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教育


 

少年法改正−いまどきの子どもは「怖い」?−
2008/03/15                原 衣織(16)

 「少年法」はその名の通り、罪を犯した少年に関する法律だ。しかし、その内容を正確に把握している「少年」は、日本にどれほどいるのだろか。たとえば殺人などの重大な罪を犯した場合には、小学五年生でも少年院に入る可能性があるということを、中学二年生でも無期懲役に処せられる可能性があることを。

 今から8年前の平成12年、半世紀ぶりに少年法の改正が行われ、その中の「刑事処分可能年齢の引き下げ」と「16歳以上の少年が殺人等を犯した場合の原則逆送」が「厳罰化」だとして大きな反響を呼んだことは記憶に新しい。さらに昨年11月には「少年院への送致可能年齢の下限の引き下げ」が実施された。これらの改正の背景には、近年の少年犯罪の「増加」と「凶悪化」があると言われている。

 マスコミがセンセーショナルに取り上げる現代の非行少年たちは、まるで現代社会が生み出したモンスターのようだ。わたしたち現代の子どもは、昔の子どもと比べて質が変わり、凶悪化しているのだろうか。「厳罰化」の流れがこのまま続くと、未熟な子どもたちがどんどん罰せられるような社会になってしまうのではないか。

 このような疑問を持った私たちチルドレンズ・エクスプレス記者は、当事者である子どもの立場からこの問題を伝えたいと考え、法務省刑事局の飯島泰氏、並びに岡崎忠之氏、そして神戸須磨連続児童殺傷事件の審判を担当した元裁判官であり、現在は弁護士の井垣康弘氏に話を聞いた。

 まず意外にも法務省は、世間の見方とは違い一連の改正を「厳罰化」とはとらえていない。「昨年の改正による少年院への送致可能年齢の下限の引き下げについては、個々の少年の問題性に応じ、教育的な処分を可能にするものであり、いわゆる厳罰化ではない。平成12年の改正は刑法の刑事責任年齢(14歳)と少年法の刑事処分可能年齢(16歳)のダブルスタンダードの是正」だという。また、少年犯罪の件数について法務省は「ここ10年は大きく増えても減ってもいない。憂慮すべき状況であり、神戸須磨連続児童殺傷事件のような凶悪な事件も見受けられる」と述べた。ということは、少年犯罪はマスコミで言われているほど増加していないと法務省は認識しているということだ。

 では、少年犯罪の質は変化したのだろうか。法務総合研究所が発行している『平成17年度版犯罪白書』には、「少年院教官の認識では、最近の非行少年の中身に変化が見られ、その処遇が困難になっている」とある。そのデータによると「処遇困難な非行少年が増えたか」という質問に対し「増えた」と答えた教官が全体の70パーセント以上を占める。非行少年の中身の変化とは、具体的にどういったものだろうか。何千人もの非行少年に接した経験を持つ井垣氏は「昔に比べ質が変わったとは思わない。変わったとすれば恐喝が減り、ひったくりや窃盗が増えたことくらい」と述べる。最近の子どもにとっては「脅す」というコミュニケーションが必要とされる恐喝よりも、顔も見ず言葉も発せずにいきなり持ち物を無理やり奪うひったくりのほうが容易らしい。

 もうひとつ疑問なのは、少年法は私たち子どもに関する法律であるのに、子どもの意見は反映されず、また法律の中身についても何も知らされていないことだ。この疑問に対して法務省は、「パンフレットを作ったり『犯罪白書』を出したりしているのでそれらを見て欲しい。一般人に意見を聞く『パブリックコメント』という制度も設けている」とこちらからの積極的な行動を求める。義務教育の期間に学校にパンフレットを配布することなどは不可能なのかと尋ねると、「お金に限りがあるので全ての中学校に配るのは難しい。学校からの要請があれば講義したりはする」という答えだった。

 しかし、当事者である子どもだけが蚊帳の外におかれている現状の打開のためには、義務教育の段階で少年司法に関する適切な知識を子どもに与えることが不可欠である。裁判員制度の実施も踏まえ、法学教育としてカリキュラムを組むのはどうだろうか。

 「これからの少子化の時代、子どもを『怖い』と考える国は滅びる。子どもは『立ち直る』そう信じることが大切」と井垣氏は言う。「理解できない」と切り捨て、重い罰を与えることは簡単だ。しかし、いくらその時罰を与えても、その少年がきちんと自分の罪を自覚し更生しないような処分では、根本的な解決にはつながらない。そもそも少年法とは「二十歳未満の少年が罪を犯した場合には、成人のように罰を与えるのではなく教育的働きかけによって立ち直らせる」という考え方に基づく、「健全育成」を基本理念とした法律である。大人が持つ子どもに対する恐怖心のせいで、少年法のこの基本理念が忘れられたり、あるいは改変されたりするようなことがあってはならない。

 学校や親、地域が一体となって子どもをケアすることにより非行に走るような少年を生み出さず、また非行少年に対しては「立ち直る」ことを信じて社会全体で見守りながら育て直していく。そんな社会になることを、子どもの一人として期待している。

少年犯罪とどう向き合うか
2008/03/15               貝原萌奈実(18)

