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「教員を評価するということ」
2008/07/09               佐藤 美里菜(16歳)

 みなさんは「教員評価制度」というものを知っているだろうか。

教員評価制度とは名前のとおり教員を評価する制度である。ただし、教員を評価すると言ってもさまざまな評価方法があり、さまざまな問題もある。

 まず、教員を評価するには「生徒が教員を評価」「校長先生などの管理職が教員を評価」「教員同士で評価」という主に3つの方法があるようだ。しかし、生徒が教員を公正に評価することは可能なのだろうか。

2008 年 4 月 7 日に東京大学大学院教育学研究科の勝野正章准教授に取材したところ、「『保護者を含めての協議会形式』や『答えやすいアンケートなどで集めた意見を教員の中で議論する』といった方法なら生徒が教員を公正に評価できる」と言う。ただアンケートで意見を回収するだけでなく、意見について「議論する」という過程が重要だ。教員たちの中できちんと意見を吸収し反映させようとしなければ意味がない。なぜならば、勝野准教授が言う通り、授業をほぼ毎日約6時間受けている生徒たちの授業に対する目は本物だからである。

 しかし、この制度に反対する人も少なくない。 5 月 16 日に取材した、小学校の教員でもある『教員評価制度を許さない会』の土屋聡氏は「マイナスの評価を受ければ不適格だとレッテルをはられ排除される恐れが高い」と言う。本来お互いが補い合って子どもを教育するべき教員同士がこの制度によってギスギスしてしまうのではないか、という不安もあるようだ。

 果たして、教員の仕事を企業などのように「業績」として評価してよいものなのだろうか。

 土屋氏は「子どもを教育するにあたって1年で結果を出すのは難しい。よって教員を評価するのは非常に難しい」と話す。また、はっきりしたデータとして出すことができないのもこの制度に反対の理由のようだ。

 また、勝野准教授は「教育を成果主義で行うと、いわゆる “ サラリーマン教師 ” が発生し、消費者とされる子どもやその保護者の顔色を伺う教育になる」とデメリットを指摘する。

 しかし、実際にこの「教員評価制度」を導入している大東学園高等学校では、 2003 年から保護者を含めた 年に 2 回の 「三者協議会」と「アンケート」という形で教員を評価している。「子どもが中心になる学校作り」のためにも生徒の意見を積極的に取り入れている。生徒たちに発言させることによって教員同士では言いづらかったことが伝わったり、授業に対する生徒たちの思いが分かると池上東湖校長先生は言う (5 月 6 日取材 ) 。三者協議会やアンケートで、生徒たちの意見によって教師が気づかされることは少なくないようだ。

 要は、教員を評価する「方法」が重要であり、保護者や生徒と教員はもちろん、教員同士のコミュニケーションをもっと増やすことが必要なのだ。「学校をつくるための1つの習慣として子どもの意見を取り入れるべき」と勝野准教授は話す。また、大東学園の新入生 62 %が「楽しそう」という理由で入学したようだ。その背景には「三者協議会で生徒の意見を反映させたことによって、生徒たちが活き活きした学校生活を送る結果になったのではないか」と池上校長先生は言う。

 教員評価制度を導入する際は、「生徒、教員、保護者間の信頼できる関係を築くこと」「どのような評価方法ならその学校が目指す『良い学校』になるのか」をきちんと考えたうえで、実施することが重要だろう。

教員評価制度から見る学校づくり
2008/07/09               島田 菫(15)

 終業式の日、生徒たちが少しばかり緊張した顔で先生から「通知表」を受け取る。誰もが経験したことだろう。

 年齢を重ねるごとに通知表の価値は重くなっていく気がする。小学生の時は、通知表を見た時の一喜一憂はその先にある長期休暇の期待にかき消されてしまっていた。中学生、高校生と年齢が上がるにつれ、自分の成績を周囲と比較し、優越感に浸ったり劣等感にさいなまれたりした。

 最近、もう1つの通知表が配られる学校が増えてきている。この通知表は生徒が先生から受け取るものではなく、先生が生徒から受け取るものだ。この、「もう1つの通知表」を制度として取り入れる動きが起こっている。  

 「教員評価制度」は、生徒という教わる側の視点から教師の授業を評価する制度だ。生徒が授業を評価することは、授業の改善につながるから良い制度ではないか、という人も、きっと多いだろう。

 しかし、このたった6文字の制度に怯えている教師がいることを知っている人は一体どれだけいるだろうか。教師が怯えている理由は、この通知表の結果を給与に反映させる、という点が盛り込まれてしまうかもしれないということだ。評価するのは子供。一人一人の子供の評価に教師の生活がかかっている。

