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女性リーダー 林文子横浜市長
〜メールやツイッターだけにたよらず、直接対話をして人間関係をつくっていくことが基本〜

             2010/09/20 建部祥世(18)

 2010年9月20日〜21日、東京新宿の京王プラザホテルで「APEC女性リーダーズネットワーク会合」が開催され、男女共同参画社会の実現のために女性達の経済活動の発展に寄与することを目的としてAPEC(アジア太平洋経済協力会議)に加盟する各国の女性リーダーたちが集結した。 2日目のパネルディスカッション「女性たちによる経済活動創造への挑戦」にパネリストとして参加した林文子横浜市長に、女性リーダーとして活躍されてきたお話を伺った。

林さんは、高校をご卒業後、繊維会社に勤務された後、家電メーカー、自動車販社、外資系自動車販社、小売流通など、異業種の転職を重ねながらキャリアを積み上げてこられました。

● 高校時代には、ご自分の将来をどのように考えていらっしゃいましたか。

 私は、小さいころから家計の足しになればとアルバイトをずっと続けてきました。小学5年生のとき、母の知人が経営する貿易会社で、お客様にお茶をお出しするお手伝いをしたのが最初で、それ以来、郵便局の年賀状の仕分けなどいろいろなアルバイトを経験しました。その経験を通して、お金をいただいて仕事をすることの大変さ、逆に達成感や自分が成長する喜びを実感していました。ですから、就職したら責任のある仕事をし続けたいという思いをとても強く持っていました。

 ですから、社長になりたいとか、市長になりたいという将来像を、全然描いていなかったんですよ。目の前の仕事をしっかりして、回りの人に育てていただいた結果として、現在の自分があるのだと思っています。

女性がキャリアを積んでいく上で障害となったものは何ですか。「ガラスの天井」(もしあれば)をどのように打ち破りましたか。

 やりがいのある仕事を求めて転職を重ねて、自動車セールスの仕事に巡り合いました。当時は「営業を女性がやるものではない」というような風潮がありましたが、幸いなことに、私を雇ってくれる販売会社の社長さんに出会うことが出来ました。先輩の男性職員は、一緒に営業に回ってはくれませんでしたが、トップセールスの方が書いた本を読んで、「1日100件のお宅を訪問する」という、その方が勧める方法を素直にやることに決めました。素直が一番です。  いろいろな障害はありましたが、その障害は、振り返ってみると、お客様はもちろん、いろいろな方との出会いによって乗り越えることができたのだと思います。  それから、人から見れば大きな壁に見えることも、私は、チャンスにしてしまうところがあります。

 苦しいさなかは、目の前に立ちはだかる障害にまともにぶつかって、弾き飛ばされますよね。もちろん、私にもそういう経験があります。でも、どんな人やできごとにも「共感と信頼」を持って接し、そして熱意を持って取り組むこと。すると、どこからか、救いの手が差しのべられたり、壁を乗り越える方法を思いついたり、いつのまにか壁が後ろに見えていたりするのではないでしょうか。

● 実業界で女性がキャリアを積んでいく上で、どういうことを心がけたらいいと思いますか。

 女性の包容力、これは強みです。男性は相手の話を半分聞かないうちに、その内容に対する反論を考える傾向があるように思います。大人になればなるほど理屈っぽくなって、相手を打ち負かそうという気持ちが強くなるんでしょうか。でも、一般に女性は相手の話を最後まで良く聞き、寄り添おうとする、おもてなしの精神があります。相手の立場や気持ちをわかろうとし、本当に必要としていることを見抜いて提案することで、信頼を得る。これはビジネスの基本です。女性の強みであるおもてなしの精神を、日々磨き、発揮していくことが大切です。

 また、リーダーとして大事なことの一つに「人を褒める習慣」があります。部下や仲間の良いところをみつけて、褒めて、能力を発揮してもらえば、良い仕事につながります。わりあい男性はシャイで、褒め上手ではありません。リーダーになっても、部下や同僚に対しても、おもてなしの精神を発揮することが大切です。  
 女性の特性を生かした方法で、相手に共感を得る接し方を模索し、信頼を得て行くことを心がけてみてください。

● 全く異なる分野での転職で、どのように経営に参加し、ネットワークを広げてこられましたか。

   実は、経営者には、すべてスカウトされてなりました。全く異なる分野からのお誘いには、驚き、戸惑った、というのが正直なところです。でも、そのときどきに、支えてくれる方があり、そして、社員を元気にして欲しい、との思いに打たれ、お引き受けしてきました。
 仕事以外の趣味や交友関係が、仕事の助けになることが随分あります。自動車販売をしていたときも、お店でコンサートや能・狂言をやったりしました。近くに住宅街がないお店でしたが、足を運んでくださるお客様がかなり増えました。これも、培ってきた人のつながりに助けられて実現したことです。好奇心をもって、直接人と向きあう。民間のときも、市長になっても同じですが、メールやツイッターだけにたよらず、直接対話をして人間関係をつくっていくことが私の基本です。

