婦別姓のメリットをこう語る。「まず本人の意に反して自分のアイデンティティの表象である姓を失わずにすむ、結婚・離婚や離婚を都度他人に知らせたくないという人もいるがプライバシーを守る事ができる。次に、姓が変わることにより仕事上で積み重ねてきた実績や信用を失うことがあるが、別姓を選ぶことができればそうした苦労をせずにすむし、働きつづけやすくなり、女性のさらなる社会進出の助けとなる。最後に、夫婦同姓しか選べないと女性が男性の姓に合わせる慣習がいつまでもなくならないが、夫婦別姓が選べれば結婚相手との対等な感じが生まれる。つまり、夫婦の平等の象徴になる」と。

 また、「私達が訴えているのは夫婦別姓選択制であるから、夫婦同姓にしたい人には何も影響がない。つまり、デメリットはない」と渡辺氏は言う。

 一方、国会では鳩山政権のときに夫婦別姓選択制の大合唱であったが、亀井氏が首を縦に振らなかったために、それが実現しなかったという。夫婦の姓問題の第一線で行動してきた亀井氏はこう語る。「夫婦別姓のメリット・デメリット議論以前に、あえてしなくてもいい事をなぜしなければいけないのか分からない。今が便利なのに、それを壊してまで混乱を招くような事への必要性を感じない」と。

 2012年5月16日世界保健機関(WHO)は「World Health Statistics 2012(世界保健統計2012)」で、日本の出生率は1.4%でWHO加盟国193カ国中175位であると発表した。少子化により、兄弟姉妹のいない男女の結婚が増えどちらかの“姓”がとだえてしまうという事が多発する。日本では、「個人としての姓だけでなく、夫婦双方の親から受け継いできた姓を残したいという理由から夫婦別姓選択制を求める声も少なくない」と榊原氏は言う。別姓選択制は、結婚奨励策であり、ひいては少子化対策でもある。なんらかの手を打たなければならない時期に来ている。

 

 

 


▲渡辺・加山夫妻に取材

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


▲ 榊原富士子弁護士に取材

 

 

 

 

 

 


▲亀井静香氏に取材