第11回
●2003年4月26日 「日本語はどういう言葉か」
講師:島田康行氏(筑波大学助教授)
去る4月26日(土)、筑波大学助教授島田康行氏が、母語、同音異義語、抽象的な音と具体的な音、話し言葉と書き言葉、清音・濁音、などについて日本人が無意識のうちに使っている日本語について、大変興味深いお話をしてくださいました。60分のレクチャーを、中島千尋記者(17歳)がまとめました。
母語
私たちにとって日本語は「母語(mother tongue)」。
母語に対する理解を深め、大切にして母国の文化を育てていくことが大切。
日本語の音・発音
日本語の発音は「子音1つ+母音1つ」で成り立っており、その数は150個に届かない。しかし最大の国語辞書である日本国語大辞典には、50万語が掲載されている。50万語を150の音で表すために、同じ音の組み合わせで様々な物を指す言葉「同音異義語」が生まれてしまう。混乱を防ぐために「アクセント」「漢字」などが用いられる。
同音異義語とアクセント
日本語のアクセントは音の高低。
東京方言(共通語)では、二拍の言葉は「高い低い」「低い高い」というどちらかのアクセントになる。三拍の言葉は「高い低い低い」「低い高い高い」「低い高い低い」のどれか。アクセントは一度下がると二度と上がらないため「高い低い高い」というアクセントは存在しない。「平板化」というアクセントの変化が起こることもある。これは尻上がりのアクセントの方が日本人になじみやすいために起こる現象。また複合語の中ではアクセントが変化する。アクセントの変化は「一語化の表示」の機能を持つ。
同音異義語と漢字
同音異義語が多く存在するのに、文章を読んでいる間我々がその区別に困らないのは漢字があるから。同音異義語は「見る、読むための言葉」つまり「書き言葉」。
書き言葉と話し言葉は区別すべきであり、話している時は、耳で聞いてわかりやすいかどうかを考えるのが大切。漢字の「造語力」が非常に富んでいることが、日本語を豊かにしていること、たくさんの同音異義語を生んでいることの原因。
抽象的な音、具体的な音
「ん」の音を思い浮かべようとする時、全員の頭に同じ音が浮かぶ。これが「ん」の表す抽象的な音。しかし実際に口に出すと、例えば「しんばし」と言う時の「ん」の音では「せんせい」の「ん」の音を言えない。「ん」には具体的には三つの音が存在しているが、日本人はこれらを区別せず、全部同じ音だと思い込んでいる。
音の区別
「小学校」の「が」と銀ぎつねの「ぎつね」部分の「ぎ」のような音の事を鼻濁音という。
語頭では鼻濁音ではないものが出、言葉の途中では鼻濁音が出るという「相補分布」という規則がある。鼻濁音はだんだん衰退しており、我々は鼻濁音を区別しないようになってきている。どの音を区別するのかは言葉によって大きく違う。
清音と濁音から受ける感じの違い
「清音」は、軽い・上品・小さい・弱いなどの「快」の感じを表す。一方、「濁音」は重い・下品・大きい・強いなどの「不快」の感じを表す。
日本語では「濁音は語頭に立たない」という規則がある。これを「音配列則」という。わざとこの規則を破ると、言葉の強調が起こる。例えば関西弁の「あほ」は本気で怒ると「どあほ」になる。
言葉は変化するもの
「仰げば尊し」の歌詞が現代では理解しにくいように、言葉は常に変化するものである。
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