●女性が男性社会の中でリーダーになられる際に一番ご苦労されたことは何ですか。

   とにかく、女性リーダーの数が少ないですよね。「女性の上司が来る」ということは、男性にとって当たり前ではないわけです。まして、「自分より年の若い女性」が上司になると、プライドの高い男性社員であればあるほど、どう付き合ってよいかわからず、戸惑ったり反発したりするのは、当たり前です。
 だから、苦労というより、そうなるのは当たり前なのだから、上司である私から声をかける、褒める。そのことは徹底して実践しました。

 誇り高い男性経営陣をまとめる仕事もしましたが、そういうときには、女性であることが有利だったようにも思います。男性に言われるとカチンとくることでも、女性である私が言えば、丸く収まる、ということもありました。 br> 男性社会であろうと、男女がともに活躍する社会であろうと、リーダーとなって責任を負っていくことは、やりがいがある一方苦労もあります。その苦労を乗り越えるためにも、仕事以外の趣味、交友関係をつくることを心がけ、気分転換や息抜きを上手にすることが大切ですよね。

● 現在は政治家となられましたが、ビジネス界と政界とでは、職場環境や女性としてのご苦労は異なりますか。

 私は政治家になったというより、368万市民の生活をお守りする市役所という行政のトップである市長になった、と思っています。
 その行政のマネジメントは、法律の下で条例や規則など枠の中で行うので、制約も多く、結果を出すのに時間がかかります。民間だと自分の意思で、あらゆる手段を講じて利益を上げるための努力ができますが、行政ではなかなかそうはいかない。市長というのは、民間の経営者以上に忍耐が必要で、はるかに難しいと感じています。
 そして、市長の仕事は本当に分刻みで忙しい。土日の2日を続けて休むことは滅多にできません。家族団らんの時間が本当になくなってしまいました。女性市長だから苦労する、ということはありませんが、妻、母という点からすると、苦労は多くなったかもしれませんね。

●今の女子大生や女子校生に将来女性リーダーになるためのアドバイスをいただけますか。

  仕事で成功することが、お金をたくさん稼ぐことや役職につくことだと思っている人が多い。一方、一生の仕事が何かわからなくて就職しない人がいるとも聞きます。
 自分のやりたい仕事を学生時代に見つけ、将来の目標をしっかり定めることは、本当に難しいことです。
 私だって、母を楽にさせたい、という思いで当時の花形企業に就職してみたら、「女子は5年もすれば退職することになっている」と言われ、入社早々目の前が真っ暗になりました。トップセールスを続けることになった自動車販売の仕事も、決して、学生のときから自分のやりたいことと見定めていたわけではなく、社会人になって10年以上経ってめぐり合い、頑張った結果、天職ともいえるような大好きな仕事になったのです。
 まず、目の前の仕事を一生懸命にやりましょう。そして、好奇心をいっぱいにして、趣味や遊びにも一生懸命取組みましょう。

 仕事は、人生を豊かにします。そういう仕事にめぐり合えるよう、今やるべきことはきちんとやる。アルバイトでも家のお手伝いでも、その仕事の楽しさを実感できるくらい、一生懸命取り組みましょう。そして、たくさんの人と交流し、いろんな場所に行って、経験を積み重ねてください。
 みなさんが、生き生きと活躍なさることを、本当に心からお祈りし、期待しています。

取材をした記者の感想

建部祥世(18)

 2005年、アメリカの雑誌「フォーチュン」の「米国外のビジネス界『最強の女性』」ランキングで10位に 選ばれた林文子横浜市長。「一体、どのような女性なのだろう」と、会う前から緊張感でいっぱいだった。 しかし実際にお会いしてみると「最強の女性」のイメージとはまるで違う、とても物腰が穏やかで気品漂う、 柔らかな雰囲気の女性で、すぐに私の緊張は解きほぐされた。これが林市長が会合の中でおっしゃっていた 「女性の強み」なんだと、その時実感することができた。このような人を引き込める魅力は、人に対して誠 心誠意を持って素直に接してきた林市長だからこそ醸し出せるものだと思う。今はメールなどのIT技術を使って、 直接会わなくても簡単にことを済ませられてしまうが、活字の文面だけでは自分の熱意や人柄を伝えることができない。 そしてまた、相手の表情や感情を知ることもできない。やはり生の人間同士で直接対話をしていくということ、 それが本当に信頼できる人間関係の構築に必要なことだということを学んだ。
 「仕事」だけではなく、「生きていく」ということ自体が人間関係によって成り立っているもの。 林市長のようにありのままの素直な自分であり続け、自分も相手も気持ちいい、そんな人間関係を築き上げていきたいと思った。

 

 

▲ 林文子横浜市長