 宿題を出さず、テストは簡単、授業は半分遊びのようなもので、いつもすこしふざけているような印象を与える教師。一方、毎日問題集を一ページずつ進めるように指示し、授業の密度が非常に濃く応用的な内容も取り扱い、標準より若干高い難易度の試験を出す、非常に厳格な教師。どちらの先生が親しみやすいかと聞かれたら私は前者を選ぶだろう。しかし客観的にみてどちらの教師が優れているか。

 誰から見てもだめな教師もいるかもしれない。しかし、その教師にも人生はあるし、家庭もあるだろう。一人の人生を狂わすかもしれないという重大な責任を子供たちに負わせてしまっていいのだろうか。生徒がこのことを自覚したとき、彼らは正当に評価できるのだろうか。

 他にも問題がある。『教員評価制度を許さない会』の土屋聡氏に取材をしたところ、教師への悪影響をこう指摘した。「行政側がこの制度を作る理由は、子供のためではなく、教員評価制度の導入によって各学校が活性化され、自主的な学校改革が進めば、行政から各校への指導をする必要が減る、つまり、行政の教育費の負担を削減できることにある。それに教師はマイナスの評価を受けると不適格というレッテルを貼られ、排除される。これでは、脅し、またはいじめを正当化する手段として使われかねない。教育はすぐに成果がでるものではないのに、短期間にある側面だけで教師を評価することは子供に対して無責任だ。」

 一方、東京大学大学院教育学研究科の勝野正章准教授は取材の際、「生徒が教員を評価するような制度は法律ではない形で作るべき。ただし、取り入れ方にはきちんとした考えが必要だ。教師をランク付けし、それを給与に反映させることはただの脅しでしかない。それでは教師は給与を上げるための授業ばかりをするようになる。教師が批判される中、評価が給与にじかに響いてしまうことが怖くないはずが無い。生徒からの関心を得るための授業になってしまう。」と言う。もしそうなってしまえば、これは教育現場の崩壊につながるだろう。

 生徒からの評価が、給与に反映されることに関して私は強く反対する。なぜなら一切自分の感情抜きで自分の教師を評価することができる生徒はおそらく皆無に近いからだ。給与が生徒からの人気で決まってしまう教師にも、先生たちの人生をだめにしてしまうかもしれないというプレッシャーに耐えなければいけない生徒たちにも、給与に評価が反映されるという制度は息苦しいだけだ。

 だが、この「給与反映」という点さえなくなれば非常に素晴らしい制度だと私は感じる。先生と生徒が共に一つの授業を作り上げて行く、というある意味教育の理想とも言えるものがこの制度で実現されるのだ。

 勝野准教授は「子供は毎日授業を受けている。管理職の先生や業者の査察の何倍も正しく授業を評価できるだろう。」と言う。授業の良し悪しはやはり受ける生徒本人が一番正確に評価できるのだろう。

 さて、ここまでの文を読み、「どうやって生徒が先生を評価するのか」の疑問が浮かんできた人もいるだろう。

 一番わかりやすいのはアンケートだろうが、ただ ○ × をつけるようなアンケートではいけない。これでは教師を追い詰めてしまうだけだ。「外国では顔のマークを使って評価しています。笑顔から泣き顔まで使用し、沢山の観点を評価します」と、勝野准教授。だが、これでも「泣き顔」の多い教師は教育現場から排除されてしまいかねない。

 ここで紹介したいのが、生徒、保護者、教師の三つの立場から代表が集まり、それぞれに意見していく「三者協議会」という制度だ。この制度において重要なことは、出席する3つの立場の人々がすべて対等であるということだ。

 この三者協議会を実施している東京都世田谷区にある大東学園に取材した際、池上東湖校長は「生徒も先生も三者協議会への参加が非常に積極的で、お互いの意見をしっかりと発言できている。」という。生徒の意見を教師、さらには学校にも反映させるためにはこのような制度は不可欠だろう。

 しかし、私は三者協議会を教員評価制度のためだけに利用するのは非常にもったいないことだと思う。せっかく生徒が保護者、教師と対等に話せる場所を与えられたのだ。この協議会をうまく生かせば、誰にとっても居心地の良い学校となるだろう。

