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国際

カメルーンから学ぶ
2007/3/27                 川口 洋平 (17)

 「カメルーンはどこにあるか正確に分かりますか?」この質問に答えられる日本人は多くないだろう。  中部アフリカにあるカメルーン共和国は、世界遺産の熱帯雨林「ジャー動物保護区」があり、その気候的特長からアフリカのミニアチュアとも言われている。砂漠、サヘル地帯、熱帯雨林地帯などアフリカの地理気候的特徴を、ほとんどすべて含みながら、国土面積475,442km、人口1,632万人で、日本の約1.2倍の国土を持ち、人口は東京都の人口とほぼ同じである。

 今年2月、カメルーンラジオテレビジョンのパーソナリティである、グレゴア・エンジャカ氏(44)が、日本におけるアフリカ報道を調査するために来日した。

 正直なところ私達日本人にとってカメルーンは、あまりなじみのない国だが、エンジャカ氏に取材したところ、カメルーンには非常に興味深い教育制度があることがわかった。

 カメルーンは1960年までフランス領、1961年までイギリス領だった地域に分かれていたことから、同じ国でも地域によって話されている言語が違う。公用語は主にフランス語と英語で、その他に237もの部族語があるが、カメルーンの人々はそれらの言語を巧みに操ることができるのだ。

 そこには画期的な教育制度がある。英語圏で生まれた子供は、フランス語圏の学校に行き、フランス語圏で生まれた子供は、英語圏の学校に通うというのである。エンジャカ氏もフランス語圏の出身だが、いまや英語はペラペラである。

 この制度によって、大体15歳ぐらいのときには、両言語を不自由なく使うことができるそうだ。さらに、13歳からはドイツ語やスペイン語などの第二外国語も学習するという。

 日本のように島国で、公用語が一つしかない国でカメルーンと同じような教育制度を整備するのは難しいかもしれないが、参考にする必要は大いにあるだろう。

 日本では最近、いじめによる不登校や自殺も大きな問題となっているが、カメルーンではどうなのであろうか。

 エンジャカ氏によると、カメルーンの家庭では子供が学校に行きたくないと言っても、親が文字通り尻をひっぱたいてでも学校に行かせるという。これでは子供が追い詰められて、自殺してしまうのではないかと思う人もいるかもしれない。しかし、カメルーンの事情は日本と少し違う。

 カメルーンでは「自分の体は神様からもらったもの」だと考えられているので、自殺は重い罪で「自殺しようなんて考えたこともない」という。つまり、追い詰められたら自殺という概念自体がないのだ。

 また、エンジャカ氏は「日本人は悲観的すぎる」という。カメルーンの人は楽観的で、「今日悪いことがあったら明日はきっといいことがあるだろう」という精神が根付いているという。

 毎日のように起こる人身事故や自殺のニュースを目にすると、もっとカメルーンのような国の考えを、取り入れてもいいように思えてくる。

 ただし、その国の精神を真似るというのは容易なことではない。アフリカの大地でのびのびと生活しているアフリカの人々の精神を見習いたくても、狭い国内で、せこせこと成績や売上など数字に追われて生活している今の日本人にとって、「明日いいことがあるかもしれない」とは、なかなか考えられないのかもしれない。

 そして、迷走しているといっても過言ではない、日本の外国語教育についても、カメルーンの教育制度は一つの日本が進むべき道を示しているのではないだろうか。

 他にも、カメルーンのように、日本人にとってなじみのない国はたくさんあるだろう。ふとそういった国に目を向け、関心をもつことで、日本が参考にすべきヒントを見つけ出せるかもしれない。

  

  

カメルーン、知ってる?
2007/3/27                 三崎 友衣奈(15)

 「ハロー!!」と笑顔で部屋に入ってきたのは、カメルーンの国営テレビ局に勤めるベテランジャーナリストのグレゴア・エンジャカ氏だ。エンジャカ氏が名刺を配り終え、お互いの自己紹介も終わると、彼は来日した理由を話し始めた。「私が日本に来たのはみなさんがどれくらいカメルーンについて知っているか、また日本においてのアフリカの報道に関して知りたかったからです。あなたたちはカメルーンについて何か知っていますか」。

 カメルーンはアフリカ大陸にある、西側は海に面した緑豊かな国だ。モンスーン地帯、密林地帯、サバンナ、サハラ砂漠、そして大西洋岸など地理的に異なる地域の中央に位置するため、「ミニ・アフリカ」と呼ばれる。第一次大戦後に英国と仏国の植民地となり、その名残で現在も公用語が地域によって英語とフランス語で分かれている。そのため、教育システムの違いが問題となっている。

 「アフリカといえばエイズ、紛争というイメージがあるのではないでしょうか」と彼は一呼吸おいて話しだした。しかし、エンジャカ氏は生まれて44年間、一度も戦争を見たことがないという。

 英語、フランス語の教育についても大きな問題と感じていないと主張した。「公用語が違っても、いずれは両方の言葉を話すことになる」。彼自身も、フランス語を母国語として学び、第一外国語として学んだ英語を使って、今は英語圏で生活している。エンジャカ氏が報道することもすべて英語だという。

 また、237の民族が暮らすカメルーンでは、家のなかではそれぞれの民族の言葉で会話している。それに加え、中学校ではスペイン語かドイツ語のいずれかを選んで学ぶそうだ。

 言葉だけでなく緑も豊富なカメルーンは過去10年間、木々の伐採で経済を支えてきた。現在も同じ状況だ。「今は、経済のための伐採と環境を守ることとのバランスが課題となっていますが、日本のように空気の汚染や酸性雨はありませんよ」と笑った。

 学校のシステムは来年から全国統一する予定になっていて、小学校は6年間の義務教育、中学校・高校が混合で3年間、大学が7年間となっている。それぞれ公立と私立があり、私立はキリスト教やイスラム教などの教会が学校を開いている。義務教育の小学校では学校拒否などはあり得ないという。「もしそう言う子がいたら、親が叱ってでも学校に行かせるし、学校側もほうっておかない。必要なときには親はもちろん、学校の先生だって暴力を振るう」と当然のように語った。

 またカメルーンでは自殺は恥ずかしいこととされている。神様にもらった体を自ら傷つけるのはあまりに無礼だからだ。そのため、子どもたちは自殺することさえ知らないという。「たまに自殺する人はいる。しかし、報道するときはネガティブに事を伝えるし、その人の周りの環境を問題視することもない」。宗教の力はとても大きい。日本との決定的な違いのひとつだ。

 「いつもは取材する側だから質問されるのは緊張するね」とエンジャカ氏は笑顔でインタビューを締めくくった。自然、言葉、そして思想に富んだカメルーンをみることができた。

 先進国であっても、それはただ経済が発展しているだけだ。今回の取材でカメルーンのイメージが具体化したのは、考えも及ばない部分で、日本がもっていないものを持っていたからだと思う。日本は、何に富んでいるだろう。