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教育


 

今もなお埋まる地雷
2007/11/10         藤原 沙来(17)

 地雷は、対人地雷と対戦車地雷の2種類がある。対人地雷は5s〜 10 s程度の力を加えるだけで爆発するため、子どもが被害に遭うことも珍しくない。機能も長持ちするため、何年も前に埋められた地雷による被害が今も続いている。

 現在、内戦や戦争によって、1億個以上、約70国に埋設されていると言われる。1年に NGO や NPO によって撤去される対人地雷の数は約 10 万個とすると、完全に撤去するには 1,000 年もかかる計算だ。そして今も毎年数万個の対人地雷が、内戦や戦争がある地域や国では新たに埋められていると言う。対人地雷により死傷する人の数は年間2万5千人以上、約 20 分に1人の命、手、足、視力などが失われている。地雷事故にあった人の 8 割は、地雷があることを知っていながら、その日の生活のための農作業などで、地雷原へ入らざるを得ないのが現状なのである。

 このような恐ろしい兵器で、同世代の子どもたちが今も被害に遭っている現実を知った。そこで、地雷について調べようと思い、以前日本の NPO に取材をしようとしたところ、一回の取材だけでは充分に理解することが難しいという理由から受けてもらえなかった。

 そこで、3月 27 日から4月1日まで行われたカンボジア取材研修プログラムで、再び地雷について調べようと思い立った。カンボジアは10年程前まで内戦があり、地雷が兵器として使われていた国だからだ。

 3月 30 日に地雷博物館へ行き、館長であるアキ・ラー氏に話を聞いた。地雷博物館は、ラー氏自身により 1999 年に作られ、シェムリアップのアンコールワットの近くにある。建物は簡素な物置小屋のようで床板もなく、地面に起爆装置を除いた地雷を陳列しただけのものである。

 彼は夫人と一緒に地雷の被害を受けた子どもたちを引き取って生活している。ラー氏は、5才の時ポル・ポト軍に両親を殺され、カンボジア内戦( 1970 年〜 1998 年)を戦った元少年兵である。ポル・ポト軍として戦った際、自らの手で地雷を埋めた。その経験を生かし、今ではボランティアとして一人でプロテクターもつけず、鍬のみを使って地雷の除去を行い、多い時には1日に 50 個〜 100 個も除去すると言う。

 地雷博物館を建て、一人で除去をしている理由は「自分がポル・ポト軍の時に埋めた地雷によっていまだに被害を受けて苦しんでいる人がいるから」だと言う。罪の無い人達に被害を拡大してはいけないという使命感を持って活動しているのである。「除去を続けることでカンボジアのことを世界中の人々に知ってもらうこともできる」とも言う。ラー氏の地雷除去の方法は、1週間あればやり方を覚えられ、それさえ覚えてしまえばだれでもラー氏の活動に協力できる。

 地雷原では人々の行動範囲が限られ、農作業が出来なくなり、そのうえ地雷による傷の治療や後遺症のケアのためにもお金や人手が必要となる。ラー氏は今後も地雷の埋まっている村で除去を続け、村人と井戸や学校を作って、苦しんでいる人を助けたいと言う。

 シェムリアップにあるアンコール小児病院に行くと、広報のホ・オマ氏は「ここ2年ほどは、地雷の被害を受けて病院に来る人はいない」と言う。地雷はタイ国境に一番数多く埋まっていると言われているため、たとえ被害に遭ったとしても約100km離れたシェムリアップに来るまでに力尽きてしまうのが現実なのである。

 現在も数多く埋まっている地雷の除去は確かに難しい問題である。しかし、ラー氏が「ツアーガイドになるため、日本人がカンボジア人に日本語を教えるのと同じ要領で、日本人が地雷除去方法を学び、それをカンボジア人に教えることも出来るはず」と言うように、何らかのサポートはだれでも可能なのだ。

 カンボジアで地雷除去の活動を行っている多くの団体は、安全のために金属探知器やプロテクター、ヘルメットを使用し、お金と時間をかけて1つの地雷を除去する。一方、ラー氏は自分の体を使って除去をしていくために、お金も時間もかからない。ところが、ラー氏によって多くの地雷が除去されていくことは、多くの支援を受けたいカンボジア政府にとって好ましくないようだ。彼自身、自主的に除去活動を行ったために政府の反感を買い、地雷除去の国際的な資格を持っていないことを理由に活動を妨害したとして2度投獄された。

 地雷探知機などを使用してお金と時間をかけて除去する方法のほかに、ポル・ポト軍での経験を生かした、ラー氏による地雷除去方法もあることが、今回の取材によって分かった。経済力のある日本は、地雷を含む不発弾除去機械の開発に力を注いでいると言われている。しかし地雷除去に関しては、ラー氏のような人材を掘り起こして、支援することも視野に入れていくことが必要なのではないだろうか。

 実際に、カンボジアで現状を直接目にしたことで、地雷の恐ろしさに衝撃を受けた。同時に、私が日本で得た情報によって描いていた地雷の姿はそんなに甘いものではなく、日本で話を聞いただけでは十分に理解することは困難だと痛感した。除去活動をしている NPO に話を聞いて、日本にいながら何かしようと思っても、募金活動などが限界だろう。

  地雷除去の問題は、日本のNPOに取材が出来なかった時に言われた「一度の取材では理解が難しい」という意味がカンボジア研修で実感できた。今後も地雷に関する理解をより深め、今もなお悲惨な現実があることを把握し続けたいと思う。さらに、地雷によって起こる出来事も追い続けたい。

 

 

▲ 鍬のみを使って地雷の除去を行う、アキ・ラー氏

 

 

 

 

 

▲地雷博物館

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▲ アキ・ラー氏が除去した地雷の山