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第9回
●2003年2月1日 「私の原稿はラブレター」
 講師:林樹三郎氏(日本テレビ勤務・CEスタッフ)


ジャーナリストとしてのご経験を通して、CEの記者たちに「自分で考えることが出来る人になって欲しい」と、良い記者、良い人間になるためのヒントをわかりやすく話してくださいました。原怜也記者(13歳)が70分の講演を下記にまとめてくれました。

まず梅原猛著の「仏教」の中から得たヒントについて。
ドイツの哲学者フリードリッヒ・ニーチェが人生を三つの段階に考えた。

最初はラクダの段階:ラクダは重い荷物を背負って砂漠を歩く我慢強い動物だ。若い時にはラクダのように重い荷物(知識)を背負って、歩かなければならない。そこで必要なのは「がまん」。

次に、ライオンの段階:教えられたものを学ぶだけでだめ。教えられた知識を「批判」するようにならなければならない。そうしないと創造性がでてこない。

最後に、人生は赤ん坊の段階に至らなければならない。批判にとどまっていては創造はできない。赤ん坊のように「無邪気」な心になってはじめて創造が可能になる。
そのラクダの段階にあるCEの記者たちに、若い時からの経験を通して話をしたい。

一つ目は「勇気」:アラスカ湾で日本漁船の調査をする巡視船を取材する機会を得た時の事。取材に行く権利を得るにもライバルがいたし、大変だと言われた。やめようかと思ったが行った。船酔いに苦しんだり、船から船に飛び移る怖い思いもしたが、頑張ったので良い記事ができた。自信になった。あの時行きますと手をあげなかったら、今の自分はない。「どうしようと迷ったら困難な方を取れ」。

二つ目は「外から内を見る」:1990年の湾岸戦争前に、NY特派員として米国で女性の予備役兵士を取材した。彼女は離婚をしており子供が二人いた。戦争に行く前に歯医者で歯型をとって遺書まで書いた。彼女を取材した事で、アメリカは女性が子どもを残して兵士として戦争に行くような国だということがわかった。日本ではCNNテレビの街頭取材に人々が「私には関係ないこと」と答えているのを見て、とても残念に思った。戦争の良し悪しは別にして、日本人にもっと世界のことに関心をもって欲しかった。海外から日本を見ることで、日本という国が良くわかった。物事をよく理解したければ、一度外に出て見てみるとよくわかる。

三つ目は「良い原稿を書くためには、良い取材をする」:まず体力を持ち、歩き回って材料を集め、本をたくさん読んで、考えをまとめなければならない。そして何よりも好奇心を持ち、人の発言には「本当かな」と疑いを持って聞くこと。そこにスクープがあるから。

「私の原稿はラブレター」:少年時代は作文が苦手だったが、必要に迫られてラブレターを5年間で160通も書いた。この経験を通して、相手に伝えたいことを書く、良い原稿が書けるようになった。

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