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教育

「ヤッシーの2学期」
2002/12/09                   秋津文美 (15歳)

 チルドレンズ・エクスプレス記者は、8月に長野県の「脱ダム」について、長野県の中学生、浜康幸県会議員(当時)と石坂千穂県会議員に取材した。今回さらに、圧倒的多数で再選を果たした田中康夫長野県知事(46歳)に話を聞いた。

「2ヶ月間の夏休みをもらいました。でも結局、県内を回ってお爺さんおばあさんと話をして、仕事をしてしまいました」と田中知事は不信任案から知事再選までを振り返る。「赤ちゃんを抱いたお母さん、腰を曲げたお年より、そういった人と一緒に歩いて行こう」としていると言う。「そういう人も税金を払っているのです」。

今も県民の声を集めるのに「車座集会」、「県民の声ホットライン」などさまざまな対応をしている。「私はリーダーです。リーダーとして社会をこうしようと言っているのです。県民は私に対して意見を言うことができます。それらに全て目を通しています。その中で、私は市民がどう思っているのかを常に考えています。脱ダム宣言もその一つです。私が考えていることと、市民が願っていることが一緒ならば、それをどんなに抵抗があろうとも実現するために努力をします。それがリーダーです」と、新しい形の知事の姿勢を強調する。

長野県民はオリンピックが終わってから急速に意識が変化した。県民のためにならない
公共事業はもう望まなくなった。それは4月の県会議員選挙であらわれるだろうと話す。常に県民と意見を交換し、情報を全て見せて、県民に判断してもらう。だから県民は自分から声を出さないといけない。当然、県民同士の意見の対立もあるが、「最終的に民主主義だから多数決」だそうだ。

長野の中学生は田中知事の前期を「長野の雰囲気を変えてくれて良かった」と評価する。「変るために県民は田中康夫を知事にした」と自負する田中知事と、改革の決意を固めた長野県民。夏休みを経て「長野モデル」はこれからどのような姿を見せてくれるのか。田中知事の2(学)期にワクワクするのは、改革が必要なのが長野だけではなく、これからの日本のすべてであり、それを次世代を担う私たち子どもも期待しているからかもしれない。


●「田中康夫長野県知事に会う」      原 衣織 (10歳)


「ごめんねー。ヤッシー遅れちゃったよー」と、汗をふきふき私たちチルドレンズ・エクスプレスの記者たちの待つ部屋へ入ってきたのは、今年の8月に行われた選挙で県民の圧倒的な支持を受けて再選された田中康夫長野県知事である。その田中知事が掲げた「脱ダム」について興味を持った私たちは、この夏、長野県の子供たち、「脱ダム」賛成派・反対派の県会議員を取材した。そして今回は、田中知事本人に話を聞くことができた。

田中知事が「脱ダム」を宣言したのは、環境、財政の2つの理由からだという。
 まず、環境についてだが、ダムを作ると水が濁って魚が住めなくなるなど、自然環境が壊れてしまうので、もうダムは作らない方がいいという考え方によるものだという。前回の取材で話を聞いた「脱ダム」反対派の県会議員は、「ダムを作らずにコンクリートの堤防を作ると、ダムを作るときよりも周りの環境が壊される」と主張していた。それに対して知事は、「堤防を3面張りの大規模なものにしようとしなければ、環境破壊にはならない。ダムを作らない方が環境破壊になるという言い方は、本末転倒だ」と反論する。

次に、財政については、「ダムを作るお金は、約7割は国が出すが、残りは長野県が出さなければならない。その7割のお金も、日本中の人が払った税金だ。それに建設も、東京や大阪の大きな建設会社がやってしまうので、長野県民の仕事が増えるわけでもなく、ダムを作ることで長野県が豊かになるわけではない」と言う。つまり「脱ダム」宣言は、ダムのことだけを言っているのではなく、私たちがこれから「自然とどうやってつきあっていくか」や「みんなのお金をどうやって使っていくか」という大きな問題についての考え方を示したものなのだそうだ。

「脱ダム」に限らず、田中知事はどのようなやり方で長野県政を進めていこうとしているのか。知事のやり方をパフォーマンスだとか、強権的だなどと批判する人もいるので、それについて聞いてみた。すると田中知事は、「長野県では、知事が『このような長野県にしたい』という考えを明らかにし、それに対して県民が意見を出すことが出来るようにしている。『県民の声ホットライン』や『車座集会』を通じて出された県民の意見には、必ず知事が目を通し、担当者が直接、返事をする。そして、知事の考えと県民の願いが同じだった場合は、どんな抵抗があってもそれを実行する。それがリーダーの役目だ」と言う。そして、たとえ国に逆らっても、「県民が本当に望むことを実現するのが政治だ」と話す。

また、「車座集会」に対する批判については、知事は「それは実際に車座集会に来てみたことのない人、私と直接触れ合ったことのない人の言うこと」ときっぱり言い切る。「車座集会」での話し合いが終わった後、知事はまっさきに、赤ちゃんを抱いている女の人、腰の曲がったお年寄りの所に握手しに行く。それはパフォーマンスなどではなく、そういう人たちと一緒に長野県を作っていきたいという田中知事のメッセージなのだそうだ。

実際に会ってみた田中知事は、綿のようにふんわりとした雰囲気で、ゆっくりとやさしく話す人だったが、その意志は鉄のように強いのがとても印象的だった。長野県庁では、春休みには小学生も、大人の記者たちと一緒に知事記者会見に出ることができるそうだ。春休みには、長野県の子供たちも、直接知事と会ってみたらいいと思う。そして、「こういう長野県にしたい」という意見を直接言ってみてはどうだろうか。