 20歳に満たない少年が罪を犯した時に、成人とは違う扱いにすることを定めた法律が「少年法」である。この少年法は平成12年の改正により、刑事処分が可能な年齢が16歳以上から14歳以上に引き下げられ、16歳以上の少年による故意の犯罪行為による死亡事件は原則逆送されることとなってしまった。さらに平成19年の改正では、少年院に送致できる年齢の下限が14歳以上から「おおむね 12歳以上」に引き下げられた。

 法務省刑事局の刑事法制企画官である飯島泰氏によると、昭和23年に新憲法制定に伴ってアメリカの少年裁判所の影響を受けて制定されたのが我が国の少年法だという。そして、少年法が非行を犯した少年の取り扱いを成人と区別している理由については、「少年は、精神的に未成熟で心情も不安定であり、成人と比べて周囲の影響を受けやすいため、非行を犯したとしても、それは深い犯罪性によるものではない場合も多い。また、少年は人間的に成長する課程にあり、成人よりも教育的な働きかけによって立ち直りやすい。そこで、少年法は処罰よりも教育によって非行を犯した少年を立ち直らせるという、健全育成を基本的な考えにしている」と飯島氏は言う。

 だが、そんな少年法は平成12年に世間の多くの人が「厳罰化」と考えるような大きな改正がなされた。「厳罰化」と呼ばれることに関して飯島氏は、「元々刑法に定められた刑事責任年齢が14歳以上であるのに、少年法では16歳以上としていたため、ダブルスタンダードであったのを是正したのであって厳罰化ではない」と言う。また改正の経緯については、「神戸須磨連続児童殺傷事件のような凶悪・重大な事件を受けて、被害者からの要望もあり、色々な要素が絡み合って、このままでいいのかと考えて平成12年の改正を迎えた。重大な事件を起こせば罰せられるということを明確にすることは、社会生活における責任を自覚させることになる」と述べていた。

 神戸須磨連続児童殺傷事件は、10年経った今でも忘れられない人の多い衝撃的な事件だ。では、実際にこの事件の加害少年を最も近くで観察した人物は、「動機が理解できない残虐な犯罪」と言われている最近の少年犯罪についてどのように考えているのだろうか。当時この事件の担当裁判官を務め、現在は弁護士として少年事件の付添人を中心に活動している井垣康弘氏に話を伺った。井垣氏は、「最近の子供の質が昔と変わったとは思わないが、犯罪の種類に関して言うと最近は恐喝が減って、強盗や窃盗、ひったくりが増えている。相手を脅して行う恐喝と違って、ひったくりは相手の顔を見なくても行うことができる。これは最近の子供にコミュニケーション能力が不足しているからではないか」と答えた。

 最近の厳罰化と言われる動きを見ると、このままどんどん子どもが子どもとして扱われる年齢が下がってきてしまうのではと不安になるが、井垣氏は「今後厳罰化が進むとは考えにくい」と言う。また大人の刑罰に関しても「懲らしめという考え方がなくなり、教育刑が中心となっていくだろう。死刑もなくなる」と述べた。井垣氏によると、アメリカで犯罪増加に伴って厳罰化路線が図られたことがあったが、効果はなかったという。一方、ヨーロッパは現在教育路線で、犯罪被害者のケアもちゃんと行われているし、少年審判にも裁判員が導入されているということだ。「刑罰の費用は年間300万円位かかっているが、教育となるとその倍はかかる。また厳罰化を進めることは選挙民に受けるという理由で、厳罰化を推す人もいる。厳罰化を進める日本は遅れているが、そのうち修正されるだろう。」

 「殺人を犯してたった数年で少年院から出てくるなんて、少年審判は甘すぎる」―――こんな声をよく世間で耳にする。たしかに、少年院での処遇期間というのは、大人の犯罪者の刑期と比べてかなり短い。だが実際、少年院での教育には刑罰にはない大きな効果があるようだ。少年院は学校と違って、生徒4、5人につき先生が1人付き、各々に必要な教育を施して細かい項目別に評価している。そして少年院の子供たちは連帯感が強く、互いに教え合いもしているという。井垣氏は「学校で勉強がわからず、家でもほったらかしにされている子どもというのはクラスに3割ほどいるのだが、非行に走るのがそのうち1、2割。そういう子供たちがいることをわかっていながらほったらかしにして、非行に至ってから少年院で初めて勉強させるというのは冷たいシステムだ。こういった実態を、もっと社会一般の人にも知ってほしい」と切実に語った。

 当事者である私たち子どもも、少年法や少年院での処遇についてほとんど知らない。法務省では法改正の内容を説明するパンフレットを作ったり、少年非行の実績を分析し「犯罪白書」という本を発行したりしているが、全国の中学校に配るなどといったことはお金に限りがあるので、できていない。井垣氏は「地域と一体になって、勉強についていけない子どものケアをしたい」と語っていた。井垣氏の想いを実現させるためには、もっと社会一般の人々にもこの実態を知ってもらう必要がある。少年犯罪を減らすために今求められているのは、この実態をほとんど知らない「社会一般の人々」の力なのである。

 

 

 

 

▲ 井垣康弘弁護士にインタビュー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▲ 法務省刑事局飯島泰氏にインタビュー