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第13回
●2004年2月21日 「鳥インフルエンザ・ウィルス」
講師:阿部かるぱな氏(外科医)
今話題になっている「鳥インフルエンザ・ウィルス」について国際的心臓外科医の阿部かるぱな氏が分かりやすく説明してくださいました。渡り鳥の鴨を宿主としてウィルスが日本に入ってきているが、ウィルスはたんぱく質なので熱を通せば死ぬため、私達が鶏肉を食べても心配ないことが分かりました。
インフルエンザはウイルスから感染する。ウイルスはA・B・Cの三種類がある。哺乳類が感染するのはA型である。
鳥インフルエンザとは、鳥が感染するだけでなく、鳥が宿主となっている(人間のビフィズス菌のように、いろいろな害を予防してくれるものとして体の中に元々ウイルスが住んでいる)ものをいう。鳥からはA型の全ての種類が見つかったことがある。鳥、馬、豚、オットセイ、鯨などたくさんの生物が、それぞれ別のウイルスを持っている。このようなウイルスは、宿主は平気だがそれを持っていない動物にうつると、病気として表れてしまうものがある。
ウイルスのDNAにはRNA(H5、N1のようなタイプ)がいくつかくっついていて、それがウイルスの形になっている。今話題のH5N1は、野生の鴨の細胞の中にはもともと住んでいるが家の鳥は持っていないので、うつると病気になってしまう。鳥から鳥へは、だいたい糞を食べたりにおいをかいだりしてうつる。
鳥インフルエンザが広まるのは途上国や公衆衛生の発達していないところが多い。鳥インフルエンザに感染した鳥は、24時間〜48時間以内に死んでしまう。
抗原シフト
農場では、鳥と豚を一緒に飼っていることがある。豚は鳥・人間両方のインフルエンザに感染できる種類である。例えば、H5N1(鳥)とH7N7(豚)が一緒になっているところで抗原シフトが起こり、H5N7が豚に出来ると、人間にうつる可能性がある。今、世界で起きているのは、豚の糞から人に移っているもの。糞をちゃんと処分しないと農場で働いている人にうつったり、糞を川に捨てると中にいった子供達にうつったりする。
今のところ、鳥から人へ直接感染することは無いといわれているが、鳥同士で抗原シフトしたり、人間に感染してから人間同士で抗原シフトしたりするとそうなるかもしれない。
同じ場所でいろいろな種類の動物を飼っている田舎の小さな農場では、抗原シフトは起こりやすい。
抗原シフトするとRNA自身が突然変わるので、薬を飲めばすぐに免疫がつく風邪と違い、とんでもないことになる。
最も恐ろしいウイルス
SARSは宿主のハクビシン、BSEは感染している牛を殺して病気が広がるのを防ぐが、鳥は飛んで行ってしまうのでなかなかつかまえられない。殺せたとしても生態系を変えることになってしまう。渡り鳥は世界中を飛びながらウイルスを持っていける。このようなことから、鳥インフルエンザウイルスは最も難しく、恐ろしいウイルスといわれている。
過去にもあった鳥インフルエンザの流行
1918年、スペイン風邪により、アメリカで50万人、世界中で2000万人以上が死亡した。この頃は鳥インフルエンザに関する知識が無かった。57年のアジア風邪は、中国から発生し、アメリカで7万人死亡した。この頃にはスペイン風邪以後の研究で抗原シフトの概念が発見されていたが、対策は間に合わなくて、鳥を沢山殺した。68〜69年、香港風邪では、鳥をすぐに殺したので犠牲者は少なかった。この頃、野鳥が宿主で、媒介していることがわかった。そして、病気がうつらないように隔離するのは大変ということがわかり、世界保健機関(WHO)と国連食糧農業機構(FAO)は、大流行しないように衛生基準をつくろうとした。何が宿主になっているのかつきとめるため各地の農場を調べようとしたが、小規模の農場まで一軒一軒調べる事は出来なくて、統計として出せなかった。
政治的・社会的な問題
鳥インフルエンザが原因で鳥を殺さなければいけなくなった時、大規模の農場では一気に殺せるが、自営業の小さな農家では、殺した鳥1羽あたりもらえる保証金が小額なので、殺してしまうと生活していけなくなってしまう。そのため、殺さないのに殺しますと嘘をつく事がある。それが問題になっている。そして、鳥を殺してしまった後、農家の人はこれから鳥インフルエンザにならないようにと勉強する気は無い。いなくなったもののことは考えなくなる。政府はというと、鳥インフルエンザが見つかっても、すぐに殺してくださいと言うどころか、隠していることも多い。
人間のインフルエンザは、毎年流行る形を予想して予防接種を作るが、鳥インフルエンザはどの形が流行るかわからないので、前もって作るとすると全てのタイプの予防接種を作らなければいけない。何百種類もの予防接種を作るのはとてもお金がかかるのに使うのはその中の1つで、残りは捨ててしまう事になり、無駄なお金を使ったことになってしまうので、その分エイズや癌の薬のためにお金を使った方が良い。というように、どこに焦点を当てるかという問題があるから、鳥インの予防接種はその時になって血液検査をして、作る。
野鳥から家で飼っている鳥への感染の予防を何故しないのかというと、もともと野鳥の体に入っているものを無くすことはできないし、だからといって、えさに抗生物質をいれると、鳥の体に良くないし、その肉を人が食べるとまた悪い影響があるからできないという事。
予防するには
一番大事なのは、自分で予防すること。うがい、手洗いなどをしていると、それほどかかりやすくはない。ウイルスは人間のイジメと同じで弱いものの体に入るので、中途半端なダイエット・不規則・バランスの悪い食事をしているとかかりやすい。
万が一、感染した鶏肉を食べる時があるとしても、たんぱく質なので、熱を加えれば死んでしまう。卵では、生卵はダメだが半熟は火が通っているので大丈夫。卵の殻はおなかの中から出てくる寸前に、うすい膜を守る為に固まって出来るカルシウムで、生きているものではないので、食べても感染しない。
カルシウムは動物の各細胞の中に入っていて、侵入してきたウイルスを食べるので、魚や牛乳を摂るのは予防に良い。
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