   ちなみにこの大東学園の制服のワイシャツの色はブルーも許可されている。これも生徒側が「色つきのワイシャツを許可してほしい」と提案し、三者協議会での激しい議論の末、ブルーに限り許可されたそうだ。ホームページの写真に載るブルーのワイシャツを着た生徒たちの生き生きとした笑顔は自分たちの意見が学校に聞いてもらえたという喜びから生まれるのだろう。学校から言われるまま白いワイシャツを嫌がりながら着ている私に、彼らのような笑顔はまぶしく見える。それが、ひどく悔しくもある。

先生には“1”がつかないの?
2008/07/09               川口 洋平(18)

 相次ぐ教員の不祥事、教員の指導力を一定に保つために導入された教員免許更新制度。一連の動きを見ていると、出来の悪い生徒にはすぐ ” 1 ” をつけるのに、教員には通信簿がないのかと思えてくる。

 結果がすぐに出ない教育という現場に携わる教員の評価は確かに難しい。教員を評価するためにはどうしたら良いのだろうか。

 教員評価制度は各都道府県によって若干異なるものの、学校の責任者である校長が各教員を評価する場合が大半を占める。しかし、「実際の授業や生活指導を全て見ることのできない校長になにが分かる」「報告書を書くので雑務が増えて教育活動に専念できない」など不満の声があがっている。

 経済界や財界からは、教員にも能力給などの市場原理を適用するべきだという意見もある。

 宮城県の小学校に勤める土屋聡教諭( 43 )は、教員評価制度導入によって、本来の教育活動ができなくなるとして、評価制度に反対する団体『教員評価制度を許さない会』で活動している。

 教員評価制度が導入された現在、「クラスが上手くいっていないから相談がある」と評価されてしまうことから、同僚の教師の間でもお互いの弱みを見せまいと、相談さえできない状況だという。

 「先輩の教員につまずきやすい単元の効果的な指導法についてアドバイスをもらうことは、よりよい教育を目指す有効な手段。お互いに悩みを打ち明け、協力することなしには良い教育はできない」と評価制度を導入するだけが、教員の質向上につながらないと主張する。

 さらに東京都や大阪府では既に評価結果が給料に反映される評価制度が導入されている。土屋教諭は「給料に評価が反映されてしまうと、さらに悪循環を招く。教師としては評定に響くので問題児を引き受けたくないし、当たり障りのないことしかできず、本来の教育ができなくなる」と嘆く。

 東京大学大学院教育学研究科の勝野正章准教授によると、実際の教育活動に力を注げないなどの理由で、ある地域では新規採用教員の3割が1年でやめてしまったという。

 つまり、評価が厳しくなるにつれて教育活動に熱心になるよりも、自分のタスクをこなすだけの、サラリーマン教師が増えるということだ。

 そこで、管理職による評価だけでなく、実際に授業を受けている生徒が評価するという動きもでてきた。

 東京の大東学園高等学校は 2003 年に、教師、生徒、保護者で構成される三者協議会を設置した。生徒が授業アンケートに教員への意見を記入し、先生が悪い点を直すという生徒評価をする。同校校長の池上東湖先生によると、 自分自身の授業について 「しゃべるときの語尾をはっきりしてほしい」といった今まで出なかった意見が生徒から出てくるようになり、教師も授業の改善を行っているという。

 三者協議会では、他にも年に数回、代表生徒約 60 名と教員、保護者が話し合う場を設けている。「制服にブルーのワイシャツを許可して」といった生徒の要望もその問題点と妥当性を3者で話し合う。学校は先生に言われたことを守る場ではなく、学校を 協 同で作り上げて行こうという取り組みだ。

 勝野准教授は、教員を評価するより批評をしていくことが大切だという。生徒が教師を評価すると、生徒がお客様のようになり、生徒にあまい教師が高評価を得て、厳しい先生が低い評価を受けるようになることも懸念される。

生徒からの評価もただの数字のアンケートだけではなく、なにがいけないのかというアンケートをとって、それを生かすということが重要だと言う。

 学校を良くしていきたいという気持ちは生徒も教師も同じだろう。「良い学校」というのは、生徒、教師によって様々だろうが、お互いの目指す「良い学校」に向けて議論を重ねていく。そして、教員に問題があれば、教員を評価するのではなく、教員にアドバイスをする。

 先生には1をつけないで、「こうしたら2にあがるよ」と生徒が教えてあげればいい。教員評価を制度化するまで至らずともそのような方法があるのではないだろうか。

 

 

 

東大勝野先生
▲ 東京大学大学院教育学研究科の勝野正章准教授

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大東学園

▲ 大東学園高等学校、池上東湖校長

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勝野准教授
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大東学園