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夢を諦めることなかれ ~声優、その魅力と実情~


2015/03/10                  三好 恵瑠(13)

  皆さんは「声優」という仕事に興味を持ったことがあるだろうか。最近では声優専門のウェブラジオチャンネルや、声優がメーンパーソナリティーのテレビ番組が放送されるなど声優人気が高まっている。そんな声優という仕事の実情を知るため、専門学校東京声優アカデミーと賢プロダクションに所属する現役声優に取材した。

東京声優アカデミーの東氏

東京声優アカデミー(以下TSA)は18年前に声優養成科が設立された。主な卒業生には、代永翼、甲斐田裕子などがいる。併設校の東京アナウンス・声優アカデミーも石田彰、阿部敦などの有名声優を輩出してきた。60年以上にわたり声優界と向き合い、生徒を指導してきた学校として声優界の変化について質問をした。

取材に答えてくれたのは、教務部担任の東氏だ。東氏はTSAに来る前、声優の出演するドラマCDの制作をしており、業界には10年以上関わっている。東氏によると、現在声優ブームが起こっているのはインターネットの普及で、アニメキャラに誰が声を当てているのかが簡単に調べられるようになり、今までの「キャラクターへの人気」から「声優個人の人気」に変化してきたことが一つの要因ではないかという。志願者の増加という点では、高校生のなりたい職業ランキングのトップ10に入ったというデータもある。

こうして声優個人の人気が高まったことにより作品に声を当てるだけでなく、グラビア活動やアニメのイベント、ドラマCD、キャラクターになって歌を歌うキャラクターソングなどの仕事も出てくるようになったという。一部の声優は個人名で歌手活動も行っており、NHKの紅白歌合戦に出演するまでになった人もいる。声優の仕事の一つとして、歌のうまさ、というものはある程度必要になってきたようだ。

TSA生徒の森倉智奈央さん

それにより、声優に求められるスキルのレベルが上がったように感じられるが、昔と今で教える内容が大きく変化した訳ではないようだ。声優を目指し憧れる皆さんに東氏からのアドバイスをお伝えしよう。まず、基礎力だ。これは、滑舌や発音、イントネーション、日本語のルールなどといったものだ。次に、技術力。演技のうまさ、声だけで感情を表すといったものだ。これを鍛えるためTSAでは1年目はマイク前の授業はせず、芝居を重要視しリアリティを出せるようにしているという。そして、コミュニケーション能力。「点数がつかない仕事だからこその、人と人とのつながり、相手にこの人と仕事をしたいと思ってもらうことが重要だ」と東氏は語る。最後に個性だ。これは声優ならでは、といっても過言ではないだろう。声の個性、見た目、歌のうまさなどだ。

TSAの生徒である森倉智奈央さんに取材した。彼女は高校で演劇部に入り芝居の楽しさを知り、声優の道を目指したという。「発声、滑舌、感情表現など課題はあるが芝居の楽しさがその壁を超えてくれる」と語る。声優だけで生活をしていくのは簡単なことではないが、お金ではない楽しさが自身を突き動かしているそうだ。

賢プロダクションでは、TSAを卒業した現役若手声優の小堀幸さん(『ハピネスチャージプリキュア!』ぐらさん役、『FREE!』橘蘭役 など)に取材した。小堀さんも森倉さんと同様、高校時代は演劇部に入っており、その時の友人に声優という仕事を勧められ目指したという。声優の魅力は、自分だけでなく普通はなれないような動物や、男の子、その他様々なキャラクターとして様々な人生を歩めることだという。そして、自分の演技からそれをみている人たちが楽しんでくれたり、学んでくれたりしている人がいる、ということが励みだという。

しかし、苦労も沢山あるようだ。生活面では声優として食べていくこと、次の仕事を掴み取っていくことはとても大変なことだという。声優になるためにも、プロダクション付属養成所のオーディションに受かるだけでなく、そのあと養成所で査定に合格しなければならない。そこでも生徒数が次第に絞られていく。

小堀幸さんを取材

賢プロダクションのチーフデスクの坂本あずさ氏はこんなことを語った。「誰が流行るかは自分たちにもわからない。その人を推しても全く流行らない場合もあれば、何もしていなくても流行る場合もある。そんな厳しい業界だ」と。

最初に述べたように、声優人気が高まっていることは確かだ。諦めなければ夢はかなうと言えるのは、自分が成功したからこそかもしれない。厳しい業界であるが憧れと芝居の魅力に取りつかれこの道を選び、進んで行く人はこれからも沢山出てくるだろう。しかし、あえて小堀さんの言葉を伝えようと思う。諦めなければ必ず夢はかなう、と。

(一部現役声優の敬称を略しました)

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