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レクチャー

「戦争特派員」 講師: 平野 次郎 氏(NHK解説委員・CE理事)
2003/03/02

NHKワシントン支局、欧州総局長などを歴任された平野さんは国際派ジャーナリストとして有名で、各地からの講演要請に応えてご多忙の中をCEのために講演をしてくださいました。イラク戦争が近づくこの時期に、戦争特派員とは何か、記者とは何かについてお話をしていただきました。3万5千年前の話から現在のイラク戦争にいたるまでの長い歴史を60分間ピッタリに抑えて話され、さすがプロの解説委員と参加者一同感心しました。

記者とは何か:
新聞記者、写真記者、放送記者、色々あるが、「記者」の「記」は「記録すること」、すなわち、記者とは歴史の記録を残す者である。歴史的事件の現場に立ち入ることができ、そこで見たこと、聞いたことを伝えるために書き記す。「歴史の第1稿」を書くのが「記者」であると言える。しかしながら、最終的な記録(=真実)になるには時間が必要である。
人類が「喋る」ようになったのは今から3万から3万5千年前。これは考古学者が発掘した古代人類の舌骨神経の通る穴から「喋った」ことが判明。以後人類は、話したり書き記すことで歴史を後世に伝えてきた。

日本最初の新聞:(コピーを配布)
400年前、「大阪安部之合戦之図」戦争の状況を伝え
るものであった。「戦争」とは人々の興味・関心を一番
ひくものである。それは人が死ぬから最大のニュースとなる。
「東京日日新聞」の岸田吟行が従軍記者として台湾に行って記事を書いた。日本最初の戦争特派員。

有名な戦争写真:(コピーを配布)
1936年スペイン内戦で、カメラマンのロバート・キ
ャバが撮影した「敵の弾丸で倒れる兵士」。決定的瞬間
をプロとして記録し、歴史に残す。しかし、その決定的瞬間に人が死んでいる。プロとして歴史に残す責任感からカメラに撮るが、同時にその写真は商業的価値がある。
戦争がいかに不条理で、いかに悲惨であるかを目の当たりにすることによって、戦争特派員は成長する。

取材で必要なこと:
アメリカ兵は第2次世界大戦では、5年間で24万人、ベトナム戦争では4万5千人が死んだ。湾岸戦争では40日間でイラク兵が15万人死んだ。米兵死者は50名未満。こんなに短期間に多数の戦死者がでた戦争はない。ベトナム戦争では戦争特派員が戦争の悲惨さを発信したが、湾岸戦争やアフガン戦争では、記者が戦場に入れなかった。爆撃の様子はわかっても、地上の写真は軍が出したものだけ。戦争に「勝つ」ためには、政府は自国に有利なように情報操作をする。記者はスポークスマンの言葉を吟味して、「ウラ(確認)をとることが必要」。

戦争特派員:
一人前の記者になるには、「戦争特派員」を経験しなければならない。国益、職益を排除して、情報操作を見抜き、純粋に客観的に真実を見抜く力を養うために。